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シーズン1 チャプター2 それでもおれは正義のヒーローなんかじゃないっ!!
057 それでもおれはヒーローじゃない!!
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えー! なんだって!? ……まあ、なんとなく分かっていたよ。振る舞いが女子っぽくないもの。嫌々女子になってしまった男子って感じだもの。
「だがまあ肉体は魂の入れ物にしか過ぎない。スライム娘、結構な姿じゃないか」
「どうも。ルーシは前世何者だったの?」
「21世紀最大の怪物と呼ばれていたかね」
「世紀一緒じゃん……」
「ただ世界軸が違う可能性はあるぞ。サイバーパンク・ヨコハマって知っているかい?」
「知ってるよ。…………。そういえば、あの街にはとんでもないマフィアがいるって噂が」
「そのとんでもないマフィアの正体はおれだ。存在しない現象操る能力使って散々殺したからな。だからあだ名は21世紀最大の怪物。とはいえ、ヒトラーやスターリンにはかなわないと思っているが、な」
「ユダヤ人を虐殺したわけでもなく、大粛清を行ったわけでもないからか」
21世紀が始まったばかり、と言っても死亡時点でおそらく20年以上は経過しているが、まだまだ真の怪物は定まっていないだろう。
そんな怪物ルーシはにっこり笑い、「オマエはヒーローか?」と口ずさむ。
「ヒーロー?」
「怪物を解放してェんだろ? おれだったらあんなヤツら利用し尽くすだけだがな。知能と腕力、魔力に優れていようと超少数派に“人権”は与えられねェ。そんな哀れなヤツらのために奔走したのは感じ取れる。だから訊いているんだ。オマエはヒーローなのかってよ」
傍から見ればおれってヒーローなのかもしれない。ミリットやタイーシャを助けたし、他の怪物たちも救おうとしている。わざわざ日本円で300億円に相当する懸賞金を懸けられてでも。
でも、おれの中で『ヒーロー』という称号がピンと来ないのも事実だった。だって流れるがままにいろんなヒトを救っているかもしれないけど、それは偶然のほうがおおきい。自分から救おうとは思っていなかったのも相まって、おれの称号ってなんなんだろうな、って思うときはある。
「だからおれはヒーローじゃないっての」
「だが怪物どもからすればオマエは紛れのないヒーロー、英雄だぞ?」
「それでもおれは正義のヒーローなんかじゃないっ!!」
「声を荒げるほどのことかよ。まあ良いや。元男同士話も合いそうだし、私的な連絡先を渡しておくよ」
ルーシは近くに携帯電話がないことを知り、近くに置いてあった紙に電話番号とSNSのIDを書いた。おれはそれを受け取る。
「さぁーて、行くか」
「歩けないのに?」
「ちょっと縮んでくれよ。そうしたら肩を借りられる」
「分かったよ」
やや面倒だが、身体障害者にも配慮すべきだろう。おれは身体を縮めて、ルーシとちょうど身長が同じになるように調整した。
「あしたにゃロスト・エンジェルスはひっくり返るぞ? 楽しみにしておけ」
濃すぎて胸焼けを起こしそうだった21日目。
それから1日経った異世界転生22日13時30分00秒。
クール・レイノルズ大統領の重大発表が始まり、国内に残っていた怪物たちはどこからともなく、「タイラント陛下万歳!!」と両手を上げるのだった。
「だがまあ肉体は魂の入れ物にしか過ぎない。スライム娘、結構な姿じゃないか」
「どうも。ルーシは前世何者だったの?」
「21世紀最大の怪物と呼ばれていたかね」
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21世紀が始まったばかり、と言っても死亡時点でおそらく20年以上は経過しているが、まだまだ真の怪物は定まっていないだろう。
そんな怪物ルーシはにっこり笑い、「オマエはヒーローか?」と口ずさむ。
「ヒーロー?」
「怪物を解放してェんだろ? おれだったらあんなヤツら利用し尽くすだけだがな。知能と腕力、魔力に優れていようと超少数派に“人権”は与えられねェ。そんな哀れなヤツらのために奔走したのは感じ取れる。だから訊いているんだ。オマエはヒーローなのかってよ」
傍から見ればおれってヒーローなのかもしれない。ミリットやタイーシャを助けたし、他の怪物たちも救おうとしている。わざわざ日本円で300億円に相当する懸賞金を懸けられてでも。
でも、おれの中で『ヒーロー』という称号がピンと来ないのも事実だった。だって流れるがままにいろんなヒトを救っているかもしれないけど、それは偶然のほうがおおきい。自分から救おうとは思っていなかったのも相まって、おれの称号ってなんなんだろうな、って思うときはある。
「だからおれはヒーローじゃないっての」
「だが怪物どもからすればオマエは紛れのないヒーロー、英雄だぞ?」
「それでもおれは正義のヒーローなんかじゃないっ!!」
「声を荒げるほどのことかよ。まあ良いや。元男同士話も合いそうだし、私的な連絡先を渡しておくよ」
ルーシは近くに携帯電話がないことを知り、近くに置いてあった紙に電話番号とSNSのIDを書いた。おれはそれを受け取る。
「さぁーて、行くか」
「歩けないのに?」
「ちょっと縮んでくれよ。そうしたら肩を借りられる」
「分かったよ」
やや面倒だが、身体障害者にも配慮すべきだろう。おれは身体を縮めて、ルーシとちょうど身長が同じになるように調整した。
「あしたにゃロスト・エンジェルスはひっくり返るぞ? 楽しみにしておけ」
濃すぎて胸焼けを起こしそうだった21日目。
それから1日経った異世界転生22日13時30分00秒。
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