田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件

マルルン

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1年目の春~夏の件

アスレチックの仕掛けがどんどん複雑になる件

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 今は家族チーム全員で、何とか5層のゲート前まで辿り着いた所。中ボスはそれなりに手強かったけど、香多奈の言葉を借りれば「ドロップ品にしてやったぜ」って感じ。
 その中にはしっかりスキル書も混じっていて、末妹も満足げである。他には定番のピンポン玉サイズの魔石と、綺麗な葉ぶりの枝がドロップした。

 そしてその枝のドロップに、妖精ちゃんが束の間反応する。それからすぐに、興味を無くしたのか離れて行くと言う顛末も。
 今は目印の旗の下に置かれていた、大きな木目調の宝箱に全員が注目している所。姫香がその蓋を開けると、結構な品数のアイテムが出て来た。

 まず目についたのが木の彫刻が数点、30センチサイズの立派な観音様や阿修羅像が数点。そして武器が2点、長弓と矢のセットに綺麗な白木の杖が。
 他には上級の鑑定の書が4枚と魔石(中)が2個、それから噂の鬼のコインが5枚ほど。それにえられるように、何か書かれた紙が一緒に出て来て一同騒然。

 良く分からない文字のそれは、どうやら10層への案内用紙のよう。香多奈が苦労して意味を汲み取った所、鬼のコインはここで使えるよって意味らしい。
 異界の文字まで読めるとは、末妹恐るべし。

「いや、良く分からないんだけどね? 何となくそんな感じかなぁって、ほらここ……コインのイラストと、それからロッカーみたいなガチャの機械みたいな?
 それから多分だけど、このダンジョンは10層で終わりっぽいね」
「そこまで分かるんだ、アンタ算数は駄目だけど国語の成績だけはいいもんね。それを踏まえてどうしようか護人叔父さん、10層まで行ってみる?
 紗良姉さん、鬼のコインは何枚あるんだっけ?」

 コインは10枚集まっていて、10回分のガチャが出来るんだと香多奈は興奮模様。そうと決まった訳でも無いのに、何だか行かないと勿体もったい無いと言う雰囲気がチームに漂っている。
 それが壮大な振りの罠と言う可能性も、あり得るかなと護人は疑ってはいるけれど。サーピース精神が旺盛なのは、この新造ダンジョンの特徴の1つな気もちょっとしている。

 それを信じて、もう少し進むのも悪くはないのかも。問題は時間と、それから紗良のやる気と言うか運動能力(?)に掛かっている。
 そう護人が口にすると、退去用の魔法陣のあるダンジョンは、多分一瞬で地上に戻れる仕様じゃないかなと姫香の答え。

 実習訓練の野球場ダンジョンがそうだったらしく、もしそうなら帰りの時間は大幅に縮小出来る。香多奈がすかさず妖精ちゃんに訊ねるが、どうもその推測は大当たりの様子。
 帰りはあの奥の魔法陣で一瞬だよと、太鼓判を押されてしまった。

「それなら後は紗良次第だけど……どうだい、この先も行けそうかな?」
「い、行けます……大丈夫、少しずつ慣れて来ました。木の実の効果も良い感じですし、さっきの姫香ちゃんの攻撃にも、木の実の効果が凄く出てましたね。
 帰りの心配をしなくて良いのもグッドな情報です、このまま進みましょう」

 その言葉を聞いて、やったぁと素直に喜んでいる香多奈はともかくとして。取り敢えず行けそうな所まで進もうかと、休憩を挟んで進む事を決定する護人。
 ハスキー軍団も好調そう、新しく装備させた戦闘用ベストも我慢して着込んでくれてる。ただし前回覚えたレイジーとコロ助の、新しいスキルについては未だ判然としない。

 姫香の強化武器の使い心地については、今回は戦闘シーンが余りに少な過ぎてこれも判別し辛い所。防具も同様、ヒットした攻撃が無いので分からないのが本音。
 6層以降で戦闘が増えるかは不明だけど、大きく構造が変わるとは考えにくい。そう思って潜ったゲートだが、どっこい移動先のフロアに響き渡る不気味な音。
 一同が覗き込むと、地面には大小の歯車が稼働していた。


「おおっ、この6層からは歯車のギミックなんだ……わあっ、振り子の仕掛けとか、アクションゲームではよく見るなぁ。
 それにしても、かなり大きな歯車も混じってるねぇ」
「映えるねぇ、ちょっと格好良いかもっ! 叔父さんと姫香お姉ちゃん、ちょっとあの歯車をバックにポーズ取ってみて!」

