田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件

マルルン

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1年目の春~夏の件

中ボス部屋のゴーレムを倒し念願の8層に到達する件

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 中ボス部屋のモンスターだが、撃破する度に変化をするらしい。前情報では、『白桜』の時には巨大なゴーレムが居座っていたとの話。
 そうなると、チームお得意の速攻は使えないかも。硬い敵相手に、姫香のシャベル投擲と香多奈の爆破石がどれだけダメージを与えられるか。

 相手は岩の塊なので、ちょっと難しいかも知れないねと家族での話し合い。まぁその時は、プランBを発動するのみである。
 つまり今回も、硬い敵とそうでない敵を相手取るチームをあらかじめ分けておくのだ。中ボスがゴーレムだったら、護人チームがそれを抑えに前に出る。

 雑魚が混じっていれば、レイジー達に抑えて貰う事になる。単純な作戦だが、中の詳細が分からないので仕方が無い。
 後は臨機応変で対応する事に、出たとこ勝負とも言うけれど。そんな意気込みで、いざ突入を果たす来栖家チームであった。

 そして開け放たれた扉の向こう、待ち構えていたのは想像通りのゴーレムだった。但し今までの奴より大きくて、その体長は3メートルに届くほど。
 威圧感は凄いが、スピードは伴わないので何とかなりそう。そしてその前面に、コンクリ色のロックが3体ほど居座っていた。

 コイツ等も、バランスボールサイズの雑魚より少し大きくて中ボスの部屋仕様となっている。奴らが中ボスと連携されると、少々厄介かも知れない。
 更に前方にはロックイーターが5匹ほど、半身を床から出してウネウネと通せんぼをしていた。コイツ等はまぁ、ろくに動けもしないし平気だろう。

 ただし邪魔には違いなく、最初の姫香と香多奈の投擲攻撃は、柔らかい巨大ミミズが標的に。シャベルと爆破石が、速攻で容赦なく襲い掛かって行く。
 それが中ボス部屋での、戦闘開始の合図となった。

 姉妹の速攻で、ぱっかりとゴーレムへの道は開けてくれた。そこをゴロゴロと転がり進んで来る、次なる敵のロック3体。
 それを抑えに、護人とルルンバちゃんが進み出る。その後方では、ハスキー軍団とミケが、残ったロックイーターに魔法での攻撃を仕掛けている。

 地面から生えて敵を待ち構える巨大ミミズは、何と言うか良い標的でしか無い。あっという間に、魔法にさらされ次々と倒れて行った。
 そして硬い表皮で魔法すら弾く、難敵ロックが接近して来た。それに対して、まずはルルンバちゃんの削岩機でのチャージが炸裂。

 これがロックのほぼ中心に決まって、哀れにも敵は真っ二つになって行った。その凄い威力に、隣の護人は思わず目を丸くする。
 そんな技能の無い彼は、『硬化』に加えて《奥の手》を発動させる。そしてガッチリ、転がる岩を黒い巨大な掌がキャッチ。

 特殊スキルだけあって、その威力も相当なレベルの魔法の腕である。それは何と、爪をロックに突き刺して、ひょいっとソイツを持ち上げてしまった。
 可能かなって護人の疑念は、呆気無く達成されてしまった。そして隣を転がるロックに向けて、そいつを思い切り振り下ろしてやる。
 すると目論見もくろみ通り、両者は互いの硬度に耐え切れず粉々に。

「おっと、やり過ぎてしまった……まだまだ操作が甘いのかな、ボスのゴーレムにも叩きつける予定だったのに。
 姫香、仕方ないからいつも通りのやり方で行こう」
「了解っ、護人叔父さん! さあっ、ルルンバちゃん……予定通りに、奴の足から崩して行くよっ!」

 それに呼応するように、中ボスの右側に回り込むルルンバちゃん。姫香はその反対側へと、勇んでハンマー持参で進み出る。
 中央は護人が、黒い拳で敵を挑発しながら居座って構える。ゴーレムは余り賢くないようで、ひたすら真っ直ぐ護人へと向かって来た。

 そしてお決まりの様に、拳を振り上げての殴り攻撃。今までの雑魚ゴーレムと同じく、ワンパターンの遣り口である。
 それを黒い拳で受け止めて、左右の仲間へと合図を送るリーダー。まずはルルンバちゃんの突貫攻撃が、ゴーレムの左足に見事命中した。

 ボスの足に大きなひびが入り、姫香も同じく足元から敵を崩しに掛かる。巨大なゴーレムの死角へと滑り込み、相手の弁慶の泣き所へとスキル込みのハンマー攻撃。
 3メートル近い巨体が、これで大きく揺らいで行く。

 そこからは、割と両者はやりたい放題だった。何しろ護人が、《奥の手》スキルで上体の動きをガッツリと封じ込めていたのだ。
 そんな訳で、ゴーレムが足を粉々にされて崩れ落ちるまで、さほどの時間は掛からなかった。倒れた相手の止めは、毎度の姫香のお得意戦法を選択。

