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~葡萄狩り編 第3章~
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[フルーツミックスパイ]
「いらっしゃいませ~!お2人様ですね?こちらの席にお座りください~!」
フォルトとロメリアは町の中にある喫茶店に入り、店員に案内された席に座った。フォルト達が座った座席は3人席で、机は円卓状になっている。喫茶店の中には全然人がおらず、僅かにいる客達のひそひそ声が聞こえてくるだけだった。
店員がメニュー表を2つ置いていくと、フォルト達はそれぞれメニュー表を眺める。一番最初のページにはデカデカとこの街の名産品である果物がふんだんに使われているフルーツミックスパイが載っていた。
ロメリアは一通りメニューを眺めると、メニュー表を閉じて両腕を机の上に置いてフォルトに話しかける。
「フォルト、決まった?」
「ロメリアはフルーツミックスパイだよね?う~ん・・・僕もロメリアと同じもので良いかな?せっかくこの街に来たんだし、名物を食べたいしね。」
「じゃあ、フォルトもフルーツミックスパイだね!・・・すみませ~ん!」
ロメリアは右手を上げてウェイターを呼び寄せると、注文をする。ウェイターは注文は繰り返して確認し、何処かへ去っていった。
パイを待っている間、ロメリアとフォルトは先程の葡萄狩りについて互いに言葉を交わし合った。
「いや~この街の葡萄狩り・・・変わってるよね~?」
「変わってるどころじゃないと思うだけどね・・・死人が出る葡萄狩りなんて初めて聞いたよ・・・」
「話を聞き始めた時は変わってて楽しそうだなぁって思ってたけど・・・話を聞いていくとやっぱりいいかなってなったよね。」
「毎年、あんな強そうな人達が1000人近く挑戦するのに40年以上その魔物倒せていないんでしょ?絶対遭遇したくないんですけど。」
「でもさ、最後に倒した人って私達2人が倒したあの幽霊でしょ?あの人倒した私達なら勝てそうじゃない?」
ロメリアが両腕を机の上で組んで頭を伏せるようにその腕の上に乗せると、ほんの少し未練を感じさせるような顔をフォルトの方へと向けた。・・・如何やらまだ『黄金の葡萄』を諦めきれないらしい。
「はぁ・・・もし魔物が集団で襲ってきたらどうするの?あの人は1匹だけだったから勝てたのかもしれないし、そもそも既に手負いだった可能性もあるでしょ?」
「それはそうだけどさ・・・折角なら挑戦ぐらいしたいじゃん?駄目そうだなって思ったら逃げればいいんだし・・・」
「多分毎年狩りに行っている人のほとんどがそう思っているはずだよ?危なかったら帰ろうって・・・それが出来なくて、生きて帰って来るだけでも運が良いって言われる程なんだから相当質の悪い魔物なんだろうね。」
ロメリアが頬を少し膨らます。
「フォルト~・・・何でそんなに狩りに行きたくないの?フォルト私よりずっと強いのにさ~・・・これまで大人数の大人や幽霊とだって余裕で渡り合えていたじゃん・・・」
「それは相手が人間もしくわ元人間だったからで、今回の相手は魔物でしょ?人間より遥かに大きく、肉体は強靭で、身体能力も想像を遥かに超える生き物・・・人間と魔物じゃ対処の仕方が全然違うのはロメリアだって分かっているでしょ?」
「・・・」
「僕だってそりゃあ魔物が向こうから襲い掛かってきたら絶対に排除するけどさ、こっちから喧嘩は絶対に売りたくないんだよね。売る理由もないし・・・それに・・・」
「それに?」
「・・・もしロメリアの身に何かあって、僕の傍からいなくなっちゃったら・・・僕嫌だよ・・・」
「フォルト・・・」
フォルトが机の上で両手を組んで顔を俯けると、ロメリアが右手を伸ばして人差し指でフォルトの左の頬を優しく押した。フォルトは視線をロメリアの方に向ける。
「わ・・・ロメリア?な、何?」
「全く~・・・フォルトは心配性だね~?そこは私の心配をするんじゃなくて自分の事が心配になる所じゃないの~?」
「・・・」
フォルトが再び視線を机の方に向けると、ロメリアはふんわり微笑んだ。
「ありがとう、フォルト。私の心配してくれて・・・やっぱりフォルトは優しいね。」
ロメリアはフォルトの頬から人差し指を離すと、体を起こした。
「分かった。フォルトがそう言うのなら、明日は普通に安全採取場で沢山葡萄を採って、いっぱい食べよっか。」
「うん・・・」
フォルトはロメリアの言葉に小さく返事をする。ロメリアはフォルトをじぃ・・・っと眺めていると、そっとフォルトのポニーテールに纏めている髪を持ち上げた。
「フォルト?急に話変わるけどさ、髪伸びた?」
「そう?・・・元々から長いから良く分かんないや。」
「今日の夜少し切ってあげるね?流石に夏場でそんなに伸ばしたら暑いでしょ?」
「うん・・・ちょっとね。汗で髪がくっつくし・・・お願いするよ。僕自分で髪切ったらきっと変になると思うから・・・」
フォルトは顔を上げてロメリアを見る。
「ロメリアも髪の毛ちょっと伸びた?前まで首の真ん中ぐらいまでだったのに、もう肩にかかりそうなぐらい伸びてるよ?まだ肩にはかかってないし、前髪は眉を隠すぐらいで変わっていないけど・・・」
「ああ・・・前髪は定期的に整えているから気にして無かったけど、横や後ろはそんなに伸びてるんだ・・・ねぇ、フォルト?フォルトは短めの方が好き?」
「えっ?えっと・・・ううん・・・今ぐらいの・・・肩にかからないぐらいのミディアムボブヘアが一番好きかな。・・・ロメリアの元気な雰囲気にぴったりだし・・・似合っているから・・・」
フォルトの言葉を受けて、ロメリアは嬉しそうに頬を桃色に染めてはにかんだ。ロメリアの毛先がふんわりと膨らんで内側を向いている髪が激しく揺れる。
「もうっフォルトったら!私の雰囲気に似合っているとか・・・そんなこと言われたら恥ずかしいよ~!」
ロメリアが椅子ごとフォルトの傍に寄ると、恥ずかしそうに首を振りながら右手でフォルトの背中をバンバンと叩く。・・・痛い。
「ロメリア・・・痛いよ・・・」
「ああっ、ごめん。ちょっと嬉しくって・・・思わず叩いちゃった・・・えへへ・・・」
ロメリアがフォルトの背中を優しく撫でると、2人の近くに店員がフルーツミックスパイを持ってきた。
「お待たせしました!フルーツミックスパイです!」
店員がフォルトとロメリアの前にパイとレモンティーを置くと、伝票を置いてから小さく頷きその場から立ち去った。ロメリアは両手を擦り合わせて目を宝石のように輝かせた。
「おお~!美味しそう~!それじゃあ早速・・・頂きま~す!」
ロメリアはフォークとナイフを手に取ってパイを切り始めた。切った断面を見てみると、葡萄やオレンジ、メロン、桃といった様々な果物が生地の間にびっしりと詰まっていた。一口サイズに切って口の中へとゆっくりと入れると、様々な果実の甘さと食感がロメリアを絶頂させる。
「んんっ⁉んん~!葡萄とか桃がとても甘くて、それぞれの果物が喧嘩しないで共存している様な味・・・皆しっかりと個性を持っていて・・・ん~ん・・・美味しい・・・頬っぺたが溶けちゃいそう・・・」
ロメリアが幸せそうに頬を緩めると、フォルトもパイを切って口の中に入れる。
「・・・うわぁ・・・美味しいこのパイ・・・甘さもしつこくなくてさっぱりしてる・・・無駄に砂糖とか使っていないっぽいからあっさりしているし、とても食べやすい・・・」
フォルトはもう一口、口の中に入れてしっかりとよく噛む。
「それにただ単に甘いだけじゃない・・・これはレモンかな?ほんの少し酸味が加わって、ちょっと刺激的・・・でもそれが更に甘さを引き立てているっていうか・・・」
「分かる!分かるよ!それに口の中に入れるとパサパサとした生地に果物の果汁が浸み込んで・・・んん~最高!」
