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第一部
20話 加藤りんと佐藤あおい
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私はりんとの待ち合わせの時間に十分な余裕があることをスマホでときどき確認しつつ、駅に向かっていた。
昔――と言っても今は10月だから半年前か――のことを思い出しながら。
※※※
私の転入初日は高校二年生前期の一日目だった。
クラス替えと同じタイミングなので、『転入生挨拶』みたいなイベントはなくホッとした。
その反面、私は少し友達作りに不利だった。『転入生ブースト』(?)が起こらないのだから。
それに他の子たちには『一年生の頃からの知り合い』がいるだろう。
だから新しく友達を作らなくとも既に友達がクラスにいる可能性がある。
しかし転入生の私には誰一人知り合いがいないのだ。
その上……。
私は女だ。
しかし見た目は男。
つまり『男の友達』を作らなければならないだろう。
男友達なんて、小学生以来いたことないんだけど……。
転入一日目の午前中は始業式などでアッサリと過ぎていった。
前いた高校では始業式後クラスに戻ったときに自己紹介などをした覚えがあるが、それもなかった。
2年生でそれぞれ知り合いも既にいるからだろうか?
私は知り合いが一人もできないまま、お弁当の時間を迎えてしまった。
お弁当……。
女子はわりと一人で自分の机で食べる子もいるんだけど、男子は皆友達と一緒に食べるんだよね、と私は教室をキョロキョロ見渡した。
私は本当は女子だから別に一人でお弁当を食べてもいいと思っているんだけど、見た目は男子だから周りから変な子と思われるだろうか?
でも誰に話しかければ良いんだろう?
私、男子で仲良い子とか小学生のとき以来いないし、男子のことが全然わからない。
弟がいても、同学年の男子のことはよくわからない。
男子って色々ルールみたいなのがあるイメージ。複雑で女子には難しかったりする。
適当に声かけて良いのだろうか?
嫌がられないかなあ。
お弁当箱を机に置いたまま、挙動不審に思われないだろう範囲内で皆の様子を盗み見た。
どのグループに『お弁当、一緒に食べてもいい?』って言えば良いんだろう?
いや、もう一人で食べてしまおうか?
1日目だけだ。そのうち誰かと仲が良くなることもあるだろう。そうしたら、一緒のグループに入れてもらえばいいのだ。
と言うわけでお弁当の包みをほどこうと、リボンになった部分に手をかけていると……。
トントン。
肩を叩かれた。
叩かれた方に顔を向けると、
「一緒にお弁当食べない?」
と、どこか遠慮がちな微笑みを浮かべる男の子が目に入った。
それがりんだった。
※※※
今思い出してもニヤけてしまう。
ほんと、りんはさわやかだった……まさに思い描く理想の男子って感じ。
少女漫画の中の男子。
一目惚れ、と言うと語弊があると私は思っている。
でも『第一印象惚れ』かな。
容姿だけを好きになったわけじゃない。
容姿 + 容姿を鼻にかけない優しそうなおっとりしたような感じ。
そう言うところに惹かれたのだ。
もしりんの容姿でイヤな性格だったら、別に好きにはならなかったと思う。
私がテレながらお弁当を食べるために机をくっつけると、ハヤトとケイがお弁当を持ってやってきた。
「一緒に食べようぜ、りん」
とハヤトがりんに言った。
後で聞いた話だがハヤトとりんは一年の時からの知り合いだったそうだ。
確かにりんとハヤトは少しおっとりしているところが似ているから、友達同士になりやすそうなタイプに見える。
「こいつケイ」
とハヤトがりんと私にケイを親指で示しながら紹介した、
「よろしくー」
ケイはちょっとしっかり者そうで、りんとハヤトとは系統(?)が違うように見えた。
しかしハヤトと仲良く話していた。どうやら気が合うらしい。
「おれ、このクラス、ホント知らない奴ばっかであせった」
とケイが言うので、ハヤトとケイはこの日の午前中のうちに仲が良くなったらしいことがわかった。
あせったとか言うわりに普通に友達作れているじゃないか、コミュ力あるよなこのヤローと思ったものだ。
「佐藤くんって一年の時何組だったの?」
「あ。ボク、転入生なんだ」
と私は答えた。
この頃はまだ一人称があやふやだった。
『おれ』か『ボク』かどちらがいいか迷っていた。
結局ケイ、ハヤト、りんの様子を見て『おれ』に決定したが……。
「そうなんだ!
転入生か。
知り合いいないおれよりハードル高いな?」
とケイは笑った、
「実は2年とか3年とかのクラス替えの方が、友達作りのハードル高かったりするよな。
もうある程度友達関係できていたりするし……」
「佐藤……何君? 名前?」
とハヤトが親しげに聞いてきた。
「あおい」
と私も親しげに見えるよう笑顔を返しながら答えた。
男子と話すのは少し緊張していたが。
「あおい。
可愛い名前だなあ」
とハヤトが笑った、
「女子の名前でもいけるよな」
私はあせりながら言った、
「そ、そうかなあ?
でも性別不詳系の名前って、結構あるよね!?」
「りんもそうだよなあ」
とハヤトはりんをニヤニヤと見た。
「ん。まあねー。
昔からよく言われたよ、
『えっ。「りん」って言うから女の子だと思った』って。
漢字で書くと『車輪』の『輪』だから、わりと男っぽいんだけど……」
「佐藤くんのあおいってどんな漢字?」
「みどり……って書くんだけど」
私はスマホで『碧』と打ち込んだ。
「『碧』か。
可愛ー!」
「いいね!」
その後ケイは『慶』、ハヤトは『颯人』など名前のことで一通り盛り上がった。
その後私達はお互い名前――ファーストネーム――で呼び合うようになったのだ。
それぞれの第一印象は……
《りん》
さわやか男子。
イケメンなのにそれを鼻にかけない。
おっとりしている。穏やか。
《ケイ》
しっかり者。
面倒見が良さそう。
お兄ちゃんタイプ。
《ハヤト》
おっとりしている。穏やか。りんよりも輪をかけて。
弟タイプ。
この第一印象は未だに覆っていない。
私は意外と人を見る目があるのかもしれない。
昔――と言っても今は10月だから半年前か――のことを思い出しながら。
※※※
私の転入初日は高校二年生前期の一日目だった。
クラス替えと同じタイミングなので、『転入生挨拶』みたいなイベントはなくホッとした。
その反面、私は少し友達作りに不利だった。『転入生ブースト』(?)が起こらないのだから。
それに他の子たちには『一年生の頃からの知り合い』がいるだろう。
だから新しく友達を作らなくとも既に友達がクラスにいる可能性がある。
しかし転入生の私には誰一人知り合いがいないのだ。
その上……。
私は女だ。
しかし見た目は男。
つまり『男の友達』を作らなければならないだろう。
男友達なんて、小学生以来いたことないんだけど……。
転入一日目の午前中は始業式などでアッサリと過ぎていった。
前いた高校では始業式後クラスに戻ったときに自己紹介などをした覚えがあるが、それもなかった。
2年生でそれぞれ知り合いも既にいるからだろうか?
私は知り合いが一人もできないまま、お弁当の時間を迎えてしまった。
お弁当……。
女子はわりと一人で自分の机で食べる子もいるんだけど、男子は皆友達と一緒に食べるんだよね、と私は教室をキョロキョロ見渡した。
私は本当は女子だから別に一人でお弁当を食べてもいいと思っているんだけど、見た目は男子だから周りから変な子と思われるだろうか?
でも誰に話しかければ良いんだろう?
私、男子で仲良い子とか小学生のとき以来いないし、男子のことが全然わからない。
弟がいても、同学年の男子のことはよくわからない。
男子って色々ルールみたいなのがあるイメージ。複雑で女子には難しかったりする。
適当に声かけて良いのだろうか?
嫌がられないかなあ。
お弁当箱を机に置いたまま、挙動不審に思われないだろう範囲内で皆の様子を盗み見た。
どのグループに『お弁当、一緒に食べてもいい?』って言えば良いんだろう?
