あっち向いてホイっ!

ありま

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    俺が、日本に来て、はや1ヶ月。
 
 学校生活にも、慣れてきたし、色々、勉強になることも多くて、来て良かったと思うんだけど…
 
 悩みが…  ひとつ…。
 
 方向音痴らしい…
 
 どうやら、そうだ。
 
 何度も、チャレンジしたけど…
 
 いまだに、映画館に行けてないんだから…
 
 
 魔法が使えれば、簡単なのに…
 
 
 この国は、人だけじゃなく、車も、建物も多すぎる。
 
 いろんな物に邪魔されて…
 
 自分のいる場所がわからなくなる。
 
 念じるだけで、移動が出来たら…  
 
 楽なのに…。
 
 皆は、迷うことなんてないのかな?
 
 
 いつも、この十字路で…
 
 あー、やっぱり…  どっちだっけ?
 
 うーん、この間は、たしか…  こっちだったと思うから…
 
 今日は、あっちに行ってみよう!
 
『おい、ホントに大丈夫か?』
 
「…  多分…」
 
『多分って、お前なぁ~』
 
 ごめん、自信はない…。
 
 考え込む、俺の近くで声がした。
 
「あっれ~、噂の転校生?」
 
 明るい茶色の髪をした、ちょっと、小柄な、同い年くらいの子がいた。
 
 のんきに言われたことに、ちょっと、ムッとしながらも…
 
 誰だったか、思い出そうと…
 
 見たこと…  無いなぁ。
 
 聞いた方が、はやいな…
 
「え~と、どちら…様?」
 
 相手は、ビックリしたように、目を見開いて…
 
「あっ、ごめん。クラスは違うけど、同じ学校」
 
 ああ、それで…  納得。
 
「俺、赤井  ツヨシ。よろしく」
 
「桜井  真聖です。ヨロシク」
 
 自己紹介した…はいいけど…
 
 この後、どうしたら…?
 
 茶々丸、教えてくれ!
 
『聞いてみたら?』
 
 なっ、何を聞くんだよ。
 
『決まってるだろ!』
 
 そんなに興奮するなよ。
 
 聞こえたら、ヤバイって…
 
「で、こんな所で何してんの?」
 
「家、この近くで…」
 
「ウソー、俺んちも、この近くなんだけど」
 
『マサキ、映画館の行き方、聞けよ』
 
 ああ、そうだった!
 
『ついでに、友達になってもらえば』
 
 そんな簡単には…  でも…
 
 よし、ガンバってみる。
 
『その意気だ』
 
「どっか行くところ?」
 
「あのー、映画…観に行こうかと…」
 
「俺もー、誰かと待ち合わせ?」
 
「ううん、ひとり」
 
「じゃあ、一緒に行かねぇ?」
 
 おッ、おう、天の助け…
 
 言う手間がはぶけた。
 
「ああ、うん、いいよ」
 
 あまり、顔には、でてないと思うけど…  
 
 実は…  スキップするほど、嬉しい。
 
「何、観るか、決めてる?」
 
 俺に、意見を聞いてる?
 
 初めて会ったのに…  気楽に話せてる
 
 ツヨシ、いい奴かも?
 
「いや、実は…  方向音痴で…  映画館に行けるかどうかも、わかんなかったから…」
 
「あっ、そう。じゃあ、行ってからだな」
 
 方向音痴の話は、スルーか‼
 
 スルーなのか?
 
 もっと、聞いてほしかったのに…
 
 ちょっと…  悲しい…  な。
 
『よかったな、友達できて』
 
 はッ、友達?
 
 まあ…  そうだよなぁ、一緒に映画って、友達だよな?
 
『そうそう、ト・モ・ダ・チ』
 
「何、ボーっとしてんだよ」
 
 そこには、ニコニコと、笑う顔があった。
 
 俺は、ちょっと、うれしくなったけど、素っ気なく…
 
「なんでもない」
 
 と、言っていた。
 
「そう?  わかんないことあったら、何でも聞いてよ」
 
「ありがとう」
 
 タイミング良すぎて、言うことないねぇ~。
 
 魔法が使えなくて、クヨクヨしてたけど…
 
 ここでは、使えないのが、当たり前だし、気にすることない。
 
 方向音痴さえ、なんとかなれば…
 
 俺には、住みやすい所だな。
 
 こんなに、のんびりした気持ちになれるなんて…
 
 向こうにいたときには、考えもしなかったな…。
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