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全ての陰謀を終わらせる陰謀

RANK:4 空間閉鎖の終焉

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「死んだ先の世界には何があるんだろうな?」
「案外何もなかったりな。」
PKDI:RANK4に指定されている超能力者の脳髄を欲しがる者や組織は数しれずに存在する。言い換えてしまえばということだ。
「頼む…。後生だ…。」
「お前もはや何がしたいんだ?銃殺刑ってのは割と名誉がないと起きないんだぞ?それともなんだ。脳が世界中の研究者に貢献して、やがて民衆にも多大なる貢献をするのが気に食わんのか?」
手足を縛られ、何度も何度もパイプで殴られた顔は大きく腫れ、道ずれにしようにも思考が纏まらない。日頃のストレスを解消するために殴られ続けるサンドバッグの気分を味わっているのだ。
「いやぁ…。いい発散だ。段階4の生徒が一方的に殴られ続けるとどんな戯言をほざくのか。っていう論文でも書くか!」
「なァ、よくよく考えれば臓器も売り物だったな。学園横浜の持ってるパイプで売り飛ばせるし…。やっぱ銃殺はやめだ。」
縛りを外し、大智と共に学園横浜所有のヘリコプターまで引きづっていく。巨大な学園横浜全体が見渡せる程の高みにて、リーコンはパラシュートを阪浩に渡すのだった。
「チャンスをやろう。お前はヘリコプターからパラシュート付きで飛び降りたことはないな?なら、このパラシュートをやるから飛び降りていいぞ。もし生還すれば、これから一切文句をつけない。」
それに歓喜したような阪浩の顔を見ると、リーコンと大智は笑いを堪えるのが精一杯だった。混乱状態というものはここまで人を馬鹿にするという論文の1つでも書けそうだった。
「じゃ、行ってこい。」
ヘリコプターの運転手は困惑しきった顔で経過を見つめるが、リーコンが一瞬向けた拳銃に恐れをなして何も言わなかった。
「もしもし、学園横浜内務委員だ。遺体回収の用意を頼む。学園横浜の敷地内に落ちなかったとしてもこちらが回収することが好ましい。以上。」
なんとか真面目な態度で仕事を終えた。電話を切ると、狭いヘリコプターの中で2人は大笑いするのだった。
「2000年のダーウィン賞を知らなかったのが運の尽きだったな!いやァ!面白いことをやってくれたな!」
2000年生まれミレニアム世代の誇りだあいつは!笑いが止まらねェ!あー、苦しいわ!」
ダーウィン賞、愚かな行為で死ぬことによって自らの劣った遺伝子を無くす、それによって人間の進化に発展した者に贈られる賞。
「あー、楽しさ重視でやっちまったが、脳髄回収出来るのか?ぐちゃぐちゃになってんぞ今頃。」
「細胞が1つでもあればそこから再生できるし…。更に言えば、ついさっき抜いたこの髪の毛1つで再現しちまえばいいのさ。」
2000年ダーウィン賞受賞、男性、フィリピン共和国。ハイジャックに失敗し自製のパラシュートを背に飛行機から脱出するも墜落死。
奇妙な現象は17年後の日本においても繰り返されたのだった。
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