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第一部
23話 あおいとキョウ
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「佐藤く~ん!」
と言う声が聞こえて、私は声のした方を向いた。
声は『転入生ブースト』により小さな人だかりができているキョウの席から聞こえて来た。
女子が『おいでおいで』と手で合図している。
私は『?』と頭にはてなマークを浮かべながら立ち上がった。
キョウの席へ向かう。
後ろを振り返ると、何故かケイ、ハヤト、りんも付いてきていた。
三人ともどうやら転入生に興味があるらしい。
「鈴木くん、この子が佐藤くんだよ。
佐藤あおいくん」
キョウは最初ほぼ無表情で私を眺めていたが、途中からパッと顔が明るくなった。
「あおいちゃん!」
とキョウは叫ぶように言うと立ち上がって、私の前に来た、
「あおいちゃん、僕のこと覚えている?」
「ん?」
と私はキョウの可愛い顔をドキドキしつつ見ながら、首をかしげた、
「いや、初対面……」
「違うよー」
とキョウは口をとがらせた、
「僕だよ、『鈴木キョウ』。
小学生の頃よく一緒に遊んだだろう?」
鈴木キョウ……。
キョウ……。
キョウ?
「キョウくん!?」
と私は叫んだ、
「キョウくんなの!?」
「そう」
とキョウは嬉しそうに笑った。
「メガネは?
メガネかけていたよね!?」
「コンタクトにした」
「いや。そっかー。
わからなかったなあ……。
そっかー。
懐かしいね~。キョウくん……」
そこでキョウはニコニコしていた顔を曇らせた、
「でもショックだなあ、あおいちゃん。
僕の名前覚えていなかったの?」
「えっ」
「僕は先生にこのクラスの名簿をもらったんだけど――早くクラスメートの名前を覚えられるように。
名簿に、あおいちゃんの名前を見つけたとき――『佐藤碧』と言う名前を見たとき――、すぐ『これはあの、あおいちゃんかもしれない!?』と思ったのにさ。
あおいちゃんは僕の名前聞いても何も思わなかったの?」
「いやぁ。だって……。
ほら。
小学生の頃って名前で呼び合っていたでしょ?
だから名字とか曖昧になっちゃっていてさぁ……。
『キョウ』もわりとある名前だし……。
ごめんね」
私は口に手を当てて眉をひそめた、
「それにさあ、まさか? と言うか。
思わないよね、普通……。
まさか、小学生時代の友達と再会するなんて……。
全然ここ地元じゃないのに」
「うん、まあ、そうだね?
僕の方は『佐藤碧』ってあまりない名前だから、すぐあおいちゃんのこと連想しちゃったけど。
言われてみればそっか」
と考え込むような顔で言った後、キョウはニコニコ顔に戻して言った、
(私は『佐藤碧ってよくある名前だと思うけどな……』と思いつつキョウを見ていた)
「でも、ほんと、転入先であおいちゃんに会えるなんて思ってなかったなあ。
嬉しいよ」
『私も嬉しい』……と笑顔で返そうとして、私はハッとした。
『私』って言う一人称を言っちゃいけないんだった。
……。
!?
いや、そんな場合じゃないんじゃない!?
『私』を使っちゃいけないとか一人称を気にしている場合じゃない。
こ、これはマズイ状況だ!(今頃!)
小学生の頃の幼なじみ、鈴木キョウ。
『小学生』――私が普通に少女時代を過ごした頃。
つまりキョウにとっては私は女の子なのだ、普通に。
男子高校生の格好をしていることを訝しげに思っているかもしれないが。
あせった私は助けを求めるように教室を見渡した。
皆、ニコニコしたり目をキラキラさせたり興味ありげな様子で私とキョウの動向を見守っていた。
『感動の幼なじみとの再会』に立ち会っていると思っているのだ――小学生時代の友達との久々の再会。
面白いリアリティーショーを見ていると思っている。
ほんとは皆が思っている以上のオモシロイ展開なのだけどね……。
『小学生時代の女友達と高校で偶然再会したけど、その女友達が男子高校生になっていた件』
な〇う小説でありそう!?
一人だけ、目を見開きハラハラした表情を浮かべている者がいた。
サキだった。
サキは私より先にこの危機的状況に気付いていたのかもしれない。
私、呑気にキョウとの再会を喜んでいたし。
私はニコニコ顔のキョウを再び見つめた。
今更『人違いじゃないか?』と言い出せるわけもない。
最悪の状況になる前に、キョウを連れ出して事情を話さなければならない。
「キョウくん、あのね……」
「あおいちゃん、あまり変わってないね」
いや、変わっているでしょ!?
男になっているでしょ!?
「えー?