 興奮した香多奈の良く分からない振りに、何故か従ってしまう両者である。その後改めて眺めるに、それ程には凶悪な仕掛けも存在していない感じ。
 敵の気配だが、頭上からモモンガらしき影が何匹か降って来た。それを牙突で迎撃するコロ助、姫香も武器を振るってそれをお手伝い。

 木板の梯子を渡った先には、2メートル級のウッドゴーレムが数体。先行したレイジーとツグミが、激しい噛り付きでこれらを殲滅して行っている。
 それを見るに、このエリアもハスキー軍団の活躍は続行しそう。

 そしてモモンガだが、どうも風のカッターを飛ばして来ているようだ。飛来するスピードもなかなか速いし、不意を突かれたら怖い敵かも。
 頭上は私が見張るねと、香多奈が元気に宣言する。飛行ルルンバちゃんもいるし、まぁ大丈夫だろうと護人は判断を下す。

 それよりも、より複雑になったアスレチックコースが心配かも。まず高低差の木の渡しの仕掛けがあって、登り口に意地悪な振り子の仕掛けが。
 タイミングが悪いと、棒の振り子に頭や体をど突かれて痛い思いをしそう。その向こうには、横向きの歯車が派手に障害物となっている。

「何と言うか……6層から、アスレチックコースもグレードアップしているな」
「が、頑張って突破します……全然平気です」

 平気そうな顔色には見えないが、とにかくコースの横断は否応なく始まった。紗良は香多奈にフォローされながら、なるべく楽そうなコースを選びつつ進んで行く。
 少し前を行く姫香は、護衛しながら後ろを何度も気にする素振り。敵影は既に付近には無く、一行は自身の足取りだけ気にすれば良い状況。

 そして歯車の奥に、先行していたレイジーが小型の木箱を発見。このエリアにもあると確信していた姫香は、すぐにそれの回収へと向かう事に。
 それを守るように大リスの群れが襲い掛かって来たが、護衛のハスキー軍団が大活躍を見せる。大リスと言えど、中型犬サイズの体型はハスキー達からすれば雑魚には違いない。

 振り子の仕掛けも何のその、素早いリスの集団をあっという間に蹴散らして行く。お陰で姫香は、安心して木箱の回収に集中出来た。
 そして遠回りしたにも関わらず、1番最初にゴールイン。

「歯車の上って乗れるんだね、ちょっと怖かったけどアトラクションみたいで面白かったかも? さぁて、宝箱には何が入ってるかなぁ」
「待ってよ、お姉ちゃん……今そっちに行くからっ!」

 先走る姉に待ったを掛けて、少し遅れて香多奈も合流。紗良はかなり消耗していたが、護人もサポートに回って何とかこのフロアを踏破出来た。
 もういっその事、この後もこの布陣で行くべきかも。そんな事を思う内にも、子供たちは宝箱の中身を確認して喜んでいた。

 中からは、鑑定の書や魔玉が幾つかと、それから木製の立体パズルが4つ。これも良く分からないダンジョンの洒落なのか、木製縛りが発動している。
 それを眺めながらも、子供たちは遊んだら楽しそうと呑気な発言。1人だけ疲労度の大きい紗良が、それを魔法の鞄に回収して行った。

 大きなため息をつきながら、あと4層と独り言を呟いて自分を鼓舞こぶしている。心配する姉妹だが、体調の面は問題無いらしい。
 要するに苦手意識と言うか、気持ちの問題が大きいよう。やっぱり香多奈だけでなく、護人がサポートに回って前衛は元気な面々で対処して貰う事に。

 それを聞いて、姫香は元気にオッケーのサイン。ハスキー軍団と自分で対応するよと、敵の手応えの無さにお気楽な返しをして来る。
 まぁ、確かにここまでの敵で慌てる感触は無かった。


 そんな訳でお次の7層フロアだが、殺人モモンガに加えて特攻キツツキの集団がお出迎え。空から奇襲を掛けて来たが、数もそれ程多くないし冷静に対応すれば大した事も無く。
 風の魔法を放って来る、モモンガの方が厄介かも……自爆覚悟で突っ込んで来る、キツツキもそれなりに怖いけど対処は無事に完了。

 体力も無いみたいで、ハスキー達と姫香で全て撃墜して行く事が出来た。それから後衛にお知らせ、さぁ張り切って進もうと元気に音頭を取っている。
 7層のギミックも、前の層とそんなに大差は無かった。ただし細い丸太の下の落とし穴には、大量の大ヒルが潜んでいた。

