妹はブラコン気味

ゆゆゆ

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1.無理矢理犯す編 -1

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 深夜。比較的ランクが高めのシティホテルの一室ではマットレスが断続的に浮き沈みを繰り返していた。

「はッ、はあ……! くっ……そ、」
「後悔してんの? ……今更、やめてやんねえけど。」
「うるっ、せえ…! ……ぐ、おぇっ……」
「嘔吐く程嫌か。はっ……」

 明かりはベッドサイドのみ。大柄な男たちの全景は照らせていない。

「あ――――――、挿入れてえ――――――――………………」

 ぐちゅぐちゅと湿った音は休みなく続いている。その音を断つ為か、組み敷かれている男は自身の片耳を自分の手で抑えていた。

「はやく、おわれ………………」
「ん、なんか言った? 言っとくけど、自分の意志で来たのは忘れんなよ。それに俺、明日久々の休みなんだよ。せいぜい楽しませろよ。――――大事な妹のために。」

 ずっと、喉から何かが迫り上がってきている感覚に見舞われている。苦しさから滲み流れる涙はそのままに、ベッドの上で丸まっている男――瀧田 大和はどうしてこんなことになったのかを思い出していた。














「おにいちゃん! 私、また芸能界に戻る!」

 珍しく実家に呼び出され、夕飯を食べている途中に帰ってきた妹が一直線に目の前に来てそう宣言した。

「あ? へえ、大学は?」
「反応薄い! 大学は行くよ。もう決まったし! じゃなくて、おにいちゃん! 私のマネージャーやって!」
「はあ?」

 十歳下の妹はまだ高校生だ。受験生だが早々に推薦で進学を決めていたのは知っていた。
 芸能界に戻る――中学に上がるまでこの妹は子役をしていた。その時は仕事に恵まれており、放課後は漏れなくスケジュールが詰め込まれていた。ある時精神的にパンクしてしまったらしく、それらしい理由を付けてあっさりと引退した。

 今回の結論に至った妹の言い分はこうだ。
『物心ついた時から仕事をしていたが、同級生を見ていたら遊ぶ時間もなく仕事が嫌になった。でも今回大学が決まって将来のことを考えてみたら、もう一度、次は真剣に芸能界でやってみたくなった』ということだった。
 大和自身も12歳まで子役をやっていた。撮影現場に同行する母親に抱かれた妹は産まれたばかりで貴重な新生児役としてオファーされ、0歳でスクリーンデビューを果たした。大和は最初に記念としてオーディションを受ける際両親から「受かったら仕事をする」意思を確認されたが、妹は意思など関係なく仕事をさせられていた。産まれてすぐの本来は家で大人しくするべき時期も母と共に仕事で連れ回してしまい、申し訳なく思っていた。

「それはわかった。で、マネージャーはどういうことだ。」
「ええっとお……」

 妹は最初、勢いよく要望を伝えてきたが経緯は話しづらいのか。歯切れが悪い。ゆっくりとボソボソ話された成り行きを端的に纏めるとこうだった。

 かつて所属していた芸能事務所を訪ねるも「所属しても良いが人手がないから売り込みはできない」と言われた。思っていたより冷たい対応に焦った妹はつい「じゃあお兄ちゃんにマネージャーしてもらう!」とのたまった。事務所側は業界経験者だから多少は顔見知りがいるだろうし元子役の兄がマネージャーならネタになると、思った以上に良い案だと乗り気になった。ダメ押しで兄がマネージャーになるなら明日からでもレッスンに参加するかと言われた。ということだった。

「いや俺仕事あるんだけど」
「そのへんはわかんないから、これ社長の連絡先。」
「はあ……。」

 最終的には名刺を渡された。紙面には見覚えのある――昔自分を担当していた者の名前の横に"代表取締役"と記載されていた。一瞬瞠目するも、その場でスマートフォンを取り出しダイヤルする。
 両親はその様子を気に留めることもなく食事を続けている。時折「無茶は言わないように」と妹を窘めているが、基本的には介入しないスタンスのようだ。子役時代も初めは我が子可愛さに芸能界に踏み入ったようだが、疲れた様子を見せれば「いつでも辞めて良い」と言われ引退時はホッとしていたようだった。

 その場で社長と話し、軌道に乗るまでは妹の稼ぎ分を歩合で支払う。その際、今の仕事と並行で活動して構わない。業務等については後日説明する、ということだった。
 今の職――営業職ではそれなりに結果を残しているが、しがみつくほど執着しているわけではない。むしろ大企業でもない会社では同期や近い先輩後輩は毎年転職していき入れ替わっている。身の振り方を考え出していたところで副業扱いから別の職種に手を出せるというのは少し魅力的だった。その場で二つ返事で承諾した。

「おにいちゃんありがとう! でも、できるだけ自分で仕事見付けるようにするから!オーディションも今色々探してるからね。」
「ああ。頑張れ。」

 なんだかんだ言って、結局は妹が可愛いのだ。シスコンと言うほどではないが、目を輝かせている妹の為にできることがあれば何かしてやりたいと思うのは兄としてはまっとうな感情だろう。
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