そうかなあ?」
と私はしかたなく答えた。
「相変わらず可愛いね」
こんな状況でも『可愛い』と言われると心のどこかで喜んでしまう私……。
しかもキョウは私が女だと知っているのだから『女の子として可愛い』と言ってくれているのだ。
りんたちも『可愛い』と言ってくれるが、それは『男子として可愛い』と言う意味なので、女子として可愛いと言われるなんて久しぶり……。
しかし、今は男子高校生なのだから『可愛い』と言われても喜ぶところじゃない。
私は少しきつめな調子で言った、
「可愛い……って、嘘でしょ?」
キョウは不思議そうな顔をした、
「嘘じゃないよ、可愛いよ」
どうしよう。
話が転換しないぞ!
「えー。いや。嘘だよ」
私は下手くそだ――上手く話題を変えられない。
キョウは真面目な顔をした、
「ホントだよ。
可愛いよ」
クラスの皆がだんだん『何かおかしいぞ……?』と言う風に私達を見ている感じが伝わってきた。
空気が張り詰めてきている。
「えーっと、キョウくん。
普通に考えて。
可愛くないよね?」
まだ話を変えられない私……。
キョウは力強く言った、
「可愛いよ、あおいちゃんは。
自信を持って」
「自信……」
ありがとうキョウくん。
でも、
『可愛いから自信を持って』
それ、男子に言うセリフじゃないよね。
「鈴木くん。
あおい推しだねえ」
とケイが私の後ろで明るく言った。
私はケイを振り返って見た。
コミュ力高しケイさま、どうか話題を変えてくれ、と拝みたい気分。
キョウもケイに視線を移すとニッコリした、
「うん。推しって言うか。
実は僕の初恋の人なんだよ、あおいちゃんは……」
ケイの笑顔がピシッと凍り付いたのを私は間近で見ていた。
あ、あわわ……。
教室がシンと静まり返った。
しばらく静まり返った後、ヒューと口笛が聞こえてきた。
「いい! いいよ!」
と女子の一人が言った。
「キマシタワー」
と他の女子が言った。
「リアル薔薇展開……」
とまた別の女子が言った。
語尾にハートマークが付いているような言い方だった――『薔薇展開♡』
キョウは『薔薇展開』と言う言葉がよくわからないのだろう、『?』と言う表情を作った。
(※薔薇展開……百合展開の逆。BL展開)
しかし、自分の発言で教室が盛り上がっているのはわかったようで、『えへへ』と照れ笑いした、
「いや。
僕があおいちゃんを好きだったのは、昔の話なんだけどね……。
初恋は実らないってやつで、気持ちを伝えられないまま、あおいちゃんは転校していっちゃったから」
キョウは私を見つめ、ニコッと笑った、
「でも、あおいちゃん?
今でも可愛いな、と思ったのはホントだよ?」
私はどう答えればわからず、口をパクパクとだけさせた。
混乱している私の耳に女子の会話が聞こえてきた。
「どっちが受け? なんだろう?」
「身長的に佐藤くんの方なんじゃない?」
「そう言うのって身長で決まるの?」
「チビ攻めもいいんじゃない?」
チビ攻めとは……(私、女子的には平均身長より少し高いよ!)。
全然集中できない。
どうしたらいいの?
と言う声が聞こえて、私は声のした方を向いた。
声は『転入生ブースト』により小さな人だかりができているキョウの席から聞こえて来た。
女子が『おいでおいで』と手で合図している。
私は『?』と頭にはてなマークを浮かべながら立ち上がった。
キョウの席へ向かう。
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「鈴木くん、この子が佐藤くんだよ。
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「あおいちゃん!」
とキョウは叫ぶように言うと立ち上がって、私の前に来た、
「あおいちゃん、僕のこと覚えている?」
「ん?」
と私はキョウの可愛い顔をドキドキしつつ見ながら、首をかしげた、
「いや、初対面……」
「違うよー」
とキョウは口をとがらせた、
「僕だよ、『鈴木キョウ』。
小学生の頃よく一緒に遊んだだろう?」
鈴木キョウ……。
キョウ……。
キョウ?
「キョウくん!?」
と私は叫んだ、
「キョウくんなの!?」
「そう」
とキョウは嬉しそうに笑った。
「メガネは?
メガネかけていたよね!?」
「コンタクトにした」
「いや。そっかー。
わからなかったなあ……。
そっかー。
懐かしいね~。キョウくん……」
そこでキョウはニコニコしていた顔を曇らせた、
「でもショックだなあ、あおいちゃん。
僕の名前覚えていなかったの?」
「えっ」
「僕は先生にこのクラスの名簿をもらったんだけど――早くクラスメートの名前を覚えられるように。
名簿に、あおいちゃんの名前を見つけたとき――『佐藤碧』と言う名前を見たとき――、すぐ『これはあの、あおいちゃんかもしれない!?』と思ったのにさ。
あおいちゃんは僕の名前聞いても何も思わなかったの?」
「いやぁ。だって……。
ほら。
小学生の頃って名前で呼び合っていたでしょ?
だから名字とか曖昧になっちゃっていてさぁ……。
『キョウ』もわりとある名前だし……。
ごめんね」
私は口に手を当てて眉をひそめた、
「それにさあ、まさか? と言うか。
思わないよね、普通……。
まさか、小学生時代の友達と再会するなんて……。
全然ここ地元じゃないのに」
「うん、まあ、そうだね?
