20 / 43
はじまり
16
しおりを挟む「ナイフよし!!」
「では、私が誘き寄せますね」
「そこを俺が鷲掴みにする」
「鷲掴みにされてるところを、俺がグサリ」
「脳天を狙ってください」
ロワンが立てた作戦を反復し、アルドに貰ったナイフを握る
茂みの向こうに居るのは、中型犬サイズのイノシシみたいなモンスター
その毛は赤く、真っ黒の牙が覗いていて、色合い的にアルドとお揃いだね!なんて暢気な事を考える。
俺は、今からアイツの脳天にナイフを突き刺すのだ。
何の恨みもないけれど、俺のレベル上げの糧となって下さい!ごめんなさい!
優雅に立ち上がったロワンが、その長い足で茂みを抜け出し、指笛を吹いた。
その音を聞いた赤いイノシシが、2度、3度、と土を蹴るとその場を踏み出す
それと同時にロワンの後ろに隠れながら茂みからアルドが素早く飛び出す。
赤いイノシシが、ロワンにぶつかりそうになる直前、華麗に飛び上がったロワンと、その背後から大きな腕を伸ばすアルド
文字通り、鷲掴み
アルドの手の中でジタバタと暴れる赤いイノシシに心の中で謝りながら、その脳天へとナイフを突き下ろした。
◇◇◇
「ステータスオープン」
レベル2
HP11、MP4
え?これだけ?
「…これは……」
「っぶふッ!」
こめかみを抑えるロワンと、噴き出すアルド
ああ、分かった分かってしまったよ2人のその反応で
「非常にお伝えし難いのですが……普通はレベル一つにつき、5~10前後、ステータスが上昇します。普通は…一般的には、ですから…!異世界仕様ですかね!大丈夫ですよ!」
「ッ上昇1って…!!ぶっはははは!」
とても気を使ってくれるロワンと、無遠慮のアルド
ごめん、イノシシ…俺のレベル上げの糧に…とか言っておいて…俺のステータスどうなってんの?
「下位魔法ですら、消費10ですからね…どうしましょう」
「ッこの調子じゃ、100にしたとこで…ぐふぅッ、ふ、ふ、ふふふ」
笑いたきゃ笑えよ!堪えず笑えよ!
それかしっかり堪え切って?!
本気で頭を抱えて悩んでるロワンにはとても申し訳ない…
今の俺では下位魔法すら使えないのか…というか、この先ずっとこの上がり幅でいくなら、レベル8まで上げないと魔法使えないのか??
HPの数値も酷いものだし、本当どうしよう。どうしたらいいの。
「すみません、トウヤ間違えました。レベル1つにつき5~10というのは、年齢に比例して上がった場合で…モンスター討伐の場合はもっと……」
追い討ちだよロワン!!!!!
蹲って笑いを堪えるアルドと、絶望して地面に膝を付く俺と、頭を抱えるロワン。そんな俺たちの傍には、絶命した赤いイノシシ
なんて酷い光景だろうか…
あれから3度、弱いモンスターを同じ様な戦法で討伐し、俺のレベルは5へとなった。
だが、ステータスの上がり幅は毎回1、ずっと1
落ち込む俺を励ましてくれるロワンと、笑い続けるアルド
そして、ついに森を抜けた。
「…道がある」
森を抜けたそこには、整備されたと言っていいのかは分からないが、確かに道があった。
そしてその道の右へと続く先には、小さな門が見えている
もしかしてあれが町への門だろうか?
左へと続く道の先には特に何も見えない。
「もう町が見えますね。…町へ行くという事でいいんですよね?」
不安そうな顔でロワンが俺の瞳を覗き込んだ。
そう。レベルを上げても俺がまともに魔法を使えるようになるのは、まだまだ先のこと。
MPは時間と共に回復するそうだが、最低50くらいは無いと、雇用して貰うのは難しいようだ。
そうだよなあ、俺の今のステータスって子供よりショボいんだから
このまま町に行って何をすれば良いんだろうか
情報収集?無理だ、働くにしても何処で?
俺はこれからどうやって生きていけば…?
でもいつ迄も2人の世話になる訳にもいかないわけだし
「とりあえず町に行ってから考える…」
俺がそう言うと、ゆっくりと頷いたロワンが歩を進めた。
遠い向こうには小さな門、あそこに着くまで色々考えておかないと…
でも、考えたからってどうにかなることか?
異世界人とバレたくない。町に居ても魔法が使えない俺じゃ雇用先は無い。町の外に居ても体力も魔法も無い俺は、すぐにモンスターに殺られるだろう。
とりあえず安全な町で今後を考えるしか無い…と思う
魔法が使えなくても働く所が、もしかしたらあるかもしれない!
そうだ、町の中で野宿して、スキルでご飯食べて、魔法が使えなくても雇ってくれる所を探そう。全力で探そう。
雇ってくれる所が無かったら…?