 ゴーレムの巨体にひらりと舞い乗り、末妹へスキル頂戴のアピールをかます。それから自身のスキルも上乗せしての、敵のうなじへの強烈なくわの一撃。
 これにてボス部屋の敵は、全て殲滅せんめつを終了の形に。お楽しみのドロップは、スキル書とピンポン玉サイズの魔石が1個ずつ、それから平たい板状の石も、2枚ほど転がっていた。

 それが何かは不明だが、スキル書が出ただけで有り難い。大喜びの香多奈と、嬉しそうにそれを拾い集めるルルンバちゃん。
 そして今回の宝箱だが、木製の大振りサイズが部屋の端っこに1つだけ。中身を期待しつつ、それに歩み寄る子供たち。

「えっと、鑑定の書が2枚とポーションっぽいボトル瓶が2本と、後は武器が入ってるね。黒い石の斧と槍かな、それからこっちの箱は……わっ、眼鏡と腕時計と万年筆が入ってた!」
「それで全部かな、まぁ木製だし大当たりでは無いね……腕時計とか万年筆って、普通に買えば高い価値の奴なのかな?
 まぁ仕方無い、8階のお宝ポイントに期待しよう!」

 子供たちの勢いは、宝の地図の存在もあって留まる事を知らずな勢い。護人もこれには駄目とは言えず、スキル使った人はポーション飲みなさいと告げるに留め。
 ハスキー軍団も疲労の色は窺えないようなので、もう少し進んでみる事に。間引き依頼も、もう2~3層潜れば充分だと判断されるだろう。
 そんな訳で、休憩を挟んでいざ6層へ。



 この層も、基本的な構造は今までと一緒だった。つまりは大きな倉庫フロアに、棚で造られた廊下が続くと言う。ただ少し、フロアが少し広くなっている気も。
 そして出て来る敵も、硬い肌のゴーレムとロック、雑魚感が漂う作業着を着たパペットがメインな様子。ただし、それに加えて空を飛ぶドローンが初参戦。

 コイツは棚を超えて奇襲して来るので、普通なら要注意なモンスターである。ただし、ミケの雷撃で、簡単に墜落してくれると言う。
 そして同じく、革装備を着込んだタヌキの獣人も6層から初参戦。コイツの方が、武器の小剣を振り回してきて厄介だと来栖家チームは認識。

 剣技はそれ程でも無いのだが、小兵の癖に力が強くて思い切りよく突っ込んで来る。幸い出現数は多くなくて、今の所は助かっている感じ。
 そんなタヌキ獣人だが、まれにショートソードをドロップ。

「おおっ、タヌキから剣のドロップ……化かされてないよね?」
「多分大丈夫……鞄の中に入れておくね?」

 姫香のお茶目な呟きに、鞄に入れたら無くならないよねと、変な緊張感を覚えてしまう紗良だったり。他にも道中に、ゴーレムから鉱石が2つドロップした。
 価値があるかは不明だが、何となく喜んで集める子供たち。前回のガマの油の件もあるから、何に高値が付くか不明で実はドキドキ物である。
 そうこうしながら、チームは第7層へ。

 ここも構造は前と同じ、更に言えば棚で造られた通路のルートも一緒と言う。少しは凝ればいいのにねと、妙な助言を誰かに送る末妹。
 ここでも出現する敵はほぼ一緒、そして硬い敵に無双するルルンバちゃん。まさか、お掃除ロボがこんなに活躍する日が来るとは、スキルを偶然呑み込んだあの時は誰も想像してなかった。

 それを思うと隠れた幸運の猫ミケの、ファインプレーだったのかも。そんな話は置いといて、雑魚に混じって妙な敵が中盤過ぎのフロアに出現した。
 大型のドローン兵器……いや、こいつも立派なモンスターらしい。そいつもやはり、空から奇襲をかけて来て初手でミケに撃墜されかける破目に。

 そこを根性でしぶとく持ち直し、後衛の紗良と香多奈へと襲い掛かる素振り。死にたいの敵に、香多奈の護衛に下がっていたコロ助の『牙突』が追い打ちを掛ける。
 それでもその大型ドローンは、かたくなに墜落するのを拒否していた。しかし2度目のミケの『雷槌』に、とうとう煙を噴き出して側の棚へと激突。

 他の敵と戦闘中だった前衛陣は、慌てながらも後衛の2人に声を掛ける。そこに無事だよ~との末妹の返事に、安心したように戦いを継続。
 それから程無く全て始末し終わって、ようやく後衛陣と合流を果たす。

「中ボス程じゃないけど、ちょっと強い敵だったねぇ。ほらっ、魔石も碁石位の大きさだし……あれっ、スキル書も落としてるっ!?」
「あっ、本当だっ! ラッキー、やったねっ♪」

 思わぬ棚ぼたの儲けに、大喜びの末妹である。強敵の出現は、さすがに深層だねって事で簡単に片付けられた。ついでにタヌキ獣人が、今度は槍を落としたよと姫香も報告。
 そんな訳で今回は、宝箱とドロップの収入が凄い事になっている。今回もと言うべきか、これで宝の地図が本物だったら一体どうなってしまうのだろう。
 捕らぬ狸の皮算用で、盛り上がる子供たちだが一抹いちまつの不安も。

