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○2章 手汗魔王と天才少女
-15『こうして少女は伝説になりそうです』
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「すごいじゃないか! さすが俺の娘だ!」
「これまでは私たちの教育が悪かったのね、きっと。こんなしがない料理屋で収まるような子じゃなかったのよ」
悪名高い魔術師を打ち倒し、巷を騒がせていた誘拐事件を解決して町に戻ってきた――という名目で凱旋したミレーナを待っていたのは、驚くほど手首を捻った掌返しだった。
報せを聞いた両親が真っ先に彼女へ駆け寄り、涙ながらに熱い抱擁をしていた。
「そういえばお前は前から言っていたもんな。いろんな場所に行って高みを目指したいって」
「……え? そんなこと言ったっけ、パパ」
「そうね。貴方はいつも町の外に目を向けてたものね。こんな小さな町すら物足りないってことだったんだわ」
「……ええ? あれ……ママ?」
困惑した顔を浮かべるミレーナの背中を二人が勢いよく叩く。
「もう俺達はお前を馬鹿にしない、引き止めないさ。お前のその才能を活かせるよう、世界中に奉公して来い!」
「…………えええっ?!」
いつの間にか荷支度の済んだ鞄まで持たされ、旅先のおやつに握り飯まで差し入れされるミレーナ。そんな彼女の周りでは、町の人たちが彼女の旅立ちの瞬間を見送ろうと集まっている。
「がんばれよ!」
「名のある魔術師になって帰って来い!」
「応援してるぞ!」
みなそれぞれに激励を浴びせてくる。
だがミレーナは、それをきょとんとした呆け顔で受け止めていた。
いったいいつそんな話になったのか。
手柄を持って気前よく町に帰ってくれば、気が付けば冒険に旅立たなければいけない雰囲気になっている。
これまでの大言壮語の影響か。
いったいどれだけ大口を叩いてきたのか、これだけでも想像に難くない。
「ミレーナ、私、貴方にずっと感謝してる。だから、どこに行っても応援してるから。いつでも安心してここに帰ってきてね」
檻から助け出され、無事に町に戻ってきた親友のアリーが優しく微笑む。
ミレーナは「今すぐ帰りたいんですけど」といった顔をしているが、もはやそんな空気ではない。なれば今すぐこれまでの虚言を撤回して正直に話すべきだろう。
しかしミレーナは、
「……わ、わらわにかかれば世界に名を轟かせるなど簡単なことなのじゃ!」
更に上塗りをしていくのだった。
自らを更に沼へ沈めているとはわかっているのに、もはや抜けない癖らしい。
傍で見ていたボクは、その不器用さについつい溜め息を漏らしてしまった。
「ミレーナ、苦労する性格だね」
「まあ自分で買ってきてる苦労だけれど」
エイミの言葉がごもっともすぎて頷くほかない。
「わたしはそういうところも可愛いと思いますです」
リリオが至福な表情で眺めながら言う。
確かに、それもごもっともだと頷きたくなる。
やがて、大勢の観衆に手を振られて見送られたミレーナは、とぼとぼとした足取りでボクたちのところまでやって来た。
まるで捨てられた子犬のように円らな目で見上げてくる。
しょぼんとした顔は小動物のようで可愛らしい。
リリオではないが、思わず頭を撫でたくなりそうだ。
そんな彼女に、エイミはボクと繋いでいないもう片方の手を差し出す。
「行き着く宛てがないのなら、私たちと一緒にどうかしら」
「……いいの?」
「実際に外に出て、たくさん見聞を広めて、大きくなって、本当に立派な魔法使いになって戻ってこればいいじゃない。今よりも成長して無事に戻ってくれば、きっと彼らの期待も裏切らないわ。もちろん、一緒の間はしっかりと働いてもらうわよ。ちゃんとお給料とかは出すわ」
「わ、わかった」
「……よし。料理番をゲットね」
聞こえないくらい小さな声でエイミが呟く。
これでエイミの料理からは無縁になるだろう。
それに、ミレーナの料理の腕は折り紙つきだ。ボクとしても万々歳である。
