36 / 80
チャプター2 実力と陰謀の学び舎、メイド・イン・ヘブン学園
036 告白
しおりを挟む
「へェ……」
ルーシは興味があるようだった。彼女はパーラのことを知らない。彼女はきょう入学してきたからだ。知っているほうがおかしい。
だから、そこがトラップになる。
「メントちゃん……その話は」
「言わないさ。でも、いつかは知らないといけねえ。オマエを受け入れる覚悟があるんなら、オマエを親友だって騙るなら、オマエを知ってないといけない」
パーラは言ってほしくなさそうだった。当たり前だ。その内容は極めてデリケートなものだからだ。
「ま、飲もうぜ。そういう細けェ話はあとでもできるだろ? 大丈夫。私はどんなこといわれても引かねェさ」
「……そもそも酒は好きじゃねえ」
「アレルギーか? 珍しいな」
「いや、酒を飲ませて聞き出そうって魂胆が気に入らねえ」
「そうかい……。なら、私たちは勝手に飲むからな」
*
2時間後。
色々あった。簡単にいうと。
まず、アークが真っ先に潰れた。いまとなれば会話も満足にできない。「あー……」か「んー……」しかいわなくなっている。
続いてパーラ。こちらも酔いつぶれている。会話はできるが、どこまでも一方通行だ。「このゲーム知ってる?」と聞いてきたので「知らねェな」と答えれば、「お酒っておいしいね!!」と応答する。しかもボディタッチがやたらと多い。とにかく胸と尻を触られる。風俗店でもないのに。
そしてメリット。こちらは比較的酔っていない。ただ、ルーシが破ったシャツから垣間見えるタトゥーをあからさまにじろじろと見つめてくる。
最後にメント。宣言どおり一滴も飲んでいない。しかし、パーラがうっかり口を滑らせないように注視しているように見えた。
「ルーちゃん……愛してるよ」
「私も大好きさ」
「抱きついて良い?」
「どうぞ」
「んー……ルーちゃん、ちょっと煙草臭いね。でも、良い匂いがする」
別に減るものでもないので抱きつかれているが、抱きつき方がおかしい。女子同士のスキンシップを超えている。対面座位みたいな体勢だ。
「オマエこそ酒臭せェぞ? まァ、どこぞのアホに比べりゃかわいいものだが」
「酔ってるんだもん……キスして良い?」
そこでメントが咳払いをした。
「……おい、ルーシ。言っとくけどな、パーラにキスするんじゃねえぞ?」
「なんでだい? いわゆるキス魔ってヤツだろ? たまにいるんだ。酔っているときにキスばかりせがんでくるヤツが」
「……いや、そうじゃねえんだ」
「そうじゃねェ? じゃあどういうことだい? 発情期にでもなるのかい?」
「……パーラ、帰るぞ。こんなヤツにオマエを任せられねえ」
「……嫌だ」
いまひとつ意味がわからない。いや、なんとなくわかってはいる。しかし、パーラは獣娘だ。だから人間の常識は通用しないとも捉えられるため、ルーシも断言はできない。
「だって……」
そんななか、メリットが煙草を咥えはじめる。
「クソガキ、酒が足りない」
「空気の読めねェヤツだな……。オマエ、この修羅場で酒の無心なんてできねェぞ?」
「私のペースを乱さないで」
「オマエのペースなんて知らねェよ」
「てか、タトゥー入れるのにどれくらいお金かかった?」
「……やはり酔っているのか。そうだな、全身で2~3万メニーってとこか」
「分かった。入れる」
(奇妙奇天烈摩訶不思議。なにをいっているんだ? この根暗は)
「オマエさ、意味わかっているのか? そりゃこの国じゃタトゥーなんてありふれているが、簡単に消すこともできねェんだぞ?」
「いや、入れたいって思ってたし」
「なるほど。誰にも近づいてほしくないと」
「かっこいいから」
(かっこいいから? 本当になに考えているか分からねェ女だ)
「まあ、好きにしろ。私には関係ねェ」
「カネ、貸して」
「あ?」
「3万メニーも用意できない。だからカネ貸して」
「ポルノビデオにでも出りゃ良いじゃねェか。なんなら私が回してやろうか?」
「嫌だ。金貸して。貸してくれるまで私動かない」
ルーシは深いため息をつき、心底呆れたような目つきでメリットを見たあと、ウォッカを1気飲みし、煙草へ火をつけた。
「対価が必要だ。オマエのスキルを説明しろ。それなら貸してやる」
「わかった」
(あそこまで明かさなかったくせに、あっさり明かそうとしているな。本当になに考えているんだ?)
