転生した俺は身バレしたくない〜ニ鬼を追うもの〜

海月ウミヅキ

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はじまり

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「ナイフよし!!」

「では、私が誘き寄せますね」
「そこを俺が鷲掴みにする」

「鷲掴みにされてるところを、俺がグサリ」
「脳天を狙ってください」


ロワンが立てた作戦を反復し、アルドに貰ったナイフを握る
茂みの向こうに居るのは、中型犬サイズのイノシシみたいなモンスター
その毛は赤く、真っ黒の牙が覗いていて、色合い的にアルドとお揃いだね!なんて暢気な事を考える。

俺は、今からアイツの脳天にナイフを突き刺すのだ。
何の恨みもないけれど、俺のレベル上げの糧となって下さい!ごめんなさい!

優雅に立ち上がったロワンが、その長い足で茂みを抜け出し、指笛を吹いた。
その音を聞いた赤いイノシシが、2度、3度、と土を蹴るとその場を踏み出す
それと同時にロワンの後ろに隠れながら茂みからアルドが素早く飛び出す。
赤いイノシシが、ロワンにぶつかりそうになる直前、華麗に飛び上がったロワンと、その背後から大きな腕を伸ばすアルド

文字通り、鷲掴み



アルドの手の中でジタバタと暴れる赤いイノシシに心の中で謝りながら、その脳天へとナイフを突き下ろした。


◇◇◇



「ステータスオープン」


レベル2
HP11、MP4

え?これだけ?



「…これは……」
「っぶふッ!」


こめかみを抑えるロワンと、噴き出すアルド

ああ、分かった分かってしまったよ2人のその反応で


「非常にお伝えし難いのですが……普通はレベル一つにつき、5~10前後、ステータスが上昇します。普通は…一般的には、ですから…!異世界仕様ですかね!大丈夫ですよ!」

「ッ上昇1って…!!ぶっはははは!」


とても気を使ってくれるロワンと、無遠慮のアルド
ごめん、イノシシ…俺のレベル上げの糧に…とか言っておいて…俺のステータスどうなってんの?


「下位魔法ですら、消費10ですからね…どうしましょう」
「ッこの調子じゃ、100にしたとこで…ぐふぅッ、ふ、ふ、ふふふ」


笑いたきゃ笑えよ!堪えず笑えよ!
それかしっかり堪え切って?!

本気で頭を抱えて悩んでるロワンにはとても申し訳ない…
今の俺では下位魔法すら使えないのか…というか、この先ずっとこの上がり幅でいくなら、レベル8まで上げないと魔法使えないのか??

HPの数値も酷いものだし、本当どうしよう。どうしたらいいの。


「すみません、トウヤ間違えました。レベル1つにつき5~10というのは、年齢に比例して上がった場合で…モンスター討伐の場合はもっと……」



追い討ちだよロワン!!!!!

蹲って笑いを堪えるアルドと、絶望して地面に膝を付く俺と、頭を抱えるロワン。そんな俺たちの傍には、絶命した赤いイノシシ
なんて酷い光景だろうか…






あれから3度、弱いモンスターを同じ様な戦法で討伐し、俺のレベルは5へとなった。
だが、ステータスの上がり幅は毎回1、ずっと1
落ち込む俺を励ましてくれるロワンと、笑い続けるアルド
そして、ついに森を抜けた。


「…道がある」


森を抜けたそこには、整備されたと言っていいのかは分からないが、確かに道があった。
そしてその道の右へと続く先には、小さな門が見えている
もしかしてあれが町への門だろうか?
左へと続く道の先には特に何も見えない。


「もう町が見えますね。…町へ行くという事でいいんですよね?」


不安そうな顔でロワンが俺の瞳を覗き込んだ。
そう。レベルを上げても俺がまともに魔法を使えるようになるのは、まだまだ先のこと。
MPは時間と共に回復するそうだが、最低50くらいは無いと、雇用して貰うのは難しいようだ。
そうだよなあ、俺の今のステータスって子供よりショボいんだから
このまま町に行って何をすれば良いんだろうか
情報収集?無理だ、働くにしても何処で?
俺はこれからどうやって生きていけば…?

でもいつ迄も2人の世話になる訳にもいかないわけだし


「とりあえず町に行ってから考える…」


俺がそう言うと、ゆっくりと頷いたロワンが歩を進めた。
遠い向こうには小さな門、あそこに着くまで色々考えておかないと…
でも、考えたからってどうにかなることか?
異世界人とバレたくない。町に居ても魔法が使えない俺じゃ雇用先は無い。町の外に居ても体力も魔法も無い俺は、すぐにモンスターに殺られるだろう。
とりあえず安全な町で今後を考えるしか無い…と思う
魔法が使えなくても働く所が、もしかしたらあるかもしれない!
そうだ、町の中で野宿して、スキルでご飯食べて、魔法が使えなくても雇ってくれる所を探そう。全力で探そう。
雇ってくれる所が無かったら…?