ロメリアとフォルトは互いにパイについて熱く語りながら一口一口しっかりと噛みしめていく。さっぱりとした甘さがロメリア達の心を潤しながら癒していく。
「いらっしゃいませ~!お2人様ですね?こちらの席にお座りください~!」
フォルトとロメリアは町の中にある喫茶店に入り、店員に案内された席に座った。フォルト達が座った座席は3人席で、机は円卓状になっている。喫茶店の中には全然人がおらず、僅かにいる客達のひそひそ声が聞こえてくるだけだった。
店員がメニュー表を2つ置いていくと、フォルト達はそれぞれメニュー表を眺める。一番最初のページにはデカデカとこの街の名産品である果物がふんだんに使われているフルーツミックスパイが載っていた。
ロメリアは一通りメニューを眺めると、メニュー表を閉じて両腕を机の上に置いてフォルトに話しかける。
「フォルト、決まった?」
「ロメリアはフルーツミックスパイだよね?う~ん・・・僕もロメリアと同じもので良いかな?せっかくこの街に来たんだし、名物を食べたいしね。」
「じゃあ、フォルトもフルーツミックスパイだね!・・・すみませ~ん!」
ロメリアは右手を上げてウェイターを呼び寄せると、注文をする。ウェイターは注文は繰り返して確認し、何処かへ去っていった。
パイを待っている間、ロメリアとフォルトは先程の葡萄狩りについて互いに言葉を交わし合った。
「いや~この街の葡萄狩り・・・変わってるよね~?」
「変わってるどころじゃないと思うだけどね・・・死人が出る葡萄狩りなんて初めて聞いたよ・・・」
「話を聞き始めた時は変わってて楽しそうだなぁって思ってたけど・・・話を聞いていくとやっぱりいいかなってなったよね。」
「毎年、あんな強そうな人達が1000人近く挑戦するのに40年以上その魔物倒せていないんでしょ?絶対遭遇したくないんですけど。」
「でもさ、最後に倒した人って私達2人が倒したあの幽霊でしょ?あの人倒した私達なら勝てそうじゃない?」
ロメリアが両腕を机の上で組んで頭を伏せるようにその腕の上に乗せると、ほんの少し未練を感じさせるような顔をフォルトの方へと向けた。・・・如何やらまだ『黄金の葡萄』を諦めきれないらしい。
「はぁ・・・もし魔物が集団で襲ってきたらどうするの?あの人は1匹だけだったから勝てたのかもしれないし、そもそも既に手負いだった可能性もあるでしょ?」
「それはそうだけどさ・・・折角なら挑戦ぐらいしたいじゃん?駄目そうだなって思ったら逃げればいいんだし・・・」
「多分毎年狩りに行っている人のほとんどがそう思っているはずだよ?危なかったら帰ろうって・・・それが出来なくて、生きて帰って来るだけでも運が良いって言われる程なんだから相当質の悪い魔物なんだろうね。」
ロメリアが頬を少し膨らます。
「フォルト~・・・何でそんなに狩りに行きたくないの?フォルト私よりずっと強いのにさ~・・・これまで大人数の大人や幽霊とだって余裕で渡り合えていたじゃん・・・」
「それは相手が人間もしくわ元人間だったからで、今回の相手は魔物でしょ?人間より遥かに大きく、肉体は強靭で、身体能力も想像を遥かに超える生き物・・・人間と魔物じゃ対処の仕方が全然違うのはロメリアだって分かっているでしょ?」
「・・・」
「僕だってそりゃあ魔物が向こうから襲い掛かってきたら絶対に排除するけどさ、こっちから喧嘩は絶対に売りたくないんだよね。売る理由もないし・・・それに・・・」
「それに?」
「・・・もしロメリアの身に何かあって、僕の傍からいなくなっちゃったら・・・僕嫌だよ・・・」
「フォルト・・・」
フォルトが机の上で両手を組んで顔を俯けると、ロメリアが右手を伸ばして人差し指でフォルトの左の頬を優しく押した。フォルトは視線をロメリアの方に向ける。
「わ・・・ロメリア?な、何?」
「全く~・・・フォルトは心配性だね~?そこは私の心配をするんじゃなくて自分の事が心配になる所じゃないの~?」
「・・・」
フォルトが再び視線を机の方に向けると、ロメリアはふんわり微笑んだ。
