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幼女編
第9話 市場の小さな改革
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「おとーさーん。」
私が、市場に出てから5ヶ月経ったある日、市場からの帰りに、お父さんにかねてから考えてたことを相談をした。
「お父さん。前に薬屋さんで私が言ったの覚えてる。」
「??」
忘れてる様だ。
「薬屋さんとか、魔道具屋さんとか、色んな職人さん達って、自分で作って、自分で商談して、自分で資金繰りをしてるじゃないですか。」
「商談とか、資金繰りとか難しい言葉知ってるな。」
「そんなことじゃなくて、ルーベック鍛冶商会みたく、経営販売と、作成を別にしてあげられないかな?」
「うーん。ルーベックさんのところは、ダイアンがやると言ったから協力したけど、ガンガルディ商会として、協力するメリットあるか?」
「うーん。逆にメリットがあれば、手伝ってあげられる?」
「そうだな。」
「たとえば、ポーションや魔道具の安定供給とか?仕入れ値を下げられるとか?商会で販売代理を請け負うとか。」
「それなら多少は手伝えるが、手伝う程度だな。」
「わかった。」
お父さんは、真剣に聞いてくれてないことはわかった。ルーベック鍛冶商会については、ダイアンお兄ちゃんが真剣にやったから手伝ったが、私では子供すぎるのだ。私は、次に、ルーベックさんに相談してみた。
「大師匠。ご相談が。」
「なんだ、嬢ちゃん。気持ち悪い。」
「カクカクシカジカで、手伝って欲しいのですが。」
ルーベックさんは、顔を強張らせ。
「カクカクシカジカってよくわからないが、いいだろう。でも、商会員どうするんだい。」
「ありがとうございます。それについては、リストを作ってきました。みんな人間関係や手柄を取られたりしたり等で有力商会を辞めて、今別の仕事をやってたりする人や、冒険者ですが、冒険者の才能が無い人達等です。多分協力してくれるし、商人の才能のあるいい人達です。ルーベック鍛冶商会の戦力増強と、新しい商会の人材として活用して下さい。」
私はあらかじめ、攻略本を元にピックアップした人の数百人のリストをルーベックさんに渡した。
「嬢ちゃん、これは。」
「グランデ様のご加護です。」
「おいおい。」
「あと、鍛冶師も含めて、声かけてをする職人のリストです。」
「どうやって調べたんだ。」
「ですから、グランデ様のご加護で、」
「はあ。」
「後、予算はこのくらいで。」
「もう、どうでもいいや。グランデ様のご意向に沿うなら。」
私は、手元にある10億円を渡した。これで、魔道具屋、薬屋、家具屋が作れる筈だ。今回は、ルーベックさんが声をかけ、各業界のマイスターに商会代表になってもらい、オーナーは、ルーベックさんを通じて資金拠出する仕組みにした。権利証などは、商業ギルドの貸金庫に入れ、配当等は、別の貸金庫に振り込んでもらう様にしている。
ルーベックさんは、私が攻略本で選んだ3人の職人を口説き、魔道具商会、薬商会、家具商会を立ち上げさせ、サポートした。
また、市場で各職人の店を閉め、大きな区画を借りて、販売することとなった。これにより、4階、5階の店舗の3割は1年の内に閉鎖し、行商人が売るスペースに変わった。この変化は、後に、市場の小革命と呼ばれた。
「お父さん。何か、知らない内に、職人の商会が出来ちゃったね。」
「そうだな。お父さんがやらなくても、職人さんが幸せになれたから良かったじゃないか。」
「悔しくないの。」
「悔しいか。お父さんは、商会主だから、使用人達を含め食わせていく義務はあるが、それ以上に儲けようとは思っていないんだ。ダメな商人かもしれないが、みんなが幸せになれればそれが一番だと思っている。ダメなお父さんでごめんな。」
そんな、お父さんをはじめ誇らしいと思った日だった。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------
こじんまりとした円卓に4人の職人が座っていた。
