あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

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第一部

15話 サキの告白

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「私、男の子ってあんまり好きになったことないの」

 としんみりと言うサキに私は励ますように笑いかけた、

「まあ、人それぞれだよね。
初恋って、早い人もいれば遅い人もいるだろ?」

 そう言うと、サキはちらりと私を見て暗い表情で言った、

「初恋はあった。
相手は女の子だったけど」

「あっ……。
そうなんだ……」

 としか言えない私。

「でもね、やっぱり、だんだん思うよね?
周りの女の子が男子の話ばかりしていると。
『そんなに男子ってイイのかな?』
『と言うか男子に興味ないのって変だよね』
それでね、中学の時は男子に告られたら、少しでも好感が持てる子だと感じたら付き合ってみることにしたの。
そうしていくうちに誰かを――男子を――好きになることもあるかもしれないと思って。
でも、私が全然煮え切らないから――全然『次』のステップへ行かないから――すぐにフラれちゃうんだけどね。
『何か思っていたのと違う』とか言われて」

 確かにサキは付き合う前から何かとハードルをあげられそう。
 その点は人生イージーモードに見える美人のハードな一面なのかもしれない。

「でもね、告られた中に一人だけちょっと気になる子がいたのね。
可愛い感じの子だったんだけど。
その子のことはちょっと好きかなと思って、一回キスの一歩手前までいったの」

 きっとケイの友達のタカの友達の、友達のことだ!

「でもね、結局ダメだった……」

「ダメ?」

 サキは身震いした、

「キスしようとしたけど、できなかった。
『生理的に無理』と思っちゃった」

「でも、可愛い子で、好きだったんだろ……?」

 サキは頷いた、

「イケルと思った。
でもダメだった。
私、自信なくした……。
それであきらめて、それからは男子と付き合うのやめたんだ」

 そこでサキは私をジッと見た、

「でも、あおいくんが現れた」

「えっ」

「今、私、あおいくんとキスしようとしたでしょ?
実は、また『生理的に無理』と思うかどうか確かめてみたの」

 サキはもう一度私に軽く頭を下げた――「ほんと、ごめんね」

 そして顔を上げると潤んだ瞳で私を見つめてくる、

「私、あおいくんのことは『無理』だと思わなかった。
男の子で初めて」
 
 ふとサキの緊張が繫いだ手から伝わってくる気がした、
 
「あおいくん。
私……。
あおいくんのことが……」

 サキは私の手をぎゅっとした。
 私はその手を少しだけ握り返すと言った、

「ごめん……。
おれはサキのこと、そう言うんじゃなくて……。
友達として好きと言うか」

 と私はやっと言った。

 サキはしばらく俯いたが、

「ねえ、あおいくん」

 と顔を上げると明るい表情で言った、

「海外ではね、『愛の告白』ってあんまりしないらしいよ?」

「えっ」

 突然の話題変更に戸惑う私に構わず、サキは続ける、

「海外ではね、『あなたが好きです』とか、わざわざ言ったりしないんだって」

 サキの潤んだ目は、口元の微笑とどこかチグハグだった。

「何かね、相手も自分のこと好きかな? と思ったら、ちょっとずつ距離を縮めていって、ちょっとずつ進展していく感じなのかな?
初めは手をつなぐところから……それが終わったら軽いハグ……次は……。
初めはそうやって、だんだん恋人らしくなっていくの」

 サキは本題に入った、

「あおいくん。
私、これから何度も手をつなごうとするね!」

「え……」

「だから……あおいくん。
もし私のことこれから好きになってくれたら――少しでも好きになったら――握り返して欲しいの。
私、そうしたら、次のステップにうつるから」

 サキは私から目をそらした、

「あはは……。
女らしくないよね?
でも何度も告白されるのも重いかなあと思って……。
でも私あおいくんのことずっと好きでいると思うから、やっぱりあおいくんの気持ちを確認したいし。
これからをまだあきらめきれないし」
 
 サキは私の目を再び見据えた、

「だって、あおいくんは私が唯一好きになった『男の子』だもの」

 涙目で笑顔を作るサキはただただ綺麗だった。

「だから。
たぶんもう告白はしないけど、
あおいくんが私の手を握り返してくれる日を夢見て何度もチャレンジして……」

 どうしよう。

 私は美しいサキをポカンと見ることしかできなかった。

 『待つ』。
 そんなことを言われても……。
 待たれても、ダメなんだ。
 私は……。

「ごめん」

 と私は謝った、

「その……多分……」

「あおいくん。
先のことはわからないと思わない?
今は違うかもしれない。
私のこと全然好きじゃないかもしれない。
でも、これから未来のことは……」

 いや。
 わかるんだ。
 私にはわかる。
 これから先も私はサキを好きになることはない。
 それにサキも。
 私が女だと知ったら……。

「おれ……」

 私は決心した。
 一瞬、テレビに映る私のモザイクのかかった顔が思い浮かんだけど。
 ネットのあちこちで、特定された私の顔写真が貼られるのを想像したけれど。
 『「女の息子」って言うから期待していたのに、全然かっこよくないw』
 とか匿名掲示板に書き込まれるのを思い浮かべたけれど。

「私……」

 サキは『私』と聞いたところで、眉をひそめた。
 私は一気に言ってしまおうと思った――余計なことを考える前に一気に。

「私、女なの!
だからサキとはずっと無理なの!」

 全然、文字量としては多くないのに、言ったあとハアハアしてしまった。
 しばらく顔を俯いてしまった――サキの顔がまともに見られない。
 しかしずっとこうしているわけにもいかない。
 私は決心の鈍らないうちにガバッと顔を上げて、サキを見た。
 サキは固まっていた。
 私と目が合うと、半笑いで言った、

「女って……?
あの……『心が女』ってこと?
『おねえ』?」

「いや。違うの!
身体が女……」

「と言うことは!」

 とサキは私の手を両手で包み込んだ、

「身体は女で、心は男なの!?
で、女の子が好き!?」

「いや。
それでもない……」

「どう言うこと?」

 サキは私の手を握りながら、首を傾けた。
 私はおそるおそる言った、

「身体は女。
心も女。
好きな対象は男」

 サキは私の手を離した、

「そう……」

 目に見えてガクリと肩を落とすサキを私は眉を下げて見ることしかできなかった、

「ごめんね……。 
ほんとごめんね」

「信じられない」

 とサキは顔を上げた。
 真っ赤な顔をしている、

「お願い!
証拠見せて」

「えっ」

 証拠見せるって……。
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