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第一部
1話 あおいとりん
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『この世界』の男女の価値観(貞操観念など)は逆転している。
理由は特にない。
もしかすると『この世界』のアダムとイブが不慮の事故でお互いの頭をぶつけたときに身体が入れ替わったのかも知れない。
そしてその状態が何故か子孫に受け継がれていったのかも知れない。
※※※
「あおい、おはよっ」
後ろから突然抱きつかれ私はビクッとする。
振り返ると……
「ああ、りん。おはよ……」
「今日も可愛いなあ、あおい」
りんはニコニコしながら私と腕を組もうとしてくる。
私はそれを避けようと慌てて歩調を早める。
「遅れるし。急ご」
「あ、ちょっと」
りんは私にすぐ追いつくと、やはり腕に触れてきた。
私はあきらめてハッキリと言葉にする。
「いつも言ってんだろ。
ベタベタすんなって」
りんは肩をすくめる。
「なんでっ。
ただのスキンシップじゃん?
何で嫌がるわけ?」
それは……!
私はりんを見た。
りん……
顔が熱くなるのを感じた。
もし実際目に見えて顔が赤くなっていたらどうしよう。
りんに見られるわけにはいかない。
私はりんから顔を背けて早足になった。
「冷たいなあ、あおいは」
りんの声が追いかけてくる。
隣りに並んだりんを横目で見つつ、
「変な誤解されたら、りんだって困るだろ」
「変な誤解なんかする人いないよ。
普通だし」
「そーかなあ」
「あおいって変。
そりゃ女同士がベタベタしていたら『あ、そっちなんだ』って思うかもしれないけどさ」
りんは不満げに、
「男同士がイチャイチャするのは普通だし」
私はりんをチラリと見た。
そのかっこいい顔を――今はふくれっ面をしている――。
普通、か。
確かに男子同士がイチャイチャしているのをよく見かける。
それを本気でそう言う仲――『そっち』――だと思う人はほとんどいないだろう。
りんと私がイチャイチャしていても誰も気にしない。
でも。
私が気にするの!
りんと腕組んだりなんか、できるわけない!
好きな男子と友達として腕組みなんてできない!
「どうかした? あおい」
りんが歩調が遅くなった私を振り返る。
さらさらの髪が風に揺れている。
さわやかでかっこいい、りん。
私は彼のことが好き。
でも好きだなんて一生言えない。
「行こ」
とりんは微笑む……
りんを追いかける際、すれ違う車の黒ガラスに私の姿が映った。
一瞬足を止め、ぼんやりと見てしまう。
ガラスに映る、ごく普通の男子高校生。
それが私。
「はやく、あおい!
行こう」
りんのもとへ小走りしながら。
脳内で車のガラスに映った自分の姿を反復し、安心と失望をする。
安心……私は普通に男子高校生に見える。
失望……私は普通に男子高校生に見える。
私がりんの隣りに並ぶと、りんは私と腕を組もうとやっぱり手を伸ばしてくる。
私は腕を振り払い拒絶を示す。
「酷いなあ、あおい」
「くすぐったいから! 苦手なんだよ!」
りんは渋い顔をして肩をすくめる。
不機嫌に振る舞いつつ心の中では正直に思っていた。
本当は違うんだよ、りん。
本当は私だってりんと腕を組みたい。
と言うか、それ以上のことだってしたい。
今すぐにでも。
でも、ダメ!
だって!
私……
私、本当は女だから!
女だから……そんなの無理だよ。
男子に触られるなんて無理!
気持ちが抑えられなくなる。
もっともっとって思ってしまうかも知れない。
でも、そんなことりんに説明できない。
私が女なのに男子として生活していること。
それは私の秘密だから。
理由は特にない。
もしかすると『この世界』のアダムとイブが不慮の事故でお互いの頭をぶつけたときに身体が入れ替わったのかも知れない。
そしてその状態が何故か子孫に受け継がれていったのかも知れない。
※※※
「あおい、おはよっ」
後ろから突然抱きつかれ私はビクッとする。
振り返ると……
「ああ、りん。おはよ……」
「今日も可愛いなあ、あおい」
りんはニコニコしながら私と腕を組もうとしてくる。
私はそれを避けようと慌てて歩調を早める。
「遅れるし。急ご」
「あ、ちょっと」
りんは私にすぐ追いつくと、やはり腕に触れてきた。
私はあきらめてハッキリと言葉にする。
「いつも言ってんだろ。
ベタベタすんなって」
りんは肩をすくめる。
「なんでっ。
ただのスキンシップじゃん?
何で嫌がるわけ?」
それは……!
私はりんを見た。
りん……
顔が熱くなるのを感じた。
もし実際目に見えて顔が赤くなっていたらどうしよう。
りんに見られるわけにはいかない。
私はりんから顔を背けて早足になった。
「冷たいなあ、あおいは」
りんの声が追いかけてくる。
隣りに並んだりんを横目で見つつ、
「変な誤解されたら、りんだって困るだろ」
「変な誤解なんかする人いないよ。
普通だし」
「そーかなあ」
「あおいって変。
そりゃ女同士がベタベタしていたら『あ、そっちなんだ』って思うかもしれないけどさ」
りんは不満げに、
「男同士がイチャイチャするのは普通だし」
私はりんをチラリと見た。
そのかっこいい顔を――今はふくれっ面をしている――。
普通、か。
確かに男子同士がイチャイチャしているのをよく見かける。
それを本気でそう言う仲――『そっち』――だと思う人はほとんどいないだろう。
りんと私がイチャイチャしていても誰も気にしない。
でも。
私が気にするの!
りんと腕組んだりなんか、できるわけない!
好きな男子と友達として腕組みなんてできない!
「どうかした? あおい」
りんが歩調が遅くなった私を振り返る。
さらさらの髪が風に揺れている。
さわやかでかっこいい、りん。
私は彼のことが好き。
でも好きだなんて一生言えない。
「行こ」
とりんは微笑む……
りんを追いかける際、すれ違う車の黒ガラスに私の姿が映った。
一瞬足を止め、ぼんやりと見てしまう。
ガラスに映る、ごく普通の男子高校生。
それが私。
「はやく、あおい!
行こう」
りんのもとへ小走りしながら。
脳内で車のガラスに映った自分の姿を反復し、安心と失望をする。
安心……私は普通に男子高校生に見える。
失望……私は普通に男子高校生に見える。
私がりんの隣りに並ぶと、りんは私と腕を組もうとやっぱり手を伸ばしてくる。
私は腕を振り払い拒絶を示す。
「酷いなあ、あおい」
「くすぐったいから! 苦手なんだよ!」
りんは渋い顔をして肩をすくめる。
不機嫌に振る舞いつつ心の中では正直に思っていた。
本当は違うんだよ、りん。
本当は私だってりんと腕を組みたい。
と言うか、それ以上のことだってしたい。
今すぐにでも。
でも、ダメ!
だって!
私……
私、本当は女だから!
女だから……そんなの無理だよ。
男子に触られるなんて無理!
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もっともっとって思ってしまうかも知れない。
でも、そんなことりんに説明できない。
私が女なのに男子として生活していること。
それは私の秘密だから。
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