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第四章 いくさ
第15話 逆転の攻勢
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「な!」
カイン達は、一歩も動けなかった。カイン達が茂みや、林に隠れつつ、夜陰に紛れ、魔王軍の本陣あたりまで必死になって進んできて、やっと厳重に警備されている天幕を見つけた。その瞬間、
ピカッ ドーン
と、目を焦がすような光がカイン達が隠れている茂みの周りを覆った、光で目を開けるのも辛い状況になり何か起きているか、皆目検討がつかなかった。
光が収まり、周りを見渡すと、焼け野原となっており、ポツンと1人の悪魔が傷だらけで、体から煙を立て佇んでいた。
「魔王?」
そう言ったのは、同行していた侍のゾフィーか、アサシンの天竺丸か、ベルファースト王国王子ロシュフォールか分からないが、その声にカインの身体は瞬時に反応し、全力疾走で魔王に近づき、切り捨てた。周りでは、次々と光の柱が立っており、真昼のような明るさだったが、魔王は、呆然と立ち尽くしており、何の抵抗もなく切り捨てられた。カイン達は、その首級を持って、光の柱を避けながら、公爵の元に走った。
魔王軍と、同行していた各軍は光の柱で消滅した。消滅しなかったのは、光の柱以前にパイソン達に捕らえられた者たちだけだろう。光の柱により、セイレーン公爵軍は勝利を手に入れた。カインが謁見の間に入った頃には、セイレーンにいるほぼ全ての幹部、アリシア様や、ロベルト王子も控えていた。
「閣下。」
「おお、カインか、遅かったな。あの柱はなんじゃと思う。」
セイレーン公爵は、陽気な声で、カインを迎えた
「閣下いえあの。」
「おうおう。少し汚れているの。警備で苦労をかけた。」
「いや、あの」
セイレーン公爵は、先程とは全く人が変わった様に、カインの言葉を聞いていなかった。
「良い良い。あれはソーラレイと言う魔法らしい。神ガチャとやらで貰えるらしいが、あれで魔王以外の悪魔達は全滅じゃ。カイン、魔王の討伐に。」
「閣下ですから。」
「さっきからなんだ。」
「これです。」
そう言って、カインは、魔王の首級を公爵に差し出した。その瞬間、謁見の間は凍り付いた・・・。明らかに人でない何か、強力な力を持っていたものの首級だった。
「何。魔王の?」
「そうです。」
「さすれば、カイン。お主は、抜け出して、魔王の暗殺に。」
「申し訳ございません。」
そう、カインの功績は極めて高いものであるが、一方で、軍の最高位にあるセイレーン公爵の命令を公然と破っている。元々、軍人で無く、クランのメンバーであったのであれば、大きな問題にならなかったが、一時的に軍に組み込まれている以上、軍紀を乱す行為は、巨大な組織であるセイレーン公爵軍では甘受できるぬものであり、抜け駆けを認めた瞬間、軍が崩壊しかねない状況であった。
「そうか。魔王を、褒美をとらせてやりたいとこらだが、作戦に従わなければ、軍が成り立たないのは知ってる筈だな。」
「はい。」
カインが、セイレーン公爵の言葉に答えた瞬間、一瞬セイレーン公爵の口元が緩み、カインでなく、謁見の間にいる全幹部に伝える様な声で宣告した。
「そうか、カイン。今まで仕えてもらってすまぬが、極刑に処す。」
「はい。私が主導したものであり、他の者には。」
「わかった。全てカインの罪とする。」
カインは、肩を揺らし、声が震えながら、セイレーン公爵に請願し、セイレーン公爵は受諾した。この光景に多くの幹部は硬直してしまったが、ロベルト王子だけが、カインを助けまいと、セイレーン公爵の前に出た。
「伯父上。」
「皆にも言おう。軍紀違反は如何なる者であろうと、如何なる実績を上げようとも罪に処する。これは曲げられん。」
セイレーン公爵は、ロベルト王子を無視するかのように、大きな声で再び話しだした。
「伯父上。」
「詳しい刑は、軍議の最後に命じることとする。さあ、軍議を始めよう。カインは、罪人として、末席に座っておれ。」
「はっ。」
「伯父上。カイン。」
