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シーズン1 チャプター2 それでもおれは正義のヒーローなんかじゃないっ!!
052 腹黒女と純粋少女
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「あら、簡単じゃない」
そう言ったのはクラリスだった。コイツ、平然と言い放ったけど心臓に毛でも生えているのか?
「なにがどう簡単なんだよ、腹黒女」
「赤鬼に腹黒と呼ばれるのも不思議な気分ね。でもまあその無礼は許すわ」
小粋に対し、クラリスはニヒルな笑みを浮かべながら返した。
こ、コイツ……やっぱり心臓がおかしい。毛が2,000本くらい生えていそうだし、なんなら鋼鉄でできていそうだ。
「……で? どんな方法を使えば良いんだ? クラリス」
「スライム娘の特性、知らないの? 貴方たち」
知っているわけねえだろ!! おれは転生者だぞ!? ……と言いたくなるが、他のヤツらもそろって怪訝そうな顔をしたものだから、この場は完全にクラリスのものだ。
「状態異常を起こすことができるスライムって、逆のこともできると思わない? たとえば麻痺状態に陥らせることができるんだから、その解毒剤みたいなものを身体に持っていても変な話じゃないわ」
「んん? おれは別にヒトを麻痺らせたり溶かしたりってのはたぶんできねえぞ?」
「貴方にできるとは端から思ってないわ。できそうなのはその子よ」
クラリスはタイーシャのほうへ目を向ける。見つめられたタイーシャはきょとんとした顔をしながら、「なにが?」とゆるい声色で答える。
「人間と怪物のかけ橋になってくれという話よ。まだ貴方くらいの年頃だとすこし難しいかしら?」
「人間なんて嫌いだもん! 助けたくないよ!」
それもそうだろう。怪物を人身売買している場所デパートメントにいたときから、タイーシャはろくな水分も与えられず見世物にされていたのだから。そんな彼女がヒトを救うために動くなんて愚かしいにも程がある。
だけど、ここで納得してくれないと話が前に進まない。
「タイーシャ、どうしても嫌か?」
「よく分かんないけど……嫌なものは嫌!!」
「おれの頼みでもか?」
おれはタイーシャの目をしっかり見据え、自分が彼女と同じ土俵に立っていると思わせる。タイーシャはおれのことを慕っているだろうから、こうすればうまくいくはずだと。
「…………どうしても、なの?」
「どうしても、だ」
おれとタイーシャを除いた全員が固唾を呑む。大統領の娘を救え作戦第一段階、ここで躓いたら色々難儀である。こちらの常識など知ろうはずもないが、ロスト・エンジェルスの技術力を持ってしても治せない重度の障害を治せるとしたら、それはモンスターの力に違いない。
「……。ロリコンはアンタを必要としてるみたい」
「そうなの? ミリットちゃん」
「そうでしょ。話をしっかり聞いていれば。だから協力してあげれば? そんな手間もかかんないだろうし」
「ミリットちゃんがそう言うんなら……。んー……。どうしようかな……」
「なら、今度はタイーシャがおれに抱きつきながら寝て良いぞ」
「ならやる!!」
二つ返事。あるいは即答。
こんな決定方法で良いのかよ、と思いながら最初の難関はくくり抜けた。
そう言ったのはクラリスだった。コイツ、平然と言い放ったけど心臓に毛でも生えているのか?
「なにがどう簡単なんだよ、腹黒女」
「赤鬼に腹黒と呼ばれるのも不思議な気分ね。でもまあその無礼は許すわ」
小粋に対し、クラリスはニヒルな笑みを浮かべながら返した。
こ、コイツ……やっぱり心臓がおかしい。毛が2,000本くらい生えていそうだし、なんなら鋼鉄でできていそうだ。
「……で? どんな方法を使えば良いんだ? クラリス」
「スライム娘の特性、知らないの? 貴方たち」
知っているわけねえだろ!! おれは転生者だぞ!? ……と言いたくなるが、他のヤツらもそろって怪訝そうな顔をしたものだから、この場は完全にクラリスのものだ。
「状態異常を起こすことができるスライムって、逆のこともできると思わない? たとえば麻痺状態に陥らせることができるんだから、その解毒剤みたいなものを身体に持っていても変な話じゃないわ」
「んん? おれは別にヒトを麻痺らせたり溶かしたりってのはたぶんできねえぞ?」
「貴方にできるとは端から思ってないわ。できそうなのはその子よ」
クラリスはタイーシャのほうへ目を向ける。見つめられたタイーシャはきょとんとした顔をしながら、「なにが?」とゆるい声色で答える。
「人間と怪物のかけ橋になってくれという話よ。まだ貴方くらいの年頃だとすこし難しいかしら?」
「人間なんて嫌いだもん! 助けたくないよ!」
それもそうだろう。怪物を人身売買している場所デパートメントにいたときから、タイーシャはろくな水分も与えられず見世物にされていたのだから。そんな彼女がヒトを救うために動くなんて愚かしいにも程がある。
だけど、ここで納得してくれないと話が前に進まない。
「タイーシャ、どうしても嫌か?」
「よく分かんないけど……嫌なものは嫌!!」
「おれの頼みでもか?」
おれはタイーシャの目をしっかり見据え、自分が彼女と同じ土俵に立っていると思わせる。タイーシャはおれのことを慕っているだろうから、こうすればうまくいくはずだと。
「…………どうしても、なの?」
「どうしても、だ」
おれとタイーシャを除いた全員が固唾を呑む。大統領の娘を救え作戦第一段階、ここで躓いたら色々難儀である。こちらの常識など知ろうはずもないが、ロスト・エンジェルスの技術力を持ってしても治せない重度の障害を治せるとしたら、それはモンスターの力に違いない。
「……。ロリコンはアンタを必要としてるみたい」
「そうなの? ミリットちゃん」
「そうでしょ。話をしっかり聞いていれば。だから協力してあげれば? そんな手間もかかんないだろうし」
「ミリットちゃんがそう言うんなら……。んー……。どうしようかな……」
「なら、今度はタイーシャがおれに抱きつきながら寝て良いぞ」
「ならやる!!」
二つ返事。あるいは即答。
こんな決定方法で良いのかよ、と思いながら最初の難関はくくり抜けた。
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