そうなったらもう、異世界人だと自分から言うしか無いのかも…ステータスはゴミだけど、国に仕える事ができるかもしれない。
でも、それは嫌だな。出来れば自由に生きたい
モヤモヤと考えているうちに、門まであと少し、と言う所まで来てしまっていた。
前方のロワンが足を止めてゆっくり振り返ったので、俺も足を止める。
日はまだ高く、少しお腹が減ったのでお昼を少し回った頃だろうか?燦々と降り注ぐ太陽が少し熱い
ガサゴソと白いジャケットの胸ポケットから、ロワンが綺麗なビー玉みたいな物を取り出した。
「トウヤ、これを貴方に」
「これは?」
ロワンから手渡されたそれを受け取る。コロリと俺の手のひらに転がった玉は、太陽の光で輝きとても美しい。
「スキルを書き換えれる宝玉です」
「えっ、書き換える?」
「ああ、見た目だけです。人に見せる画面のみ書き換えれる物です」
「何でこんな物?」
「異世界人と知られたく無いのでしょう?どの様な場面でステータスを見せろと言われるか分かりませんからね」
「まあ、普通に生きてる分には滅多に言われねェけどな」
これでしっかり隠してくださいね。とその玉と俺の手を一纏めにロワンが握りしめた。
手の中の玉がほんのり熱くなって、ロワンがボソリと何かを唱える
名残惜しげにゆっくりと、ロワンの手が離れ、自分の掌を見ると、今までそこにあった筈の玉が消えていた。マジックのようだ
「トウヤ、ステータスを」
ロワンに促され、ステータス画面を見える様に開く
レベル5
その下の下、
スキル
20の箱
以上
スキルが変わっている…
慌てて自分のみ見える方法でステータスを開くと、そこには見慣れたスキルの名前。ノギノ商店もアイテムボックスもちゃんとある
すごい!どういう仕組みだろう…ていうか20の箱とは?
「その20の箱というスキルは、貴方のアイテムボックスの劣化版です。名前の通り20個まで収納できるスキルです」
20個…しょぼい
「俺のアイテムバックが30だから、それよりショボい」
それは本当にショボい…
やっぱりアルドのそのポーチも色々入る四次元ポケット的なアレだったんだね!
もう消えてしまったけど、その、スキルを書き替える宝玉…レアアイテムとかだったらどうしよう。俺の為にそんなの使わせてしまっていたら申し訳ないんだけれど
そもそも何故、このタイミングで?
不思議に思いロワンを見ると、少し寂しそうに微笑まれた
ああ、そうか。
もしかして、お別れなのか
うん。アルドもロワンも町まで一緒に、って話だったから
「私は町に入れませんので…ここまでで」
「え、町に入れない?」
寂しそうに笑ったロワンが、俺の頬に触れ髪を梳く
「ええ、私は魔物ですから」
赤い瞳を細めたロワンが、自分の指で口の端を持ち上げた。その赤い唇から覗くのは白く尖った長い牙
そういえば、出会い頭に噛まれたな…
あれ?ていう事はアルドも?
アルドも魔物だよな?
「大丈夫。アルドは冒険者登録してますから町に入れます」
だから、そんな不安そうな顔しなくて大丈夫。とニッコリと笑ったロワンの指が、頬を伝い顎に触れた
これは知ってる、この動きは知っているぞ
美しく笑ったロワンの顔がゆっくりと近づいてきて、思わず目を閉じる。
けれど、ロワンの唇は俺が思っていた所に触れる事なく、こめかみへと落とされた。
「では、アルド。」
「はいはい」
「トウヤ、またどこかでお会いしましょう」
するり、とあご先から首筋を伝ったロワンの手が鎖骨をひと撫でする
擽ったさに身を捻ると、クスリと笑ったロワンが一歩下がり、その背中から黒く大きな羽を伸ばした
え、?羽?
と一瞬俺の思考が止まった隙に、バサリとその羽を大きく揺らすと、次の瞬間には青い空へと舞い上がるロワンの姿
蝙蝠の様な羽、うん。吸血鬼っぽい
あの牙も、羽も、ロワンが吸血鬼だという事を再認識する
「俺らも行くぞ」
「あ、うん」
ぼんやりとロワンが飛び立った空を眺めていると、ポンと後ろから大きな手が頭の上に乗った
そうだ、町に来たんだ。
いよいよ異世界はじめての町
0
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う
ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。
次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた
オチ決定しました〜☺️
※印はR18です(際どいやつもつけてます)
毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します
メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目
凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日)
訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎
11/24 大変際どかったためR18に移行しました
12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
悪役未満な俺の執事は完全無欠な冷徹龍神騎士団長
赤飯茸
BL
人間の少年は生まれ変わり、独りぼっちの地獄の中で包み込んでくれたのは美しい騎士団長だった。
乙女ゲームの世界に転生して、人気攻略キャラクターの騎士団長はプライベートでは少年の執事をしている。
冷徹キャラは愛しい主人の前では人生を捧げて尽くして守り抜く。
それが、あの日の約束。
キスで目覚めて、執事の報酬はご主人様自身。
ゲームで知っていた彼はゲームで知らない一面ばかりを見せる。
時々情緒不安定になり、重めの愛が溢れた変態で、最強龍神騎士様と人間少年の溺愛執着寵愛物語。
執事で騎士団長の龍神王×孤独な人間転生者
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる