呪子伝説公記

渚菜@歴史好きの霊媒少女

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夜桜、狂い宴

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(これが、巫女の力…)
俺は戦っている間、ずっと桜の木に見えない力で押さえつけられていた。
悪魔がいなくなると、押さえつけていた力が抜け、宙に放り出される。
しかし、急にその感覚がなくなる。
誰かに抱かれている感覚。
恐る恐る目を開けると、目の前には神奈の顔があった。
そして、暗闇だった世界が裂け目を作り始め、元の明るい世界に降り立った。
それと同時に、俺の意識も段々薄れてゆく。
神奈「空き部屋と救急箱の用意!はやくっ!」
(神奈が、何か言っている…?)
けれど、自分の身体なのに、何もできない。
視界さえ、見える範囲が狭まっている。
(俺は、ここで死ぬのか…)
もう何も、分からなくなった…。

そよ風が気持ちいい。
優しく頬を撫でていく。
耳をすませば、風に揺れる草の音も聞こえる。
ゆっくりと、目を開ける。
そこは、お屋敷でお借りしている、俺の部屋だった。
(生き…て…る…?)
何度も瞬きを繰り返す。
それでもうつるのは、部屋の天井のみ。
ただの気絶か。
情けない。
褥から起き出て、部屋を抜け出すと、外は既に暗く、満月がでている。
縁側を少し歩くと、どこからか、騒ぎ声が聞こえた。
声を頼りに近づいてみると、広間に灯りがついていた。
宴会でもしているのだろうか。
広間の障子を開ける。
家臣1「お、影崎殿、来られましたか」
志哉「はい、今さっき、目覚めて…」
家臣2「影崎殿も1杯どうですか?」
志哉「ですが、今飲んでいいのか…」
家臣1「大丈夫ですよ、神奈様には、許可を貰っていますから」
渚菜「いや、駄目ですよ。さっき目覚めたばかりなのに…。病み上がりなんですから」
家臣4「それもそうだな…」
そう言えば、神奈の姿が見当たらない。
少し周囲を見渡すが、幸村殿は信幸殿と才蔵さんと共に、楽しくお酒を飲んでいる。
神奈はいない。
志哉「あの、神奈様はどちらに?」
家臣3「ああ、神奈様なら、縁側で一人飲みしていると思いますよ。ほら、あの…」
家臣4「桜の木の所だろ?あそこは眺めが最高なんだよな」
家臣1「俺もあそこで飲みたいもんだ」
家臣4「俺は神奈様と二人飲みしてえな」
家臣2「お前じゃ無理だ。釣り合わねえ」
志哉「神奈様と、少し話してきます」
家臣3「まあまあ、手ぶらじゃつまらないでしょう。これでも持っていってくださいよ」
そう言われ持たされたのは、酒瓶とお猪口だった。
志哉「い、行ってきます…」

(桜の木か…)
言われた所へと向かう。
(この角をまがればその場所な筈)
そして角を曲がる。
指定の場所に、神奈は盃を片手に座っていた。
その目は、どこも映しておらず、まるで人形のようだった。
でも、人形とは違い、瞳は悲しみを映しているようだった。
(話しかけなければ…)
話すことは沢山ある。
いつもなら、普通に人と話せるのだが、得体の知れない緊張感が、俺を襲っていた。
(簡単なこと、簡単なこと…)
心を整えている途中で、不意に神奈が口を開いた。
神奈「桜は、幻想と呼ばれる。だからこそ、美しいと言い伝えられる…」
追い風に乗って、桜が散った。
神奈「立ち飲みはつまらないでしょう」
神奈はそう言うと、1人分移動する。
断る理由もなく、俺は神奈の隣に座った。
神奈「…」
志哉「…」
しかし、沈黙が流れる。
神奈は、多分俺が何か話すことを悟っているから、話す時間を設けたのだろう。
志哉「…幸村殿とは、上手くやってるのか?」
神奈「手間はかかるけど、上手くやっています」
志哉「…仕事は、何してるんだ?」
神奈「巫女をしています」
志哉「…」
神奈「…」
なかなか、本題を切り出せない。
どう話したらいいのか分からない。
神奈「…彩奈さんとは、上手くやっていますか」
志哉「…ああ」
驚いた。
まさか自分から母親の話を出すなんて。
神奈「…私と飛鳥の代わりは、生まれましたか」
志哉「…一応」
神奈「…その子は目の色が違ったり、翼が生えていたりしますか」
志哉「…ない」
神奈「そうですか」
志哉「…今日は、助けてくれてありがとう、感謝する」
神奈「巫女として、当然の事をしたまでです」
志哉「…今まで、すまなかった。の、呪子や、鬼子など…」
神奈「私はもう気にしてないです。それに、影崎連は、もうこの世にいません」
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