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第一部
8話 『美少女ニルヴァーナ』
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「りん、他にもGL本ないか?」
とハヤトがわくわくした調子で聞く。
りんは笑顔で言った、
「兄貴の部屋にならあるけど。
とってくるか?
それとも兄貴の部屋、一緒に行く?」
「え?
そりゃ、まずいだろ?
勝手に部屋入ると怒られるだろ?」
とケイが聞くと、りんはニヤリとした、
「にーちゃん、よその県の大学行ってて、今下宿中だし、家にいないし。
勝手に入ってもわからねーよ」
「えー?
でもなんか……。
悪いなあ……」
と言いながら、立ち上がるケイとハヤト。
「あ、おれはいいや」
と私は言った。
りんは首をかしげた、
「あおい。
GL苦手なのに付き合わせちゃって悪かったかな……?」
少し申し訳なさそうにするりん。
私は慌てて首と手を振った、
「いや! そんなことないって。
何て言うか……興味深かったし! 初めて見たからさあ」
私はりんの部屋の本棚を指さした、
「でもおれは、こっちの方が興味あるかな? 少年漫画。
読んでもいいか?」
「ああ。
読みたいのあったら言って。貸すし」
「うん。
あ、おれのことは気にせず、ごゆっくり……」
りんは、笑顔のケイとハヤトを引き連れて部屋を出て行った。
私はため息をついてから、りんの本棚を見る。
少年漫画か……。
私、少年漫画ってあんまり読まないんだよね。弟がいるわりに。
GL本読むよりいいかな、と思って興味あるフリをしたものの……。
……と思いながら、私はりんの本棚の漫画のタイトルを流し読みしていく。
「あ。これ知っている」
たしか半年ほど前、人気美少年アイドル主演でドラマ化したやつの原作だ。
『美少女ニルヴァーナ』
主人公は、とある事情で、男子高校生なのに女子生徒として高校へ通うことになった。
『実は男子』と言うことを隠しながら……!
「『あるある~』と思いながら、ドラマ見ていたなあ……」
私は『実は女』、この漫画の主人公は『実は男』。
だから逆って言ったら逆なのだが……。
それでも似た状況に置かれているな、と思い、私はこのドラマを毎週楽しみにしていたのだ。
弟のタケルにドン引きされながらも!
私は『美少女ニルヴァーナ』の1巻を手に取った。
※※※
主人公歩は、一人教室にいる。
(歩は『実は男』なのだが、理由があり女子として高校に通っている)
「早く誰も来ないうちに着替えないと」
歩はイソイソと制服のシャツを脱ぎだした。
実は誤って花瓶を落とし、そのときに中身の水が制服にかかってしまったのだ!
上半身が水でぐっしょりしていた。
「濡れた服で帰るより、体操着の方がいいし」
歩はシャツを脱いだ後、キャミソールとブラジャー(パット入り)のこともしばらく考えた。
キャミもブラも水でぐっしょり濡れていた。
もう家に帰るだけだし、なくてもいいかな。
歩はキャミを脱ぎ、ブラも脱いだ。
すると歩の当然ペッタンコの胸が現れた。
「はやく体操着を着ないと。
こんなところ誰かに見られたら……」
ガラッ。
教室の扉が開く音がした。
「はあ~。疲れたー」
とひとりごとを言いながら現れたのは、歩の一番の友達、和香だった。
歩は平たい胸を空にさらしながら、固まってしまう。
「あ、歩。お疲れ~」
と和香は言いながら教室の自分の席へ歩いて行こうとして、ピタリと止まる。
そして歩を再び見る。(二度見)
「えっ……」
和香の目に映るのは、歩の広い平らな胸――ふくらみのない胸。
和香は固まりながら思う――歩……胸が小さいの?
いや、そんなことない、歩の胸はちゃんとふくらみがあった。服の上からでもわかるくらい。
でも今私の目の前の歩は平らな胸をさらしている。
まるで男の子のような胸。
和香は固まりながら、歩の胸をガン見した。
そのとき!
「うわああああ!」
と言いながら歩は胸を隠し、その場にへたり込んだ。
ハッ! 和香は息をのみ、慌てて目をそらす。
目をそらすだけではなく歩に背を向けながら。
和香は悟った。
歩の反応。
これは、男子の反応だ!
