転生した俺は身バレしたくない〜ニ鬼を追うもの〜

海月ウミヅキ

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はじまり

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「少し居ない間にこれですか」

「!!!!」


「っふ、あっ…?」



聴き慣れた声が洞窟内に響くと同時、気持ちよかったアルドの唇が離れて行ってしまった。
ゆっくりと目を開け視線を動かすと、そこには、ニッコリと、しかし呆れ顔で、背中に真っ黒なオーラを背負うロワンの姿
美しい顔で笑っているのに、全然笑っていない様に見えるから不思議だ

そのロワンの姿に、ピタリ、と止まる俺とアルドの2人

でも、アルド以上に空気の読めない物がここには居た


「っっッあ!、ひいっ、あっあ」

「っっ!!!」


ヌルリ、とスライムが尿道へと押し入ろうとして、思わず腰が跳ねる
それと同時に中のアルドの物を締め上げてしまい、それが運悪く気持ちのいい所に当たり、更に腰が揺れてしまった。

汗を落としたアルドが俺を睨みつけるが許して欲しい。睨むならスライムに!



「……はぁ」



大きくため息を吐いたロワンが長い足で俺たちに近づくと、右手の人差し指の先に水の球を作り出した。
その球はみるみると姿を変え、細長い針の様な形へとなり、俺が止めるより早く、俺の袋へと張り付いていたスライムに突き刺さった。

ヒュン、と袋と内臓が引き上がる不快な感覚
だが痛みは無い。
水の針が突き刺さったスライムはドロドロと徐々に姿を無くしていき、俺の皮膚を伝い地面へと落ち、そのまま吸い込まれて行った。


え?スライム…死んだ??



そこに残ったのは、いつの間にかシャツ1枚になった半裸の俺と、いつの間にか全裸になって、俺の中へと収まるアルドの姿
俺の方は限界で、すっかり縮こまっているが、アルド自身はこの状況になってもまだ、しっかり硬いままだ

そんな俺たちを見て、ロワンが笑顔でゆっくりと、その長い足を上げた


あ、やばい。


「ッうぐ!!」

「ま、ッあ、ああーーーッ!!」


宙を舞うアルドに、ズルリと一気に引き抜かれて腰が跳ねる俺


待って、まだ入ってるから!!!
と言おうとした俺の声は嬌声へと変わり、洞窟の奥へと消えて行った




◇◇◇



「私、頼みますって言いましたよね」
「………」
「貴方は返事をしましたよね」
「………」
「何か言う事はありませんか」


全裸で苔の上へ正座するアルドと、今にも斬りかかりそうなロワンの後ろ姿
アルドは何も言わずただただ、苔を見つめている

そんな2人を遠目に、息が整った俺は、重たい身体をなんとか動かして、自分の服を拾い集めた。
下着とズボンは自分とスライムの液体でべっちょりしているが、少し離れた場所に落ちていたロワンのジャケットは、光の粉が付いている程度で、汚れては無さそう。せめてもの救いだ

べっちょりとしたズボンを広げると、そのポケットから何かが転がり落ちた。
その転がった赤い玉を目で追うと、何かにぶつかり止まる
昼間に拾った赤い魔石、と何故か真っ二つに割れた紫の丸かった魔石。
紫の魔石は、先程まで俺が居た場所、白い液体が飛び散った場所で真っ二つに割れている…

紫色の、丸い玉?
あーーー、これは、もしかして?
そんなまさか


と嫌な考えが頭を過った。




「そもそも何故ここにスライムが入れたのですか」
「………」
「そして貴方は何故それに気づかなかったのですか。私より若い貴方が耄碌しましたか」
「………」
「スライム風情と一緒になって事に及ぶとは…死んで詫びますか?」



腰元のレイピアを抜いたロワンから、物騒な言葉が漏れる

まさか、本当に殺したりしないよね?とアルドを心配するが、当の本人は何も言わずにただ苔を眺めるばかりだ。


何か言って!と思いながら、赤い魔石と、真っ二つに割れた紫の魔石…魔石だと思いたい物を拾いあげる。


どうしよう。聞く?自己申告する??
それとも何も見なかった事にして隠す?

