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1年目の春~夏の件
地元のダンジョン内で宝の地図を発見する件
しおりを挟む新生ルルンバちゃんのお披露目となった、今回の間引き依頼の探索だけれど。実は新生ルルンバちゃんの凄い所は、戦闘の点だけでは無かった。
乗用草刈り機は、人が乗って運転しながら草を刈る機能がある。ハンドルも付いていれば、当然人が乗れるシートもある。
つまりその気になれば、家族がシートに乗る事が可能なのだ。もっともそれは、一緒に前衛に出張るって事を意味していてちょっと怖い。
後衛の香多奈なんかが、うっかり座るのは全く推奨はされない。ただし荷物を置いたり、万一怪我人が出た際に運べるのは便利そう。
それから《合体》スキルだが、どうやら細かい部分の調整が効くようだ。例えば乗用草刈り機は、その作業目的から車高と言うか機具が物凄く低く設定されている。
ただ、ダンジョン内での移動ではそんな機能は必要ない。特に階段を降りる際には、底の機具の存在はデメリットでしかない。
そこを見越していたのか、ルルンバちゃんの車高は割と高く設定されていた。ただし、護人が覗いた車の底部には凶悪なギミックが。
雑草どころかちょっとした枝木すら切り倒せそうな、チェーンソーが仕込まれていたのだ。これならパペットが接近して来ても、余裕で足を切り刻めそう。
そんな新生ルルンバちゃんは、結構な凶悪仕様な模様。
そんな感じで第3層へ、相変わらず倉庫内は大きな棚が通路を作って視界は悪い。棚には全て奥に仕切りが入っていて、反対側は見渡せないのだ。
そして罠をクリアして突破した2層だが、他は特に厳しい仕掛けは無し。追加で倒したゴーレムが新たに鉱石を落とした位で、入手アイテムにも変化は無かった。
ただし、チームの面々には以前には無かった緊張感も。
「罠が仕掛けられてるダンジョンって、やっぱり怖いね~? 後ろに気を付けて歩いてても、上から棚が倒れて来たら巻き込まれちゃうもん!
叔父さんっ、どうしたらいいかなっ!?」
「そうだな、前方の罠は俺たちが気を付けてるけど……上や背後に関しては、紗良と香多奈に頼むしか無いかな?
そんな割り振りで頼めるかい、2人とも?」
それじゃあ上は任せてと、元気な香多奈の返事である。背後からの万一の襲撃は、護衛に下がっているコロ助に任せれば良いだろう。
そんな取り決めを新たに決めて、いざ探索の再開である。そして相変わらず、硬いゴーレムを何事も無いように粉砕するAIロボ。
パペットも楽勝なのだろうが、ハスキー軍団を気遣っているのか余計な手柄には走らない。或いは、リーダーの取り決めを律儀に守っているのかも。
3層の異変だが、割と早いうちに目にする事が出来た。床のコンクリが柔らかく変化したと思ったら、丸太の様な生き物が飛び出て来たのだ。
ただ、このモンスターも事前情報では確認済み、ロックイーターと言う肉食ミミズである。奇襲からの噛み付きは厄介だが、事前に振動音がするので比較的に察知し易い敵ではある。
そしてソイツに、ルルンバちゃんのチェーンソー攻撃がヒットする。
何と言うか容赦が無く、真っ二つになった敵はすぐに消滅してくれた。凄いね~と呑気な末妹の呟きはともかく、頼れる仲間には違いないと護人は思い直す。
そんな訳で、良くやったぞと取り敢えず褒めて伸ばす方法を選択。AIロボは嬉しそうに、自分が倒した敵の魔石を律儀に拾っている。
ところがその姿が、急に地面に半分ほどめり込んでしまった。慌てた護人は、周囲を観察しながら近付いて行く。
子供達も、大騒ぎしながらどうしたのとルルンバちゃんを問い詰める。
「あっ、これって……多分だけど落とし穴の罠かな。ルルンバちゃんが大き過ぎて、片輪しか落ちなかったけど。それほど深くは無いけど危なかったね、護人叔父さん。
人間だったら、足とか挫いてたかも?」
「確かにそうだな、取り敢えず引き上げよう……そっち持って、姫香」
どうも敵が近くに出没しないと思ったら、落とし穴トラップが仕掛けられていたとは。2人で何とかルルンバちゃんを助け出して、護人はその奥の通路を窺う。
そこにはちゃっかり、後詰めのパペットの集団が配置されていた。それをハスキー軍団が素早く駆逐、あっという間に周囲の安全は確保された。
