あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

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第一部

4話 あおいとサキ

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 4人で楽しく(?)話していると、
 
「ね、あおいくん」

 と名前を呼ばれたので私は顔を上げた。
 そこには田中サキがいた。

「田中さん?」

 と答える私の、周りにいる3人の男子に緊張が走るのが感じ取れた。
 3人の男子――りん、ケイ、ハヤト――が固まるのもわかる。
 田中サキは、クラスでも、いや学年の中でも、上位クラスの美少女なのだ。

「このプリント、コピーするよう先生に頼まれているんだけど、手伝ってくれない?」

 とサキは言った。

「うん。いいけどさ」

 私は立ち上がったけど、本当は面倒くさい。
 何で私? と思っている。
 田中サキは何故か私にたびたびちょっかいをかけてくる。

 私は3人の羨望のまなざしを背中に感じながら、サキの後についていった。

「ねえ、あおいくん」

「何、田中さん」

 コピー機のある方向へ歩いている中、サキが話し掛けてきたので、私はほとんど反射だけで答えた。
 するとサキは少しむくれた調子で言った、

「名字じゃなくて、名前で呼んで、って言ったじゃない」

「サキ……ちゃん」

「呼び捨てでいいよ」

「サキ」

 仕方なく呼び捨てにしてサキを見ると、彼女はにこっと微笑んだ。
 さすが美少女、笑顔も美しい。

「さっきさあ、私、あおいくんたちの話していること、少し聞いちゃった」

「え。
ああ、GLの話?
嫌だよなあ。
おれあんまり好きじゃないんだよ」

 聞かれたものはしょうがない、と私は正直に言った。

「GLの話?」

 とサキは首をかしげた。
 しまった! その話じゃなかったのか。
 聞いていなかったのなら、私は余計なことを言ってしまった。
 うまくごまかさねば、3人の学校生活に支障をきたす可能性が!

「いや……えーと。
じゃ、何の話?」

 全然ごまかせてないが、話題は変えた!

「あおいくん。
BLが好き、ってさっき話していたでしょ」

 とサキは何気ない調子で言った。
 うわ!
 3人のGL趣味がバレたと心配している場合じゃなかった!

「ああ……ははは」

 私はとりあえず、時間稼ぎにごまかし笑いをした。

「あおいくん、BLが好きって……。
もしかして、そっち、じゃないよね?」

「そっち?」

 私はひきつった笑みのまま、オウム返しをした。
 頭が『BL趣味ばれた、まずい』しか働かないので、サキの使う代名詞の意味するところを推測する余裕がない。

「あおいくんって、もしかして男子が好きだったりする?」

 『男子が好きだったりする?』
 この言葉の意味はわかったわ!

「ええ!?
何、言ってんだよ!
おれ男だぜ!」

 と言ってから、また余計なことを言ってしまった、と思った。
 『おれ男だぜ!』なんて、男がわざわざ言う?
 もしかして、まずくない?

 しかし、

「うん! やっぱりそうだよね!」

 とサキは何故か嬉しそうに言った。

 どうやら、サキは『おれは男だから女を好きになるだろ、普通』みたいな意味で、私の『おれ男だぜ!』発言を解釈してくれたようだ。
 ま、そうなるよね。
 実際は『おれ、男子が好きだけど、「実は女」とかじゃないから! おれ男だから!』と言う感じの意味だったんだけど……。

「男子にも、BL好きっているもんね。
薔薇男子ばらだんし
BLが好きだからって、あおいくんが男子が好きだなんて、飛躍し過ぎだよね」

 とサキは言った、

「よかった」

「え……」

 『よかった』ってどういうこと?
 
 サキはにっこり笑った、

「私もね、実はGL好きなんだ。女だけど。
腐女子ってやつなの」

(※この世界の腐女子はGL好きの女子のことである)

「そ、そうなんだ……」

「私、可愛い子好きなの」

 とサキは言った。

「そっか。
GL好きなら、あいつらと話合うかもな!」

「あいつらって?」

「りん。ケイ。ハヤト」

 あ。結局3人の密やかな趣味をサキにばらしてしまった。
 ごめん。
 私って本当、つい考えなしでその場凌ぎな感じでしゃべっているフシがある。
 反省して直さねば。

 まずいこと言っちゃったな、とサキを見ると、サキは真顔になっていた。
 うわ。りん、ケイ、ハヤト、引かれてる! ごめん!

 しかし、私の視線に気づくとサキは再び笑顔を向けてくれた、

「そっか。
じゃあ、話しかけてみようかな」

 今度は私から笑みが消える番だった。
 困る!
 サキがりんに近づくのは困るよ!
 りんとサキ。
 美女美男でめちゃくちゃお似合いじゃないの!
 いやーー!

 まさか、サキの狙いはこれ!?
 イケメンりんを狙うため、小物の地味男子(実際は女子)の私にちょっかいを出しているんじゃないの!?

 私は隣を歩くサキのきれいな横顔をちらりと横目で見ながら、どうしたもんかと考えていた。
 どうにもならないけど。
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