始めこそ不安そうにしていたミレーナだが、やがてすっかり調子を取り戻し、
「うむ、わらわに何でも任せるのじゃ!」と機嫌よく笑っていたのだった。
「これまでは私たちの教育が悪かったのね、きっと。こんなしがない料理屋で収まるような子じゃなかったのよ」
悪名高い魔術師を打ち倒し、巷を騒がせていた誘拐事件を解決して町に戻ってきた――という名目で凱旋したミレーナを待っていたのは、驚くほど手首を捻った掌返しだった。
報せを聞いた両親が真っ先に彼女へ駆け寄り、涙ながらに熱い抱擁をしていた。
「そういえばお前は前から言っていたもんな。いろんな場所に行って高みを目指したいって」
「……え? そんなこと言ったっけ、パパ」
「そうね。貴方はいつも町の外に目を向けてたものね。こんな小さな町すら物足りないってことだったんだわ」
「……ええ? あれ……ママ?」
困惑した顔を浮かべるミレーナの背中を二人が勢いよく叩く。
「もう俺達はお前を馬鹿にしない、引き止めないさ。お前のその才能を活かせるよう、世界中に奉公して来い!」
「…………えええっ?!」
いつの間にか荷支度の済んだ鞄まで持たされ、旅先のおやつに握り飯まで差し入れされるミレーナ。そんな彼女の周りでは、町の人たちが彼女の旅立ちの瞬間を見送ろうと集まっている。
「がんばれよ!」
「名のある魔術師になって帰って来い!」
「応援してるぞ!」
みなそれぞれに激励を浴びせてくる。
だがミレーナは、それをきょとんとした呆け顔で受け止めていた。
いったいいつそんな話になったのか。
手柄を持って気前よく町に帰ってくれば、気が付けば冒険に旅立たなければいけない雰囲気になっている。
これまでの大言壮語の影響か。
いったいどれだけ大口を叩いてきたのか、これだけでも想像に難くない。
「ミレーナ、私、貴方にずっと感謝してる。だから、どこに行っても応援してるから。いつでも安心してここに帰ってきてね」
檻から助け出され、無事に町に戻ってきた親友のアリーが優しく微笑む。
ミレーナは「今すぐ帰りたいんですけど」といった顔をしているが、もはやそんな空気ではない。なれば今すぐこれまでの虚言を撤回して正直に話すべきだろう。
しかしミレーナは、
「……わ、わらわにかかれば世界に名を轟かせるなど簡単なことなのじゃ!」
更に上塗りをしていくのだった。
自らを更に沼へ沈めているとはわかっているのに、もはや抜けない癖らしい。
傍で見ていたボクは、その不器用さについつい溜め息を漏らしてしまった。
「ミレーナ、苦労する性格だね」
「まあ自分で買ってきてる苦労だけれど」
エイミの言葉がごもっともすぎて頷くほかない。
「わたしはそういうところも可愛いと思いますです」
リリオが至福な表情で眺めながら言う。
確かに、それもごもっともだと頷きたくなる。
やがて、大勢の観衆に手を振られて見送られたミレーナは、とぼとぼとした足取りでボクたちのところまでやって来た。
まるで捨てられた子犬のように円らな目で見上げてくる。
しょぼんとした顔は小動物のようで可愛らしい。
リリオではないが、思わず頭を撫でたくなりそうだ。
そんな彼女に、エイミはボクと繋いでいないもう片方の手を差し出す。
「行き着く宛てがないのなら、私たちと一緒にどうかしら」
「……いいの?」
「実際に外に出て、たくさん見聞を広めて、大きくなって、本当に立派な魔法使いになって戻ってこればいいじゃない。今よりも成長して無事に戻ってくれば、きっと彼らの期待も裏切らないわ。もちろん、一緒の間はしっかりと働いてもらうわよ。ちゃんとお給料とかは出すわ」
「わ、わかった」
「……よし。料理番をゲットね」
聞こえないくらい小さな声でエイミが呟く。
これでエイミの料理からは無縁になるだろう。
それに、ミレーナの料理の腕は折り紙つきだ。ボクとしても万々歳である。
始めこそ不安そうにしていたミレーナだが、やがてすっかり調子を取り戻し、
「うむ、わらわに何でも任せるのじゃ!」と機嫌よく笑っていたのだった。
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