後衛も合流して来て、落とし穴の深さを確認している。
「怖いっ、こんなのに落ちたくないよっ! さっさと進んで、次の……あっ、あそこに置いてあるのは何だろう、叔父さん」
「えっ、どれどれ……ああっ、確かにプラ籠が置かれてるな。あんな棚の上に放置されてるとか、何とも意地悪な仕掛けだな。
中に何か入ってても、回収が大変だ」
通路を作る棚の高さは、実は3段仕様×2棚で結構高い。その上に放置されてる、プラ籠を香多奈は良く見付けたと思う。
上方の確認は、真面目にこなしていたっぽい末妹は何とも律儀。何か入ってるかもとの言葉に、反応した姫香が棚の段に足を掛けて器用に素早く登って行く。
そしてまるでお猿さんのように掴んだプラ籠を、下で待ってた護人にパス。そして本人は何事も無く、元の場所へと無事に降り立つ。
プラ籠の中には、予想通りにアイテムが入っていた。まずは鑑定の書が2枚に爆破石が3個、それから何かの地図の様な皮の用紙が1枚。
良く分からない記号が端に書かれているが、誰も読み取れず。何だろうねと喋っていたら、ここの8階層のお宝のポイントじゃんと妖精ちゃん。
つまり一行は、偶然にも宝の地図を見付けたらしい。
凄いと途端に燥ぎ出す子供たち、さっきまで罠が怖いと言ってたのに何て現金な。それはそうと、今まで8層まで潜った実績はこのチームには無い。
それでもこの雰囲気では、行かずに戻る選択肢は無い様子。幸い今回は、MP回復ポーションをたんまりと持って来ている。
そんな紗良の報告に、慎重な護人も宝の地図には前向きな姿勢。それも当然、宝の地図にワクワクしないなんて漢じゃない!
などと盛り上がりつつ、この層の残りは何事も無く制覇は完了。敵の数も種類も、前の層とさほど変わらず殲滅も段々と慣れて来た来栖家チーム。
前もって決めた、戦いのフォーメーションが上手く嵌まっている感じ。この調子で行こうと気を引き締めて、さて次は第4層である。
そしてここにも、しっかりと罠は待ち構えていた。
「あっ、そこの棚の上に段ボール箱がおいてあるよっ! また宝物が入ってるかも、姫香お姉ちゃん取って来て!」
「えっ、どこ……あっ、本当だ。割と大きい箱だね、何が入ってるのかな?」
基本が素直な性格の姫香は、末妹の我が儘にもすんなりと従ってしまう。そしてさっみたいに、棚の中断に置かれた段ボール箱に手を伸ばそうと、棚に足を掛けて登って行く。
その瞬間、後衛にいたミケが素早く反応した。紗良の腕から素早く隣の棚に飛び乗って、姫香より先に段ボール箱へと近付いて行ったのだ。
そして近距離からの雷撃一閃、そして悲鳴を上げる段ボール箱モドキ。いや、そいつはイミテーターだと、思い出したように護人が叫ぶ。
驚いた姫香は棚から転げ落ちそうになって、サポートに回っていた護人に抱き留められる。そのお陰で無事だったけど、イミテーターはそうでは無かった。
蓋の口の部分を開閉させながら、せめて一太刀とミケに迫って行くのだが。これまたサポートに回っていた、レイジーの魔炎で丸焦げに。
フンって顔でそれを見終わったミケが、護人目掛けて飛び降りて来る。そちらもしっかりと抱き留めて、子供を守ってくれたお礼をしっかり述べる護人。
香多奈はやっちゃったと言う顔付きで、神妙に叱られるのを待っている。それが可笑しくて、護人は厳格な表情を作るのに苦労する始末。
結局は、自分も軽率だったと姫香が先に謝ってこの件は終了。
それに便乗して末妹も御免なさいして、以後は気を付けるようにと護人も釘を刺しておく。モンスター退治については、順調にこなす事に成功して何より。
その後はほとんど時間を取られる事無く、フロア内の敵を全滅させるに至った。ただし、イミテーターに関してはもう1匹潜んで脅かし役に貢献していた。
それも鼻が良いのか勘なのか、ミケが簡単に暴いてくて助かった次第。ついでに落とし穴もあって、それはレイジーが見破ってくれた。
ってか、普通に空中を歩いて罠を避けていた気が。さっきのイミテーターを焼いた時もそうだったが、どうやら『歩脚術』スキルを使いこなし始めているらしい。
覚えて間もないと言うのに、何とも凄い適応力である。
「……今度のは、ミケさんが反応しないね? 段ボールじゃ無くて木箱だし、中に何かあっても不思議ではないパターン?」
