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~探偵の失踪編 第11章~
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[追跡]
「ああ~寒いッ!・・・匂いを追う為とは言え、窓開けっぱなしは結構きついね~・・・」
ヴァスティーソは雪が積もった街道を移動する馬車の中で手を擦り合わせながら呟く。シャーロットが馬車の窓を開けて外をずっと覗いているせいで外の凍えてしまいそうな空気が容赦なく車内に入って来ていたからだ。
馬車は6人乗りだったので、3人ずつ向かい合うように座っている。一方の席にシャーロット・フォルト・ロメリアが、もう一方の席にケストレル・ガーヴェラ・ヴァスティーソの3人が座っている。なおこの席になった時、フォルトはヴァスティーソからずっと『両手に花とかずるいぞ~!』と言われてしまった。
フォルトはシャーロットに声をかける。
「どう、シャーロット?街道沿いで合ってる?」
「はい・・・今のところはずっと街道沿いで間違いないかと・・・匂いはずっと続いていますから・・・」
「もう2日も経っているのに残っているものなんだな。」
「人の匂いって結構個人別に特徴がありますし・・・それに結構強烈なんです。人間同士だとあまり気にならないそうなんですけど・・・私達にとってはかなり匂います。」
「かなり匂うって・・・それって臭いってこと?」
ロメリアが何故かちょっと不安そうにシャーロットに呼びかけると、シャーロットは笑顔でロメリアに返事をする。
「心配しなくていいですよ、ロメリア。ロメリアからは蜜柑のような甘い良い匂いしかしませんから。・・・香水抜きでですよ。」
「ヴァンパイアって香水の匂いと人間の匂いを分けられるの?」
「はい。ですので私達ヴァンパイアには体臭は隠せません。・・・フォルトからは木で作られた新築の家の匂いがします。」
「例えが中々絶妙だね・・・まぁ、僕は臭くないってことか・・・多分・・・」
「じゃあ私は元から蜜柑みたいな甘い匂い出してるってことなの・・・」
フォルトとロメリアが右肘を曲げて鼻で匂いを嗅ぐと、ケストレルがシャーロットに話しかけた。
「・・・なぁ。俺達はどんな匂いなんだ?」
「ケストレル?」
「もしかして・・・気になってるの?」
「う・・・うるせぇよ、ロメリア・・・ちょっと聞いてみたいだけだ・・・」
ケストレルがロメリアに言葉を受けてそっぽを向くと、シャーロットがケストレル達に感想を述べる。
「・・・ケストレルからは・・・こんがり焼けた牛肉から垂れる油の匂いがします・・・ガーヴェラはミントのような・・・爽やかな香りが・・・」
「良かったな、美味しそうな匂いで。」
「・・・」
ガーヴェラがケストレルを挑発するように頬を厭らしく上げると、ヴァスティーソが若干目を輝かせながらシャーロットに話しかける。
「ねぇ、ねぇ俺は?シャーロットちゃん!どんな匂いがする⁉」
「・・・」
シャーロットはヴァスティーソの方を見つめると、小さく笑みを浮かべた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・シャーロットちゃん?何か・・・言わないの?」
シャーロットは静かに顔を窓の方へと背けた。シャーロットが顔を外に出した瞬間、大きな声で叫んだ。
「ッ!と・・・止めて下さいッ!」
「おい!止まるんだ!」
「ねぇ・・・俺の匂い・・・」
「シャーロット、どうしたの⁉」
「匂いが街道から消えて・・・奥の森の方に消えました!」
馬車が止まると、シャーロットがドアを開けて外へと飛び出した。フォルト、ロメリア、ケストレル、ガーヴェラも雪が積もる外へと飛び出していく。
ヴァスティーソは1人取り残された馬車の中で自分の腕の匂いを嗅いだ。
「・・・俺、臭いの?・・・臭いのか?」
すっかり気分が落ち込んだ声でヴァスティーソは呟くと、若干項垂れながら馬車から外へと出る。
外へ出ると、シャーロット達は雪が積もった街道の外を一歩ずつ踏みしめて歩いていた。ヴァスティーソは遅れて彼らの後を追う。
「ねぇ、シャーロット・・・本当にこっちで合ってるの?」
「・・・間違いないです。匂いはこっちに続いています。」
「そっちは人が入らない深い森だぞ?何でこっちに・・・」
「シャーロット。レイアさん以外にも何か他の匂いはしない?」
ロメリアの言葉にシャーロットはその場で立ち止まって目を瞑ると、鼻をすすった。周囲の冷たい空気を静かに吸い込むと、シャーロットはゆっくりと目を開ける。
「・・・します。2人・・・レイアさんの匂いもその人達の後に沿っています。」
「レイアさんも何かの痕跡を追っていた・・・ってこと?」
「多分足跡を追っていたんだろうね・・・レイアさんが失踪した時点で雪は積もっていなかったって話だし・・・」
「追いつかれて慌てて森の中へと逃げたって線は?」
「それは・・・無いと思います。・・・2人の匂いは一定の間隔・・・それも狭い。走ったのなら匂いの間隔は広くなります。」
「一歩当たりの歩幅が違うから?」
「はい・・・」
シャーロットはそう言うと、ゆっくりと森の中へと入って行った。ガーヴェラが彼女に向かって声を上げる。
「待て、シャーロット!勝手に先に行くな!罠が仕掛けられているかもしれん。」
「・・・ごめんなさい。」
ガーヴェラはシャーロットに追い付くと、彼女の横に立って一緒に森の中を警戒しながら突き進んでいく。フォルト達も上と背後を警戒しながら2人の後を追っていく。
