田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件

マルルン

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1年目の春~夏の件

お盆の時期を家族でゆったり迎える件

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 もうすぐお盆のシーズンだからと、協会に寄ったついでに町のお店で買い物を済ます来栖家。植松夫婦とも相談して、お盆の日程を慎重に決めるのを忘れずに。
 もっともお婆的には、巻き寿司や押し寿司を子供たちと作る方が大事みたい。護人は家の道具を出しておくと約束して、それ用のお酢やらお魚の手配に尽力する。

 “大変動”以降は、なかなかお魚の安定供給も大変なのだ。流通の苦労もし掛かって、こんな田舎では入手もお値段も大変ではある。
 それでも年に1度のお盆なのだし、お寿司に使う魚くらいは頑張って入手したい所。何しろさっきの協会でも、2百万円を超える儲けが出たのだ。

 内訳的には、まずは頼まれた魔法の武器である。こちらも高値を吹っ掛けるつもりは無かったのだが、そもそも基本の値段から高値の設定らしい。
 腐敗効果があると言う『腐敗のフレイル』と、痛み効果の『痛痒のナイフ』を合計90万円で売る事に。それから形が気持ち悪い『蛆虫のイヤリング』と『揺らぎの剣』も、家族の誰も使わないとの理由で売りに出す事に。

 ただし性能は良かったようで、こちらも2点で80万円になった。それに加えて、今回回収した魔石やポーションを売ったお金が加わって。
 過去最高の売り上げで、うっかり護人のランクがC級に上がりそうな勢い。何しろ来栖家チームは、犬達や猫&AIロボのポイントも人間が総取りなのだ。

 ランクが一気に上がりやすいのも、当然と言えばその通り。探索経歴が伴わないランクアップは、護人的にはちょっとアレだけど。
 とにかく来栖家は、麓の町の小さな商店で色々と買い物に走り回る。そして、こんな時代でも売られている盆燈籠ぼんとうろうを2本購入。

 これはどうやら、広島の西部のみの風習らしい。竹と色紙で出来た朝顔型の燈籠を、お盆になるとお墓に備えるのだ。
 これはコンビニですら売りに出される広島のお盆の風物詩で、それを抱えた香多奈はちょっとだけ神妙な顔付き。ひょっとしたら、5年前に亡くなった両親に思いをせているのかも。
 何にしろ、これを見るとお盆だなぁと広島県民皆が思う品には間違いは無い。

「夕方涼しくなったら、お墓の周りの草刈りと掃除をしようか。今年はルルンバちゃんがそこら中を刈ってくれてるから、随分と楽だよなぁ。
 姫香も草刈り、手伝ってくれるかい?」
「お安い御用だよっ、涼しくなるまでは裏庭で新しくなった武器のチェックしてるね、護人叔父さんっ!」
「特訓するの、姫香お姉ちゃん? 私もやろうかな……あっ、魔石売って儲かったんだからアイス買ってよ、叔父さんっ!」

 相変わらず騒がしい香多奈のお強請ねだりに、鷹揚に頷いて応じる護人。その程度ならお安い御用だ、地域の活性化に少しでも貢献しないと。
 それからペットのおやつの煮干しの購入も忘れない、律儀な香多奈の買い物は続く。特訓は良いけど何をするのさと、姉の姫香はチーム強化にちょっと疑問な様子。

 何しろ最近は、鑑定の書が人間のレベルチェック用に余ってくれないのだ。協会にも売られてないし、本当に困ったモノである。
 日馬桜ひまさくら町の協会は、実は物販に関しては開設当初からとっても弱い。ってか、1つもアイテムは売って無かったりするのだ。

 まぁ、魔石や薬品を買い取って貰えるだけでも有り難いと思うしかない。事務員も最低限の人数しか存在しないし、そう言う点では町の規模には合っている。
 ただし、ダンジョンの数には合って無いのは確か。


 そんな買い物から帰って来ての子供たち、余談だが余ってた強化の巻物(防具)も、妖精ちゃんに頼んで使って貰った次第。ツグミのベストと、姫香の探索用革スーツも青の魔結晶で強化済みである。
 妖精ちゃんの説明によると、魔石より魔結晶の方が色々と凄いから頑張って集めろとの事。そうなんだと、素直な子供たちはこの結晶は売らずに取っておく事に。

 ちなみに来栖家は、魔石の大きいのも家使い用に全部取ってある。ルルンバちゃんの活動用など、最近は魔石も家庭で必需品なのだ。
 武器と防具を揃って強化して貰った姫香は、ご機嫌に新調したてのくわを振り回す。形はかなり変化していて、パッと見には鍬と言うより大鎌みたいな形状。

 持った感触的には、以前とバランスや重さ等の変化はほとんど感じられない。お陰で操作に戸惑いも無く、姫香は威勢の良い声を上げて古タイヤに斬り掛かる。
 そして驚き、何とタイヤがスパッと切れてしまった。ビックリな威力である、元々鍬とは土を耕す農具なので、切断用には出来ていないのだけど。

 しかも4本の刃は長さの大小は出来たモノの、貫通する力は健在である。これには見学していた香多奈と紗良も、驚きを隠せない様子。
 この調子なら、きっと強化した革のスーツも凄い能力になっている筈。これで次の探索に、弾みが付きそうで楽しみだ。

 ちなみに、ハスキー達が新しく覚えたスキルの効果を確認しようと思った姫香だったけど。コロ助の『体力増』とかレイジーの《狼帝》とか、効果のはっきりしない類いのスキルばかり。
 本人たちも、どうにも的を得ない様子で香多奈の問い掛けにも困った様子。もっとも、使ってみてと言われても『体力増』など披露しようも無い。

 それに関しては、妖精ちゃんの覚えた『錬金術』も同じ事。素材やら器具が無いと使えないヨと、香多奈の催促に高飛車に返されたそうで残念な結果に。
 何か凄い品を、作って欲しいとの目論見もくろみは淡くも消え去る結果に。

 そもそも『錬金術』と言うのは、今回の探索で得た“錬金術の書”のレシピ本の製作を、時間を掛けずに一瞬で創り出すスキルらしい。
 つまりはこのスキルが無くても、レシピ本さえ読めれば誰でも錬金製作は可能なのだ。金の塊が創り出せると思っていた、香多奈はガッカリな表情。

 ちなみに“錬金術の書”3冊ともだが、末妹にも解読は不能だった。薬品関係の書が中にあるそうで、紗良が興味を持っていたけど残念な限り。
 例えばMP回復ポーションが、家で作り出せるならこれほど便利な事は無い。他の探索者にも安く融通出来るようになるし、それで死傷率が減る可能性もある。
 何にしろ、夢のある書物が手に入ったモノだ。



 夕方に涼しくなってからの墓周りの掃除も終わり、お風呂と夕食が終わっての家族のくつろぎタイム。その時間に、今回の探索で得た魔法のアイテムを仕分けようよと香多奈の提案。
 既に少女は、その鑑定済みアイテムを机の上にばら撒いて楽しそうな笑顔。何しろ今回の目玉品に、とっても凄そうな性能の品があったのだ。

 『襤褸ぼろのグローブ』と言う装備品は、何と装備者に《念動》を付与するそうな。その名の通りに本当にボロボロなグローブだが、性能はずば抜けている。
 ところが香多奈が装備してみても、肝心の能力は全く発揮出来ない有り様。それは姫香や護人が装備しても、全く同じでスキルに拒絶されている模様。

 これもモロに人を選ぶ装備らしい、順番が来て試した紗良にも残念ながら無反応。馴染めば誰か使えるかもだが、結局この装備はお蔵入りの破目に。
 装備品の『襤褸ぼろのマント』だが、こちらも同様に酷かった、これも性能はずば抜けて良いが、見た目は本当に廃棄品のような見た目である。

 欲しいと手を上げる人もおらず、何故かそれを目の敵に引き裂き始める薔薇のマント。そして本当の襤褸ぼろ切れになったそれを、皆が見る前で呑み込んでしまった。
 戸惑う一行だったが、妖精ちゃんの話では能力も一緒に呑み込んでくれたそう。薔薇のマントは、アレで結構な能力持ちらしい。

 そう言えば、元の護人の装備していた『熊革のマント』もいつの間にか無くなっていた。腕力が上がる良装備だったのに、どうしたモノかと思っていたのだが。
 これもどうやら、薔薇のマントの仕業だった様子で怒った方が良いのやら。どうやら、自分が装備されるように邪魔者を始末したらしい。

 何と言うか、常にお騒がせな自立式の装備品と言う不思議カテゴリー。しかしまぁ、役に立つ優秀な装備には変わりないので。
 今後も使い続けるだろうし、頼りにもしている護人である。それから姫香が、広島市への研修旅行でのお土産に買って来てくれたポーションホルダーだけど。

 西部劇の腰巻き弾丸ホルダーみたいで、見た目も格好良くて皆のお気に入りに。紗良がポーション各種を、色分けされたプラ瓶にセットしてくれているので、実用性もちゃんとある。
 これでいざと言う時にも、対応はバッチリである。

 大蛾の麻痺毒を浴びて呼吸困難になった時とか、実は探索中に護人は何度も不味いと思った瞬間があった。手元の薬品でそれに備えられる体制は、今後の探索にも大歓迎。
 今まで薬品の使用は、休憩中のMP回復ポーションくらいしか無かった。今後は積極的に、本当の危機におちいる前に活用して行こうと家族で話し合う。

 それから3つ目の魔法の装備の『戒めの腕輪』だが、これも魔法防御が上がると言う良装備。形がモロに腕輪と言うよりは首輪なので、改良してレイジーに装備して貰う事に。
 レイジーが前から装備していた『蛙の腕輪』は、お下がりでツグミに回す事に。

 その他の貴重品だが、錬金レシピ本3冊は、紗良が責任をもって預かる事に。それから中級エリクサーも、同じく家族所有で売らずに持っておこうと決定した。
 浄化ポーションも、使い方によっては物凄く威力を発揮するのは前回の探索で分かった。残りはたった600ml、乱用は出来ないので大切に取っておきたい。

 それから、以前に獲得した苗4本に続き大粒の種が4つほど。家族でどうしようと相談した結果、植えてみようと言い出す者が多数出現。
 結局はこれも、前回に引き続いて鉢植えで育ててみる事に。種植え時期が不明だが、お試しに上手く行く事を願いつつ温室で育ててみる流れに。

 香多奈など、夏休みの観察日誌のノリである。それは良いのだが、アイテム品評会の終わりには決まって、最近は個人の鑑定をしてないねとの愚痴が出る。
 鑑定の書は今回も結構出たのだが、魔法の品もそれ以上にゲット出来た。そんな弊害がこんな所に出て、個人の鑑定に回らない破目に。

 鑑定の書が余らない限り、協会にも売ってないしどう仕様も無い。どれだけ強くなったか知りたいねとの、子供たちの願いは残念ながら叶わず仕舞い。
 そんな感じで、今回の鑑定会は幕を閉じたのだった。



 その数日後には、来栖邸は朝から割と大忙しだった。主にそれは食事の準備に関わるもので、植松の爺婆を招いてのお盆の支度である。
 来栖家の親戚と言えば、今やこの植松夫婦のみとなっている。寂しい限りではあるが、“大変動”以降はどこもそんな感じではあるらしい。

 むしろお盆の行事を行える程に、よくぞ回復した感すらある。とは言え、お坊さんがお経を上げに来てくれる程、世の中も回復はしていない。
 それでもお墓参りを親戚と行なえる分、来栖家は恵まれているのかも。例えお墓の中に、“大変動”での被害者の遺骨が入っていないとしても。

 それを知っていても、子供たちのお墓参りの真剣さにはいささかの陰りも無い。亡くなった両親や姉妹に対して、目をつむって冥福を祈るのみ。
 護人も同じく、持って来た盆燈籠ぼんとうろう蠟燭ロウソクやお線香、それからしきみや仏花を粛々しゅくしゅくとお供えして行く。

 しきみを供えるのも、やはりこの地方の独特の風習みたい。理由はお線香の香りがするからとか、動物よわけだとか色々と言われている。
 ただし子供への説明は、葉っぱがあの世ではお札代わりになるで通じると言う。

 それじゃあ両親と、お姉ちゃんとその旦那さんも、お金の心配いらないねと。何となくしんみりした口調で、拝んでいた手を元に戻して香多奈が姉に呟く。
 これより先に紗良の実家のお墓にも参ったし、お供えも同様に済ませてある。後は家に戻って、お昼にと用意してある押し寿司やちらし寿司を皆で食べるだけ。

 大袈裟おおげさに思うかもだが、毎年繰り返される行事を“大変動”後にも出来る幸せを感じつつ。ついて来たハスキー達と共に、家族一緒に家路へと帰る。
 亡くなった家族の魂たちが、故郷に戻って来るのを持て成すために。




 ――それが生きている者達の務め、生きるって案外大変だ。





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