男の子が恥ずかしがっている反応だ!
もし歩が女子だったら、
「私、胸小さいでしょ~」
と言ってさりげなく隠すことはあっても、こんなにビックリして大げさに隠したりはしないはず。たぶん。
「歩……」
背を向けながら、和香は歩に話し掛けた、
「あなた、男だったの!?」
「和香……。ごめん……」
絞り出すような声で歩は謝る。
涙が頬をつたう。
「……」
和香は複雑そうな顔で床を見つめていた。
これから私はどうすればいいの?
何を言ったら良いの?
歩もまた涙を流しながら、下を向いていた。
どうしよう……和香に見られてしまった。
知られてしまった! 僕の秘密……。
ふたりはそれぞれピンチを感じながら固まっていた。
すると、そこに廊下の方から声が聞こえてきた。
「そうなんだよね~。
あのイケメン、彼女まだいないんだって~」
などと言う女子の声がだんだん教室へ近づいてくる。
まずい! と歩は思う。
もしこの教室に他の女子が入ってきたら!
和香以外にも僕が男だとバレてしまったら、もう僕は学校にはいられない。
そう思った後、歩は悲しげにため息を吐いた。
バカだよな、僕は……。
和香にバレた時点でおしまいなんだ。
和香が僕を許してくれるはずがない。
僕は和香をだましていたのだから――女の子のフリをして。
本当は男なのに。
パサァ……。
胸を隠しながら俯いていた歩の頭に何か、かぶせられた。
それはシャツだった。
歩が顔を上げると、そこにはブラジャー姿の和香がいた。
「早く!
そのシャツ着て!」
と和香が言った。
和香……!
歩は和香の気持ちをすぐに察した――もともと二人は友達で、信頼関係があったのだ。
「……うん。ありがとう」
歩は急いで和香に渡されたシャツを着た。
和香のシャツ……いいニオイがする。
これが女の子のニオイ……?
廊下から聞こえた声は二人のいる教室には入らず、遠ざかっていった。
和香は肩をすくめた――「慌てて損した」
そして自分の机のところへ行くと、カバンの中にあった体育着を着始めた。
歩は慌てて言った、
「シャツ返すよ。
私が体操着で帰るから!」
「いいよ。
洗ってから返してよ」
と和香は体操着を着終わるとさっさと教室の扉へ向かった。
和香は普段からクールな女の子だが、今はいつも以上にクールで、色々スピードが速かった。
和香やっぱり怒っているな……当たり前だけど。
歩は思った。
僕はこれからどうすればいいんだろう?
「歩、あなたちょっと甘いんじゃない?
ガードが緩いって言うか」
下を向く歩の上に、和香の冷たい声が降ってきた。
歩が顔を上げると、和香の真剣な目と目が合った、
「男のくせに、もっと色々ちゃんと気をつけた方が良いよ!
私じゃなかったら――他の女子だったら――危なかったかもよ?」
言い終わると和香はピシャリと扉を閉めた。
和香……怒っているな。
怒っているけど……優しさが伝わってきた。
「和香、ありがとう」
歩はつぶやくと、和香のシャツを着た自分を抱き締めるように腕を身体に巻き付けた。
和香のニオイに包まれている気がする。
教室の扉を閉めた和香は、しばらく歩き誰もいないところまで来ると、廊下の壁に寄りかかりながら手で顔を覆った。
「歩……男だったんだ」
私、何で歩のこと好きになったんだろう? といつも不思議だった。
バイって言うやつなのかな?
私は男性も女性もどちらも好きになるのかな? と思ったりもしたけど、その割りに歩の他の女の子には全然興味が持てなかった。
『性別を超えて歩が好き』なのかな? と結論づけ、私は密かに片思いすることにした。
だけど歩は……本当は男だったんだ!
本当の気持ちを言うとちょっと嬉しい――歩が男で。
女の子であるよりも、色々望みがあるような気がするから。
でも……。
歩は何で女のフリをしているの!?
和香はふーっと大きなため息をつくと、歩き出した。
歩が『実は男』なのに、女のふりをする理由はわからない。
でも私は彼を助けよう!
彼の側にいたいから……!