「まあ、良いが……その前に目の前見ろよ。パーラとメントが口喧嘩しているぞ?」
「どうでも良い。アンタが勝手に相手して」
パーラとメントは文字通り口喧嘩をしていた。
ルーシはいまひとつ、ふたりの言葉がわからなかった。ロスト・エンジェルス──通称|LTAS(エルターズ)は訛りが本当にひどい。注意して聞けばなにをいっているのかはわかるのだが、早口でまくしたてられると、正直ブリタニカ語──英語とは思えない。
「ふたりとも落ち着け。というか、なに言っているのか分からねェ。順を追って説明しろ」
「「……実は」」
同時に同じ言葉が出た。ルーシは頷き、ふたりをじっくり見る。
「私は……」
「パーラ……本当にいうのか? 後悔しねえとは限らないぞ?」
「……うん。もう後悔なんて腐るほどしてきた。だから、もう言う。ルーちゃんだったら私を幸せにできると思うから」
(重てェ話なのは確かだな。だが、いまさら驚くような性格でもねェんだな、おれは)
「そうかい。なら言え。どんなことをいってきても、私はしっかり受け入れる。約束するよ」
パーラの口は震えていた。いや、身体が震えていた。目には涙がたまり、そして頼りない身体がいまにもルーシへのしかかってきそうだった。
だからルーシは、パーラを抱きしめた。男時代を考えれば、こういうことをすれば相手は簡単に心を開くことをわかっているからだ。
「ルーちゃん……私はね……」
ルーシのちいさな胸のなかで、小刻みに震えながら、パーラはとぎれとぎれの言葉を探し、やがて告げる。
「ルーちゃんのことが好きなんだ……。恋愛的な意味で」
ルーシは興味があるようだった。彼女はパーラのことを知らない。彼女はきょう入学してきたからだ。知っているほうがおかしい。
だから、そこがトラップになる。
「メントちゃん……その話は」
「言わないさ。でも、いつかは知らないといけねえ。オマエを受け入れる覚悟があるんなら、オマエを親友だって騙るなら、オマエを知ってないといけない」
パーラは言ってほしくなさそうだった。当たり前だ。その内容は極めてデリケートなものだからだ。
「ま、飲もうぜ。そういう細けェ話はあとでもできるだろ? 大丈夫。私はどんなこといわれても引かねェさ」
「……そもそも酒は好きじゃねえ」
「アレルギーか? 珍しいな」
「いや、酒を飲ませて聞き出そうって魂胆が気に入らねえ」
「そうかい……。なら、私たちは勝手に飲むからな」
*
2時間後。
色々あった。簡単にいうと。
まず、アークが真っ先に潰れた。いまとなれば会話も満足にできない。「あー……」か「んー……」しかいわなくなっている。
続いてパーラ。こちらも酔いつぶれている。会話はできるが、どこまでも一方通行だ。「このゲーム知ってる?」と聞いてきたので「知らねェな」と答えれば、「お酒っておいしいね!!」と応答する。しかもボディタッチがやたらと多い。とにかく胸と尻を触られる。風俗店でもないのに。
そしてメリット。こちらは比較的酔っていない。ただ、ルーシが破ったシャツから垣間見えるタトゥーをあからさまにじろじろと見つめてくる。
最後にメント。宣言どおり一滴も飲んでいない。しかし、パーラがうっかり口を滑らせないように注視しているように見えた。
「ルーちゃん……愛してるよ」
「私も大好きさ」
「抱きついて良い?」
「どうぞ」
「んー……ルーちゃん、ちょっと煙草臭いね。でも、良い匂いがする」
別に減るものでもないので抱きつかれているが、抱きつき方がおかしい。女子同士のスキンシップを超えている。対面座位みたいな体勢だ。
「オマエこそ酒臭せェぞ? まァ、どこぞのアホに比べりゃかわいいものだが」
「酔ってるんだもん……キスして良い?」
そこでメントが咳払いをした。
「……おい、ルーシ。言っとくけどな、パーラにキスするんじゃねえぞ?」