 それをチラッと確認したレイジーは、《魔炎》で瞬殺の対応振り。そして転がる魔石を、ルルンバちゃんが降りて行って吸い込むと言う見事なタッグを披露。
 怖い仕掛けも形無しで、逆に香多奈に大喜びされる始末。そしてこのフロアの宝箱だが、何と横向き歯車に乗って回転していた。

 レイジーに付き添われながら、それを慎重に回収に向かう姫香。それは竹の編み籠に入っていて、形状は箱でさえ無かった。
 その中の竹の水筒2つには、ポーションやエーテルが入っていてまずまずの当たり。あとは木の実が2種類、合計で8個と大豊作だった。

 このダンジョンは、とにかく木の実の回収率が高い気がする。これもまぁ、樹上型ダンジョンの1つの特徴なのかも。
 お陰で敏捷値が上がるアガーの実も、無事に増えてくれて何より。この実の効果もあって、全員が無事に7層のアスレチックコースを踏破出来た。

 心配された歯車のギミック追加だが、今の所は難易度に変化は無さそう。それを信じての次の層へ進出したが、その期待は完全に裏切られる事に。
 何と8層エリアは、歯車での振り子ギミックがてんこ盛り。目に見えるだけで、3つの仕掛けが縦横無尽に行く手を阻んでいた。

 高低差の仕掛けも健在で、今回は竹槍が落とし穴の底にお出迎えしている。殺意は高いのか低いのか、本当に良く分からないダンジョンだが厄介には変わりない。
 取り敢えずは出迎えのモンスターの集団を撃破して、これで移動に専念出来る。


「えっと、右のルートが一番楽かなぁ? でもあの振り子にぶつかったら、真っ逆さまに落とし穴に落ちちゃうし。
 怖いよね……あっ、あっちのルートだと落とし穴に竹槍が無いよ? 何でだろうね、別に変な罠があるとか?」
「どうだろう、でも安全を考えるならあっちの遠回りのルートがいいかもね? 回転の仕掛けが結構スピードあるから、気を付けてね紗良姉さん」

 そんな訳で8層のルートは決定、先行する姫香とその後を追う紗良とそのサポート要員。姫香は単独で、この層の宝箱を探して移動している。
 ハスキー軍団は完全にフリーで、ウッドゴーレムを倒し終わったらご主人たちを待ちの姿勢。さすがにアスレチックのサポートまでは、運動神経の塊の犬達でも無理らしい。

 そして用心しながら進み始める後衛組、香多奈がまず先頭でルート確保しつつ進んで行く。その後ろを紗良と、サポート要員の護人が続く。
 香多奈は小学生の割に、運動神経はチームの中でも抜群に良い。姫香もそうだが、そこは護人も年少の子供ながらも信頼を置いている。

 今も回転する長い棒の仕掛けを、リズムよく避けて進んでいる。それに続く紗良も、何とか離されずに追従の構え。
 この仕掛けも所詮はリズムだ、それを掴めば攻略はそれ程大変でもない。そう思っていたら、信頼していた香多奈がやらかした。

 急に姿が消えて、ひゃあっと悲鳴が上がったと思ったら。どうやら落とし穴に落ちてしまったようで、後ろを歩いていた護人は大慌て。
 しかもその落とし穴、どうも最初に通った姫香をスルーしていたらしい。何とも妙な仕掛けで、つまりは隠しギミックの可能性が。

 ひょっとして、小さな者を狙い撃ちの仕掛けなのかも。慌ててその板の隙間を覗き込む護人と紗良、姫香の方は雲梯うんていの仕掛けで宝物を回収中。
 遥か離れた場所で、こちらの出来事にも気付いていない。

「香多奈っ、大丈夫か……? 怪我してないか、返事してっ!」
「だ、大丈夫……滑り台みたいなので落っこちたみたい。床にそんな仕掛けがあったのかな、上は見えないけど怪我はしてないよ?
 登れると思うから、ちょっと待っ……ええっ!?」

 どうしたと、再び慌てた感じの護人叔父さんの声が聞こえる中。滑り台状の落とし穴を、登って上がろうとしていた香多奈の視線に入って来たのは。
 着物を着た青白い肌の子供の鬼が、体育座りしてこちらをにこやかに眺めている姿だった。そのそばには木製の小さな机があって、アイテムが商品の様に並べられている。
 それを見て、どういう状況だろうと思わず固まる少女であった。




 ――このカオスな密空間、果たしてどうやって突破する!?





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