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○1章 手汗魔王と旅立ちの朝
-5 『力の使い方がわかりません』
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迷惑をかけた手前、居心地も悪くなって、今日は町の外で野宿することにした。
さすがにまったく関係のない人を巻き込むのはエイミも気が引けたのだろうか。随分反省した風にしおらしく頭を垂れて歩いている。
「ごめん――」
ボクの力のせいで、と声をかけようとすると、エイミの顔がふと持ち上がる。
「なるほど。あなたの力の影響って壁や床を貫通するのね。それに上下にも届く。顔も見られずに影響を与えられるなんて、暗殺者なら喉から手が出るような力でしょうね」
「……え」
何を思い耽っているのかと思えばそんなこととは。
あの宿屋の料理人を気にしていると思っていたボクの感心を返して欲しい。
「エイミは悪いことしたって思わないの?」
「思うわよ」
ボクが尋ねると彼女は即答した。
指を立て、ボクに向かって言う。
「貴方の力の影響がどれくらいの場所に届くかを把握するのって、けっこう大事だと思うのよ。そうでなきゃ、またさっきみたいに変に他人を巻き込みかねないでしょう。壁も貫通するとわかった以上、部屋に閉じ込めておくという手段ができないことがわかったんだから」
「あ、そっか」
確かにそこまで考えていなかった。
「エイミは良い人だね」
「急に何言ってるのよ、馬鹿」
ボクの言葉に、エイミは珍しく動揺した風な赤い表情を一瞬だけ見せる。けれどすぐ顔を隠されて確認できなかった。
でもやはり悪い人ではないのだろう。
「よかったよ。エイミがボクの力を私利私欲のために使うひどい人じゃなくて」
そうしようと企んで近づいてくる人は少なくなかった。
けれどみんな、ボクに接近するだけで勝手に死に絶えていった。
エイミが何故ボクの影響を受けないのかはわからないけれど、彼女が悪い人でなくてよかったと思う。
安堵したボクに、しかしエイミは不敵に口許をひやつかせる。
「何言ってるの。私は完全に、私利私欲のために貴方の力を使う気満々よ」
「ええっ?!」
「だからわざわざ会いに来たのよ」
「な、何に使うの? 人を殺すの?」
「そんなつもりはないわ。ただちょっと、スパイスとして添えようかと」
「どういう意味?!」
まったくわからないということだけはわかった。
結局、エイミはこれ以上言及しても答えてくれなかった。
「ま、悪く使うだけが貴方の力の使い道じゃないってことよ。きっと」
「そ、そうなのかな」
根拠なんてない言葉だけれど、いつも自信満々な彼女の強い口調は嬉しい。
これからどこに連れて行かれるのかわからないけれど、きっと彼女なら、ボクの力を悪用しないだろう。そう思えた。
「でもやっぱりいろいろ便利よね」
「ええ……」
きっと、悪用はされない、だろう。
たぶん。
さすがにまったく関係のない人を巻き込むのはエイミも気が引けたのだろうか。随分反省した風にしおらしく頭を垂れて歩いている。
「ごめん――」
ボクの力のせいで、と声をかけようとすると、エイミの顔がふと持ち上がる。
「なるほど。あなたの力の影響って壁や床を貫通するのね。それに上下にも届く。顔も見られずに影響を与えられるなんて、暗殺者なら喉から手が出るような力でしょうね」
「……え」
何を思い耽っているのかと思えばそんなこととは。
あの宿屋の料理人を気にしていると思っていたボクの感心を返して欲しい。
「エイミは悪いことしたって思わないの?」
「思うわよ」
ボクが尋ねると彼女は即答した。
指を立て、ボクに向かって言う。
「貴方の力の影響がどれくらいの場所に届くかを把握するのって、けっこう大事だと思うのよ。そうでなきゃ、またさっきみたいに変に他人を巻き込みかねないでしょう。壁も貫通するとわかった以上、部屋に閉じ込めておくという手段ができないことがわかったんだから」
「あ、そっか」
確かにそこまで考えていなかった。
「エイミは良い人だね」
「急に何言ってるのよ、馬鹿」
ボクの言葉に、エイミは珍しく動揺した風な赤い表情を一瞬だけ見せる。けれどすぐ顔を隠されて確認できなかった。
でもやはり悪い人ではないのだろう。
「よかったよ。エイミがボクの力を私利私欲のために使うひどい人じゃなくて」
そうしようと企んで近づいてくる人は少なくなかった。
けれどみんな、ボクに接近するだけで勝手に死に絶えていった。
エイミが何故ボクの影響を受けないのかはわからないけれど、彼女が悪い人でなくてよかったと思う。
安堵したボクに、しかしエイミは不敵に口許をひやつかせる。
「何言ってるの。私は完全に、私利私欲のために貴方の力を使う気満々よ」
「ええっ?!」
「だからわざわざ会いに来たのよ」
「な、何に使うの? 人を殺すの?」
「そんなつもりはないわ。ただちょっと、スパイスとして添えようかと」
「どういう意味?!」
まったくわからないということだけはわかった。
結局、エイミはこれ以上言及しても答えてくれなかった。
「ま、悪く使うだけが貴方の力の使い道じゃないってことよ。きっと」
「そ、そうなのかな」
根拠なんてない言葉だけれど、いつも自信満々な彼女の強い口調は嬉しい。
これからどこに連れて行かれるのかわからないけれど、きっと彼女なら、ボクの力を悪用しないだろう。そう思えた。
「でもやっぱりいろいろ便利よね」
「ええ……」
きっと、悪用はされない、だろう。
たぶん。
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