「ありがとう、フォルト。私の心配してくれて・・・やっぱりフォルトは優しいね。」
ロメリアはフォルトの頬から人差し指を離すと、体を起こした。
「分かった。フォルトがそう言うのなら、明日は普通に安全採取場で沢山葡萄を採って、いっぱい食べよっか。」
「うん・・・」
フォルトはロメリアの言葉に小さく返事をする。ロメリアはフォルトをじぃ・・・っと眺めていると、そっとフォルトのポニーテールに纏めている髪を持ち上げた。
「フォルト?急に話変わるけどさ、髪伸びた?」
「そう?・・・元々から長いから良く分かんないや。」
「今日の夜少し切ってあげるね?流石に夏場でそんなに伸ばしたら暑いでしょ?」
「うん・・・ちょっとね。汗で髪がくっつくし・・・お願いするよ。僕自分で髪切ったらきっと変になると思うから・・・」
フォルトは顔を上げてロメリアを見る。
「ロメリアも髪の毛ちょっと伸びた?前まで首の真ん中ぐらいまでだったのに、もう肩にかかりそうなぐらい伸びてるよ?まだ肩にはかかってないし、前髪は眉を隠すぐらいで変わっていないけど・・・」
「ああ・・・前髪は定期的に整えているから気にして無かったけど、横や後ろはそんなに伸びてるんだ・・・ねぇ、フォルト?フォルトは短めの方が好き?」
「えっ?えっと・・・ううん・・・今ぐらいの・・・肩にかからないぐらいのミディアムボブヘアが一番好きかな。・・・ロメリアの元気な雰囲気にぴったりだし・・・似合っているから・・・」
フォルトの言葉を受けて、ロメリアは嬉しそうに頬を桃色に染めてはにかんだ。ロメリアの毛先がふんわりと膨らんで内側を向いている髪が激しく揺れる。
「もうっフォルトったら!私の雰囲気に似合っているとか・・・そんなこと言われたら恥ずかしいよ~!」
ロメリアが椅子ごとフォルトの傍に寄ると、恥ずかしそうに首を振りながら右手でフォルトの背中をバンバンと叩く。・・・痛い。
「ロメリア・・・痛いよ・・・」
「ああっ、ごめん。ちょっと嬉しくって・・・思わず叩いちゃった・・・えへへ・・・」
ロメリアがフォルトの背中を優しく撫でると、2人の近くに店員がフルーツミックスパイを持ってきた。
「お待たせしました!フルーツミックスパイです!」
店員がフォルトとロメリアの前にパイとレモンティーを置くと、伝票を置いてから小さく頷きその場から立ち去った。ロメリアは両手を擦り合わせて目を宝石のように輝かせた。
「おお~!美味しそう~!それじゃあ早速・・・頂きま~す!」
ロメリアはフォークとナイフを手に取ってパイを切り始めた。切った断面を見てみると、葡萄やオレンジ、メロン、桃といった様々な果物が生地の間にびっしりと詰まっていた。一口サイズに切って口の中へとゆっくりと入れると、様々な果実の甘さと食感がロメリアを絶頂させる。
「んんっ⁉んん~!葡萄とか桃がとても甘くて、それぞれの果物が喧嘩しないで共存している様な味・・・皆しっかりと個性を持っていて・・・ん~ん・・・美味しい・・・頬っぺたが溶けちゃいそう・・・」
ロメリアが幸せそうに頬を緩めると、フォルトもパイを切って口の中に入れる。
「・・・うわぁ・・・美味しいこのパイ・・・甘さもしつこくなくてさっぱりしてる・・・無駄に砂糖とか使っていないっぽいからあっさりしているし、とても食べやすい・・・」
フォルトはもう一口、口の中に入れてしっかりとよく噛む。
「それにただ単に甘いだけじゃない・・・これはレモンかな?ほんの少し酸味が加わって、ちょっと刺激的・・・でもそれが更に甘さを引き立てているっていうか・・・」
「分かる!分かるよ!それに口の中に入れるとパサパサとした生地に果物の果汁が浸み込んで・・・んん~最高!」
ロメリアとフォルトは互いにパイについて熱く語りながら一口一口しっかりと噛みしめていく。さっぱりとした甘さがロメリア達の心を潤しながら癒していく。
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