「ああ~寒いッ!・・・匂いを追う為とは言え、窓開けっぱなしは結構きついね~・・・」
ヴァスティーソは雪が積もった街道を移動する馬車の中で手を擦り合わせながら呟く。シャーロットが馬車の窓を開けて外をずっと覗いているせいで外の凍えてしまいそうな空気が容赦なく車内に入って来ていたからだ。
馬車は6人乗りだったので、3人ずつ向かい合うように座っている。一方の席にシャーロット・フォルト・ロメリアが、もう一方の席にケストレル・ガーヴェラ・ヴァスティーソの3人が座っている。なおこの席になった時、フォルトはヴァスティーソからずっと『両手に花とかずるいぞ~!』と言われてしまった。
フォルトはシャーロットに声をかける。
「どう、シャーロット?街道沿いで合ってる?」
「はい・・・今のところはずっと街道沿いで間違いないかと・・・匂いはずっと続いていますから・・・」
「もう2日も経っているのに残っているものなんだな。」
「人の匂いって結構個人別に特徴がありますし・・・それに結構強烈なんです。人間同士だとあまり気にならないそうなんですけど・・・私達にとってはかなり匂います。」
「かなり匂うって・・・それって臭いってこと?」
ロメリアが何故かちょっと不安そうにシャーロットに呼びかけると、シャーロットは笑顔でロメリアに返事をする。
「心配しなくていいですよ、ロメリア。ロメリアからは蜜柑のような甘い良い匂いしかしませんから。・・・香水抜きでですよ。」
「ヴァンパイアって香水の匂いと人間の匂いを分けられるの?」
「はい。ですので私達ヴァンパイアには体臭は隠せません。・・・フォルトからは木で作られた新築の家の匂いがします。」
「例えが中々絶妙だね・・・まぁ、僕は臭くないってことか・・・多分・・・」
「じゃあ私は元から蜜柑みたいな甘い匂い出してるってことなの・・・」
フォルトとロメリアが右肘を曲げて鼻で匂いを嗅ぐと、ケストレルがシャーロットに話しかけた。
「・・・なぁ。俺達はどんな匂いなんだ?」
「ケストレル?」
「もしかして・・・気になってるの?」
「う・・・うるせぇよ、ロメリア・・・ちょっと聞いてみたいだけだ・・・」
ケストレルがロメリアに言葉を受けてそっぽを向くと、シャーロットがケストレル達に感想を述べる。
「・・・ケストレルからは・・・こんがり焼けた牛肉から垂れる油の匂いがします・・・ガーヴェラはミントのような・・・爽やかな香りが・・・」
「良かったな、美味しそうな匂いで。」
「・・・」
ガーヴェラがケストレルを挑発するように頬を厭らしく上げると、ヴァスティーソが若干目を輝かせながらシャーロットに話しかける。
「ねぇ、ねぇ俺は?シャーロットちゃん!どんな匂いがする⁉」
「・・・」
シャーロットはヴァスティーソの方を見つめると、小さく笑みを浮かべた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・シャーロットちゃん?何か・・・言わないの?」
シャーロットは静かに顔を窓の方へと背けた。シャーロットが顔を外に出した瞬間、大きな声で叫んだ。
「ッ!と・・・止めて下さいッ!」
「おい!止まるんだ!」
「ねぇ・・・俺の匂い・・・」
「シャーロット、どうしたの⁉」
「匂いが街道から消えて・・・奥の森の方に消えました!」
馬車が止まると、シャーロットがドアを開けて外へと飛び出した。フォルト、ロメリア、ケストレル、ガーヴェラも雪が積もる外へと飛び出していく。
ヴァスティーソは1人取り残された馬車の中で自分の腕の匂いを嗅いだ。
「・・・俺、臭いの?・・・臭いのか?」
すっかり気分が落ち込んだ声でヴァスティーソは呟くと、若干項垂れながら馬車から外へと出る。
外へ出ると、シャーロット達は雪が積もった街道の外を一歩ずつ踏みしめて歩いていた。ヴァスティーソは遅れて彼らの後を追う。
「ねぇ、シャーロット・・・本当にこっちで合ってるの?」
「・・・間違いないです。匂いはこっちに続いています。」
「そっちは人が入らない深い森だぞ?何でこっちに・・・」
「シャーロット。レイアさん以外にも何か他の匂いはしない?」
ロメリアの言葉にシャーロットはその場で立ち止まって目を瞑ると、鼻をすすった。周囲の冷たい空気を静かに吸い込むと、シャーロットはゆっくりと目を開ける。
「・・・します。2人・・・レイアさんの匂いもその人達の後に沿っています。」
「レイアさんも何かの痕跡を追っていた・・・ってこと?」
「多分足跡を追っていたんだろうね・・・レイアさんが失踪した時点で雪は積もっていなかったって話だし・・・」
「追いつかれて慌てて森の中へと逃げたって線は?」
「それは・・・無いと思います。・・・2人の匂いは一定の間隔・・・それも狭い。走ったのなら匂いの間隔は広くなります。」
「一歩当たりの歩幅が違うから?」
「はい・・・」
シャーロットはそう言うと、ゆっくりと森の中へと入って行った。ガーヴェラが彼女に向かって声を上げる。
「待て、シャーロット!勝手に先に行くな!罠が仕掛けられているかもしれん。」
「・・・ごめんなさい。」
ガーヴェラはシャーロットに追い付くと、彼女の横に立って一緒に森の中を警戒しながら突き進んでいく。フォルト達も上と背後を警戒しながら2人の後を追っていく。
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