田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件

マルルン

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1年目の春~夏の件

駅前ダンジョンを順調に潜って行く件

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「どんな感じだったかな、紗良に香多奈……初めてチームを、2つに分けて行動してみたけど。あまりすべきでは無いかな、例え雑魚しかいないと分かっていても」
「いえ、特に怖いとかも無かったですよ……? 時間節約も大事ですもんね、魔素の濃いダンジョン内の滞在は、なるべく短くが常識っぽいですし。
 まぁ、ベテラン探索者はダンジョンに泊まり込みとかしてるみたいですけど」

 そうなんだと、同じく怖くは無かったよと返事をする末妹。何しろ同伴したミケとコロ助は、雑魚モンスターなど歯牙にも掛けない暴虐振り。
 そしてそれは、この第3層でも同じだった。雑兵と化したゴブリンたちを、情け容赦なく蹴散らして行くその勇姿と来たら。

 ついでにこの層の本道の突き当り部屋も、同じく綺麗に掃除済み。そして動く敵の姿が無くなった、小部屋に当たりの宝箱を発見。
 いや、それは宝箱と呼ぶのも烏滸おこがましい、山の峠道によく捨てられている廃棄物そのものだった。車のタイヤである、サイズからして恐らくは普通車のそれだろう。

 それが4つほど、重ねられて部屋の隅に山を作っている。それを宝箱と評したのは、その空洞の中にアイテムが放り込まれていたからに他ならない。
 しかも結構雑多で、今回は武器や装備も多いと来ている。

「えっと、手斧に革の胸当てに、金属製の丸盾に木の棒……ワンドかなぁ? さっきのゴブの中に、1匹だけ魔法使いっぽいのがいたよね。
 そいつが確か、こんな装備持ってなかった?」
「あぁ、確かに持っていたかもな……他には骨製のナイフと、ポリタンクかな? 中身がガソリンだと有り難いけど、多分この色は回復ポーションだろうな」

 青いポリタンクには、並々と4ℓ程度の液体が入っていた。ガソリンがほぼ輸入出来なくなった現在、その価値は物凄く跳ね上がっている。
 護人は匂いと色合いから、回復ポーションだと推測して回収する。それでも売れば、この量だと4万円以上になる計算だ。

 有り難く持って来たボトルに回収しつつ、他に取りこぼしが無いかチェック。確認を終えたら、隣の階段を下りて次の層へと移動する。
 盾や手斧も、持ち歩くにはいかにも重くて仕方がない。ただし、ダンジョンと言うのは、地面に置かれていた物を勝手に吸収してしまう特性があるらしく。

 帰りに同じ道を通るから、後で回収しようとの手抜きな方法が通用しないらしいのだ。紗良が動画から得た知識だけど、折角得たアイテムで確かめてみたくも無い。
 そんな訳で、紗良と香多奈で頑張って持ち帰る事に。

 何しろ前衛の2人は、戦いになると動き回らないといけない。重い荷物を背負うなど、割と言語道断な立ち位置である。
 香多奈も我がままでついて来ている手前、重いよと文句など口にしない。それ以上に、換金すれば幾らになるかなとの楽しみが上回るとも。


 そんな思いで進む第4層だが、出迎える敵もほぼ前の層と同じだった。魔法を使うゴブリンに、コロ助がやや苦戦した程度。
 ってか、戦闘で負った火傷を、現在紗良が治療中である。他の敵に関しては、既に倒してしまって本道は至って静かなモノ。

 後は支道だが、張り切った香多奈がミケを連れて行って来るねと叔父に声を掛けている。相棒のコロ助は治療中で、それだと護衛がいないと言うのに。
 さすがにそれは、護人に止められて許可は下りなかった。

「コロ助の治療を待ちなさいよ、アンタも薄情だね!」
「だって、また宝箱があるかも知れないじゃん……ミケさんさえいれば、雑魚を倒すのなんてあっという間だよ?」
「もうっ、仕方ないから私とツグミがついて行ってあげるよ。それならいいでしょ、護人叔父さん?」

 そんな訳で、支道のお掃除を請け負う仲良し(?)姉妹である。念願かなって、その内の1部屋に今度はスタンダードな木箱の宝箱の設置を発見出来た。
 嬉々として中身を確認する香多奈だが、しかしその中身も割とスタンダード。鑑定の書が3枚に白い魔玉が4個、それから黄色い小粒の魔石が4個入っていただけ。

 そして少女の肩の上で戦利品を眺めていた、妖精ちゃんから有り難い注釈が。今手に入れた石は、光属性の発光石と言うモノらしい。
 つまりは、魔力を込めれば勝手に浮遊して発光するから、ダンジョン探索にとっても便利だとの事。それを聞いて、素直に言われた通りに試す香多奈。

 そうすると魔玉は宙に浮かび上がり、随分と明るい光で周囲を照らし始めた。凄い光量に、思わず感嘆の声を上げる姫香と香多奈である。
 このダンジョンは通路に松明が備えられているので、それほど光源には困らない。とは言え、洞窟系のダンジョン攻略には普通に役に立ちそう。

 浮かれながらも護人達と合流した2人と2匹、次の層はひょっとして中ボスがいるかなとか話しつつ。降りた先の第5層、予想通りに通路の奥に大きな扉が窺えた。
 その手前には、1ダースを超えるゴブの群れが。

 そいつ等はバリケード柵を設置しており、まるで彼らの拠点である。そこから弓や魔法が飛んで来て、ハスキー軍団も近付くのに苦労している。
 護人も3層で得た丸盾を構えて、後ろに姫香とレイジーを潜ませる作戦。先頭に立って敵の拠点の防壁を突破、そこから躍り出てゴブリンに躍りかかる両者。

 局地的な戦いながら、派手に炎をき散らすレイジーは左に展開。一方の右側は、護人と姫香のペアで潰しに掛かる。
 そして敵の気がれた瞬間に、ツグミとコロ助も突っ込んで来た。場は一気に密集体形へ、こうなると弓も魔法も使えない。

 ってか、当たるを幸いなぎ倒す姫香の勇ましい活躍振りは見事の一言。ゴブの耳障みみざわりな悲鳴なのか絶叫が、周囲に響き渡って行く。
 閉じた大扉の前で、束の間の死闘が繰り広げられて行く。

 数分後には、ゴブリンの影は全て魔石へと変わっていた。それを甲斐甲斐しく回収するルルンバちゃん、幸いにもこちらの被害は軽微で済んでいた。
 それを紗良の魔法で回復中、念の為にとMP回復ポーションがレイジーやミケや姫香に振る舞われる。2度目の中ボス部屋挑戦に向けて、出来る準備は怠らない。

 作戦は前回と一緒で、姫香で速攻を掛けるぞと護人の言葉に。了解と、元気に返事をする姫香と香多奈の姉妹である。
 今度も爆破石を使うねと、ボス戦に向けてテンションの上がっている香多奈である。元気だなと思う護人だが、前回も5層のドロップはとても良かった。

 その辺がモチベーションになっているのかも、そんな気がしてならないリーダーだったり。そんな中、治療が終わりましたと紗良が家族に声を掛ける。
 これで準備は整った、後はこの部屋のボスを始末するだけ。



 毎度の様に準備と呼吸を整えて、それじゃあ入るぞと護人の号令掛け。子供たちの返事と共に、大きな扉が音を立てて開かれて行く。
 室内に待ち構えていたのは、割と巨体の獣人だった。それから豚顔の獣人が3匹と、ついでの雑魚ゴブリンが前方に5匹配置されている。

 恐らく中ボスの真ん中の敵は、身長は2メートルで肌の色は褐色でまるで鬼のよう。それを見た紗良が、オーガかなぁと自信なさげに呟く。
 良く分かんないと、それを受けた香多奈は返事と同時に投擲とうてきの動作。姫香も同じく、予備に持って来たシャベルを中ボスに向けて槍の様に投げ付ける。

 そして派手な炸裂音と、シャベルに胸板をえぐられたボス鬼の絶叫。同時に飛び交ったミケの雷槌に、雑魚のゴブリンは一掃されて行く。
 相変わらず、一切情緒の無い来栖家チームのボス戦の戦い振りである。気付けばハスキー軍団は、豚顔の獣人と接近戦を行っていた。

 あれはオークかなぁと、相変わらず呑気な分析を行っている紗良の隣で。撮影をしながら、もう一回爆破石を投げ込む猶予ゆうよはあるかなぁと少女の小言。
 それを受けて、もう接近戦が始まってるから駄目だぞと、リーダーの護人の鋭いツッコミが。さすがに広範囲にダメージを与える石を、敵味方の交わるエリアに放たれたらたまらない。

 姫香のシャベル投げの終了を待って、護人が盾を構えて突っ込む姿勢を取る。その後ろに素早く陣取る姫香、ミケも今回はそれに参加している。
 中ボスはタフなようで、2本のシャベル攻撃を受けても沈む事は無かった。逆に派手に怒らせたようで、大量の血を流しながらこちらに突っ込んで来る構え。

 それを迎え撃つ護人、部屋の中央で両チームのおさが衝突を果たす。推定オーガの武器は、人の背丈ほどもある巨大な大剣だった。
 そんなモノで殴られたら洒落にならないと、素早く敵の懐に潜り込む護人。剣の刃を受けると不味いので、中ボスの手首に丸盾をブチ当てて攻撃の勢いを殺すナイス戦略。

