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シーズン1 チャプター3 怪物と人間の垣根を超えて

063 入学手続き

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 そんな空気だからなんとなく昔を思い出す。中学くらいはまともに通っていたのかもな。知らんけど。

「お入りください」

 職員室の奥の部屋へ案内され、おれたちは歩みを進めていく。
 職員たちのセリフは様々だ。「カテゴリーⅥの5億メニーだぞ?」「しかし怪物だ」「化け薬でこうなったって噂もあるらしいぜ」「隣にいるのは本物のスライム娘だろ」と。

 好きなだけなんとでも言わせてやれば良い、と感じる。PTG学園は歴史が浅くこの狭いロスト・エンジェルスで生き残りを懸けて闘っている学校だ。おれたちが入ることでその流れは良くも悪くも変わるだろうから。

 奥の部屋は学園長室だったらしく、しかしやたらと豪華なこの職員室の中ではずいぶん簡素なつくりに見えた。
 学園長はおれたちを目視した瞬間立ち上がり、即座に握手を求めた。

「待っていたよ! タイラント陛下にタイーシャちゃん! きょうは足を運んでくれてありがたく思います!!」

「ええ。こちらこそPTG学園に入学できる可能性をいただけたことを感謝しています」

 社交辞令を済ませ、我々はソファーに向かい合って座る。

「早速だけども、PTG学園はいま窮地を迎えているんだ」

「窮地?」

「きゅーち?」

「この国の人口はわずか750万人。学園設備に大金をかけたのは良いものの、やはりメイド・イン・ヘブン学園のような名門校に比べると知名度でも格でも劣っている。赤字経営だしね。そこで君たちの力を貸してほしいんだ」

「もとよりそのつもりですが」

「うん! 確認が取れてありがたいです! ただタイラント陛下は週5日間学校へ通えるほどお暇がないでしょう?」

 あ。このヒト盛大な勘違いしている。おれ週5学校通って勉強し直そうと思ったのに。やっぱり陛下とか閣下とか呼ばれる者には勉学なんて不要なのかもしれない。

「あー……まあそうですな」

「だから陛下には週1日だけ学校に顔を出してもらいたい!! タイーシャちゃんは週5来てもらいたいけどね」

「週5? あたしそんなに学校行くの?」

 タイーシャは初耳かのようにおれのほうを向いて怪訝そうな顔をしてくる。そりゃ学生になるのならば基本的には週5日学校へ通うものだろうに。

「ゲームばかりしてても仕方ないだろ。これをきっかけにして人間の友だちをつくりな」

「フレンドなら100人以上いるのに~」

「リアルでの関わりがなきゃ本物の友だちとは言えないだろ」

「そんなことないよ! そう思ってるのタイラーだけだよ!」

「そうかもしれないけど、学校は良いものだぞ?」

 まあね、学校行っていた記憶なんてすげえ曖昧なんだけどもね。

「……。タイラーがそう言うんなら」

 案外おれの言うことはしっかり聞くことがタイーシャの良いところだ。そこは妹らしく感じる。

「んじゃ契約をまとめましょう。私は週1日登校を目処に。タイーシャは週5日通えるように指導します」

 あっさりすぎるほどに話をまとめてしまった。まさか週5で行けないとは思わなかった(行こうと思えば行けるが、威厳が溶けそうだしできない)が、おおむね満足だ。
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