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な なんと スライムが むすめに なっていく……

005 怪物の片鱗

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「……やっぱり再生くらいするわよね」

 クラリスは諦観ていかんしたような態度でつぶやく。

 頭部しかなかったはずのおれの身体が、瞬く間に全復活した。その理由は、おそらく小雨が降ってきたからだった。雨水を頭部が取り込み、胴体が生えてきたのだ。

「うげっ。せっかくつぶせる寸前まで来たのに……」

 少女は口調とは裏腹に体力を損耗しているみたいだった。ならばそこに付け込むしかない。ここは引き分けで許してやるよ、と。

「よう。だいぶ疲弊してるようだな。これ以上おれとやり合いたいなら生命保険に入ってこい。最後の親孝行させてやるよ……!!」

 どこぞの爬虫類がタイトルの漫画のセリフを引用し、おれは強がってみる。この状況でこのハッタリはかなり響くはずだ。

「……分かったよ。手を引けば良いんでしょ?」

 勝った! レールガンを降ろし少女はそそくさと去っていった。ぶっちゃけ99パーセント負けていたが、終わりよければすべてよしだ。

「……とんでもないハッタリかましたわね」

 クラリスという少女、ひょっとしたら結構良いヤツなのかもしれないな。わざわざおれを殺そうとした少女が立ち去ってからネタバレをかましてくれた。

「貴方新魔術も旧魔術も使えないでしょ? 転生者がスライム娘なんて驚いたけれど、よくよく考えてみれば大前提も満たしてない」

「大前提?」

「ロスト・エンジェルスにやってくる転生者は主に二種類。傲慢で卑劣極まりない能力を前世の恨みから引っ張ってくる連中。そしてもうひとつは──」

「転生した場所がたまたまロスト・エンジェルスだったヤツら?」

「そうよ。ソイツらは最低限の能力すら持ってない。さらに言えば人間として転生できるかも保証されない。かたつむりとか昆虫の可能性だってある」

「お主は完全に後者だ。よくここまで生き残れたものだな?」

 怖いなあ。このヒトたちとっても怖い。完全にアウェーなんだよね。おれの立ち位置って。普通の異世界転生ものって転生者が歓迎されるじゃんか。でもさ、この国は違うらしいんだよねえ。

「でもまあ、生き残ったのならそれなりの褒美はあってしかるべきね。市民登録しましょうか」

「それはつまり?」

「人権が適用されるという意味よ」

 勝ちとともに生き残りも確定した!! おれは小躍りし始めて、ふたりの会話なんて訊いてもいなかった。

「お祖父様」クラリスは折りたたみ傘を出す。

「分かっておる。大統領府に届けは出しておくさ。だが、ひとつ忘れるな」

「なにを?」

「あやつはいつか、誰の手にも追えなくなるだろう。末恐ろしいよ、あれだけの魔力を持っているのに自覚がまるでない」

「……。ええ。どれだけ懐柔できるかによってロスト・エンジェルスの未来すら決まってしまいそうですね」

 そんな会話があったことなどつゆ知らず、おれことタイラントは雨水の浴びすぎでどんどん人間っぽくなっていた。
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