【R18】どーしてこーなった? ~私と彼のとりかえばや奇譚 ( 旧・ただいま緊急事態につき、要らぬチョッカイお断り)

優奎 日伽 (うけい にちか)

文字の大きさ
5 / 96
2. 土曜日の対策会議と危ない二人。主に“美佳” が。

土曜日の対策会議と危ない二人。主に“美佳” が。②

しおりを挟む


 上半身裸の “美佳ゆう” を見ながらさめざめと泣く美佳は、現在の所有者が大嫌いな幼馴染みであることに、憤りをぶつける。

「何で優があたしの体を乗っ取ってるのぉ。あたしが何したって言うの!? 優なんかのいいように弄ばれて、犯されてる感じよ!」

 自分でも意識して触ったことのない部分を、優は実に楽しそうに陵辱して美佳に見せつけた。見慣れた自分の筈なのに、上気するその顔がやたら色っぽくて、羞恥心を嬲られて体が反応し、女であるうちに経験したことがなかったオーガズムを強引に優にもたらされた。

 片膝に頬杖を着いた優が鼻でせせら笑い、美佳と目が合った途端に右の乳房を下から掬って握る。手の中で形を変えた乳房の頂を軽く抓んだ卑猥な指先に、美佳はザワりとした。

「止めて。触らないで」
「それは無理があるだろ。いま “美佳” は俺なんだし。トイレも行くし風呂にも入る。それとも垂れ流して、不衛生極まりない生活を送れと?」

 やれやれとため息を付き、意地悪な目をして顔を覗き込んでくる。

「ただでさせデブ、ブス、馬鹿の三重苦なのに、更に不潔となったら完全に女終わるよな」

 ニヤニヤ笑っている優をぶん殴ってやりたい。“美佳” でなければ。
 ぐっと堪えて優を睨み据え、

「一応標準だし、優が言うほどデブじゃないもん。顔だって優に比べたら数段に落ちるけど十人並みだし、頭だって同じ高校じゃんか!」

 それで優に迷惑を掛けたか、と言おうとして止めた。いまそれ言ったら、再起不能まで追い詰められること間違いない。

 悔しさに頬を膨らませる。優は肩眉を上げて美佳を見ると、「限りなく肥満に近い標準」と言ってウエストをぐにっと掴んだ……抓んだんじゃなくて、掴んだ(泣)。更に頬に手を当て、

「殆ど手入れもしていない顔に、下から数えた方が早い成績。これの何処に開き直る要素があるんだ? しかもこの俺がこれから付き合っていかなきゃなんない体とかって、軽く死にたくなるわ」

 腹立たしい、と氷のような目で美佳を見た瞬間、ぶるるっと震えてくしゃみをした。

(いつまでもそんな格好でいるからよ)

 内心舌を出して小馬鹿にしていると、何かを察知したかのように優の手刀が頭頂に落ちた。先刻はお尻を蹴られ、今度は頭か…。

(…アンタ自分の体にも容赦ないですね)

 中身が美佳だからだろうか?
 なんか釈然としない。

「早く服着たら? 風邪ひくじゃない」

 引き出しから着替えを取り出し、振り向きざまに差し出した。優はしゃがんでいる“優”をしげしげと見降ろし「シュールだよな」と受け取った。
 本当にシュールな光景だと思う。

「ちょっと優!」
「何だよ」
「ブラしてよ。渡したでしょ」

 ブラをベッドに放り投げて、いきなりカットソーに袖を通した優にストップを掛けた。彼はじっとブラを見て、美佳に目をやる。

「外すのは得意だけど、したことはないな」
「…そうですよね」

 したことがあったら、それはそれでちょっと怖い。
 優のそんな姿を見てみたいとも思うが、“優” で試すつもりはない。
 美佳はブラに手を伸ばし、その手を見て「はあ~」と大きなため息をついた。節張った男の手が何ともやるせない。

(…どんどん汚されてく気がする)

 “美佳ゆう” にやらせても、“優みか” がやってもどちらにしろ心のダメージは大きい。

(だからってノーブラはなぁ)

 やや大きめのバストをしているから、ノーブラが見た目で分かってしまうのは、余計な視線を集めてしまって頂けない。

 がっくり項垂れ、「どーすんだよ」って言って不貞腐れた顔の “美佳” を上目遣いに見た。もう一度ため息をつき、美佳はブラジャーを手にすると、「優でも出来る着け方教える」と “美佳” の背中に手を回し、前でホックを止めて後ろに回す。

「でストラップに、はい手を通して……ちょっと前屈みになって」

 “美佳” の肩を引いて前傾姿勢にすると、手を見詰め「ああヤダッ」と不快を露わにした。

「なんで “優” の手でこんな事しなきゃなんないのッ!?」
「知るか」

 今日何度目かの涙目でカップに手を突っ込み、乳房を綺麗に中に収めた。

「ふ~ん」

 眺めていた優の不思議そうな声。

「ふ~ん、じゃないから。ブラする時くれぐれも変な事しないでよ!?」
「変な事って?」

 ニヤリと笑って、優は今度こそカットソーに袖を通した。ずいっと “優” に詰め寄り、

「変な事って何だ?」
「へ…変な事は変な事よッ」
「だから何なんだよ。変な事って」

 言わせようとする揶揄う笑みを含んだ瞳。美佳が唇を噛んで恨めしげに見、「もおいいッ!」と吐き捨てるように言うと、「へえ~。いいんだ?」と優が喉を鳴らして笑った。

(なんでなんでなんでッ!! こんな陰険な奴と入れ替わらなきゃなんなかったの!?)

 唸っている美佳が心底愉快そうな優は、パジャマのズボンを脱いで放り投げた指を美佳に見せつけるようにグニグニと動かし、きょとんと見詰めた彼女の前で秘所に触れた。
 驚愕した “優” の手が、“美佳” の手を取り押さえると、さらにその手を押さえつける“美佳” の手。

「お願いですから止めて下さ~い」

 哀願する美佳をせせら笑う。
 このクソ意地悪い優をどうしてやろうか頭を巡らせてると、ノックとともにドアが開いて二人は振り返った。

「美佳、いつまで……」

 言った母が入り口で固まった。そしてその母を見て二人も固まった…のは一瞬。
 慌てて離れ、“美佳” がジーンズに足を通しているのを見やり、「二人とも、仲直りしたのね」間違いなくとんでもない誤解している母が、にっこりと笑って訊いて来た。「してない」と言った“優”と「した」と言った“美佳” の声は同時に発せられ、眉をひそめた母に今度は逆の事をまたも同時に言って、沈黙が降りた。

 絶対に何かあったと……実際あったけども、二人を交互に見る母の胡乱な眼差しが痛い。
 下半身パンツの娘が、優に迫っていたとしか思えない構図だったと思う。そしてこの場合、怒られるのは男の “優” なわけで。

(……最悪だぁ。あたし悪くないのに)

 諦め混じりに覚悟して、消えてしまいたいと心から願った。

 優が肩で美佳を小突くと、「話を合わせろ」と口も動かさず囁いた。
 器用ですね優さん、と感心しつつ頷くと、“美佳” が腕を組んできて「仲直りしたから」と美佳の口真似をしてにっこり笑った。「ねっ?」と笑顔で同意を求める瞳の奥に、黒いモノを見つけてしまった。もう一度「ねッ!?」と念押しされて、反論は叶わないと悟った。

「仲直り…しました」

 言いたくない言葉を絞り出し、引き攣った笑いを浮かべると、母は安心した表情になった。

「優くんが美佳この子でいいなら別にいいのよ」
「…はははっ」

 思わず乾いた笑いが漏れた。
 母の言わんとしている事が何なのか、考えるだけで号泣できそうだ。

(娘を持つ母親として間違ってるからお母さんッ!!)

 しかし心の叫びは母には届かず、「お邪魔様~」とご機嫌で出て行ってしまった。
 隣で優がぷっと吹き出した。

「母親にあっさり売られるお前って、可哀想な奴だな」
「……あんたが言うな」

 じとっと優を見ると、彼は眉を持ち上げてお茶らけた笑みを浮かべた。

「まあそうだな。売られたのはこの体だもんな」
「ったく。どーゆーつもりよ。仲直りしたなんて嘘ついて」
「やっぱ馬鹿だな。こんな状況だからだろ。俺は女でも卒なくやってけるけど、問題はお前だよ。元に戻れた時に、俺が困らないように監視しとかなきゃならないからな」

 悪びれない優に絶句した。

(分かってたけどね。優がこーゆー奴だって。けどあんたよりはずっと大人しく慎ましやかに過ごせるわよ。バーカバーカ)

 反論する気力は失せても、心中で悪態をついて中指を立てる。
 ベッドに体を投げ出すように腰かけて、優は足を組んで美佳を見上げた。

「元に戻れたあかつきには、今まで通りって事で」
「一時でもあんたと仲良くしたくない」
「表向きだけの話だろ」

 そうだ。状況を誰かに説明できない以上、唯一の味方は認めたくなくても優しかいない。優にしか話せない。

(ひっじょーに不愉快だけどさあ)

 本日何回目だかもう分からないため息をついて、元に戻れたら一泡噴かせてやる、と出来もしない事をつらつら考えて、自分を慰める美佳だった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ
恋愛
 俺は知ってしまった。 まさか今更こんな真実を知ってしまうとは。 その日は何故かリビングのテーブルの上に戸籍謄本が置いてあり、何気なく目を通して見ると⋯⋯。  養子縁組の文字が目に入った。  そして養子氏名の欄を見てみると【天城リウト】俺の名前がある。  う、嘘だろ。俺が養子⋯⋯だと⋯⋯。  そうなると姉の琴音ことコト姉と妹の柚葉ことユズとは血が繋がっていないことになる。  今までは俺と姉弟、兄妹の関係だったからベタベタしてきても一線を越えることはなかったが、もしこのことがコト姉とユズに知られてしまったら2人の俺に対する愛情が暴走するかもしれない。もしコト姉やユズみたいな美少女に迫られたら⋯⋯俺の理性が崩壊する。  親父から日頃姉妹に手を出したらわかっているよな? と殺意を持って言われていたがまさかこういうことだったのか!  この物語は主人公のリウトが姉妹に血が繋がっていないことがバレると身が持たないと悟り、何とか秘密にしようと奔走するラブコメ物語です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

処理中です...