俺TUEEEなあなたに、恋をしている

ある

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6話〈後編〉 コンタクト2

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 『コンタクト』――『コンタクトレンズ』――とは。
 すっごく簡単に言うと『目に入れるタイプの眼鏡』とのこと。

 ユウがカバンから『コンタクト』の実物を取り出し見せてくれた。
 とっても小さなガラス? だった。
 ユウは説明した。

「これを目に入れると。
眼鏡をかけなくても、視界が眼鏡をかけた状態のようになる。
つまり『普通に視力が良い人』と同じ見え方になるんです」

 私とアンは、ユウと『コンタクト』を交互に見た。

「ねえ、ユウ。
どうしてこんなものを持っているの?」

 と聞くと、ユウは淡々と、

「僕も、前は視力が悪くて。
だからコレを使っていたんだ」

「えっ」

 私は目を丸くした。

「でも私。
ユウがスゴく遠くを飛ぶ魔物をいち早く見つけたときのこと、まだ憶えているよ」

 コイツは目がものすごく良いと皆で感心したものだ。
 ハッと閃く。

「もしかしてそれも『コンタクト』のおかげ!?」

「違います」

 とユウは淡々と言った。

「僕、以前は視力が悪かったんだけど……。
でも、以前いた世界からこの世界に来るときに、何故か視力が良くなったんだ」

 またよくわからないことを言っている(『以前いた世界』って?)。
 コイツは『比喩』を使う――思わせぶりなことを言う――から、言っている意味がよくわからないことがあるのだ。
 普段のユウを知らなければ『頭がおかしいのかな……?』と思うところだ。

 アンをチラリと見ると、アンは狐につままれたような顔をしていた。
 ユウのことを『大丈夫かな……』と誤解(?)しているのかもしれない。
 私は慌てて、話を進めた。

「コンタクト!
コンタクトをどうするの?
それをどうしたら、アンさんとジンさんが上手く行くの?」

「アンさん。
錬金術師ですよね。
これと同じ物、作れますか?」

 とユウは言った。
 アンはまだ訝しげだったが、『コンタクト』をそっとつまむと、じっくり見た。

「もし同じものが作れないなら。
僕の『コンタクト』を使っても良いと思うんですけど……」

 自信なげになると、

「ちゃんと定期的に消毒していますし。
僕、特に目の病気には罹っていなかったと思いますし」

「たぶん……」

 と言って私たちを見つめたアンは『錬金術師』の目をしていた。

「作れると思います。
何となく素材もわかるし……」

 錬金術師ってスゴい! と私は思った。


※※※

 アンが『コンタクト』を作り上げる――ユウのものを再現する――と、ユウが『コンタクトを目に入れる方法』をレクチャーした。
 と言うか、スマホで何やら調べたようで、『コンタクトの入れ方』が紙に書いてあった。それを見つつ。

 ユウの思惑は今や明白だった――私には。
 アンに『コンタクト』をさせることで『眼鏡をかけてない自分』を認識させようとしているのだ。
 
 アンの方はまだユウの思惑がよくわかっていないようだ――眼鏡をかけてない自分を可愛いとは思っていないから――。
 しかし『コンタクト』には興味津々で、作り上げたものを自分から目に入れようとする。

 しばらくの格闘の後、アンはとうとう『コンタクト』を目に入れることに成功した。
 
「スゴい!」

 とアンは第一声を上げた。

「眼鏡無しで、視界がくっきりしてる!」

 アンが一通り『世界』を見るのを見守った後、私は言った。

「アンさん、鏡を見て!」

 そしてアンは『眼鏡をかけていない自分』を鏡の中に初めてくっきりとした姿で認めたのだ。

「これが……私……?」

 シンデレラ――ユウの話してくれたユウの世界(?)の物語――のドレスアップに立ち会った気分。

「ね?
アンさん、私たちの言うとおり、とっても可愛いでしょ!」

 アンは赤くなって顔を俯けていたが、よく見ると泣いているようだった。

「ありがとう、ユウさん、マイさん。
初対面の私にこんなに親身になってくれて……」

 ホッコリ……。
 笑顔を見合わせる私たちに、

「急がないと」

 と水を差したのはユウだった。

「あんまり長い時間、『コンタクト』を目に入れていない方が良いかもです。
と言うのも、その『コンタクト』は僕の目に合わせたもので、アンさんの目には悪いかもしれないので……」

 コイツ、シンデレラに時間制限する魔女かよ。
 と思ったけど、ユウの言うとおりだ。

 私たちは急いで『実験所』を出た。
 ジンの家へ向かうのだ。


※※※

 ジンの家。
 ユウと私は物陰からアのアン様子を窺った。

 ジンは家から出てくると、アンを見て目を丸くする。

「アンさん、眼鏡は?」

 ふっと微笑むと、

「もしかしてまた壊したんですか?」

「えへ……。
違うよ……」

 アンは照れた後、キリッとした顔になると言った。

「ジンくん。
私、ジンくんのことが……」

 その後は、素敵な展開となった。
 ジンの方も「僕も初めて会ったときからアンさんのことが……」となり――以前から『二人は両思い』だったのだ! ――、素敵なカップルの誕生に私たちは立ち会えたのだった。

