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第2章
3 . 息子の襲来
しおりを挟む数ヶ月たった。
ジェナミもソフィアにも小さな歯が生えてきた。サマンサは2人のために毎朝、離乳食を作るようになった。母乳を与える回数は2人が成長するたびに減った。
サマンサの心の中で、寂しい気持ちと2人が成長していく喜びが混ざり合う。
子育ては本当に忙しい。双子を育てているかのようだった。旦那様は貴族とは思えないほど助けてくれるが、いつも家にいるわけではない。
サマンサは自分自身を鼓舞してやり抜いてきた。
「私はベビーシッターなのよ!サマンサ!2人を立派に育てるのよ!」
ここ数ヶ月サマンサは ジェナミ以外の家族に会っていない。2人がもう少し大きくなったら家族と会える時間ができるだろう。しかし、2人の世話に追われてそんなことには気づけなかった。
月に一度、夫から手紙が届く。もちろん楽しみだが ジェナミは泣くし、ソフィアは意外と食欲旺盛だからすぐにお乳を欲しがる。ゆっくり読める時間はあまり無かった。
サマンサはオーウェンに、たまには外に出て新鮮な空気を吸ってきなさいと言われた。だから、郵便屋の私書箱に行って配達物を取ってくることにした。
郵便屋までは片道30分ほど。道中は 白樺の小道 と 赤土の地面が美しい景色を生み出している。田舎の特権だ。山があり、少し馬車を走らせれば海があり、賑やかな離島もある。なんていい所で奉公しているのだろうと サマンサは全てに感謝する。
郵便屋に着いた。郵便屋といっても、私書箱は数十個しかない。なぜならここは田舎。しかもその郵便屋は、配達人のための中継地点にすぎない。
サマンサが私書箱を開けると、オーウェンへの手紙が数通あるだけだった。夫からの手紙はなかった。寂しかったが、オーウェンの家に戻れば今までの手紙がある。それに少し歩いて、久しぶりにゆっくりできたので、良い気分転換になった。
サマンサがオーウェンへの手紙を汚さないように気をつけて帰路に就く。
ちょうど昼下がり。一番暑い時だが、ここは北国だ。風がサマンサの頬をなでる。
サマンサは家の前に着くと違和感を覚えた。
「んっ?身分の高そうな馬車が...」
家の前に、場違いに感じるほどの馬車があった。旦那様のお客様だろうかと思い、身なりを整えてから玄関に向かう。
「ただいま戻りました!」
サマンサは玄関の扉を開ける。誰の返事もない。
奥の方から話し声が聞こえてきた。きっと客間にいらっしゃるのだろう。サマンサはキッチンでお茶の用意をする。一番いい茶葉を十分に蒸らしていれる。
サマンサは用意した紅茶と少しのミルクを客間に持っていく。
「失礼いたします。紅茶を持って参りました。....って、えっっっ?どちら様...?旦那様と顔が似てる...」
サマンサが顔を上げると、そこにはオーウェンと若い殿方がいた。
「だから、父上。そんな身勝手なことをしないでください!私たちに相談もせず!その子をどうするつもりなのですか?まさか養子にはしませんよね?それはそれで面倒になることは、父上ならお分かりのはずです。」
若い殿方が、なぜかオーウェンを父上と呼び、なぜかオーウェンを諌めていた。
「だから、養子にはせぬ。そのつもりだ。するなら、もうとっくにしておる。それにお前には迷惑はかけぬ。優秀なベビーシッターもおるからの。いいだろ?ルーカス?」
「まぁ、迷惑はかけてもいいのですが...父上の助けにはなりたいですし。そのかわり、その子をしっかりと育て上げる自信がおありなのですね?」
「勿論だ。」
「それなら....良いのではないですか!父上はやつれておりましたのに、顔色がよろしいです!どうやら心配する必要はなさそうですね!では、帰ります。失礼しました!」
「いいんかい!そこは引き止めないんかい!」とサマンサが心の中でつっこんだ時、ようやくオーウェンとその殿方はサマンサの存在に気づいた。
「サマンサ!帰っていたのか。すまぬな、お茶の用意をしてくれたのに。おい、ルーカス。これがうちの優秀なベビーシッターのサマンサだ。」
サマンサは紹介をされて、殿方に一礼する。
「君がサマンサか!うんうん。しっかりしておりそうだ。父上、良うございましたね!」
オーウェンには二人の息子と一人の娘がいる。どうやらルーカスはオーウェンの息子らしい。でもあの楽天家な性格からして、次男の方だとサマンサは思った。
「サマンサ。こいつはルーカスだ。長男でな、伯爵家をこいつについでもらった。」
っえ?まさか長男?この楽天家で毎日が幸せですオーラを出しているこの方が?サマンサは意外な展開に驚く。普段はソフィアに甘々のオーウェンを見ているが (オーウェンはバレていないと思っている)、かつては冷静沈着な伯爵だったことは有名な話だ。
この辺りの街道をきれいに作り直したのも、ずさんな管理体制を徹底的に強化をしたのも、財政を立て直したのも、すべてオーウェンの功績だ。
そんなオーウェンの子供とは思えないほどの、楽天家な気質と即決即断力。親子が似ないこともあるのだなとサマンサは不思議に思った。
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