【R18】不器用な僕たちの恋愛事情

優奎 日伽 (うけい にちか)

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8. 新入生=春嵐もしくは大迷惑

新入生=春嵐もしくは大迷惑 ②

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  *** 


 入学式から三日目。
 萌と亜々宮あーくが新入生として入って来た。

 新入生代表の挨拶をしたのは、亜々宮だ。
 主席入学をし、挨拶を任された亜々宮は意気揚々としていたのだが、十玖の弟だと言うことが瞬く間に知れ渡り、どん底に落とされた気分になった。

 どこまでも自分の行く手を邪魔する。

 無論、十玖にその気など更々ない。一方的に亜々宮がライバル心を燃やしているに過ぎないのだが。
 学力も友人の多さも自分が上だ。彼女が出来たのだって十玖よりずっと早かった。
 なのに“十玖先輩の弟”というレッテルがいつも付き纏う。

 三兄弟の中で、十玖は毛色が違う。天駆と亜々宮が母親似なのに対して、十玖は顔も性格も父親にそっくりだ。だからなのか、小さい頃から何故だか母親の十玖の扱いが違っていて、不満に思っていた。

 最も、女装させようとする母を見るにつけ、十玖じゃなかったことに安堵するのだが。
 亜々宮も幼稚園に入る前まで、女の子の格好をさせられていたクチだが、十玖に対するような執着は母になかった気がする。
 実際、幼少の頃の十玖は女の子顔負けの可愛さだった。

 顔はともかく、勝ってるはずの自分が何故、十玖如きに敗北感を抱かねばならないのか。

 亜々宮のクラスは、オリエンテーリングの班別に別れ、当番を決めているところだった。

 ふと校庭を見ると、上級生たちは体力測定の真っ最中らしい。その中に見たくない顔を見付け、亜々宮は顔をしかめた。
 どうしてこうも目立つのか。

「ねえねえ。あれ。今から幅跳びするの十玖先輩じゃない?」

 ふいに隣に立った声の主をちらりと見、亜々宮は不機嫌を露わにする。
 意志のはっきりとした性格を表すかのようなキリッとした眉と、ややきつめの眦まなじり。豪快な笑い方がさも似合いそうな口元から覗く八重歯。動くたびにぶんぶん振り回すポニーテールまで元気の塊のような少女だ。

「相変わらずカッコいいよねぇ。あっ――――すっご。亜々宮今の見た? 何メーター飛んでるのかな?」
「知るか」 
「何でいつもそうやって不機嫌になるの?」
「そっちこそ何でいつも十玖の事ばかり褒めんだよ。けったくそ悪い」
「なに。ヤキモチ?」
「そんなんじゃない」

 亜々宮はあからさまにむくれる。

「智子には分かんないよ」

 長年培われたこの不条理。
 十玖とは一生相いれない気がする。

「あんなお兄さんいたら、自慢しちゃうのに」
「欲しかったらやる」
「そしたらちょーブラコンの妹になって、亜々宮なんか見向きもしないんだからね」
「俺なんかってどおゆー意味だよ」
「知らな~い」

 智子はつーんとそっぽを向いて、女子のもとに行ってしまった。
 亜々宮は鼻でため息をついた。

 川口智子とは、彼女が小学五年の夏休み明けに転校して来てからの付き合いになる。
 サバサバしている智子とすぐに気が合って、男友達のような付き合いだった。女の子として意識したのは中学の制服姿を見た時。中二の夏休み前、彼女に告白して付き合い始めた。

 正直、美人とか可愛いタイプの面立ちはしていない。むしろ少年顔だ。けれど、彼女といると何の気負いもなく、自然体でいられて楽だった。何より自分には可愛く見えるのだ。

 智子は、十玖の弟だからと言った変な色眼鏡で、自分を見たりしない。亜々宮の兄として小学生の頃から知ってるし、今更態度を変えたりしない。

 だが最近、智子がA・Dファンになったのが面白くなかった。
 きっかけは、受験勉強中のラジオの深夜放送。
 何の気なしに聴いていたらスコンとハマったらしい。曲の終わりに再度DJが曲紹介して、検索してみたらヴォーカルが十玖だった事に驚いたくらい、無関心だったのだが。
 以来ハマってる。

 十玖はいつだってそうと知る事なく、自分の大切なものをサラリと持っていく。でもそれを手に取って喜ぶことはない。そこに有ることすら知らないのだから。



 萌はオリエンテーリングの班の中で、一人孤立していた。
 班別行動の役割を決める時間なのに、明らかに無視されている。
 理由は分かっていた。

 入学式の翌日から、A・Dの三人衆と美空と一緒に登校した。それで十分に注目を集めた。
 その後もいつもの調子で、十玖に飛び付き、晴日に飛び付き、唯我独尊を極めつくし、気が付けば女子の反感を買っていた。 

 元々、女子の友達は少ない方だが、初っ端から思い切りつまずいてしまった感は拭えない。
 中三の途中で転入してきたから尚更だ。

(別にいいんだけどね)

 班長の女子と目が合った。
 萌は顔色変える事もなく、じっと見てると、彼女はつんと顔をそむけた。

(あ~あ。つまんない。早くチャイムならないかなぁ)

 スマホを取り出して何となく時間を確認すると、ラインのグループを開いた。
 今の心情をポツリとトークする。
 間もなく返事が来た。

 《HAL――何だよ。いつも通り割って入れば? 人の顔色窺うようなタイプじゃないだろ》

 《Ryu――子ザルらしからぬ発言(笑)図々しいのが専売特許だろ》

 《Moe――子ザルじゃないも! 萌ってそんな図々しい?》

 《KENT――子ザルちゃん。無謀と言われつつも頑張って入ったそのガッツに、お兄さんはいたく感動したのに、もう泣き言? 残念だなぁ》

 《Ryu――自覚なしか? 子ザル》

 《Moe――だから子ザルじゃないも!! 晴さんが子ザル言うから~(泣)》

 《HAL――(笑)》

 《Coo――大丈夫? 萌ちゃんを分かってくれる人、絶対いるから。ね?》

 《tuttu――あんたたち今授業中じゃないの!?》

 《KENT――筒井マネ、暇なの?》

 《Moe――優しいのは美空さんだけだよ。そう言えば、とーくちゃん既読スルー?》

 《tuttu――暇じゃないわよ!!》

 《Talk――萌。友達出来るまで、上級生のクラスに来るの禁止!》

 催促したらとんでもない文面を寄越した。

「とーくちゃんの鬼!!」

 思わず立ち上がり、スマホに向かって怒鳴ってた。クラス中の視線が集まった。が、萌にはどうだっていい。

 《Talk――晴さんを一年のクラスに呼ぶなんて言語道断だからね(NG)》

 《HAL――俺が勝手に行くのは?》

 《Talk――ここで萌を甘やかしてどうします》

 《HAL――だな(汗)》

「晴さんのバカ! とーくちゃんの悪魔!」

 再びスマホに向かって怒鳴った萌に、担任が言う。

「相原さん。スマホ没収」


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