和香の顔には固い決意と、密かな喜びが浮かんでいた。
とハヤトがわくわくした調子で聞く。
りんは笑顔で言った、
「兄貴の部屋にならあるけど。
とってくるか?
それとも兄貴の部屋、一緒に行く?」
「え?
そりゃ、まずいだろ?
勝手に部屋入ると怒られるだろ?」
とケイが聞くと、りんはニヤリとした、
「にーちゃん、よその県の大学行ってて、今下宿中だし、家にいないし。
勝手に入ってもわからねーよ」
「えー?
でもなんか……。
悪いなあ……」
と言いながら、立ち上がるケイとハヤト。
「あ、おれはいいや」
と私は言った。
りんは首をかしげた、
「あおい。
GL苦手なのに付き合わせちゃって悪かったかな……?」
少し申し訳なさそうにするりん。
私は慌てて首と手を振った、
「いや! そんなことないって。
何て言うか……興味深かったし! 初めて見たからさあ」
私はりんの部屋の本棚を指さした、
「でもおれは、こっちの方が興味あるかな? 少年漫画。
読んでもいいか?」
「ああ。
読みたいのあったら言って。貸すし」
「うん。
あ、おれのことは気にせず、ごゆっくり……」
りんは、笑顔のケイとハヤトを引き連れて部屋を出て行った。
私はため息をついてから、りんの本棚を見る。
少年漫画か……。
私、少年漫画ってあんまり読まないんだよね。弟がいるわりに。
GL本読むよりいいかな、と思って興味あるフリをしたものの……。
……と思いながら、私はりんの本棚の漫画のタイトルを流し読みしていく。
「あ。これ知っている」
たしか半年ほど前、人気美少年アイドル主演でドラマ化したやつの原作だ。
『美少女ニルヴァーナ』
主人公は、とある事情で、男子高校生なのに女子生徒として高校へ通うことになった。
『実は男子』と言うことを隠しながら……!
「『あるある~』と思いながら、ドラマ見ていたなあ……」
私は『実は女』、この漫画の主人公は『実は男』。
だから逆って言ったら逆なのだが……。
それでも似た状況に置かれているな、と思い、私はこのドラマを毎週楽しみにしていたのだ。
弟のタケルにドン引きされながらも!
私は『美少女ニルヴァーナ』の1巻を手に取った。
※※※
主人公歩は、一人教室にいる。
(歩は『実は男』なのだが、理由があり女子として高校に通っている)
「早く誰も来ないうちに着替えないと」
歩はイソイソと制服のシャツを脱ぎだした。
実は誤って花瓶を落とし、そのときに中身の水が制服にかかってしまったのだ!
上半身が水でぐっしょりしていた。
「濡れた服で帰るより、体操着の方がいいし」
歩はシャツを脱いだ後、キャミソールとブラジャー(パット入り)のこともしばらく考えた。
キャミもブラも水でぐっしょり濡れていた。
もう家に帰るだけだし、なくてもいいかな。
歩はキャミを脱ぎ、ブラも脱いだ。
すると歩の当然ペッタンコの胸が現れた。
「はやく体操着を着ないと。
こんなところ誰かに見られたら……」
ガラッ。
教室の扉が開く音がした。
「はあ~。疲れたー」
とひとりごとを言いながら現れたのは、歩の一番の友達、和香だった。
歩は平たい胸を空にさらしながら、固まってしまう。
「あ、歩。お疲れ~」
と和香は言いながら教室の自分の席へ歩いて行こうとして、ピタリと止まる。
そして歩を再び見る。(二度見)
「えっ……」
和香の目に映るのは、歩の広い平らな胸――ふくらみのない胸。
和香は固まりながら思う――歩……胸が小さいの?
いや、そんなことない、歩の胸はちゃんとふくらみがあった。服の上からでもわかるくらい。
でも今私の目の前の歩は平らな胸をさらしている。
まるで男の子のような胸。
和香は固まりながら、歩の胸をガン見した。
そのとき!
「うわああああ!」
と言いながら歩は胸を隠し、その場にへたり込んだ。
ハッ! 和香は息をのみ、慌てて目をそらす。
目をそらすだけではなく歩に背を向けながら。
和香は悟った。
歩の反応。
これは、男子の反応だ!
