上 下
17 / 43
はじまり

13

しおりを挟む


「お前が悪ィ」
「いいえアルド、貴方の責任です」


頭の上で声がして、意識がふわふわと浮上する。
あれ、俺何してたんだっけ…


「ああ、トウヤ、目が覚めましたね。おはようございます」


ああ、うん、おはようロワン
今何時??まだまだ眠たい、もう一度眠りたい…
でも確か、夜明けと共に出発とか言ってたような気がするな

眠たい目を擦りゆっくりと身体を起こした。
それと同時に肩から滑り落ちる黒い布
見覚えある布、アルドのマントだ


「おはよう…?」


俺の左右にしゃがみ込んだロワンとアルドの姿
2人共もう起きてるなんて…俺が1番最後か、

とアルドに返そうと黒いマントを持ち上げると、何故か下半身は素っ裸


あれ?
ゆっくりと脳が活動を始めた

そうだ、スライムは?あれ、どうしたんだっけ
一つ一つ、記憶が蘇り、繋がって行き、最後に思い出したのは、ロワンの足下に転がるアルドの生首


「……ゆめ?」


怪訝な顔で俺を見るアルドは、間違いなく生きてる、元気そう
そうか、夢か。どこからが?どこまでが?
とりあえずマントを返す事を諦め、自分のズボンを探す為に周りを見渡した。

緑に光る苔の上に、夥しい量の、血のような赤が広がる箇所が一部


夢じゃなかった……?


恐る恐るもう一度アルドを見る
吊り上がった金色の目に、吊り上がった口、赤い髪、黒い布で覆われた隻眼
何も変わらない
血溜まりとアルドを交互に見やると、アルドがゆっくりその口を開いた


「首取れたくれぇで死なねェよ」


いや、死ぬよ。
普通死ぬ。間違いなく死ぬ


「残念ながら私は死にます」


隣のロワンが心底残念そうに言った
自分は首落としたら死ぬというのに、何の躊躇いも無くアルドの首を落としたというのだから恐ろしすぎる

え、待って怖い
ニコニコ顔のロワンと、ニヤニヤ顔のアルド
なんでこの二人笑ってるの?斬首した仲だよ? 

アルドも何ニヤニヤしてんの!バカなの?


「あ、トウヤ、もう汚さないで下さいね」


ニコニコ顔のロワンに手渡されのは、つい今し方探していた俺の下着とズボン
綺麗になってる…
アルドのマントをチラリと捲り下半身を確認
綺麗になってる…


「そちらも綺麗にしておきましたから」
「寝ながら喘ぐなんて、器用なだよなァ、お前」


ニヤニヤと下品に笑ったアルドの言葉に、カッと顔が熱くなった
色々、色々言いたい事はある

偉い人が考えるのをやめたら人間終わりって言っていたけれど…
でももう、これ以上は疲れてしまうので思考を深くに沈めて、この言葉で全て片付けてしまおう。そうしよう。



これぞ、異世界クオリティ
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

完結【日月の歌語りⅢ】 蒼穹と八重波

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:17

【完結済】堕ちた神父と血の接吻

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:107

風変わりな魔塔主と弟子

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:86

『色は忍べど』不憫な忍者が幸せになるまでの2つの分岐

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:126

あやかし百鬼夜行

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:382

君の金魚を削ぎ落としたい

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:59

処理中です...