 その隙に、ミケの雷攻撃と姫香のスキル込みの一撃が敵の足首にヒットする。2メートルを超す巨体が、その勢いに負けて派手に横転する。
 その頃には、ハスキー軍団がオーク3匹を揃って始末し終えていた。特に香多奈の応援を受けたコロ助が、絶好調と言うか巨大化して無双していた。

 相手は揃って、槍と丸盾を装備していたが関係なかった模様。立派な革鎧すら、ハスキー軍団の前には役に立たずに残念至極しごく
 揃って丸焼きにされ、そして首筋を嚙み切られて魔石に変わって行った。今度は怪我を負った者も存在せず、後はリーダーの戦況を見守るのみ。


 そちらも現在、巨大な敵を相手に押せ押せの状況である。不甲斐なく足を狙われ倒された敵将は、絶叫しながら立ち上がろうと苦戦中。
 一方の護人は、巨大な武器を敵から手放させようと手首に向けてシャベルを突き立てる。遊撃の姫香は、何と身軽に倒れたオーガの背中へと飛び乗った。

 そして後衛の香多奈に向けて、『応援』しろとの手招きアピール。合図を察した末妹は、頑張れお姉ちゃんとの威勢の良い掛け声を後衛から放った。
 それに加えて、姫香は自らの『身体強化』スキルで能力を上昇させる。それから満を持して、愛用の備中ぐわを相手の首筋目掛けて振り下ろす。
 その一撃は、見事に狙い違わずオーガの急所を射止めた。

 派手な闇色の奔流と共に、魔石にと変わって行く敵の中ボス。ほとんど見せ場が無かったのは、見掛け倒しと言うか護人チームが強過ぎたせいかも。
 そしてピンポン玉大の魔石と一緒に、恒例の嬉しいドロップ品が幾つか。念願のスキル書が1枚と、それからオーガが使っていた大剣が1本。

 大剣の方は、残念ながら持って帰る労力の方が大変かも。姫香もそれは完全に無視して、スキルの書を拾って護人へと差し出す。
 部屋の奥に宝箱も発見しており、姫香は末妹の護衛にツグミと一緒に歩いて行く。紗良は律儀にも、傷ついた仲間がいないかチェックして回っている。

 何しろ人間は自分で申告出来るけど、動物たちはそうも行かない。ペット達の毛皮をモフモフしつつ、長女は皆に怪我が無いかの確認作業。
 今回の中ボス戦では、幸いにも怪我した者はいなかった。リーダーの護人にそう報告して、紗良は妹たちの賑やかな宝箱チェックに加わって行く。

 宝箱に仕掛けは無かったようで、姉妹は入手したアイテムの確認作業中に忙しそう。中からは妙なピンク色の薬品と鑑定の書が2枚、爆破石が4個と鬼の意匠の首飾りが出て来ていた。
 それを一喜一憂しながら、手にする子供達であった。

「あ~ん、数も少ないし良い奴が入ってない気がする……鑑定の書が無いと、魔法の掛かったアイテムかどうかも分かんないし。
 紗良お姉ちゃん、今回の鑑定の書は何枚だっけ?
「えっと、ここで2枚って事は……合計で5枚かな、確かにいつもより少ないかもね? このダンジョンは、武器とか防具の入手率が高かったかなぁ。
 そこに落ちてる剣なんて、大き過ぎて持って帰れないよ!」
「うん、アレはここに置いて行こう……この鬼の顔の付いた首飾り、魔法の品っぽい気もするよね? 拾った武器や防具とかにも、ひょっとしたら魔法が掛かってるかも知れないよ。
 今回はルルンバちゃんの鑑定もしたいし、鑑定の書はもう少し欲しいよね」

 そんな煩悩が、今回の子供たちの原動力となった感は否めない。そして余力も時間もあるから、もう少しだけ潜ってみようとの提案が姫香と香多奈の両者から。
 確かに前回に較べても、この5層までそんなに苦労もしていない。時間もここまで1時間とちょっと、余力も確かに有り余っている気もする。

 結果、家族間の多数決でもう2階層かそこら降りてみようとの話になった。来栖家チーム的には、5層以降の探索は実は初の試みだったりする。
 そんな訳で、気を引き締め直してもう少しだけ探索を続ける事に。フォーメーションは元のまま、変に崩さず第6層へと向かう。
 少しだけ緊張しながら、チームは護人とハスキー達を先頭に階段を降りる。




 ――それは力を付けて来た来栖家チームの、階層更新の瞬間だった。






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