セイレーン公爵の言葉に、カインが受けることを受け入れては、ロベルト王子は、下がるしかできなかった。涙を浮かべながら。
「まず、今後の方針だが、我が領土自体は大きな傷を負ったが、軍や、領民の被害は極めて限定的に済んだ。皆のお陰だ。早急に反撃し、侵略してきた各国を抑えようと思うが。カインどう思う。」
「はい。バルザック王国軍は、主力がセイレーン周辺まで侵攻してきましたが、今はソーラレイの力で姿を消しました。バルザック王国については、侵攻可能でしょう。東北東の方でも数本もの光の柱が距離を置いて観測されております。光の柱の位置は離れていたとの情報もありますので、多くはソーラレイで殲滅していると思われます。バザーモン公国への侵攻も現実的に可能かと、あと、西ですが、フランツ王国軍は、セイレーンまで攻め上っておらず、リヒャルト王国とセイレーンの間にまだ侵攻中の悪魔達もおるかと思われますので、逆侵攻にはリスクが伴うと思われます。」
極刑にすべき者に、意見を聞いたことに驚くものも多かったが、カインは何事も無い様に答え、セイレーン公爵もじっくり聞いていた。
「そうか。ライスどう思う。」
「はいお兄様、私も、カイン殿の読みと同じです。一つ付言するなら、各国混乱しており、我が軍では、アレックス方式の工法で数日でバルザック王国、バザーモン公国の首都まで高速馬車道の開発が可能となり、魔石も十分備蓄されております。スピード重視で攻めるのがよろしいかと。」
「そうか、他に考えが違うものは無いか。」
セイレーン公爵が周りを見渡すと、ロベルト王子が前に出たが、セイレーン公爵はあえて無視して続けた。
「よろしい、では、三国同時侵攻としよう。まずは、バルザック王国だが、マーガス。残った兵は、如何程か?」
「40万の兵は、怪我人や一部の兵を、セイレーンまでのルートから外して待機させましたので、すぐに動かせる兵は25万程度かと。」
「では、待機させた兵は王都と、国境警備に回し、25万の兵でバルザックを落とせ。出来るか。」
「はっ、身命に懸けて。」
「お前の命は大事だ。無理だったら逃げてくるんだぞ。ルビーニア、ロンドフルに上手く頼れな。ハハハハハ」
「はっ。」
マーガスは、ルビーニア、ロンドフルと共に頭を下げ、列に戻った。
「次、バザーモン公国だが、ガイアス。」
「はっ。お預かりした30万の内、ついて来れるのは22万程、すでに準備に掛からせております。東ドワーフ自治領軍もほぼ無傷で自治領に控えております。」
「よろしい。」
ガイアス・ロドス伯爵は、一礼して列に戻った。
「最後に、フランク王国、リヒャルト王国だが、アリシア。」
「はい。ルクサンド伯軍を含め、41万の戦力を確保してありますが。」
「では、我が軍の指揮はアリシア頼む、リヒャルト王国を抑えろ。フランク王国の攻略は、ロベルト王子、我が軍をお貸しする。あいつ、王子の父君の仇をパースロット偽王の首級を取ってきて来れ。」
「は、はい。伯父上。」
アリシアがはっきりと答えたのに対し、まだ心の整理がついていないのがありありとわかるロベルト王子が対照的だった。そんなロベルト王子を見ながら、セイレーン公爵は、カインに向かって高らかと宣言する様に伝えた。
「でだ、カイン最後に卿の処遇だが、まず、我が公爵領及び、帝国から与えた全ての権利、名誉を剥奪する。」
「伯父上、そこまで。」
ロベルト王子が、狼狽えるのも、カインの今までの功績は公爵領一とも言われ、戯曲になるほどであり、一代貴族としての地位も有していた。極刑にするものに栄誉をはく奪することは、反逆罪以外聞いたことが無かった。
「ロベルト王子、君主たるもの、情や義だけでは、国は持たせられんのだよ。」
「なっ。」
セイレーン公爵は、ロベルト王子に対し、冷酷な目を放ち、ロベルトは固まってしまった。
「その上で、兵器刑とする。」
「兵器刑ですか。」
質問返したのは、カインでなく、ライスであった。物知りのライスも、聞いたことが無い位レアな罰だった。
「兵器刑は、この戦で、兵器として、人としての権利は与えられず、常に前線にあり、肉壁となる刑だ。」
要は、人を兵器として使い潰す刑だ。武人としてせめて戦場でというセイレーン公爵の優しさだと取った者も出てきたが、