チラリと2人に視線を戻すと、ロワンの剣の周りが水色の何かで包まれていく
多分、魔法、ロワンの水魔法



「っ、ロワン!!!」


このままでは本当に斬りかかりそうで、思わず大きな声でロワンを呼んだ
ゆっくりと此方を振り返ったロワンの顔は、見た事もない程無表情で、赤い目だけがギラリと光っていて、あまりの恐怖に一瞬息が詰まる

だが、俺と視線が交わると、ロワンはいつものようにニッコリと笑い、忽ち優しい微笑みを浮かべた。


「大丈夫ですよトウヤ。貴方はゆっくりしていて下さいね」

「あ、うん。ありがとう、
あのっ、ところでこれって、…魔石だよね?」


手のひらの魔石をロワンがいる方へと突き出すと、こてん、とロワンが可愛らしく首を傾げた

これ、魔石だよね、2つ共魔石だよね、そうだと言って


「…?魔石…?」


剣を腰へと納めたロワンがゆっくりと近づいてきて、俺の手の中を覗き込んだ
そして俺の顔をジッと見つめ、次に振り返りアルドを見て、また俺と魔石を交互に見ると、それはもう、深いため息を吐いた。


「魔石だよね!!」


魔石と言って!
と強く思う俺の想いを言葉に乗せる


「赤いのは間違いなく魔石です。レッド系の魔物から出たのでしょう」

「赤いのは……」

「ええ」


赤い魔石は、レッド系の魔物から出た?
アルドが狩ってきた肉、お昼のレッドチキンマトンの事だよね
だったら!そうか、紫の魔石は紫の魔物から出るのかな?パープル系の魔物とか?
さっきの紫のスライムを倒した時に出たのかな?そうなのかな?
俺が昼に拾った紫の魔石はきっとまだポケットの中にあるんだよね!きっと!


「じゃあ、この、紫のはさっきのスライムの…」
「違います」

「っえ、」
「違います」

「じゃあこれは…」
「スライムから魔石は出ません。トウヤ、その石は何処にありましたか?」


何処って此処に落ちてたけど?
元々はお昼に肉を焼いた焚き火の燃え滓の中にあったやつだと思うけれど?

分かってる。
ロワンが聞いているのはそんな事じゃ無いって分かっている。


「お昼の…焚き火の燃え滓の中にあって…、
……拾ってポケットに入れてた…かな?」


俺がそう言うと、暫く沈黙が続いた後、突然正座していたアルドが苔の上に大の字になった。
そして大きく深呼吸したかと思うと、


「俺は悪くねえ!!!スライム連れ込んだのトーヤじゃねェか!!!!」


天井に向かってそう大きく叫んだのだった。

え?俺のせい?俺のせいなの?


大きなため息を吐いたロワンが、アルドが脱ぎ散らかしたであろう黒いマントを手にすると俺へと投げつけ、次はアルドのズボンを手に取りそれを乱暴に全裸のアルドへと投げつけた。



「なぜトウヤがスライムの石を持ってるのに気づかなかったんですか」
「は??俺に言えた義理か??お前が気づかねェもん、俺が気づくとでも?」
「……それは、」


アルドの返答に珍しく言葉に詰まるロワン
そして何故か自慢気なアルド

スライムの石…?か、そうか…詳しい事は分からないが、名前からしてもうダメな気しかしない。

え?やっぱりこれは俺のせい?なの?
いやでも、だからと言って助けてくれなかったアルドの罪は重いよね?違う?!

そうだよ、スライムを連れ込んだのが俺のせいだとしても、アルドが…その、俺に、突っ込んだのはまた、話が別だよ、ね??

あれ?今何の話してるんだっけ?何で怒られてるんだっけ?あれ???

前髪を優雅に掻き上げたロワンが、赤い瞳でこちらを見た


「トウヤ、落ちてる物は、2度と、拾わないでくださいね」


そして、ニッコリと、笑ってるのに笑っていない不思議な顔


「…はい。ゴメンナサイ」



そんな顔を見てゾワリと背筋に悪寒が走り、つい謝罪の言葉が口から漏れた。
だってすごく怖い。めちゃくちゃ怖い
何が?どこが?って聞かれると困るけれど、とりあえず怖い

ロワンに投げつけられたアルドの黒いマントで身体を隠し、なんとなく、そうしなければならない気がして、その場に正座をした。身体が痛い



「…それでもアルド、貴方がした事は許容できませんね」


そう言ったロワンがまた腰元の剣へと手をかける、慌てて起き上がるアルドと、剣が抜ける金属音と、全てが一瞬で、その動きを目で追えただけでも凄いと思う。本当に

噴き上がる血飛沫と、ゴロリ、と落ちて来た赤い塊
その塊は勢いでコロコロと転がり、少し揺れながらロワンの足下で止まる
その塊に付いた隻眼がゆっくりと瞬きを繰り返すのを見て、全身の血の気が引いて行く、頭がスッと冷たくなり、俺の意識はブラックアウトした。  


「……トウヤっ??」
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