そうなったらもう、異世界人だと自分から言うしか無いのかも…ステータスはゴミだけど、国に仕える事ができるかもしれない。

でも、それは嫌だな。出来れば自由に生きたい


モヤモヤと考えているうちに、門まであと少し、と言う所まで来てしまっていた。
前方のロワンが足を止めてゆっくり振り返ったので、俺も足を止める。

日はまだ高く、少しお腹が減ったのでお昼を少し回った頃だろうか?燦々と降り注ぐ太陽が少し熱い

ガサゴソと白いジャケットの胸ポケットから、ロワンが綺麗なビー玉みたいな物を取り出した。


「トウヤ、これを貴方に」

「これは?」

ロワンから手渡されたそれを受け取る。コロリと俺の手のひらに転がった玉は、太陽の光で輝きとても美しい。


「スキルを書き換えれる宝玉です」
「えっ、書き換える?」

「ああ、見た目だけです。人に見せる画面のみ書き換えれる物です」

「何でこんな物?」
「異世界人と知られたく無いのでしょう?どの様な場面でステータスを見せろと言われるか分かりませんからね」
「まあ、普通に生きてる分には滅多に言われねェけどな」


これでしっかり隠してくださいね。とその玉と俺の手を一纏めにロワンが握りしめた。
手の中の玉がほんのり熱くなって、ロワンがボソリと何かを唱える
名残惜しげにゆっくりと、ロワンの手が離れ、自分の掌を見ると、今までそこにあった筈の玉が消えていた。マジックのようだ


「トウヤ、ステータスを」


ロワンに促され、ステータス画面を見える様に開く
レベル5
その下の下、

スキル
20の箱

以上

スキルが変わっている…
慌てて自分のみ見える方法でステータスを開くと、そこには見慣れたスキルの名前。ノギノ商店もアイテムボックスもちゃんとある

すごい!どういう仕組みだろう…ていうか20の箱とは?


「その20の箱というスキルは、貴方のアイテムボックスの劣化版です。名前の通り20個まで収納できるスキルです」

20個…しょぼい


「俺のアイテムバックが30だから、それよりショボい」



それは本当にショボい…
やっぱりアルドのそのポーチも色々入る四次元ポケット的なアレだったんだね!

もう消えてしまったけど、その、スキルを書き替える宝玉…レアアイテムとかだったらどうしよう。俺の為にそんなの使わせてしまっていたら申し訳ないんだけれど
そもそも何故、このタイミングで?

不思議に思いロワンを見ると、少し寂しそうに微笑まれた

ああ、そうか。
もしかして、お別れなのか
うん。アルドもロワンも町まで一緒に、って話だったから


「私は町に入れませんので…ここまでで」
「え、町に入れない?」


寂しそうに笑ったロワンが、俺の頬に触れ髪を梳く


「ええ、私は魔物ですから」


赤い瞳を細めたロワンが、自分の指で口の端を持ち上げた。その赤い唇から覗くのは白く尖った長い牙
そういえば、出会い頭に噛まれたな…

あれ?ていう事はアルドも?
アルドも魔物だよな?


「大丈夫。アルドは冒険者登録してますから町に入れます」


だから、そんな不安そうな顔しなくて大丈夫。とニッコリと笑ったロワンの指が、頬を伝い顎に触れた
これは知ってる、この動きは知っているぞ
美しく笑ったロワンの顔がゆっくりと近づいてきて、思わず目を閉じる。
けれど、ロワンの唇は俺が思っていた所に触れる事なく、こめかみへと落とされた。


「では、アルド。」
「はいはい」


「トウヤ、またどこかでお会いしましょう」


するり、とあご先から首筋を伝ったロワンの手が鎖骨をひと撫でする
擽ったさに身を捻ると、クスリと笑ったロワンが一歩下がり、その背中から黒く大きな羽を伸ばした

え、?羽?

と一瞬俺の思考が止まった隙に、バサリとその羽を大きく揺らすと、次の瞬間には青い空へと舞い上がるロワンの姿
蝙蝠の様な羽、うん。吸血鬼っぽい
あの牙も、羽も、ロワンが吸血鬼だという事を再認識する


「俺らも行くぞ」

「あ、うん」



ぼんやりとロワンが飛び立った空を眺めていると、ポンと後ろから大きな手が頭の上に乗った
そうだ、町に来たんだ。
いよいよ異世界はじめての町


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