男性アイドルオーディションに付き添いに来た子をスカウトしたけど、もう遅い?

ある

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1話完結

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 今日は男性アイドルオーディションの日。
 私は会場を見渡した。
 イケメンたちであふれている。
 ドキドキしてしまう。

 そんな中、ひときわ輝いているイケメンを見つけた。
 私の胸は高鳴った。

 吸い寄せられるように、その人のもとへ向かってしまう……

「あなた……」
 と声をかけてから、私は声の調子をもっとピシッとしなければ、と思った。
 少し『なよっ』としてしまったから。

 声をかけた相手は振り向いて私を見た。少し不思議そうに。

「あなた……」
 私は警戒している様子の相手に、少し微笑んでみせ、
「お名前、なんて言うの?」

「サトウです」
 とイケメンは思っていたより高い声で答えた。

「サトウさん……」
 私は持っていた書類――オーディションを受ける人の名前を書いた名簿――を広げ、『サトウ』と言う名字を探し始めた。

 すると、
「あっ」
 声がして、
「私、付き添いです」

「えっ」
 サトウを見ると、答える。
「オーディション受けに来た者の付き添いです」
 
 私は頷いた。
 別に、そう、ないことではない。
 まだ子どもと言って良いくらいの年齢の男の子がオーディションに来る。
 きょうだいの付き添い、あるいは友達の冷やかし? が一緒に来ていてもおかしくない。

「誰の付き添い?」 
 聞くと、
「サトウヨウ」
 と答えた。
 同じ名字――『サトウ』――きょうだいか。

 ありえることだ。
 きょうだいそろって、イケメン。

「ねえ」
 私は期待を込めて、言った。
「あなたも、オーディション、受けてみない?」

 すると、サトウは、目を丸くした。
 無理もない。
 あくまで『付き添い』で来たのであって、オーディションを受けるつもりなど、毛頭なかったのだろうから。

「いいじゃないですか?
割とあることですよ……」
 きょうだい、友達の『付き添い』に来てアイドルスカウト。
『アイドル』になった理由として、たまに聞くものだ――全て事実かどうかはわからないけど。

「でも」
 サトウは私の『励まし』にも顔を曇らせたままだ。

 じっと期待をこめて見つめていると、しばらく困った顔を見せた後、言った。
「この事務所って……
『男性アイドル』事務所でしょう?」

「ええ……」
 私はサトウが今更なことを言うのを不思議に思いながら、
「そうだけど」

 サトウはやはり困った顔をしている……

 私は首を傾げて聞いた。
「アイドルになるの、イヤ?」

 すると、サトウは顔を赤らめて、ちょっと怒ったような、照れたような口調で早口で、
「あの」

『ん?』と首を先程とは違う方向に傾げると、サトウは続けてやっぱり早口で、
「私、女なんですけど」

「……」
 私はサトウを見つめた。
「私、女です」
 赤い顔で私を見つめるサトウを、ぼんやりと見つめてから……

 状況がわかった。

「あっ。……え?」
 私は視線が左右に動いた――わかりやすい、目の泳ぎ方をしてしまった。ホントに泳いだから。

 思わずパチパチまばたきをしてから、サトウを失礼ながら人差し指で指しつつ言った。
「え。……女の子?」

「……そうです」
 サトウは少しムッとした顔になった。
 どうも感情が顔に出やすいタイプのようだ――人のことは言えないが。

「あ。……すみません」
 謝った。
 一般的に、性別を間違えるとは失礼なことと考えられるから。

 でも、謝りながらも、私はサトウの性別を間違えたことを、そんなに失礼だとは思わなかった。
 だって、とても『好意的』? に間違えたつもりだから。
『カッコイイ』、『ハンサム』、『ドキドキ』そう思って男性だと思って、間違えたのだから良い意味で間違えたと言えるのではないか――いや、やっぱり『女の子』に対しては失礼か……

 そのとき、後ろから声がかかった。
「社長」
 振り返ると秘書がいた。

 秘書と少しだけ話をし、再びサトウと向き直ると、サトウは緊張した面持ちでこちらを見ていた。

 そして言った。
「社長さん……ですか?」
 その先程よりしゃちほこばった様子から、サトウは今まで私が『社長』だとは全く想像していなかったようだ。
 無理もない――私はほとんど顔出ししていないから。

「ええ」
 頷くと、サトウは無意識にだろうが背筋を伸ばした。
 それからぎこちない笑顔を浮かべて、
「あの、ずいぶんお若いので……わからず……すみません」
 お世辞半分、本心半分のようなことを言った。

「よく『社長に見えない』と言われます」
 と微笑んでみせると、サトウも少し安心したように微笑み返してきた。
 どうやら、こちらが彼女を『男』と勘違いしたことはサトウの中で『おあいこ』になったようで、先程の少し不機嫌そうな様子は消えて、
「失礼しました」
 頭を下げてきて、
「うちの弟――サトウヨウのこと――よろしくお願いします」
「ええ」
 頷くと、サトウはニコッと微笑んだ。
 私はトキめいた。ドキドキ。ずっと感じている――彼女と出会ったときから。

 じっと見つめていると、サトウは不思議そうな表情になった。
「ねえ」
 私はサトウに切り出した。
「先程の話だけど……」

「え」
 サトウは再び顔を強ばらせた。
『男性』に間違われたことをやっぱりまだ少し怒っているのかも知れない。

「あなたが『女の子』だと言うことはもう、わかっているけど」
 私は慌ててそう前置きして、ちょっと改めるように『コホン』としてから言った。
「あなた、『アイドル』、にならない?
もちろん『女性アイドル』」

 すると、サトウは再び目を丸くし、私を見た。
「え……」

「あなた、とても、『すばらしい』と思う。
ハンサム」
 それから私は簡単に説明した。
『私はアイドルとして輝く人を見つけるのが上手』であること。
 そんな私がサトウを見た瞬間に、とても『ドキドキ』してトキめいたこと。
 その『ドキドキ』はサトウの『アイドル資質』を見抜いて感じたに違いないこと。

「この事務所は確かに『男性アイドル』事務所だけれど」
 私は真剣な目でサトウを見つめて言った。
「あなたのために、『女性アイドル』部門を立ち上げても良いと、思った」

 すると、サトウは困惑した顔になった。
 目を左右に動かし始める――目を泳がせている。

 ひととおりオロオロし終わると、私を訝しげに見て言った。
「あの。でも……」

 私はサトウに微笑んで、
「なあに?」

「私……」
 サトウは首を傾げ言った。
「アイドルになるには、年を取り過ぎているんじゃないかと思うんですけど」

「……」
 私はサトウを見つめて、
「……何歳?」

 サトウは『20代半ば』だと言った。

「……」 
 確かに、アイドルとは男女ともに『10代』から活動することが多いだろう。
『女性アイドル』ならばなおさらその傾向は強い……

 私が黙ってサトウを見つめていると、サトウは苦笑いして、
「あの。弟のこと、よろしくお願いします」
 もう一度頭を下げた。

 私はサトウを見ながら、思った。
『どうしよう!?』と。

 せっかくサトウに『ドキドキ』と、トキめきを感じたと言うのに。
 私の『勘』が反応したと言うのに。

 ……

『勘』……?

 私は、その時点で、やっと閃いた。

 そして、微笑みをもう一度見せて、私の前から去っていくサトウの背中を呆然と見送りつつ、思った。

 後で『彼女を食事に誘おう』と。

 私は彼女に『ひとめぼれ』したのだ。


 ――

 小さい頃から、男性アイドルに憧れていた。
 と言っても自分がなりたいわけではなく、『アイドルを見る』のが好きだった。

 まだ誰も知らないアイドルデビューしたての男の子を調べて、『この子は売れる』とか予想するのが好きだった。
 大体その予想は当たっていた。
 自分は『男性アイドルを見る目がある』と思った。

 どうやって予想するかと言うと、全体像と、声と、ちょっとした仕草を見て、『トキめき』、『ドキドキ』を感じたかどうかで判断するのだ。

 自分の『ドキドキ』、『トキめき』には狂いがなかった。
 一般人にももちろん感じることはあったが、感じた男性は総じて素敵な人だった。

 しかしその『トキめき』は常に『男性』だけに感じていた。

 だから自分は男が好きなんだ、と思っていた。
 と言っても、男性と深い仲になりたいと思ったことはないのだが……

 よくわからないまま、しかし『男性アイドル』が好きなことは確かだったので、『男性アイドル事務所』に就職した。
 そして自分の『見る目』で選んだ多くの男性アイドルを抜擢し、成功させ、社長にまで上り詰めた……

 しかし今、初めて、『女性』に『トキめき』を感じた。

 これはきっと……初めての『恋』――今頃。
 ずっと男に惹かれていて、そのわりに男と恋人になりたいとは思ったことがなかったのに。

 彼女を逃してはいけない。……なんて思った。

『私、ゲイじゃなかったんだ……』
 と、心の中でつぶやいた。

 いや、ゲイかもしれないけど。
(バイ?)





 ――終――






(後書き)
 わかりにくいかも……です
(※主人公は男性です。ちょっと女性的な風に書いたつもりです、一応……)

 お読み下さりありがとうございました。
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