田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件

マルルン

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1年目の春~夏の件

鬼のダンジョンから無事に生還を果たした件

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 ダンジョンボスの討伐終了と共に、一定のリズムを奏でて動いていた歯車も全て止まってくれた。そして一際目立つのは、フロアに鎮座されている“ダンジョンコア”とドロップ品。
 それから同じく壁の端に据えられてあった、大きな木目の宝箱が1つ。同じく、木製のロッカーのような物が壁際にずらりと並べられてある。

 アレは何だろうねと、子供たちは好奇心旺盛に近付いて行く。この10層フロアの出口だが、ちゃんと退去用の魔法陣が設えてあった。
 妖精ちゃんの話では、アレを潜り抜ければすぐ外に出れるそうな。異世界の魔法って凄いなと素直に感心する護人だが、子供たちは宝物の回収に忙しそう。

 ちなみに大ボスのドロップは、テニスの球サイズの魔石とスキル書が1枚。それから、50センチの長さの獣の尻尾が1本だった。
 壁の端の宝箱からは、そのサイズの大きさから大物の気配がヒシヒシ。と思ったら、中に入っていたアイテムがただ単に大きかったと言うオチ。

 まず出て来たのは、木製の巨大ハンマーだった。ボスの巨大猿も使っていた気もするが、そちらからの武器のドロップは無し。
 ただこれは大き過ぎて、普通の人は両手で持たないと使えそうにない。チームでは恐らく、これを好んで使う者はいないかも。

 それから同じく大物だが、木製の3段収納棚と木皿が大中小と30枚程度。実用品とは異なるが、木製品縛りで言えば玩具の達磨だるま落としセットも入っていた。
 魔法の品関係で言うと、強化の巻物が2本ほど出て来てくれた。それから蔦編みの買い物袋程度の大きさの鞄と、例の鬼のコインが3枚ほど。
 最後に、良く分からない木の塊がコロッと出て来た。

「何だろうこの小汚い木の塊、護人叔父さん分かるかな……こっちの蔦の袋は、ひょっとしたら魔法の鞄かも知れないね。
 香多奈、またコイン出て来たから持ってなさい」
「私にも鞄を見せてよ、姫香お姉ちゃんっ! それより5階の案内書に書いてあったコインの使用場所、多分この隣にあるロッカーみたいなのじゃないかな?」

 色々と確認する事は多いが、ロッカーの中からもアイテムが追加で獲得出来るかも。それってどうやるのと、姫香はロッカーを眺めて思案顔。
 ロッカーと言うか木棚の開きは、大きさは様々で右の隅にコイン投入口がそなえてあった。どうやら理屈は簡単で、コインを投入すれば棚が開いてくれるらしい。
 そしてその中身を、見事ゲットと言う流れな筈。

「よしっ、やり方は分かったかも……それじゃあ順番ね、香多奈はどれを開ける?」
「えっとね、じゃあこの大きいロッカーにしようかな……ここからコイン入れて、と。あっ、2枚で開いたっ!
 中身は……あれっ、木刀!?」

 それは白木の木刀で、手にした香多奈はガッカリ模様。ただし寄って来た妖精ちゃんによると、魔法が掛かってるしいいモノじゃんって事らしい。
 続いて挑戦した姫香は、その結果を受けて小さな木の棚を選択。それも2枚で開いて、出て来たのはペガサスの描かれた綺麗な絵馬だった。

 それを手に姫香は微妙な表情、自分も武器とかが良かった様子。そして次は護人の番らしいが、それより護人はさっき姫香に渡された木の塊が気になっていた。
 専門外なので詳しくないが、これが香木の類いだとしたら大変だ。沈香や白檀ビャクダンなどが有名だが、伽羅きゃらとかとなると1グラム数万円って話らしい。

 ちょっと怖くなった護人は、それを一旦無視してコインガチャに逃げる事に。しかしここでもイレギュラー、2枚入れても戸棚は開かず。
 戸惑っていると、姫香が追加でコインを押し込んで4枚でやっと開いてくれた。そう言う事もあるらしい、そして中身は大当たりの『鑑定プレート』だった。

 これでチームで2枚目である、この引きに香多奈と姫香は大興奮。さすが叔父さんと、良く分からない場面で株が上がる始末。
 その勢いのまま、次の番に指定された紗良は残念ながら2枚コインの棚だった。そこから出て来たのは、良く分からない種のセットだった。

 これに興奮しているのは、妖精ちゃんだけの始末だが価値は誰にも分からず。さて次は誰の番と、関係ない話題で盛り上がる子供たち。
 結局は、勢いに乗ってる護人がもう1度選んで良い事に。ただし、4枚とか5枚の大物棚を選んでと、末妹の可愛い無茶振り。

 残ったコインは6枚らしく、どうしてももう1個くらいは凄いのを当てて欲しいらしい。そう言われてもと、護人は困惑しつつ側にいたミケを抱き寄せる。
 それからさっきまで愛猫が爪砥つめとぎをしていた、一番下の棚を選択してコイン投入。その棚は見事に、希望の4枚アイテムが入っていた。