「どうだろ、用心して覗いてみようか?」
「いや、今度は俺が取りに行こうか。一応『硬化』を掛けて木箱を落とすから、下には誰もいないように」
5層へと降りる階段近く、一行はまたも棚の上段に木箱を発見した。物欲しそうな視線を向ける末妹に折れて、護人がそれを取りに行く流れに。
とは言えミケも反応していないし、安全だろうとは思いつつ。棚を登って、割と大きな木箱へ手を掛けて手前へ引き寄せる。
それから半ば放り落とすようにして、何とか回収に成功。それは床に落ちても、派手な音を立てるだけで他の反応は無し。
つまりは普通の木箱だった模様で、衝撃で中身が盛大にはみ出していた。中にはポーションも入っていたので、紗良が心配そうにチェックする。
各種薬品類は、何とか無事だった様で何より。他にもMP回復ポーションとエーテルが各500ml回収出来た。ちなみに容器は、お揃いの新品ペットボトルだった。
それから飲み物で言えば、缶ビールのケースが段ボールで1箱。
他にも何故か、段ボールでカップ麺のケースが2箱分。戸惑う紗良だったが、姫香は魔法の魚籠に入るなら持ち帰ろうと、あっけらかんとしている。
それから、蓋の空いているカップ麺が5個。中には麵ではなく、大き目の木の実が1個ずつ入っていた。どういう理屈なのか、紗良はこの辺りで考えるのを放棄して回収に入る。
他には、フライパンや包丁と言った調理器具が幾つか。包丁の1本はかなり立派で、妙な光沢を放っていた。変質してる魔具なのかもと、推測するが確信は無し。
後は家電製品で、照明器具が幾つかと新品の炊飯器が1つ。壊れてはいない様だが、これも持って帰るべきか紗良が悩んでいると。
青空市で売ろうと、姫香が魔法の鞄に放り込んでしまった。
商魂逞しいが、ダンジョンで得たモノは基本が発見者に帰属する。新品のようだし、売れるなら使って貰った方が製品も嬉しいだろう。
そう思い直して、妹の姫香に微笑みかけると。向こうもヒマワリの様な笑みを返して来て、何だか探索中にも拘わらずほっこりしてしまった。
何ともチーム名にピッタリな、極上の笑顔である。
アイテムの回収が終わったと告げると、それじゃあ5層に降りようかとリーダーの言葉。本当ならMP回復休憩を取る時間帯だが、意外にも今回は誰もそれ程にMPを消費していない。
新生ルルンバちゃんの恩恵が大きいのか、ダンジョンのエリアがいつもより狭かった為か。原因は色々あるけど、本格休憩は中ボス部屋の前で取る事に。
そうして辿り着いた5層だが、基本的な敵の種類は一緒だった。ただし、あれだけあった通路の棚が綺麗に無くなっていて、見晴らしが良過ぎて逆に不気味。
お陰でフロアのモンスター達も、集団でこちらへと襲って来る始末。それもその筈、視覚を遮る障害物がここには何も無いのだ。
お陰で前衛陣は大忙し、壁を作って敵の群れを通せんぼの構え。後方から、香多奈の元気な頑張れの声援が響く。
その甲斐もあってか、戦闘は終始こちらのペースで怪我人も無く終了。ホッと胸を撫で下ろす護人と、その横で撃ち洩らした敵が無いか確認する姫香。
ハスキー軍団も、未だ警戒は解いていない様子。何故かなと思って周囲を眺めていたら、ポツンとフロアの中央に寂しそうに置かれた段ボール箱が1つ。
姫香はレイジーを呼び寄せて、その箱へと慎重に歩み寄る。そして案の定のイミテーターの罠に、レイジーの魔炎が放たれて戦闘は終了。
そうして残された魔石と、ドロップした鑑定の書×1枚を拾い上げる姫香。ご苦労様とレイジーの頭を撫でて、仲良く一緒にチームの元へと帰って行く。
それからリーダーの護人にも労われ、何となくご満悦の1人と1匹。それから皆で、MP回復ポーション込みの休憩に入る。
輪になって座り込んで、中ボスは何だろうねなどと話し合う一行。香多奈はルルンバちゃんの座席に座り込んで、さっき拾った宝の地図を妖精ちゃんと眺めている。
紗良と姫香は、ハスキー軍団に怪我が無いかのチェックもこなす。ミケは護人の膝を占領して、MP回復をのんびりと行っている。
――そして休憩が終われば、お楽しみの中ボスへの挑戦が待っている。
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