もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら

東山統星

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チャプター2 実力と陰謀の学び舎、メイド・イン・ヘブン学園

035 ”幼女”ルーシVS”ランクB”メント

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「……ッ!?」

(攻撃が入った? なぜだ? クールと闘ったとき、おれは自分の能力を理解できていたはずだ。は存在しないが、は存在する以上、攻撃がとおるわけがないだろ……ッ!?)

「……ようやくあせったみたいだな。ロスト・エンジェルス……いや、世界でもごく少数の法則を乱すスキルを持ってると踏んだ!! 蹴りをつけるぞっ!!」

 土壇場に追い込まれたルーシ。余裕のあった表情から、すこしあせりが見えはじめた。
 ルーシがこの世界に来て闘った最初の強敵はクール。だが、クールの攻撃すら、自分の能力を定義できれば防御できたし、彼のような人間にも攻撃を加えられた。
 だが、今回は違う。ルーシはメントに能力を考えさせた。自分の能力は一切喋っていない。だというのに、彼女はそれを割り出した。
 だから、ルーシにとって2回目の苦戦……いや、下手を打てば負ける闘いがはじまる。

「四の五の言ってられねェなッ!!」

 ルーシは背中に翼を広げた。ルーシの能力はなぜか翼が生える。だが、これはクールも同様なので、別に珍しいものでもない。いわば能力の底上げに使うのだ。

 だが、
「銀色の翼……? いや、銀鷲の翼か」
 メントはそういいはなった。

(銀鷲? おれの翼は黒鷲のはずだ。黒い翼のはずだ。なにが起きている?)

 それを考える間もなく、ルーシはメントによる攻撃がはじまる。以前のような矢印だ。
 そして翼で身体を隠し、ルーシはそれを防ごうとする。
 だが、またもや妙な現象が起きた。

(防御し切れていないッ!?)

 理論上はどんな攻撃もはねのける、必殺の黒い鷲の翼。
 しかし、メントの攻撃は一部だけ貫通し、ルーシの右腕を貫く。

「効いたな!? だったら……っ!!」

 またもや矢印が動く。

(再生もうまく作動していねェ。ということは、ッ!?)

 超能力は存在しない。この世界においては。
 魔術は存在する。この世界においては。
 それが混ざるとどうなるか?

「まいったぜ……。あのアホ天使め。どこまでもおれの足を引っ張りやがる。なら──」

 矢印が放射された。
 ルーシはここで気がついていた。メントの矢印はまっすぐしか飛ばないのだ。発射した時点で定めた狙い以外の場所へ飛ばせないのである。
 だったら、ひとまず回避だ。
 ルーシは翼をなびかせ、空を飛ぶ。

「交わしたかっ!? でも、もう1回撃てば……!!」

 だからといって、ルーシは鳥ではない。自由自在に空を動けるわけではないのだ。ましてやここは無風に近い。存在しない風を作れる確証もない。ならば、いつものように空を飛んで華麗に移動はできない。
 そんなことはメントも承知しているようだった。
 そして、敗北が決まりかねない一撃が放たれる。


「……ギリギリセーフだな」


 ルーシの背中には、黒鷲の翼──勝利を確定させる壮麗な翼が動いていた。

「…………っ!?」
「わかっているみてーだな。そうだ。もう隙間はねェ。だが時間もねェ。ここは……」

 使えるものならばすべて使う。それがルーシの考え方だ。法則を乱すことで戦闘を強制的に終了させられるのならば、それに越したことはない。

 *

「──やっぱ不良ぶってるでしょ!! 煙草なんて吸ったら肌荒れるし、口も臭くなっちゃうよ?」
「──クソガキ。コイツ、殴っても死なない?」
「──やめておけよ。悪意あっていっているんじゃないんだ」
「──……帰りたい」

 声、が漏れていた。パーラと女みたいな出で立ちをした少年とヤニカスと……アイツだ。

「よォ、起きたか。ウェルカムドリンクだ」

 メントは床に寝転がっていたようだった。仰向けなので、目を彼らへ向ければ、スカートの中身が見える。
 パーラは意外なほどに色っぽいものだった。
 ヤニカスは見た目どおり地味な黒色だった。
 そしてアイツは……トランクス? 男物ではないか。

「……意味わかんない」
「いつかわかる。ほら、なに飲む?」
「……まずは説明してよ」
「オマエは負けた。私は勝った。それだけだ。だが、良い勝負だった。そしてオマエを痛めつけると、パーラが泣いちゃうだろ? だから気絶してもらった。わかったか?」

 そんな会話をしていると、どうも酔い始めていてこちらに注意を向けていなかったパーラが、機敏に反応する。

「メントちゃん!! 大丈夫!? ルーちゃんは一切怪我させてないっていうけど、私心配で……」
「……ああ。大丈夫さ。むしろ……ルーシってヤツのほうを心配したほうが良いと思う」
「心配ご無用。この程度なれているのでね」

 ルーシはブレザーを脱ぎ、長袖のワイシャツの右部分を切り取って無理やり包帯にしていた。
 だが、そんなことは些細な問題だった。

「……なに、そのタトゥー」
「かっこいいだろ?」
「会話を成立させようという努力はしねえの?」
「おお、毒舌だな。なあ、パーラ」
「ルーちゃんのタトゥーはね、ルーちゃんの国だったら10歳のときに入れるものなんだって!! んでさ、キャメルちゃんと親戚だったらこの国の人じゃないのって聞いたら、お父さんが海外で作った子どもがルーちゃんなんだって!! だからその文化を守ってるって!!」
「そういうこった」ルーシは煙草を咥える。
「……煙草は嫌いだ。臭いし、健康に悪い」
「そんなに私と会話したくねェか? 嫌いなものこそ受け入れるんだ。そうすりゃ、見えてくる世界も変わってくる」
「でもさ、ルーちゃん煙草やっぱ臭いよ!!」
「そうかい」

 パーラの言葉を聞き、ルーシはあっさり煙草を携帯灰皿へ入れた。結局なにがしたいのかよくわからない人間である。

「まあ、オマエだってパーラのことが好きなんだろ? だったら友だちだ。私たちは友だち。親友だ」
「……なんもしらないくせに」
「あ?」
「アンタはパーラのことをまったく知らない。そんな人間にあたしの親友を任せらんねえよ」
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