「タヌキ……狸っ? ひょっとして、次の層で化かされて夢落ちとかなのかなっ?」
「姫香ちゃん……ひょっとして、過去に狸に化かされた事があるの?」

 そんなの無いよと、途端に挙動不審におちいる姫香であった。過去に何かがあったのかもだが、優しい性格の紗良は敢えてそこには触れない事に。
 それより突入して、そろそろ結構な時間が経過している。2時間強といった所で、帰りの道のりを考えると引き返すタイミングを考えるべきかも。

 それを聞いて、絶対に8層のお宝をゲットして帰るぞと盛り上がる子供たち。そして階段を降りると、地図を広げて頭を寄せ合い議論を交わし始める。
 紗良も魔法の指輪で視線を飛ばして、地図とこのフロアの整合性を真剣にチェック。敵は普通に出現するので、仕方なく姫香は戦闘に向かって行く。
 その最中も、×バツの示された場所は何処かと気もそぞろな様子。

「えっと、なるほど……フロア真ん中の右側の壁、そこに入り口があるのかな? どうだろう、それらしい場所はここからじゃ分からないかなぁ?」
「まずはみんなで行ってみようよ、紗良お姉ちゃん……ハスキー達が、匂いで入り口を見分けてくれるかもだし!」

 それはありそうだねと、割と他力本願な思考でその案に乗っかる紗良である。8層はモンスターの間引きから、完全に宝探しへと目的がすり替わっている感じ。
 とにかく早く敵を倒し終わってと、後衛の末妹からの無茶振りが飛んで行く。文句言うなと、前線で奮闘中の姫香の返しからいつもの姉妹喧嘩が勃発。

 そんな時に限って、嫌な足止めが相次いで発動する。妙な場所にある落とし穴とか、ついでに強そうな6本腕パペットとか。
 更にはフル装備のタヌキ獣人が、2体もお供に付いていた。強敵パペットは棍棒や盾や短剣を持っていて、腕には何故かチーフの腕章を付けている。

 風を巻いて襲い掛かるハスキー軍団は、相手が強そうだとかは関係ない様子。罠に気を取られて初動が思い切り遅れた姫香の、サポートを完全にこなしている。
 そしてその後ろから、チェーンソー攻撃でルルンバちゃんも参戦。威力のある横槍で、またたく間にタヌキ獣人が戦線を離脱して行く。

 チーフ腕章のパペットは、実際に他の雑魚よりは数段強かった。乱入したルルンバちゃんの座席に飛び乗り、ハスキー軍団を相手にも怯まず対応している。
 そしてツグミとコロ助が剣技で負傷、銀色の毛皮が血で染まっていく。死角に乗られたルルンバちゃんは、どうして良いか分からずワタワタ。

 それでもレイジーの魔炎にさらされると、パペットの各腕が炎上を始めた。痛覚こそ無い相手だが、それにより動きはかなり鈍って来た。
 そこに復帰した姫香の一撃、ハンマーを振りかぶってチーフの頭を粉砕する。これで完全に敵の息の根は止められて、魔石を残して6本腕パペットは消滅。
 ホッとする一同、これで周囲に敵の姿は完全に無くなった。

 代わりに香多奈が、棚の上に置かれている木箱を発見。ここは通路の突き当りみたいな場所で、宝の地図で怪しいチェック印が描かれていたポイントでもある。
 突き当たりに落とし穴を作らないでよと、それに引っ掛かりそうになった姫香が文句を述べる。それより木箱を確認してよとは、容赦の無い末妹の言葉。

 喧嘩になりそうなのを宥めるのは、いつもの護人の役目。それでも棚の上の木箱に向かうのは、素直な性格のせいなのかも知れない。
 そしてそれを留めるのも、毎度の保護者役のミケの役割だった。ちょっとは学習しなさいよと、横槍を入れての木箱への攻撃。

 それで判明、木箱は何と再度のイミテーターだったと言うオチ。バカッと急に空いた上蓋で、姫香に食い付こうと動き出しにミケの『雷槌』で先手を取られる形に。
 その攻撃を受けた姫香は、棚に張り付いた不利な姿勢だったが慌てない。仲間を信じて、とにかく敵の攻撃を片手でガードする。

 そこに『歩脚術』で、重力を無視して壁を伝って来たレイジーの見事なサポートが。結局は、先ほどと同じように動く木箱を焼却処分してくれた。
 そうして危機は脱出したが、木箱イミテーターが残したのは小さな魔石と鑑定の書が2枚のみ。こうしてはかなくも、宝の地図の取っ掛かりは全て消え去ってしまう事態に。
 これには地図を持つ、香多奈も半泣き状態で途方に暮れた表情。




 ――果たして、この地図はインチキだったのと悩み始める一行だった。






   ―――   ―――   ―――   ―――   ―――
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