「白き薔薇団等、今回参戦しているクラン、その下部組織を含め公爵軍からの助力は、食糧のみ、クラン、軍から与えた武具は、全て取り上げ、一兵卒の武具を与える。卿の騎士の甲冑を含めてな。」
「はっ。」
それを聞いて、ざわついた。一兵卒の武具では、流石に持たない。多人数と戦って、何とか持つ武器をクランや軍から支給されていたが、一兵卒の武具では、カインの能力を引き出せず資するだろうと言うのが大方の見方となった。
「そうよな、ロベルト王子。」
「はっはい。」
ロベルト王子はもうわけわからないと言う顔をしていた。
「うまくカインを使ってみなさい。経験としてな。」
「伯父上。」
「カイン。リヒャルト王国を最後の戦場として、死して戦ってこい。」
「はっ、閣下。」
「こういうのも変だが、今までありがとう。ロベルトを頼む。」
「はっ、身命に懸けて。」
ロベルト王子は、せめて私の下で殉職をと思って、預けてくれたと勘違いしていた。
「では、皆の者出陣せよ。」
「「「「「「はっ。」」」」」」
そう言って、幹部の多くが出ていった後、残っていたロシュフォール王子は、小さな声でセイレーン公爵に話しかけた。
「セイレーン公爵閣下」
「何かね、」
「ロベルト王子泣いてられましたよ。絶対恨まれますよ。」
「その位の経験をさせるのもおじちゃんの仕事だ。主要メンバーの中で、本気だと思っているものなど、ロベルト王子位だろう。」
そんなやり取りをしていると、謁見の間に、傷だらけのドワーフが人を一人引き摺って入ってい来た。
「閣下、捕虜の検分を。」
そう言って連れて来られた傷だらけの男を見て、ロシュフォール王子が咄嗟に
「ベイスターン王子?」
と言うと、空気が一気に重くなった。
「何と?」
「バルザック王国のベイスターン王子です。帝都で何度かお会いしてますから。」
「そうか。」
セイレーン公爵は、少し憐れむようにベイスターン王子を見て、捕縛までの経緯を聞いた。
「それで、」
「医師の判断では、生殖能力はもうないかと。」
「そうか。アリアに傷をつけた男だ。単に殺しても意味はない。アリアが戻れば、帝都に連れて行かせ、イフリートに渡そう。娘の婚約者だろうしな。」
「閣下、よくない笑みが。」
「すまんな。それまで、牢に入れとけ。帝都までの道の復旧も急がせろ。」
「はっ。」
そう言って、その夜の会議は終わり、翌朝、全ての軍が出陣した後、アレックス達が戻ってきた。
「もしかして・・・。」
「アリア、もし魔王軍がセイレーンに入ってきたなら、街中が破壊されているはず。ここの兵士も含めシェルターにでも逃げているんだろう。多分間に合ったんだ・・・。」
「急いで宮殿に戻ろう。」
「馬車に乗って。」
迷宮の入口には職員が普通に仕事をしていた。私達は、行きで乗ってきた馬車に乗り、水精宮殿を目指した。
カイン達は、一歩も動けなかった。カイン達が茂みや、林に隠れつつ、夜陰に紛れ、魔王軍の本陣あたりまで必死になって進んできて、やっと厳重に警備されている天幕を見つけた。その瞬間、
ピカッ ドーン
と、目を焦がすような光がカイン達が隠れている茂みの周りを覆った、光で目を開けるのも辛い状況になり何か起きているか、皆目検討がつかなかった。
光が収まり、周りを見渡すと、焼け野原となっており、ポツンと1人の悪魔が傷だらけで、体から煙を立て佇んでいた。
「魔王?」
そう言ったのは、同行していた侍のゾフィーか、アサシンの天竺丸か、ベルファースト王国王子ロシュフォールか分からないが、その声にカインの身体は瞬時に反応し、全力疾走で魔王に近づき、切り捨てた。周りでは、次々と光の柱が立っており、真昼のような明るさだったが、魔王は、呆然と立ち尽くしており、何の抵抗もなく切り捨てられた。カイン達は、その首級を持って、光の柱を避けながら、公爵の元に走った。
魔王軍と、同行していた各軍は光の柱で消滅した。消滅しなかったのは、光の柱以前にパイソン達に捕らえられた者たちだけだろう。光の柱により、セイレーン公爵軍は勝利を手に入れた。カインが謁見の間に入った頃には、セイレーンにいるほぼ全ての幹部、アリシア様や、ロベルト王子も控えていた。
「閣下。」