 喜ぶ香多奈が、勝手に中身を開けての確認作業を始めてくれた。ミケは我関せずと、護人の腕の中で大人しく鳴いている。
 探索も終わったので、さっさと我が家に帰りたいらしい。そして棚から出て来たのは、良く分からない大きな鍵付きの巻物だった。

 妖精ちゃんもその存在は、よく知らない模様でハテナ顔。そして残った2枚を勿体もったい無いからと、必死に消費に走る姫香と香多奈。
 姉妹は何とか2枚で開く戸棚を発見、その中からは魔結晶(中)が4個出て来た。時刻は既に夕方を過ぎており、獲得した品を回収しながら紗良がそう口にする。

 もうそんな時間と驚く香多奈と、それじゃあコアを壊すねと明るく宣言する姫香。蔦編みの小袋を弄っていた香多奈は、やっぱりコレ魔法の鞄だと物を出し入れしながら喜びのコメント。
 これもチームで3つ目だ、容量は不明だが嬉しい報酬である。そんな中、姫香のくわでの破壊音が響いて、これで後はゲートを潜るだけ。

 退去用の魔法陣は、何故か丸太を渡った向こう側にあった。そんな最後の道のりを、幾分か慎重に時間を掛けて渡って行く一行。
 ここで浮ついて怪我などしたら、本当に元も子もない。紗良も香多奈に手を引かれ、魔法陣へとゆっくりと進んで行く。
 そして無事に到着、これにて本当に探索終了である。


 その後の顛末は、ちょっと何と形容して良いのやら。すっかり薄暗くなってしまった外へと、無事にチーム全員で脱出する事が出来たと思ったら。
 出て来た場所が何だかヘン、そう思って周囲を見回すと見覚えのある廃墟家屋が窺えた。その近くの空き地に、我が家のキャンピングカーもしっかりと停車中。
 ただしかし、あんなに巨大で遠くからも見えた巨大樹がどこにもない。

「あれっ、みんなで入ってたダンジョンどこ行ったの……? 遠くからも見える程大きかったのに、どこにも無いよ?」
「あっ、本当だ……ひょっとして、私がコアを壊しちゃったから消えちゃったのかな?」

 そんな法則をダンジョンが持ってたら、世界の諸事情は少しは良くなっている筈。攻略したダンジョンが順次消えて行ってくれるのなら、その数は半分程度には減っているだろう。
 とは言え、何故消えてしまったのかと問われても、その理由は定かではない。さすが“鬼が一夜で造ったダンジョン”、そう思うと何となくしっくりは来る。
 結局は本当の所は分からないまま、来栖家チームはその場を去るのだった。



 その日は素直に自宅に直帰、ゆっくりとお風呂で疲れを流して夕ご飯を食べて。それからぐっすりと眠って翌日、家族揃って協会へと報告に行く事に。
 そこで恒例の、魔石とポーション販売と動画の編集依頼である。家族全員で向かう必要もないのだが、子供たちも暇と言うか一緒が良かったらしい。

 必然的にハスキー達も同伴して、いつもの様に賑やかな報告会となった。仁志にし支部長と能見さんに温かく出迎えられ、子供たちは途端にお喋り開始。
 どうせ動画チェックの間は、解説を交えてこの場に居座る予定なのだ。お茶の用意が為されて行き、いつもの席に着いた来栖家の面々は今回の冒険を語り始める。

 動画に映される大樹の巨大さに感嘆する仁志だが、これが攻略後には消えていたと聞かされて2度ビックリする破目に。
 そしてそのダンジョンの様式にも、2人は驚きを隠せない模様。

「何ですかコレ、アスレチックコース……? こんなダンジョンがあるなんて、今まで全く聞いた事はありませんけど。
 鬼が一夜で造ったとの噂は、まさか本当だったんですかね?」
「鬼の子供なら出会ったよ、ダンジョンの落とし穴の中で。お握りとジャーキーの代わりに、色々とアイテム貰ったけど……?
 あれっ、これは言って無かったっけ?」
「聞いて無いわよ、香多奈のアンポンタン! ジャーキーを平気で食べるの、アンタ位だから人にあげるのは止めとけっていつも言ってるでしょ!」

 突っ込むべきなのはそこでは無いのだが、少女は無事にここに座っている。つまり特に鬼と遭遇して、変な事にはなってないと言う確実な証拠でもある。
 時間差で肝を冷やす保護者の護人だが、動画を早送りしてくだんの箇所を確認する仁志も相当に慌てている様子である。

 そして少女が落とし穴にまって独りになった場面、スマホのレンズの先には確かにナニカがいた様子が映っていた。
 残念ながらと言うか、ぼやけた発光現象で確認は難しかったが。

「……ここは編集して、アップ動画ではカットしておいた方が良さげですね」
「その辺はお願いします、しかしまぁ……鬼の子供が、なんでこんな場所に? 香多奈は普通に喋ってるな、子供同士の気安さで仲良くなってるのかな。
 ちょっと肝が冷えたな、こんな事になってたなんて」

