転生した俺は身バレしたくない〜ニ鬼を追うもの〜

海月ウミヅキ

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はじまり

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「今一部屋しか空いてないのよね」
「それで良い。」
「夕飯、朝食はつけるかい?」 
「いらねぇ」
「じゃあ2人で…9000Gね」


ジャラリ、とカウンターの上に銀色の硬貨が9枚並ぶ
なるほど、銀色の硬貨1枚1000Gという感じだろうか。今度詳しく聞いてみよう。


「2階の端の部屋だよ」


恰幅のいいおばさんから鍵を受け取ったアルドが、階段を目指して歩いたので、俺もその後を追った。

ロワンが飛び立ってすぐ、
あれ?ロワンも町に用事あるって言ってなかったけ…?と思い出すと同時、成る程。きっとあの時は俺に気を使ったんだろうな…いい男だ…と思いながら先を行くアルドに続いた。
門の前へと着いた俺たち2人。スタット町と門に掲げられた看板の文字は普通に読めた。
アルドが冒険者のギルドカードを提出した後、俺の奴隷だ。と俺を見やると、門に立ってた衛兵さんっぽい人は、怪訝な顔をしつつも何も言わずに俺のことも通してくれた。ガバガバだ。
そのままアルドに金は払ってやるから、と連れられてこの宿屋に直行してきたわけだが…

この宿屋まで来る道中、道行く人は皆んなアルドを珍しそうに見ていた。それもそのはず、すれ違う人は何処を見ても人間ばかり。
きっと魔物が珍しかったのだろう

アルドが言うには、ここはとても小さい町で、魔物がわざわざ来る様な場所じゃないから、だと。
確かに町の中は、ポツリポツリと木造の民家が建つ程度で決して賑わっているとは言えなかった。町と言うより俺の中のイメージでは村に近い

もっと大きな街に行けば、魔族もそれ以外の種族も居るそうだ
それ以外の種族とは、エルフや獣人など…とても気になる




部屋に着いたアルドがドサリとベッドに腰を下ろした。
2階一番端の宿屋のこの一室は、扉を開けてすぐ、正面に窓、右奥に小さな扉、その手前に少し大きめのベッドと小さいテーブル
小さな町にしては、意外と清潔感があり小綺麗で、広々とした一室
しかしベッドは一つ、少し気まずい



「…で、俺への報酬の話だが」
「…あ、報酬」

ベッドの上で気怠そうにアルドが言った。

忘れていた!すっかり忘れていた!
町まで連れて行って貰う代わりに、俺が出来る事なら何でもするって約束


「お前忘れてただろ?」
「ソンナマサカ!!」


ブンブンと首を振ると、アルドが舌打ちをした。ごめんなさい。色々あったから…色々

そう思うと、ロワンに全然お礼言えなかったし、報酬もあげれなかった…メロンパンあげればよかった……
突然飛んで行ったから…突然すぎて…

今度会うことがあったらキチンとお礼を言おう


俺がそう決意していると、ベッドがギシリと揺れ、立ち上がったアルドが徐にマントを脱ぎ捨て、腰の剣をサイドテーブルへと並べていく
俺はと言えば、特に荷物も脱ぐ物もないので、手持ち無沙汰で扉の前に突っ立ったままだ。


「お前が出来る事なら何でもすンだろ?」

「あ、うん。俺が出来る事なら!ね!俺が出来る事!」

とても大事な事なので強調して言ったが、どうやらあまり伝わってないようで、ニヤリ、とアルドが下品に笑う
ああ、嫌な予感



「セックス」

「ん???」
「セックスだよ、奉仕しろ。交尾だよ交尾」

「んんんん??お、俺が出来る事って!!!」
「出来ねェとは言わせねえ。」

「いや!むり!むりむり!」
「無理じゃねェ。俺と何回もしたじゃねぇか」


………した!したね!確かに致しましたね!
でも不可抗力ってやつだから!
成り行きでした…って言うか、しちゃったって言うのが正しいと思うんだ、俺


「ほ、他の事なら……」
「じゃあ、俺の酒に付き合え。
どっちが良い?」


ため息混じりに言ったアルドが、腰のポーチからどデカい酒瓶を取り出した。見覚えあります

この世界に来たその日の夜、アルドに飲まされた酒。
酒っていうか、アルコール、消毒用アルコール、人が飲んだらダメなやつ。

あの酒を飲んだ前後の記憶が、未だに思い出せない。今後もきっと思い出せる事はないと思う


絶対に譲らねェ、とばかりに鋭い眼光でアルドがこちらを見ている
本当にこの2択以外選択肢は無いのだろうか…無さそうだな。うん。アルドの目がそう物語っているように思える


身体か、酒か…

まあ確かに、アルドが言った通り彼とは何度か致してる訳で、頑張ればできない事は無いと思う…多分。
だけど、アルドだって何も俺じゃなくたって、町に来たんだから綺麗な女の人に相手にして貰えばいいのに。アルドの見た目なら喜んで相手してくれる人、いっぱいいるよね?

…でもあれかな、もしかして、この世界には魔族と人間との間には何か大きな壁があるのかもしれない…
町でも沢山の人に珍しそうに見られていた様だし
だからだろうか……ていうかきっとそうだ。
でないと、報酬にわざわざ俺如きの身体なんか求めるはずは無い。
種族間の壁さえ無ければ、アルドの風貌なら誘われて嫌がる女性は少ないだろう。それ程彼は隻眼を物ともしない程、端正で精悍な顔つきで、逞しくとても魅力溢れる男だ。


「…えっと、
俺なんか抱いても楽しくないよ?」


そうそう。所詮俺は男
女性らしい柔らかさは無いし、股に一本ぶら下がっている


「何言ってんだ?お前」


心底呆れたって顔したアルドが、酒瓶をテーブルへと置いた。
俺なんか間違ったこと言った?…恐らく言ったのだろう


「…まあ、いい。
っつーことは、報酬はセックスて事だな」
「……ん?」


はい?何で?何でそうなったの??


「お前が抱いても楽しくねェっつったんだろ。要するに抱いてもいいんだろ?」


うん、ちょっと落ち着こっか
どういった思考回路でその様な結論に至られたんでしょうか
抱いても楽しく……なんて、かもしれない発言した俺が悪かったのかな?誤解を与えちゃったかな?
抱いても楽しくない。って事は、楽しかったら抱いてもいいってことだろ?ってそういう事かな?そういう思考回路であってる??
でもね!断り文句であって、決して抱かれる事を選んだ訳では無いんだよ!


「いや、さっきの発言は断る過程と言うか…なんと言うか…」
「あ゛?ンだよ、どっちにすんだ?酒か?ヤるか?」


低く、少しばかりドスの効いた声でアルドが此方を睨みつけた。
やめてよ、怖い、迫力満点。

身体か、酒か…

酒は…そうだな。一口飲んで記憶がない訳で…
でも酒に付き合うってなると、一口で済む訳ないよな…最悪、急性アル中で死ぬ。

身体か、酒か…うん。
死ぬのは困る。酒は命の危険があるけど、身体なら翌朝ちょっと尻が痛い程度…だろう多分

アルドもこの2択以上、選択肢を出す気は全くないみたいだし……俺が何か言って折れてくれる様な雰囲気でも無い。

こうなったらもう、腹を括ろう。約束は約束だ


「…ヤります、あ、でもその前に、お腹減ったな!」


腹は括ったが、出来ればヤらなくて済む道を探したい。手始めに、アルドを満腹にしてスヤスヤお休みタイムを目指そうと思う!!!!

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