僕の方は『佐藤碧』ってあまりない名前だから、すぐあおいちゃんのこと連想しちゃったけど。
言われてみればそっか」
と考え込むような顔で言った後、キョウはニコニコ顔に戻して言った、
(私は『佐藤碧ってよくある名前だと思うけどな……』と思いつつキョウを見ていた)
「でも、ほんと、転入先であおいちゃんに会えるなんて思ってなかったなあ。
嬉しいよ」
『私も嬉しい』……と笑顔で返そうとして、私はハッとした。
『私』って言う一人称を言っちゃいけないんだった。
……。
!?
いや、そんな場合じゃないんじゃない!?
『私』を使っちゃいけないとか一人称を気にしている場合じゃない。
こ、これはマズイ状況だ!(今頃!)
小学生の頃の幼なじみ、鈴木キョウ。
『小学生』――私が普通に少女時代を過ごした頃。
つまりキョウにとっては私は女の子なのだ、普通に。
男子高校生の格好をしていることを訝しげに思っているかもしれないが。
あせった私は助けを求めるように教室を見渡した。
皆、ニコニコしたり目をキラキラさせたり興味ありげな様子で私とキョウの動向を見守っていた。
『感動の幼なじみとの再会』に立ち会っていると思っているのだ――小学生時代の友達との久々の再会。
面白いリアリティーショーを見ていると思っている。
ほんとは皆が思っている以上のオモシロイ展開なのだけどね……。
『小学生時代の女友達と高校で偶然再会したけど、その女友達が男子高校生になっていた件』
な〇う小説でありそう!?
一人だけ、目を見開きハラハラした表情を浮かべている者がいた。
サキだった。
サキは私より先にこの危機的状況に気付いていたのかもしれない。
私、呑気にキョウとの再会を喜んでいたし。
私はニコニコ顔のキョウを再び見つめた。
今更『人違いじゃないか?』と言い出せるわけもない。
最悪の状況になる前に、キョウを連れ出して事情を話さなければならない。
「キョウくん、あのね……」
「あおいちゃん、あまり変わってないね」
いや、変わっているでしょ!?
男になっているでしょ!?
「えー?
そうかなあ?」
と私はしかたなく答えた。
「相変わらず可愛いね」
こんな状況でも『可愛い』と言われると心のどこかで喜んでしまう私……。
しかもキョウは私が女だと知っているのだから『女の子として可愛い』と言ってくれているのだ。
りんたちも『可愛い』と言ってくれるが、それは『男子として可愛い』と言う意味なので、女子として可愛いと言われるなんて久しぶり……。
しかし、今は男子高校生なのだから『可愛い』と言われても喜ぶところじゃない。
私は少しきつめな調子で言った、
「可愛い……って、嘘でしょ?」
キョウは不思議そうな顔をした、
「嘘じゃないよ、可愛いよ」
どうしよう。
話が転換しないぞ!
「えー。いや。嘘だよ」
私は下手くそだ――上手く話題を変えられない。
キョウは真面目な顔をした、
「ホントだよ。
可愛いよ」
クラスの皆がだんだん『何かおかしいぞ……?』と言う風に私達を見ている感じが伝わってきた。
空気が張り詰めてきている。
「えーっと、キョウくん。
普通に考えて。
可愛くないよね?」
まだ話を変えられない私……。
キョウは力強く言った、
「可愛いよ、あおいちゃんは。
自信を持って」
「自信……」
ありがとうキョウくん。
でも、
『可愛いから自信を持って』
それ、男子に言うセリフじゃないよね。
「鈴木くん。
あおい推しだねえ」
とケイが私の後ろで明るく言った。
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あ、あわわ……。
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「いい! いいよ!」
と女子の一人が言った。
「キマシタワー」
と他の女子が言った。
「リアル薔薇展開……」
とまた別の女子が言った。
語尾にハートマークが付いているような言い方だった――『薔薇展開♡』
キョウは『薔薇展開』と言う言葉がよくわからないのだろう、『?』と言う表情を作った。
(※薔薇展開……百合展開の逆。BL展開)
しかし、自分の発言で教室が盛り上がっているのはわかったようで、『えへへ』と照れ笑いした、
「いや。
僕があおいちゃんを好きだったのは、昔の話なんだけどね……。
初恋は実らないってやつで、気持ちを伝えられないまま、あおいちゃんは転校していっちゃったから」
キョウは私を見つめ、ニコッと笑った、
「でも、あおいちゃん?
今でも可愛いな、と思ったのはホントだよ?」
私はどう答えればわからず、口をパクパクとだけさせた。
混乱している私の耳に女子の会話が聞こえてきた。
「どっちが受け? なんだろう?」
「身長的に佐藤くんの方なんじゃない?」
「そう言うのって身長で決まるの?」
「チビ攻めもいいんじゃない?」
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