 お互いの気持ちを確認後、ジンはまだ少し照れた調子で言った。

「アンさん、眼鏡は?
かけないの?」

「うん……。
今は眼鏡をかけなくても、よく見えるんだ」

 とアンは答えると私たちがいる方に目を向けたので、ユウと私はジンの前に現れて経緯を説明した。
 ジンは言った。

「まいったな……。『コンタクト』か。
これからはアンさんが眼鏡をかけていない姿を他の男にも見られてしまうのかな……」

 と言うと、微笑んだ。

「でも……アンさん。
僕は初めて会ったときからアンさんが好きだったから。
アンさんの『眼鏡姿』や優しさや知性を先に好きになったんだよ。
でもその後アンさんの『眼鏡をかけていない姿』を見て……
ますます好きになった」

 最後の方は冗談のようにジンは言ったが、本心のようだ。
 『全てが好き』ってか。クソ。と思った。やるなジン。

「でも……『コンタクト』でアンさんは自分の可愛さに気付いてしまったんですね。
アンさんさえ気付かなければ、僕しか『眼鏡を外したアンさんの可愛さ』を知らないままでいられたかもしれないのに……」

「えへ……。
じゃあ、これからも、ジンくんの前でしか、眼鏡を外さないことにする」

「良かった……」

「えへ」

 こいつらホントにたった今付き合い始めたばかりかよ、と私は思った。

「じゃあ、アンさん。
そろそろ……
コンタクトを外しましょうか?
目に悪いといけないので……」

 とユウが淡々と、ちょっと心配そうに言った。

 アンはユウが紙に書いた――スマホで調べたのだろう――『コンタクトの外し方』を見てコンタクトを外し、もとの眼鏡姿になった。

 外した『コンタクト』を二人の錬金術師は改めて興味深げに見る。

「今回はユウさんの『コンタクト』完全再現だったけど。
一人一人の目にあったもの、作れるかな?」

「作れるかもしれない……」

 と相談する2人。

「『コンタクト』。
私みたいに、度が強い眼鏡をかける女の子が勇気を持つキッカケになるかもしれない」

「激しい運動をする人の中には眼鏡が邪魔になる人もいるでしょう。
そう言う人の役にも立つかもしれませんね」

 2人がユウ――『コンタクト』の持ち主――に注目すると、ユウは深く頷いた。

「もしちゃんとした『コンタクト』をあなた方が作れて。
人々の役に立つと思うなら。
僕のその『コンタクト』を差し上げます。
それを参考にして、作って下されば良いと思います」

「でも特許とか……大丈夫ですか?」

 ユウは少し考えてから、

「たぶん。
大丈夫です」

「でも。
あなただけで決めて良いんですか?
あなただけの力でその『コンタクト』を作りあげたわけではないのでは……」

 とジンが言うと、ユウは一瞬ぼんやりした顔をしたが寂しげに微笑み、

「それを――『コンタクト』を――産み出した僕の『国』は……」

 遠い目をした。

「もう、ないんです。この世界には……」

 私たちは呆然と彼を見つめた。

「だから……」

 そこでユウは私たちが『しんみり』していることに気付くとパッと笑顔を作り、

「特許や権利など気にせず作って。
『この世界』の役に立たせて下さい!」


※※※

 その後ユウはろくに『コンタクトの権利』も主張せずに、アンとジンと別れてしまった。
 彼らは『「コンタクト」の商品化に成功した場合はユウの取り分を「電子マネー」で振り込む』ともちろん言うのだが、ユウは『じゃあ、僕の分はお二人で恵まれない人達に寄付して下さい』と言った。
 コイツ……相変わらずの『ぐう聖』ぶりである。
 ほぼ初対面のこの2人への信用ぶりもスゴい。いや、私も信用できると思うけど。

 私たちはずっと見送ってくれた2人にときどき振り返りつつ、帰路に着いた。
 
 隣を歩くユウをチラリと見つつ、先程の会話を思い出す。

『それを――「コンタクト」を――産み出した僕の「国」は……。
もう、ないんです。『この世界』には……』

 何かあったんだ、と思った。
 とっても悲しいことが……。きっと。

 ユウが……こんなに淡々とした男なのは、それが原因なのかもしれない、と思った。
 胸がチクリと痛んだ。

 ふとアンとジンの幸せそうな姿が思い浮かぶ。

 寄り添うあの2人みたいに、私もユウと寄り添って、彼を支えて行けたなら……

 ……と思っていると、突然ユウが私の方を見た。
 突然、と言うか、私の視線に気付いたからだろう。
 ユウは私と目が合うとフッと目を細め、

「まさかマイさんが眼鏡を壊したことで。
こんな展開になるなんて、ビックリです」

 ニッコリすると、

「今日のマイさんは『キューピッド』だね」

 私は照れた顔をついユウから逸らしてしまったが、心の中では思っていた。
 『こっちのセリフだよ!』と。

 キューピッドはユウの方じゃないか!
 私は眼鏡を壊しただけだし……。

『僕、いつの間にか2人の「キューピッド」になっちゃいました』
 
 そんな彼に私は恋をしている……
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