いや、もう一人で食べてしまおうか?
1日目だけだ。そのうち誰かと仲が良くなることもあるだろう。そうしたら、一緒のグループに入れてもらえばいいのだ。
と言うわけでお弁当の包みをほどこうと、リボンになった部分に手をかけていると……。
トントン。
肩を叩かれた。
叩かれた方に顔を向けると、
「一緒にお弁当食べない?」
と、どこか遠慮がちな微笑みを浮かべる男の子が目に入った。
それがりんだった。
※※※
今思い出してもニヤけてしまう。
ほんと、りんはさわやかだった……まさに思い描く理想の男子って感じ。
少女漫画の中の男子。
一目惚れ、と言うと語弊があると私は思っている。
でも『第一印象惚れ』かな。
容姿だけを好きになったわけじゃない。
容姿 + 容姿を鼻にかけない優しそうなおっとりしたような感じ。
そう言うところに惹かれたのだ。
もしりんの容姿でイヤな性格だったら、別に好きにはならなかったと思う。
私がテレながらお弁当を食べるために机をくっつけると、ハヤトとケイがお弁当を持ってやってきた。
「一緒に食べようぜ、りん」
とハヤトがりんに言った。
後で聞いた話だがハヤトとりんは一年の時からの知り合いだったそうだ。
確かにりんとハヤトは少しおっとりしているところが似ているから、友達同士になりやすそうなタイプに見える。
「こいつケイ」
とハヤトがりんと私にケイを親指で示しながら紹介した、
「よろしくー」
ケイはちょっとしっかり者そうで、りんとハヤトとは系統(?)が違うように見えた。
しかしハヤトと仲良く話していた。どうやら気が合うらしい。
「おれ、このクラス、ホント知らない奴ばっかであせった」
とケイが言うので、ハヤトとケイはこの日の午前中のうちに仲が良くなったらしいことがわかった。
あせったとか言うわりに普通に友達作れているじゃないか、コミュ力あるよなこのヤローと思ったものだ。
「佐藤くんって一年の時何組だったの?」
「あ。ボク、転入生なんだ」
と私は答えた。
この頃はまだ一人称があやふやだった。
『おれ』か『ボク』かどちらがいいか迷っていた。
結局ケイ、ハヤト、りんの様子を見て『おれ』に決定したが……。
「そうなんだ!
転入生か。
知り合いいないおれよりハードル高いな?」
とケイは笑った、
「実は2年とか3年とかのクラス替えの方が、友達作りのハードル高かったりするよな。
もうある程度友達関係できていたりするし……」
「佐藤……何君? 名前?」
とハヤトが親しげに聞いてきた。
「あおい」
と私も親しげに見えるよう笑顔を返しながら答えた。
男子と話すのは少し緊張していたが。
「あおい。
可愛い名前だなあ」
とハヤトが笑った、
「女子の名前でもいけるよな」
私はあせりながら言った、
「そ、そうかなあ?
でも性別不詳系の名前って、結構あるよね!?」
「りんもそうだよなあ」
とハヤトはりんをニヤニヤと見た。
「ん。まあねー。
昔からよく言われたよ、
『えっ。「りん」って言うから女の子だと思った』って。
漢字で書くと『車輪』の『輪』だから、わりと男っぽいんだけど……」
「佐藤くんのあおいってどんな漢字?」
「みどり……って書くんだけど」
私はスマホで『碧』と打ち込んだ。
「『碧』か。
可愛ー!」
「いいね!」
その後ケイは『慶』、ハヤトは『颯人』など名前のことで一通り盛り上がった。
その後私達はお互い名前――ファーストネーム――で呼び合うようになったのだ。
それぞれの第一印象は……
《りん》
さわやか男子。
イケメンなのにそれを鼻にかけない。
おっとりしている。穏やか。
《ケイ》
しっかり者。
面倒見が良さそう。
お兄ちゃんタイプ。
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おっとりしている。穏やか。りんよりも輪をかけて。
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この第一印象は未だに覆っていない。
私は意外と人を見る目があるのかもしれない。
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