あっち向いてホイっ!

ありま

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「真聖先輩!  観覧車乗りません?」
 
 エッ、う~ん……。
 
「俺は、いいや…、ツヨシと乗ってくれば?」
 
 今日は、ツヨシのために、計画したんだから…
 
「みおは、真聖先輩がいいんですけど…」
 
「でもな~、ちょっと疲れてるから……もう少し休みたい」
 
 そんなやり取りを見ていたツヨシが助け船をだしてくれた。
 
「じゃあ、みおちゃん。俺と行こうよ」
 
 とたんに、ぷくーっと顔がふくれ、納得できないようで、そっぽをむいた。
 
「ツヨシ先輩じゃダメです。真聖先輩がいいんです!」
 
 きっぱりと言いきり…
 
 瞳がうるうると涙があふれそうになり、肩もふるえている。
 
 ツヨシは言ってもムダだと思ったのか、説得をあきらめ……
 
 うつむいてしまった…。
 
「何だよ、この重い空気は…」
 
 我慢できなくなったまことが声をだしたけど、誰も返事をしなかった。
 
 
 しばらくすると、ツヨシが…
 
「真聖、乗ってやれよ。俺のことはいいから…」
 
 そういうツヨシは、すごく寂しそうで、ずっと目を合わせてくれない。
 
 いつまでも、このままじゃいられないしな、しょうがないか……。
 
「わかった、じゃあ行くか」
 
「やった~!」
 
 うれしそうに跳び跳ねているみおちゃんを見るツヨシは、少し寂しそうに見えたが……ホッとした顔をしていた。
 
 これで良かったんだよな…。
 
「おい!  そんなにひっぱるなよ」
 
「いいから、早く!  早く!」
 
 そんなふたりの後を追うように、ツヨシとまことも観覧車に乗り込んだ。
 
「ツヨシ、私で悪いけど…」
 
 まことが気をつかって言った。
 
「ああ~、うん、そんなこと……ないけど」
 
 気のない返事をし…
 
 元気をなくしたツヨシを、ただ見つめるばかりだった。
 
 
「真聖先輩みてみて~、人があんなにちっちゃく見えますよ~」
 
「ああ、そうだな」
 
 はしゃぐみおちゃんを適当に相手しながら……
 
 俺は、それどころではなく…
 
 ツヨシのことが気になってしょうがない。
 
「スキあり‼」
 
 突然……ほっぺに柔らかい感触が
 
「なっ、なにを?」
 
 俺は、目を丸くして何があったのか聞こうとしたが……、
 
 クスクスと笑っているみおちゃんがうれしそうにしていて…
 
 それを見たとたんに、無性に腹がたって……
 
 
「何をした?」
 
 我慢できずに、怒鳴ってしまった。
 
 ビックリしたみおちゃんは、固まってしまって……
 
 消え入りそうな小さな声で、
 
「ごめんなさい…」
 
 と言ったが、許す気にはなれず、無言でにらんでいた。
 
 
「好きなんです……」
 
 
 大きな目を涙で潤ませながら、じっと見つめられ告白されたが…
 
 全然うれしいと思えず……
 
 はぁー?
 
 何だよそれ、好きだから…?
 
 ほっぺにチューしたってこと?
 
 なんだかムカムカしてきて……
 
「悪いけど、俺、好きな人いるから」
 
 ぶっきらぼうに答え、
 
「それに、いきなりこういうことする子…好きじゃない」
 
 怒りの感情を抑えながら、ハッキリと言った。
 
 傷つけたかも?
 
 
「好きな人って、誰ですか?」
 
 もう笑ってはいなかった…
 
 怖い目をして聞かれ……
 
「そんなの、教える必要ないよね」
 
 その後は、下を向いたままで…
 
 俺は、早くこの場からいなくなりたかった……。
 
『だから言ったんだ。みおの気持ちをたしかめろって』
 
 そうだな、お前の言う通りだった…
 
 俺が余計なことをしたばっかりに…
 
 ふたりを…?  傷つけた……。
 
 みおちゃんは、観覧車が着いたとたんに、走っていってしまった。
 
 なんなんだよ一体!
 
 声をかける暇がなかった。逃げ出したいのは俺の方なのに…
 
 そんな後ろ姿をただ呆然と見送った。
 
 
 チクショー、どうすりゃよかったんだ……。
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