男の子が恥ずかしがっている反応だ!
もし歩が女子だったら、
「私、胸小さいでしょ~」
と言ってさりげなく隠すことはあっても、こんなにビックリして大げさに隠したりはしないはず。たぶん。
「歩……」
背を向けながら、和香は歩に話し掛けた、
「あなた、男だったの!?」
「和香……。ごめん……」
絞り出すような声で歩は謝る。
涙が頬をつたう。
「……」
和香は複雑そうな顔で床を見つめていた。
これから私はどうすればいいの?
何を言ったら良いの?
歩もまた涙を流しながら、下を向いていた。
どうしよう……和香に見られてしまった。
知られてしまった! 僕の秘密……。
ふたりはそれぞれピンチを感じながら固まっていた。
すると、そこに廊下の方から声が聞こえてきた。
「そうなんだよね~。
あのイケメン、彼女まだいないんだって~」
などと言う女子の声がだんだん教室へ近づいてくる。
まずい! と歩は思う。
もしこの教室に他の女子が入ってきたら!
和香以外にも僕が男だとバレてしまったら、もう僕は学校にはいられない。
そう思った後、歩は悲しげにため息を吐いた。
バカだよな、僕は……。
和香にバレた時点でおしまいなんだ。
和香が僕を許してくれるはずがない。
僕は和香をだましていたのだから――女の子のフリをして。
本当は男なのに。
パサァ……。
胸を隠しながら俯いていた歩の頭に何か、かぶせられた。
それはシャツだった。
歩が顔を上げると、そこにはブラジャー姿の和香がいた。
「早く!
そのシャツ着て!」
と和香が言った。
和香……!
歩は和香の気持ちをすぐに察した――もともと二人は友達で、信頼関係があったのだ。
「……うん。ありがとう」
歩は急いで和香に渡されたシャツを着た。
和香のシャツ……いいニオイがする。
これが女の子のニオイ……?
廊下から聞こえた声は二人のいる教室には入らず、遠ざかっていった。
和香は肩をすくめた――「慌てて損した」
そして自分の机のところへ行くと、カバンの中にあった体育着を着始めた。
歩は慌てて言った、
「シャツ返すよ。
私が体操着で帰るから!」
「いいよ。
洗ってから返してよ」
と和香は体操着を着終わるとさっさと教室の扉へ向かった。
和香は普段からクールな女の子だが、今はいつも以上にクールで、色々スピードが速かった。
和香やっぱり怒っているな……当たり前だけど。
歩は思った。
僕はこれからどうすればいいんだろう?
「歩、あなたちょっと甘いんじゃない?
ガードが緩いって言うか」
下を向く歩の上に、和香の冷たい声が降ってきた。
歩が顔を上げると、和香の真剣な目と目が合った、
「男のくせに、もっと色々ちゃんと気をつけた方が良いよ!
私じゃなかったら――他の女子だったら――危なかったかもよ?」
言い終わると和香はピシャリと扉を閉めた。
和香……怒っているな。
怒っているけど……優しさが伝わってきた。
「和香、ありがとう」
歩はつぶやくと、和香のシャツを着た自分を抱き締めるように腕を身体に巻き付けた。
和香のニオイに包まれている気がする。
教室の扉を閉めた和香は、しばらく歩き誰もいないところまで来ると、廊下の壁に寄りかかりながら手で顔を覆った。
「歩……男だったんだ」
私、何で歩のこと好きになったんだろう? といつも不思議だった。
バイって言うやつなのかな?
私は男性も女性もどちらも好きになるのかな? と思ったりもしたけど、その割りに歩の他の女の子には全然興味が持てなかった。
『性別を超えて歩が好き』なのかな? と結論づけ、私は密かに片思いすることにした。
だけど歩は……本当は男だったんだ!
本当の気持ちを言うとちょっと嬉しい――歩が男で。
女の子であるよりも、色々望みがあるような気がするから。
でも……。
歩は何で女のフリをしているの!?
和香はふーっと大きなため息をつくと、歩き出した。
歩が『実は男』なのに、女のふりをする理由はわからない。
でも私は彼を助けよう!
彼の側にいたいから……!
和香の顔には固い決意と、密かな喜びが浮かんでいた。
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