「おお、カインか、遅かったな。あの柱はなんじゃと思う。」
セイレーン公爵は、陽気な声で、カインを迎えた
「閣下いえあの。」
「おうおう。少し汚れているの。警備で苦労をかけた。」
「いや、あの」
セイレーン公爵は、先程とは全く人が変わった様に、カインの言葉を聞いていなかった。
「良い良い。あれはソーラレイと言う魔法らしい。神ガチャとやらで貰えるらしいが、あれで魔王以外の悪魔達は全滅じゃ。カイン、魔王の討伐に。」
「閣下ですから。」
「さっきからなんだ。」
「これです。」
そう言って、カインは、魔王の首級を公爵に差し出した。その瞬間、謁見の間は凍り付いた・・・。明らかに人でない何か、強力な力を持っていたものの首級だった。
「何。魔王の?」
「そうです。」
「さすれば、カイン。お主は、抜け出して、魔王の暗殺に。」
「申し訳ございません。」
そう、カインの功績は極めて高いものであるが、一方で、軍の最高位にあるセイレーン公爵の命令を公然と破っている。元々、軍人で無く、クランのメンバーであったのであれば、大きな問題にならなかったが、一時的に軍に組み込まれている以上、軍紀を乱す行為は、巨大な組織であるセイレーン公爵軍では甘受できるぬものであり、抜け駆けを認めた瞬間、軍が崩壊しかねない状況であった。
「そうか。魔王を、褒美をとらせてやりたいとこらだが、作戦に従わなければ、軍が成り立たないのは知ってる筈だな。」
「はい。」
カインが、セイレーン公爵の言葉に答えた瞬間、一瞬セイレーン公爵の口元が緩み、カインでなく、謁見の間にいる全幹部に伝える様な声で宣告した。
「そうか、カイン。今まで仕えてもらってすまぬが、極刑に処す。」
「はい。私が主導したものであり、他の者には。」
「わかった。全てカインの罪とする。」
カインは、肩を揺らし、声が震えながら、セイレーン公爵に請願し、セイレーン公爵は受諾した。この光景に多くの幹部は硬直してしまったが、ロベルト王子だけが、カインを助けまいと、セイレーン公爵の前に出た。
「伯父上。」
「皆にも言おう。軍紀違反は如何なる者であろうと、如何なる実績を上げようとも罪に処する。これは曲げられん。」
セイレーン公爵は、ロベルト王子を無視するかのように、大きな声で再び話しだした。
「伯父上。」
「詳しい刑は、軍議の最後に命じることとする。さあ、軍議を始めよう。カインは、罪人として、末席に座っておれ。」
「はっ。」
「伯父上。カイン。」
セイレーン公爵の言葉に、カインが受けることを受け入れては、ロベルト王子は、下がるしかできなかった。涙を浮かべながら。
「まず、今後の方針だが、我が領土自体は大きな傷を負ったが、軍や、領民の被害は極めて限定的に済んだ。皆のお陰だ。早急に反撃し、侵略してきた各国を抑えようと思うが。カインどう思う。」
「はい。バルザック王国軍は、主力がセイレーン周辺まで侵攻してきましたが、今はソーラレイの力で姿を消しました。バルザック王国については、侵攻可能でしょう。東北東の方でも数本もの光の柱が距離を置いて観測されております。光の柱の位置は離れていたとの情報もありますので、多くはソーラレイで殲滅していると思われます。バザーモン公国への侵攻も現実的に可能かと、あと、西ですが、フランツ王国軍は、セイレーンまで攻め上っておらず、リヒャルト王国とセイレーンの間にまだ侵攻中の悪魔達もおるかと思われますので、逆侵攻にはリスクが伴うと思われます。」
極刑にすべき者に、意見を聞いたことに驚くものも多かったが、カインは何事も無い様に答え、セイレーン公爵もじっくり聞いていた。
「そうか。ライスどう思う。」
「はいお兄様、私も、カイン殿の読みと同じです。一つ付言するなら、各国混乱しており、我が軍では、アレックス方式の工法で数日でバルザック王国、バザーモン公国の首都まで高速馬車道の開発が可能となり、魔石も十分備蓄されております。スピード重視で攻めるのがよろしいかと。」
「そうか、他に考えが違うものは無いか。」
セイレーン公爵が周りを見渡すと、ロベルト王子が前に出たが、セイレーン公爵はあえて無視して続けた。
「よろしい、では、三国同時侵攻としよう。まずは、バルザック王国だが、マーガス。残った兵は、如何程か?」
「40万の兵は、怪我人や一部の兵を、セイレーンまでのルートから外して待機させましたので、すぐに動かせる兵は25万程度かと。」
「では、待機させた兵は王都と、国境警備に回し、25万の兵でバルザックを落とせ。出来るか。」
「はっ、身命に懸けて。」
「お前の命は大事だ。無理だったら逃げてくるんだぞ。ルビーニア、ロンドフルに上手く頼れな。ハハハハハ」
「はっ。」
マーガスは、ルビーニア、ロンドフルと共に頭を下げ、列に戻った。
「次、バザーモン公国だが、ガイアス。」
「はっ。お預かりした30万の内、ついて来れるのは22万程、すでに準備に掛からせております。東ドワーフ自治領軍もほぼ無傷で自治領に控えております。」
「よろしい。」
ガイアス・ロドス伯爵は、一礼して列に戻った。
「最後に、フランク王国、リヒャルト王国だが、アリシア。」
「はい。ルクサンド伯軍を含め、41万の戦力を確保してありますが。」
「では、我が軍の指揮はアリシア頼む、リヒャルト王国を抑えろ。フランク王国の攻略は、ロベルト王子、我が軍をお貸しする。あいつ、王子の父君の仇をパースロット偽王の首級を取ってきて来れ。」
「は、はい。伯父上。」
アリシアがはっきりと答えたのに対し、まだ心の整理がついていないのがありありとわかるロベルト王子が対照的だった。そんなロベルト王子を見ながら、セイレーン公爵は、カインに向かって高らかと宣言する様に伝えた。
「でだ、カイン最後に卿の処遇だが、まず、我が公爵領及び、帝国から与えた全ての権利、名誉を剥奪する。」
「伯父上、そこまで。」
ロベルト王子が、狼狽えるのも、カインの今までの功績は公爵領一とも言われ、戯曲になるほどであり、一代貴族としての地位も有していた。極刑にするものに栄誉をはく奪することは、反逆罪以外聞いたことが無かった。
「ロベルト王子、君主たるもの、情や義だけでは、国は持たせられんのだよ。」
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セイレーン公爵は、ロベルト王子に対し、冷酷な目を放ち、ロベルトは固まってしまった。
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「兵器刑ですか。」
質問返したのは、カインでなく、ライスであった。物知りのライスも、聞いたことが無い位レアな罰だった。
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「では、皆の者出陣せよ。」
「「「「「「はっ。」」」」」」
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「セイレーン公爵閣下」
「何かね、」
「ロベルト王子泣いてられましたよ。絶対恨まれますよ。」
「その位の経験をさせるのもおじちゃんの仕事だ。主要メンバーの中で、本気だと思っているものなど、ロベルト王子位だろう。」
そんなやり取りをしていると、謁見の間に、傷だらけのドワーフが人を一人引き摺って入ってい来た。
「閣下、捕虜の検分を。」
そう言って連れて来られた傷だらけの男を見て、ロシュフォール王子が咄嗟に
「ベイスターン王子?」
と言うと、空気が一気に重くなった。
「何と?」
「バルザック王国のベイスターン王子です。帝都で何度かお会いしてますから。」
「そうか。」
セイレーン公爵は、少し憐れむようにベイスターン王子を見て、捕縛までの経緯を聞いた。
「それで、」
「医師の判断では、生殖能力はもうないかと。」
「そうか。アリアに傷をつけた男だ。単に殺しても意味はない。アリアが戻れば、帝都に連れて行かせ、イフリートに渡そう。娘の婚約者だろうしな。」
「閣下、よくない笑みが。」
「すまんな。それまで、牢に入れとけ。帝都までの道の復旧も急がせろ。」
「はっ。」
そう言って、その夜の会議は終わり、翌朝、全ての軍が出陣した後、アレックス達が戻ってきた。
「もしかして・・・。」
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