26 / 71
シーズン1 チャプター1 おれわるい スライムむすめ じゃないよ
026 悪魔の片鱗
しおりを挟む
鋼鉄の力で思い切り叩いたのに、タイーシャの腕に目立った損傷はなくその忌々しい石は赤く光る。つまりおれの身体に魔力が発現してしまっているということなのか!?
「……そう簡単に壊せたらとうの昔に壊してる。……魔断石は触れた者の魔力を吸い取ることでどんどん硬くなってくから……いまので破壊するのがもっと困難になった」
説明するのにも一苦労といった表情であった。なにか工夫をしなければタイーシャを助けることもかなわない。
それでもタイーシャは、途切れ途切れの言葉を繋いでいく。
「……“悪魔の片鱗”なら行けるかもしれないけど」
悪魔の片鱗? 聞き慣れない中二病単語がまたひとつ増えた。でもいまはそれにツッコんでいる暇はない。おれはその言葉を訊いた瞬間、小粋へ電話をかける。
『なんだ? まだ到着してねェだろ?』
「“悪魔の片鱗”について教えてくれ!」
『一朝一夕でマスターできるモンじゃねェぞ? あれは』
「良いから!! じゃないとおれ、これから先ずっと後悔するかもしれない!!」
『分かったよ。簡潔に説明するから、使えなかったら諦めろ。良いか?』
「ああ!!」
『手に魔力を集めろ。それだけだ』
「……分かった!」
実際のところ、分かっているわけがない。手に魔力を集めろ? まず魔力がどんなものが親切丁寧に説明してもらいたいし、説明されたところで異世界人であるおれに使いこなせるのかって話でもある。
だけど、ここで末期がんのように息切れを起こすタイーシャを見て見ぬふりできるわけがない。
おれは手のひらをじろりと見つめる。無理? 不可能? そんなこと、些事だ。目の前で苦しんでいる子の前じゃ、そんな言い訳はできない。
「うおおおおおおおおッ!!」
ありったけの力を込め、おれは叫ぶ。そして魔断石とやらに触れ、魔力を手に流せという無理難題をこなす。こなしてみせる!!
「……!!」
ブレスレットのようになっていた諸悪の根源がゴリッ!! という音とともに粉々になっていく。ここでようやく、タイーシャは自由を勝ち取った。
「はあ……はあ……」
なぜかおれが息切れし始めた。ただ肺がんステージ4のような末期的なものではない。マラソンを終えたあとのような清々しい息切れであった。
「……本当に壊すなんて」
「まあな……。次はオマエの番だぞ、タイーシャ。なにか案があるんだろ?」
「……うん。スライムを吐き出しちゃうのなら、それを強制的に停止する旧魔術を使えば良いから」
そんな窮地を終えたふたりに機械の声が響く。
《目的地に到着しました。よろしければレビューをお願いします》
自動運転のレビューなんて異世界で聞けるものなのかよ、と思いながら、おれは適当に星5をつけておく。
一仕事を終え椅子にもたれながら、おれはタイーシャに生気が戻っていくのを知り、胸を撫で下ろすのだった。
「……そう簡単に壊せたらとうの昔に壊してる。……魔断石は触れた者の魔力を吸い取ることでどんどん硬くなってくから……いまので破壊するのがもっと困難になった」
説明するのにも一苦労といった表情であった。なにか工夫をしなければタイーシャを助けることもかなわない。
それでもタイーシャは、途切れ途切れの言葉を繋いでいく。
「……“悪魔の片鱗”なら行けるかもしれないけど」
悪魔の片鱗? 聞き慣れない中二病単語がまたひとつ増えた。でもいまはそれにツッコんでいる暇はない。おれはその言葉を訊いた瞬間、小粋へ電話をかける。
『なんだ? まだ到着してねェだろ?』
「“悪魔の片鱗”について教えてくれ!」
『一朝一夕でマスターできるモンじゃねェぞ? あれは』
「良いから!! じゃないとおれ、これから先ずっと後悔するかもしれない!!」
『分かったよ。簡潔に説明するから、使えなかったら諦めろ。良いか?』
「ああ!!」
『手に魔力を集めろ。それだけだ』
「……分かった!」
実際のところ、分かっているわけがない。手に魔力を集めろ? まず魔力がどんなものが親切丁寧に説明してもらいたいし、説明されたところで異世界人であるおれに使いこなせるのかって話でもある。
だけど、ここで末期がんのように息切れを起こすタイーシャを見て見ぬふりできるわけがない。
おれは手のひらをじろりと見つめる。無理? 不可能? そんなこと、些事だ。目の前で苦しんでいる子の前じゃ、そんな言い訳はできない。
「うおおおおおおおおッ!!」
ありったけの力を込め、おれは叫ぶ。そして魔断石とやらに触れ、魔力を手に流せという無理難題をこなす。こなしてみせる!!
「……!!」
ブレスレットのようになっていた諸悪の根源がゴリッ!! という音とともに粉々になっていく。ここでようやく、タイーシャは自由を勝ち取った。
「はあ……はあ……」
なぜかおれが息切れし始めた。ただ肺がんステージ4のような末期的なものではない。マラソンを終えたあとのような清々しい息切れであった。
「……本当に壊すなんて」
「まあな……。次はオマエの番だぞ、タイーシャ。なにか案があるんだろ?」
「……うん。スライムを吐き出しちゃうのなら、それを強制的に停止する旧魔術を使えば良いから」
そんな窮地を終えたふたりに機械の声が響く。
《目的地に到着しました。よろしければレビューをお願いします》
自動運転のレビューなんて異世界で聞けるものなのかよ、と思いながら、おれは適当に星5をつけておく。
一仕事を終え椅子にもたれながら、おれはタイーシャに生気が戻っていくのを知り、胸を撫で下ろすのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
63
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる