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シーズン1 チャプター2 それでもおれは正義のヒーローなんかじゃないっ!!
043 懐柔か粛清か
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そもそも、タイラントことおれに不満があるからエルフたちは失脚するように仕向けている。
では、どんな不満があるというのか。
考えられるのはふたつだ。
ひとつ。おれが連邦政府と対話して怪物たちに“人権”を与えようとしているのが気に食わない。古今東西、自由や独立は常に暴力によって勝ち取られてきた。武力無き解放などあり得ないという考えを持っていて、おれやエコーの居場所をバラしている可能性。
もうひとつ。これをつかれてしまえば正直どうしようもない。現在、おれはロスト・エンジェルス中にいるほとんどすべての怪物の指導者なわけだが、その指揮官が『スライム娘』であることが気に食わない可能性。怪物にも序列や格というものがある。調べたわけでもないが、どうせスライム娘なんて下から数えたほうが早いだろう。
そんなわけでふたつの可能性が提示される。そしてまたふたつの解決方法が存在するわけだ。
「“粛清”するか“懐柔”するか、ってな」
目の前に賞金稼ぎが大勢倒れているホテルへはいられないので、一行は小粋が盗んできたワンボックスカーに乗っていた。
「ミリットちゃんはどう思うよ」
「“懐柔”すべきだと思う」即答だった。
「なんでだ?」おれが訊く。
「エルフは強いから。別にロリコンや小粋さんの計画には興味ないけど」
「まあ、オマエは親が頭冷やすまでおれの家にいるって条件だもんな」
ミリットは窓から風景を見ていた。彼女は小声でつぶやく。
「……。どうしてもっていうならそのまま一緒に住んでも良いけど」
「マジかい、ミリー」
「やっぱりいまのは忘れて」
「あいよ……」ダウナーな声ながら内心ニヤケ面で、「エコーはどう思う? オマエさんがクラリスにやられたのだって、遠因はエルフたちがつくってるしよ」
「断固“粛清”派です!! 我々は少数派である以上、足並みを揃えない種族の椅子はなくすべきです!!」
「一理あるな」小粋が返事し、「タイラーの権威と魔力がおれたちの結束を示してる。それに従えねェんなら厄介な敵と変わりない。タイラー、おれは“粛清”に票を入れさせてもらうぜ?」
「1対2か。タイーシャはこういう問題分かんないよな?」
「分かるよー!!」
「元気でよろしい。どっちに賛成する?」
「かいじゅーで!」
「その理由は?」
「だってあたしたち被差別民? って存在なんでしょ? だったら協力すべきだと思うんだ~。エルフさんたちにも不満があるなら訊いてみる! 叶えそうなところは叶える! 無理なのは無理!! それで良いでしょ!」
小粋が溜め息をつく。彼は言う。
「タイーシャちゃん。難しいかもしんねェけどな、君のお兄ちゃんはおれたちのボスなんだ。ボスが部下の言うこといちいち訊いてちゃ組織は成り立たないんだぜ?」
「そーなの? タイラー」
「一般論ではね。ただまあ……これで2対2だろ? だったらおれが票を入れるよ」
小粋とエコーが苛立つのは良く分かるが、おれのような眠たいほど甘い人間に“粛清”は無理だ。
「“懐柔”で行こう。小粋、エルフたちのリーダーの居場所分かるか?」
では、どんな不満があるというのか。
考えられるのはふたつだ。
ひとつ。おれが連邦政府と対話して怪物たちに“人権”を与えようとしているのが気に食わない。古今東西、自由や独立は常に暴力によって勝ち取られてきた。武力無き解放などあり得ないという考えを持っていて、おれやエコーの居場所をバラしている可能性。
もうひとつ。これをつかれてしまえば正直どうしようもない。現在、おれはロスト・エンジェルス中にいるほとんどすべての怪物の指導者なわけだが、その指揮官が『スライム娘』であることが気に食わない可能性。怪物にも序列や格というものがある。調べたわけでもないが、どうせスライム娘なんて下から数えたほうが早いだろう。
そんなわけでふたつの可能性が提示される。そしてまたふたつの解決方法が存在するわけだ。
「“粛清”するか“懐柔”するか、ってな」
目の前に賞金稼ぎが大勢倒れているホテルへはいられないので、一行は小粋が盗んできたワンボックスカーに乗っていた。
「ミリットちゃんはどう思うよ」
「“懐柔”すべきだと思う」即答だった。
「なんでだ?」おれが訊く。
「エルフは強いから。別にロリコンや小粋さんの計画には興味ないけど」
「まあ、オマエは親が頭冷やすまでおれの家にいるって条件だもんな」
ミリットは窓から風景を見ていた。彼女は小声でつぶやく。
「……。どうしてもっていうならそのまま一緒に住んでも良いけど」
「マジかい、ミリー」
「やっぱりいまのは忘れて」
「あいよ……」ダウナーな声ながら内心ニヤケ面で、「エコーはどう思う? オマエさんがクラリスにやられたのだって、遠因はエルフたちがつくってるしよ」
「断固“粛清”派です!! 我々は少数派である以上、足並みを揃えない種族の椅子はなくすべきです!!」
「一理あるな」小粋が返事し、「タイラーの権威と魔力がおれたちの結束を示してる。それに従えねェんなら厄介な敵と変わりない。タイラー、おれは“粛清”に票を入れさせてもらうぜ?」
「1対2か。タイーシャはこういう問題分かんないよな?」
「分かるよー!!」
「元気でよろしい。どっちに賛成する?」
「かいじゅーで!」
「その理由は?」
「だってあたしたち被差別民? って存在なんでしょ? だったら協力すべきだと思うんだ~。エルフさんたちにも不満があるなら訊いてみる! 叶えそうなところは叶える! 無理なのは無理!! それで良いでしょ!」
小粋が溜め息をつく。彼は言う。
「タイーシャちゃん。難しいかもしんねェけどな、君のお兄ちゃんはおれたちのボスなんだ。ボスが部下の言うこといちいち訊いてちゃ組織は成り立たないんだぜ?」
「そーなの? タイラー」
「一般論ではね。ただまあ……これで2対2だろ? だったらおれが票を入れるよ」
小粋とエコーが苛立つのは良く分かるが、おれのような眠たいほど甘い人間に“粛清”は無理だ。
「“懐柔”で行こう。小粋、エルフたちのリーダーの居場所分かるか?」
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