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シーズン1 チャプター1 おれわるい スライムむすめ じゃないよ
024 もうひとりのスライム娘
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「でもなにが思い当たるんだ? 分かんねえ」
そもそもおれはこの異世界に転生してきたスライム娘だ。その世界に自分とうりふたつなスライム娘がいたところで、いったいなにが思い当たるというのか。
「6,000メニ-か……」
おれはその溶けかけているスライム娘の値札を見て、ちょうどクラリスが支払うと言っている報酬と合致することを知る。すなわち買おうと思えば買える。ただ、こんな不愉快な場所のルールに従って怪物を買って良いものなのか。
その悩みは、耳がキーンとなる爆音とともに消え失せた。
近くで爆発があった。間違いなく小粋の仕業だ。愛しの彼女を探しに行くとか言っていたので、おそらく目的の子と巡り会えたのであろう。当然正規の方法で購入はしていなさそうだが。
「警備員!! あのふざけた客を拘束しろ!!」
早めに逃げるべきか否か。おれは目の前にいるスライム娘の表情を見る。不安げだが、もうどうなっても良いと思っていそうな、希望を見いだせていない顔色だ。
だからおれは、目には目を歯には歯をという基礎的な考えのもと彼女が入れられていたアクリル板のケースを破壊した。
警報が鳴り響く。だが警告音も何回も続く爆発音の前に消え失せていく。おれはスライム娘の彼女を抱きかかえ、あたかも職員ですよと言わんばかりに外へ出ていった。
「……なにを」
そんな中、彼女が小鳥のような弱々しい声でつぶやく。
「別にひどい目には合わせねえよ。じっとしてろ」
スライムを分離させ、お姫様抱っこされた彼女に分け与えてみる。途端に崩れかけていた顔が再生し、身体にみずみずしさが蘇った。
「……まさか」
それでも声は弱かった。発声することにもなれていないのかもしれない。
「おれもスライム娘だ。だからその、君を憐れんだ」
完全に外へ出た頃、東京ドーム半分ほどの“デパートメント”は多方面から重力をかけられたかのように、物理的につぶれていった。
正義のヒーローではないので中に残った奴隷怪物たちのことに気を配る余裕なんてないが、小粋は大丈夫なのだろうか。
と思っていたら、電話がかかってきた。
『よォ。近くに青い無人運転車がある。それに乗ればおれと合流できるから、そのときなにがあったのか話す』
「オマエ、いつかテロで捕まるぞ?」
『大丈夫。策はしっかりある』
一方的に切られた電話。おれは溜め息をつき、スライム娘の彼女と青い車に乗る。
《目的地はイースト・ロスト・エンジェルスのスターリング工業本部です》
機械の声とともに、おれたちは強制的にシートベルトをかけられる。タコメーターが動き始め、60~70キロの間で自動運転を開始した。
「……なんでこんなことしたの?」
「さあ」
本当に分からないのだから仕方ない。
「つか、名前がないのが面倒だな。きょうからオマエはタイーシャだ」
そんなわけでタイラーというあだ名を弄って女性っぽくした名前、をつけられたスライム娘のタイーシャは、「変な名前」と言い放つのだった。
そもそもおれはこの異世界に転生してきたスライム娘だ。その世界に自分とうりふたつなスライム娘がいたところで、いったいなにが思い当たるというのか。
「6,000メニ-か……」
おれはその溶けかけているスライム娘の値札を見て、ちょうどクラリスが支払うと言っている報酬と合致することを知る。すなわち買おうと思えば買える。ただ、こんな不愉快な場所のルールに従って怪物を買って良いものなのか。
その悩みは、耳がキーンとなる爆音とともに消え失せた。
近くで爆発があった。間違いなく小粋の仕業だ。愛しの彼女を探しに行くとか言っていたので、おそらく目的の子と巡り会えたのであろう。当然正規の方法で購入はしていなさそうだが。
「警備員!! あのふざけた客を拘束しろ!!」
早めに逃げるべきか否か。おれは目の前にいるスライム娘の表情を見る。不安げだが、もうどうなっても良いと思っていそうな、希望を見いだせていない顔色だ。
だからおれは、目には目を歯には歯をという基礎的な考えのもと彼女が入れられていたアクリル板のケースを破壊した。
警報が鳴り響く。だが警告音も何回も続く爆発音の前に消え失せていく。おれはスライム娘の彼女を抱きかかえ、あたかも職員ですよと言わんばかりに外へ出ていった。
「……なにを」
そんな中、彼女が小鳥のような弱々しい声でつぶやく。
「別にひどい目には合わせねえよ。じっとしてろ」
スライムを分離させ、お姫様抱っこされた彼女に分け与えてみる。途端に崩れかけていた顔が再生し、身体にみずみずしさが蘇った。
「……まさか」
それでも声は弱かった。発声することにもなれていないのかもしれない。
「おれもスライム娘だ。だからその、君を憐れんだ」
完全に外へ出た頃、東京ドーム半分ほどの“デパートメント”は多方面から重力をかけられたかのように、物理的につぶれていった。
正義のヒーローではないので中に残った奴隷怪物たちのことに気を配る余裕なんてないが、小粋は大丈夫なのだろうか。
と思っていたら、電話がかかってきた。
『よォ。近くに青い無人運転車がある。それに乗ればおれと合流できるから、そのときなにがあったのか話す』
「オマエ、いつかテロで捕まるぞ?」
『大丈夫。策はしっかりある』
一方的に切られた電話。おれは溜め息をつき、スライム娘の彼女と青い車に乗る。
《目的地はイースト・ロスト・エンジェルスのスターリング工業本部です》
機械の声とともに、おれたちは強制的にシートベルトをかけられる。タコメーターが動き始め、60~70キロの間で自動運転を開始した。
「……なんでこんなことしたの?」
「さあ」
本当に分からないのだから仕方ない。
「つか、名前がないのが面倒だな。きょうからオマエはタイーシャだ」
そんなわけでタイラーというあだ名を弄って女性っぽくした名前、をつけられたスライム娘のタイーシャは、「変な名前」と言い放つのだった。
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