「なんでだい? いわゆるキス魔ってヤツだろ? たまにいるんだ。酔っているときにキスばかりせがんでくるヤツが」
「……いや、そうじゃねえんだ」
「そうじゃねェ? じゃあどういうことだい? 発情期にでもなるのかい?」
「……パーラ、帰るぞ。こんなヤツにオマエを任せられねえ」
「……嫌だ」
いまひとつ意味がわからない。いや、なんとなくわかってはいる。しかし、パーラは獣娘だ。だから人間の常識は通用しないとも捉えられるため、ルーシも断言はできない。
「だって……」
そんななか、メリットが煙草を咥えはじめる。
「クソガキ、酒が足りない」
「空気の読めねェヤツだな……。オマエ、この修羅場で酒の無心なんてできねェぞ?」
「私のペースを乱さないで」
「オマエのペースなんて知らねェよ」
「てか、タトゥー入れるのにどれくらいお金かかった?」
「……やはり酔っているのか。そうだな、全身で2~3万メニーってとこか」
「分かった。入れる」
(奇妙奇天烈摩訶不思議。なにをいっているんだ? この根暗は)
「オマエさ、意味わかっているのか? そりゃこの国じゃタトゥーなんてありふれているが、簡単に消すこともできねェんだぞ?」
「いや、入れたいって思ってたし」
「なるほど。誰にも近づいてほしくないと」
「かっこいいから」
(かっこいいから? 本当になに考えているか分からねェ女だ)
「まあ、好きにしろ。私には関係ねェ」
「カネ、貸して」
「あ?」
「3万メニーも用意できない。だからカネ貸して」
「ポルノビデオにでも出りゃ良いじゃねェか。なんなら私が回してやろうか?」
「嫌だ。金貸して。貸してくれるまで私動かない」
ルーシは深いため息をつき、心底呆れたような目つきでメリットを見たあと、ウォッカを1気飲みし、煙草へ火をつけた。
「対価が必要だ。オマエのスキルを説明しろ。それなら貸してやる」
「わかった」
(あそこまで明かさなかったくせに、あっさり明かそうとしているな。本当になに考えているんだ?)
「まあ、良いが……その前に目の前見ろよ。パーラとメントが口喧嘩しているぞ?」
「どうでも良い。アンタが勝手に相手して」
パーラとメントは文字通り口喧嘩をしていた。
ルーシはいまひとつ、ふたりの言葉がわからなかった。ロスト・エンジェルス──通称|LTAS(エルターズ)は訛りが本当にひどい。注意して聞けばなにをいっているのかはわかるのだが、早口でまくしたてられると、正直ブリタニカ語──英語とは思えない。
「ふたりとも落ち着け。というか、なに言っているのか分からねェ。順を追って説明しろ」
「「……実は」」
同時に同じ言葉が出た。ルーシは頷き、ふたりをじっくり見る。
「私は……」
「パーラ……本当にいうのか? 後悔しねえとは限らないぞ?」
「……うん。もう後悔なんて腐るほどしてきた。だから、もう言う。ルーちゃんだったら私を幸せにできると思うから」
(重てェ話なのは確かだな。だが、いまさら驚くような性格でもねェんだな、おれは)
「そうかい。なら言え。どんなことをいってきても、私はしっかり受け入れる。約束するよ」
パーラの口は震えていた。いや、身体が震えていた。目には涙がたまり、そして頼りない身体がいまにもルーシへのしかかってきそうだった。
だからルーシは、パーラを抱きしめた。男時代を考えれば、こういうことをすれば相手は簡単に心を開くことをわかっているからだ。
「ルーちゃん……私はね……」
ルーシのちいさな胸のなかで、小刻みに震えながら、パーラはとぎれとぎれの言葉を探し、やがて告げる。
「ルーちゃんのことが好きなんだ……。恋愛的な意味で」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる