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チャプター3 すべての陰謀を終わらせる陰謀、壮麗祭
063 ランク・セブン・スターズ
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どうやらきょうは壮麗祭のメインディッシュらしい。
つまりは戦闘が始まるということだ。殺気立つキャメルを見ていれば、誰にだってわかる話である。
「キャメルお姉ちゃん、結局壮麗祭の詳細な説明を誰からも聞いてなかったんですけれど」
「……ええ、簡単よ。ルーシちゃんや私のようなランクAとランクBは本戦出場確定。他は予選で決まる。予選で出られる生徒はふたり。分かるかしら?」
「メリットに勝ってほしいなー」とぼけた態度だ。
「……ああ、あの子もいたわね」
(試合なんだよな? 殺し合いするんじゃないんだよな?)
「ともかく、お父様を待ちましょう」
キャメルとルーシはひとりの人間の所為で結び付けられている。ロスト・エンジェルスでもっとも偉大な魔術師というテレビ番組の投票にて最上位を毎年のごとく取り続ける化け物によって。
「お兄様とも会えるのね……。素晴らしいじゃない」
(妹ってこんな目で兄を待つのか? そりゃあのアホも来ねェはずだ)
そう思っていると、MIH学園裏側の駐車場に1台の車が止まった。黒塗りの高級セダンだ。
ついに彼が来た。実のところ、MIH学園へ来訪したのはわりと最近の出来事だったりする。
「よォ」
「やあ」
クールとルーシは手で挨拶する。このふたり、意外と会う機会がすくない。緊急事態以外では、クールの持つ組織は独自行動しているからだ。
「お兄様……」
(だから、目が怖ェんだよ。ヤク中でもそんな目つきしねェぞ?)
「おお。久々だな、キャメル。元気だった?」
「ええ、もちろん。お兄様に認められるまで健康など崩せませんから」
「認める、か。よし。きょうの演説決―めた」
「決めてなかったの?」ルーシは半笑いだ。
「おれは忙しいんだよ。でも、今回は特別だ。娘と妹が出る大会だからな。だからふざけた演説することもできねェし、いろいろ考えたんだよ」
「お兄様のいうことに間違いはないです」
「マジ? ならひとつ教えてやるよ。そこにいるおれの娘、ランクSだよ」
ルーシは溜め息と軽い舌打ちをした。こうなるとクールがこのあとなにを語るのかもわかってくる。
「……え」
「ん? ランクSわかるだろ? まァ10歳がランク・セブン・スターズズになったら厄介事が多いからな。この学校も相変わらずだし。そんなわけで書類上はランクAになってるだけで、評価はランクSだ」
「……ルーシちゃん、どういうことかしら?」
されどルーシは普段のペースを一切崩さない。クールがなにをいおうが、どのみち発覚していたことだ。むしろここで暴露されたほうが、喧嘩にならないだけ微笑ましい。
「そのままの意味ですよ。ランクSってだけです」
「私をバカにしてたってこと?」
「そんな意図あると思いますか? お父様がいったように、私を疎んで攻撃してくる連中がいるかもしれないから隠していただけです。それもきょうで終わりですが」
キャメルの目の色が変わる。ルーシはクールへアイコンタクトを送った。
「……ああ、きょうでおしまいだ」クールはニヤッと笑う。
「なにをもって終わりだというんですか!?」激昂するキャメル。
「ネタバラシはつまんねェけど、妹にはいっておこうか。壮麗祭本番、最大ふたりのランクSが生まれる。条件はふたつ。ルーシに勝つか、壮麗祭で優勝するかだ」
「……っ!!」
「なにも深く考える必要はねェ。勝てば良いんだ。オマエが勝てば全部おしまいだろ?」
兄へのコンプレックス。ランク・セブン・スターズへの渇望。いままで挑んできたことへの精算。
それが終わり、新たなスタートを切れる。キャメルはまったく別の次元へ進むことができるのだ。
「まァ、うちの娘は忖度しねェけどな」
端からルーシもキャメルを勝たせようとは思っていない。流れに乗るだけならば、ルーシはキャメルなど敵ではない。それなのにキャメルへチャンスを与えようとしているのだ。おそらくつかめないであろうチャンスを。
「……そうですね。勝てば良い。勝てば全部報われる。もうなにかに惑わされることもない」
「よっしゃ! その意気だ! ルーシ、行こうぜ」
「ええ」
キャメルを置いて、ルーシとクールはMIH学園へ足を踏み入れる。
ルーシはニヤリと笑っていた。クールも同様だった。
「おもしれェな。学生ってのは。かなうわけもない夢が目の前に与えられる。それを追いかけて必死になれる。おれも30歳超えてそういう感情忘れちまったのかもな」
「燃え尽き症候群かい? まだ夢は終わっていねェぞ?」
「実質かなえたも同然だろ? 姉弟とおれがいて、敵なんているのかよ?」
「まだまだはじまったばかりさ。挑み続けるだけだ。あしたを掴むためにな」
「姉弟らしい言草だな。さて、腑抜けたガキどもにカフェインぶちこんでやろう。オマエらの人生ははじまったばかりだってことを教えてやろう。このおれが、な」
*
ルーシはあの連中と集まっていた。
「よォ。完敗したようだな」
メントとメリットの目は血走っている。飢えた獣のようだ。目の前に草食動物がいるのに、手が届かないことに憤っているのだろう。
「ルーちゃん! きょうルーちゃんのお父さんが来るんだよね!? 挨拶したほうが良いかな?」
「そういうのを嫌う人だから、しなくて良いよ」
「「お父さんが来る!?」」
ルーシは煙草を咥えて、うろたえる彼女たちを面白がる。
「ああ、来るよ。というか、きょうの開幕演説はあの人がやる。クール・レイノルズがな。知らなかったの?」
「……とんでもないのが来る」
「……クールさんっていったら、この学校屈指のレジェンドじゃねえか。握手してくんねえかな」
「頼んでみようか? メント」
「いや、緊張し過ぎて手汗まみれになるのわかってるからやめとく……」
「そうかい……」ルーシは火をつけて、「それはともかく、新しいお友だちの紹介だ。パーラ、ここへ来るように伝えておいた?」
「教えておいたよ~!! ふたりとも、変なこといわないでね?」
つまりは戦闘が始まるということだ。殺気立つキャメルを見ていれば、誰にだってわかる話である。
「キャメルお姉ちゃん、結局壮麗祭の詳細な説明を誰からも聞いてなかったんですけれど」
「……ええ、簡単よ。ルーシちゃんや私のようなランクAとランクBは本戦出場確定。他は予選で決まる。予選で出られる生徒はふたり。分かるかしら?」
「メリットに勝ってほしいなー」とぼけた態度だ。
「……ああ、あの子もいたわね」
(試合なんだよな? 殺し合いするんじゃないんだよな?)
「ともかく、お父様を待ちましょう」
キャメルとルーシはひとりの人間の所為で結び付けられている。ロスト・エンジェルスでもっとも偉大な魔術師というテレビ番組の投票にて最上位を毎年のごとく取り続ける化け物によって。
「お兄様とも会えるのね……。素晴らしいじゃない」
(妹ってこんな目で兄を待つのか? そりゃあのアホも来ねェはずだ)
そう思っていると、MIH学園裏側の駐車場に1台の車が止まった。黒塗りの高級セダンだ。
ついに彼が来た。実のところ、MIH学園へ来訪したのはわりと最近の出来事だったりする。
「よォ」
「やあ」
クールとルーシは手で挨拶する。このふたり、意外と会う機会がすくない。緊急事態以外では、クールの持つ組織は独自行動しているからだ。
「お兄様……」
(だから、目が怖ェんだよ。ヤク中でもそんな目つきしねェぞ?)
「おお。久々だな、キャメル。元気だった?」
「ええ、もちろん。お兄様に認められるまで健康など崩せませんから」
「認める、か。よし。きょうの演説決―めた」
「決めてなかったの?」ルーシは半笑いだ。
「おれは忙しいんだよ。でも、今回は特別だ。娘と妹が出る大会だからな。だからふざけた演説することもできねェし、いろいろ考えたんだよ」
「お兄様のいうことに間違いはないです」
「マジ? ならひとつ教えてやるよ。そこにいるおれの娘、ランクSだよ」
ルーシは溜め息と軽い舌打ちをした。こうなるとクールがこのあとなにを語るのかもわかってくる。
「……え」
「ん? ランクSわかるだろ? まァ10歳がランク・セブン・スターズズになったら厄介事が多いからな。この学校も相変わらずだし。そんなわけで書類上はランクAになってるだけで、評価はランクSだ」
「……ルーシちゃん、どういうことかしら?」
されどルーシは普段のペースを一切崩さない。クールがなにをいおうが、どのみち発覚していたことだ。むしろここで暴露されたほうが、喧嘩にならないだけ微笑ましい。
「そのままの意味ですよ。ランクSってだけです」
「私をバカにしてたってこと?」
「そんな意図あると思いますか? お父様がいったように、私を疎んで攻撃してくる連中がいるかもしれないから隠していただけです。それもきょうで終わりですが」
キャメルの目の色が変わる。ルーシはクールへアイコンタクトを送った。
「……ああ、きょうでおしまいだ」クールはニヤッと笑う。
「なにをもって終わりだというんですか!?」激昂するキャメル。
「ネタバラシはつまんねェけど、妹にはいっておこうか。壮麗祭本番、最大ふたりのランクSが生まれる。条件はふたつ。ルーシに勝つか、壮麗祭で優勝するかだ」
「……っ!!」
「なにも深く考える必要はねェ。勝てば良いんだ。オマエが勝てば全部おしまいだろ?」
兄へのコンプレックス。ランク・セブン・スターズへの渇望。いままで挑んできたことへの精算。
それが終わり、新たなスタートを切れる。キャメルはまったく別の次元へ進むことができるのだ。
「まァ、うちの娘は忖度しねェけどな」
端からルーシもキャメルを勝たせようとは思っていない。流れに乗るだけならば、ルーシはキャメルなど敵ではない。それなのにキャメルへチャンスを与えようとしているのだ。おそらくつかめないであろうチャンスを。
「……そうですね。勝てば良い。勝てば全部報われる。もうなにかに惑わされることもない」
「よっしゃ! その意気だ! ルーシ、行こうぜ」
「ええ」
キャメルを置いて、ルーシとクールはMIH学園へ足を踏み入れる。
ルーシはニヤリと笑っていた。クールも同様だった。
「おもしれェな。学生ってのは。かなうわけもない夢が目の前に与えられる。それを追いかけて必死になれる。おれも30歳超えてそういう感情忘れちまったのかもな」
「燃え尽き症候群かい? まだ夢は終わっていねェぞ?」
「実質かなえたも同然だろ? 姉弟とおれがいて、敵なんているのかよ?」
「まだまだはじまったばかりさ。挑み続けるだけだ。あしたを掴むためにな」
「姉弟らしい言草だな。さて、腑抜けたガキどもにカフェインぶちこんでやろう。オマエらの人生ははじまったばかりだってことを教えてやろう。このおれが、な」
*
ルーシはあの連中と集まっていた。
「よォ。完敗したようだな」
メントとメリットの目は血走っている。飢えた獣のようだ。目の前に草食動物がいるのに、手が届かないことに憤っているのだろう。
「ルーちゃん! きょうルーちゃんのお父さんが来るんだよね!? 挨拶したほうが良いかな?」
「そういうのを嫌う人だから、しなくて良いよ」
「「お父さんが来る!?」」
ルーシは煙草を咥えて、うろたえる彼女たちを面白がる。
「ああ、来るよ。というか、きょうの開幕演説はあの人がやる。クール・レイノルズがな。知らなかったの?」
「……とんでもないのが来る」
「……クールさんっていったら、この学校屈指のレジェンドじゃねえか。握手してくんねえかな」
「頼んでみようか? メント」
「いや、緊張し過ぎて手汗まみれになるのわかってるからやめとく……」
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