天転星生〜異世界本の虫(ブックワーム)〜

キノ

文字の大きさ
25 / 35
第二章 王国編

第二十四話 悪魔子

しおりを挟む


 目の前で起きた光景。
 アルゴーとアルルを庇うようにして立つオシリス。

 イタイタスはニタニタと見下している。

 俺が知っているオシリスは臆病な子。
 しかし家族思いで、震えながらもきっと立ち上がっただろう。

 だが…俺が見ているのは違う。

 「よぉてめえがアルゴーのガ……」
 
 ドゴオオン!!!

 ヘラヘラと近づいてきたイタイタスの胸に一発のパンチを食らわせ、俺やジャックですは思うようなダメージを入れれなかった相手をぶっ飛ばしたのだ!

 ガララ…。
 
 「ぐ、グハッ…!?何が起こった…!?」

 既に崩れつつある城内の壁に衝突し、瓦礫の山に埋まるイタイタス。

 何が起こったか分からず、ワケがわからんという顔をしている。

 「あの子。ドワーフ四人分ぐらいの力を持ってるね。それを体格には出さずに全て内の筋肉に集中してる。」

 カーフェがジーッとオシリスを見てそう説明した。

 「四人分…?どう言うことですか…?」

 俺の疑問に答えてくれたのはベラクレス。

 「''悪魔子イーター''だよ。稀に生まれてくる子供が兄弟や親の力を奪って生まれるんだ。種族特有の能力値や身体能力が格段に上がっているから文字通り悪魔のように強くなるってことからそう言われている。」

 オシリスが…''悪魔子イーター''…。

 確かにそれならアルルの体がドワーフなのに細いのにも頷ける。

 四人分…ってことはアルルとアルゴー、お母さんさんか?
 後一人は誰なんだろう。

 「そして…そこにいる兄上も悪魔子イーターなのだよ。」

 ベラクレスが憎々しげに言う。

 「え…?」

 「ここロゴス王国は神の国家でね。過去に神が統治していたんだ。その血筋の者には代々神の力を継いで生まれる。」

 「それじゃあベラクレス様にも…?」

 すると力なく笑った。

 「いいや、僕はただの人間さ。兄上は僕の力も奪って生まれた悪魔子イーターさ。だから神の力を二人分持っているが故のあの力を誇る訳だ。単純な力ならこの世界で神を除き一番かと思っていたが…あの子、オシリスはもしかすると兄上に匹敵するかもしれないな…。」

 不思議なものを見るような目でオシリスを眺めるベラクレス。

 まさかイタイタスの強さにそんな理由ワケがあったなんてな…。

 そしてそれ以上に驚いたのはオシリスにほこまでの力があったこと。
 俺なんかよりも全然強い子だったんだな…。

 「マナ…!!あなた賢者様になんてことするんですか!?」

 タタタっと聖女様が俺の元へと走ってきた。

 「聖女様…。」

 …なんて言ったら良いんだよ。
 あなたのお父さんを今からもう一度殺そうとしています、か?

 いや、俺はほんとにアイツを倒せるのか…?
 必殺の一撃、勇者の力まで使用した魔術はいとも簡単に防がれてしまった。

 俺と奴には…魔術師としてのレベル差がありすぎる…!!

 「全く。子供一人にこのザマか。使い物にならないなイタイタス。」

 賢者がチラと倒れるイタイタスの方を見てさらりと言う。
 まるで壊れた物に対して言葉を向けるかのように無表情で冷たく、冷徹だ。

 「チッ…うるせえなクソジジイ…!あんなガキ、今すぐ殺してやらァ!!」

 ドオオン!!

 オシリスの元へ再び向かい、拳を握りしめて攻撃を仕掛ける。

 ゴオオン!!

 イタイタスのパンチは確かにオシリスに直撃した。
 しかし動かないのだ。一歩も。

 オシリスは微動だにしないどころかイタイタスの拳を掴み返す。

 「よくもアルルとお父さんを…!それにマナお兄ちゃん・・・・・まで…!!」

 涙を流しながらオシリスはイタイタスを持ち上げ地面へと叩きつける。

 オシリスの姿はまさに鬼神の如く圧巻だった。
 父、アルゴーの名に恥じぬ力。圧倒的だ。

 既に割れていた床が更にイタイタスを中心としたクレーター状のヒビが入りやがてバキバキと壊れる。
 イタイタスは地面へと倒れ込み静かとなった。気絶したんだ。

 するとオシリスもふらりとし倒れそうになる。
 そこをベラクレスがキャッチし、そっと地面へと寝かした。

 「はあ…。」

 一部始終を見ていた賢者は大きくため息をつく。

 「やはり力だけの能無しは嫌いだ。使えた物じゃないな。」

 「賢者…!!」

 再び賢者へと視線を向ける。
  
 「マナ君、あの男は?」

 ジャックがそっと質問する。

 「……敵です。イタイタス以上の…!」

 「なるほどね。連戦も悪くないじゃないか。」

 上手く説明が出来なかったが分かってくれたようだ。

 「わーい!また戦えるにゃ!」

 「気をつけてねベル。普通そうじゃないよこの人。」

 二人も力をかしてくれる。

 「マナ…?やめてください…!なぜ賢者様と戦おうとするのですか!?あの人は敵じゃありません!やめて下さい!!」

 聖女様は俺を必死に止めてこようとする。
 とても…苦しそうな顔で…。

 「すみません聖女様…。」

 本を開き、眠らせる魔法''ヒュプノス''をかける。

 「な…んで………」

 バタッ。

 聖女様は俺の腕の中で眠りに落ちた。
 目元に涙を浮かべながら…。

 「絶対に…あなたを守ります…!」

 オシリスとアルルを寝かしている隣へそっと置き、俺は賢者の元へと向かう。

 「聖女様に…手を出すな…!」

 かなりの声量が出た。
 俺の激しい叫び声に賢者はつまらなさそうに答えた。

 「ステラーの''太古の魔術ミレニアムマジック''は必要だ。手は出さん。彼女の持つ''神の采配アワーツリー''こそが全てを超越するのだ。悪いが家族の問題に顔を突っ込まないでくれ。そして…。」

 賢者は俺の持つ本をまじまじと見つめる。

 「私の…''神の書物アンドロメダ''を返してもらうぞ。子供よ。」

 その言葉からは限りなく広がる邪悪の波動を感じられ、体に寒気が走る。

 「みんな…力をかしてくれますか…?」

 震えながらも声をかける。

 「もちろんさ。おもしろそうだしね。」

 「同意。」

 「やるにゃあ!」

 全員が快く答えてくれたことで勇気が湧く。

 スウー…。

 もう一度勇者の力を呼び起こし、体に力を纏う。

 「…手を煩わせおって。さっさと''神の書物アンドロメダ''を返してもらうぞ。」

 賢者の一言が合図となり、戦いが始まる。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...