 本当にそうだよと、プンプンしながら姫香が妹の頭を叩く動作。本人は懲りた風もなく、相手の子も遊ぶ相手が欲しかったんだよとうそぶいている。
 それはともかく、ダンジョンの消失まで手掛けて貰って、向こうの地元も大喜びとの事である。こちらはそんなつもりも無かったが、まぁ喜んでもらえて良かった。

 とにかく約束の報酬も貰えたし、魔石を売り払えたし万々歳だ。もっとも、今回はモンスターの数も少なかったので、販売価格はいつも程では無かった。
 妖精ちゃんの適当な見立てでは、アイテムの中に魔法の品が多かったそう。つまりは、そちらの方で儲けは期待出来そう……特に魔法の鞄は確定だし、来栖家2個目の『鑑定プレート』の存在も大きい。

 そしてスキル書だが、3枚を協会に来る前に家族でチェックし終わっていた。今回はペット側で無くて、紗良が『解読』のスキルを獲得済み。
 これで香多奈に続いて、何と紗良も3つ目のスキルを習得した。貴方のチームは若き才能の集まりですかと、簡単にスキル3つ目の壁を超える事態に仁志は驚き顔。

 護人は単純に、スキル書を多く獲得出来ている副作用じゃないかと思っている。つまり相性チェックの回数が、恐らく他の探索者たちより倍は多いんじゃないかとの推測だ。
 それはまとを射てるのかも、来栖家のドロップ運も加味すると。

「それにしても……今回も魔法の品が多いですね、鑑定の書は足りますか、来栖さん?」
「魔法の鞄とかを端折れば何とか、前の残りも2枚あるんだっけ、紗良?」
「1か月くらい前の探索の、予備に取ってあった奴ですね……香多奈ちゃんじゃないけど、そろそろ護人さんやレイジーの鑑定チェックもやってみたらどうです?」
「じゃあ私もやるっ、動画チェックの間はどうせ暇なんでしょ、叔父さんっ!」

 香多奈の我がままはいつもの事と、何とか上級の鑑定の書を3枚ほど余らして。それを今回は、護人と香多奈とレイジーに使う事に決定する。
 そして鑑定大会、香多奈が張り切って鑑定の書を舐めての提出。


【Name】来栖 護人/Age 37/Lv 15

HP 78/78  MP 35/35  SP 27/27
体力 C   魔力 E+  器用 D+  俊敏 D  
攻撃 C‐  防御 C+  魔攻 E   魔防 E
理力 E+   適合 E+  魔素 D  幸運 E+

【skill】『硬化』
【S.Skill】《奥の手》
【Title】《大器晩成》


【Name】来栖 香多奈/Age 10/Lv 10

HP 10/10  MP 25/25  SP 12/12
体力 F+  魔力 D‐  器用 E‐  俊敏 E
攻撃 F+  防御 E   魔攻 D‐ 魔防 F
理力 F+  適合 F+   魔素 E  幸運 C+

【skill】『友愛』『応援』『魔術の才』
【S.Skill】なし
【Title】《溢れる奇才》


【Name】レイジー/Age 5/Lv 18 

HP 104/104  MP 51/51  SP 60/60
体力 B‐   魔力 E+   器用 D+  俊敏 C+
攻撃 C+  防御 D    魔攻 D+    魔防 D
理力 D+  適合 D+  魔素 D+  幸運 E+

【skill】『魔炎』『歩脚術』
【S.Skill】《狼帝》
【Title】《統率者》



 そして判明する、レイジーの馬鹿げた高ステータスと香多奈の低過ぎるHPやSP値。MPも低いので、少女が『応援』を乱発出来ない理由が良く分かる。
 護人は何と言うか堅実で、体力や防御の強さは光り輝いている。幸運値以外は、HPやMPを含めてステータス能力は高い方だと思われる。

 しかもレベルだけ見ると、既に『白桜』の細見団長を抜いていると言う。それから称号も、知らぬ内に《大器晩成》なんてのかくっ付いていた。
 それを言えば、レイジーの《統率者》や香多奈の《溢れる奇才》なんて名前の称号も意味不明である。

 姫香は自分が調べた時は無かったのにと憤慨しているが、称号があったからと言って何かが良くなるとも分からない。
 その辺は、協会側も情報を把握していない模様である。ただし、ランクの高い探索者は、軒並み強そうな称号を持っているそう。

 奇才と名の付く香多奈が、将来そんな探索者にならないとも限らない訳で。図に乗るのが分かっている家族の者は、間違っても誰もそんな事は口にしない。
 姫香は護人叔父さんはやっぱり頼りになるねと、レベルの高さに注目している。それだけ探索を重ねて来たのだとしたら、素直に喜べない護人ではある。
 仁志支部長も、その成長の早さには素直に驚いている。




 ――日々の積み重ねが成長に繋がる、それは探索業も同様みたい。





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