「ルーベックさん。帝室御用達おめでとうございます。」
「ロドリゲスさん。あなたの薬商会から、宮廷薬師が生まれたそうじゃないですか?」
「オーナーの発案と出資で、薬師同士の知識を共有し、発展させる研究所と、育成の学校を作ってくれたことですよ。隣に大工房を作り、学生にバイト兼修行ができる様にして、孤児院出の子でも優秀なら学べる様になりましたからね。」
「鍛冶師、薬師、魔道具師、家具師そろぞれの学校に、研究所。これだけて、どの位のコストがかかったのか?ランニングは、収益で賄えてるが、まだ一切配当は出せてないぞ。効率的になって、商会通さないから、マージンもなくコストは劇的に下がり、価格は変わらなくても、品質や買いやすさが向上して売り上げも伸びているから、利益は相当出てるんだけど、殆ど、職人、使用人のボーナスや、投資に回しちゃって、オーナーは大丈夫か?」
オーナーか、ジェシカの事は話せないからな。流石に、偶に原料の仕入れで、粗悪品を神聖魔法で良品にして各商会に卸して、差額でぼろ儲けしているなんて、言えないよ。各学校のテキストや、参考書も一手に売ってるし。でも、毎日金金言う癖に、金払いは無茶苦茶良いし、分からん。
「オーナーか?商会立ち上げた時に、同時に学校と研究所の準備初めろってびっくりしたが、一年も掛けずに開校、会所。老齢で引退し後進に工房を譲ろうと考えてたマイスターや、仕事より研究好きの天才鬼才がこぞって入ってきて、商会参加の呼び水になったし、一年半で様々な成果が出てきた。それだけで相当満足されている。まぁ、金があってもあの人無駄遣い一切しないし、今の儲けは将来の投資に回してって言ってるからいいんじゃないか?そもそも商会自体儲けより、職人の為に作ってくれたものだから。まぁ、昨日お会いしたが、元気に走り回ってたし、何も考えてないんじゃないか。」
「走り回る?そんなにお忙しいのか?」
「うーん。忙しいと言えばな。」
「まあ、オーナーに関しては、引退を考えてる職人だけでなく、一子相伝とか、今まで技術が極秘とされ、技術が発展しない事や、昔ながらの経営スタイルに不満を持つ職人達を的確にリストアップしてきた事にびっくりした。その多くが才能溢れる者達で、商会に入りメキメキと成長している。どうやってそんな情報を」
「さあな。いくら聴いても、グランデ様のご加護があらんことをとしか言わないし、分からん。」
そう、私にもオーナーの事はわからんよ。あのお嬢ちゃんにどんな能力があるかそこが知れない。でも、俺は恩を返すだけだな。
「そういえば、メキメキで思い出したが、オーナーから頂いた神像だが、あれだけでひと財産だ。あんなランクの神像を大量に製造するなんて、どうやったら出来るのだ。あの神像を祭ってから、成長が滞っていたベテランも再び成長しはじめている。凄すぎないか?」
「そうだな、神像と言えば、前に商会を辞める者がいて、こっそり元いた工房の神像を持ち逃げしたんた。持ち逃げした神像を祭ったところ、神像が二つに割れ怒りの顔になった、この日その工房では事故が多発したらしい。翌日、その職人は神像を持って商会に謝りに来て、持ち逃げされた工房主は、お説教だけして、許してあげた。そうしたら、神像の顔が元に戻り、割れた神像が綺麗にくっついたとのことだ。それこそ、グランデ様のご加護だな。」
グランデ様にそこまでのご加護があるのか・・・。絶対なんかおかしいだろう。他の商会主達は、嬢ちゃんを見たことないからな、神格化してるんだろうな~。
「本当に神様は見ていらっしゃるのだな。ところで、ビクターさん、商会で立ち上げたブランドはどうだい?」
「いや、うちの業界は、皆さんと違って一部の有名工房と、そうでないの無名工房では、同じものでも価格が変わる業界だ。だから、工房毎の商品の振り分けとか、価格付けとか、売値交渉とかが大変だった。そこで、ブランドを作り、高級ブランド、中級ブランド、庶民派ブランドに分けて、品質、規格を揃えて作ったら、買う側も売る側もわかりやすいし、その分かりやすさが貴族の皆様にも受けて売り上げは上がるし、規格が揃ってるので大量注文も来るようになるし、素材も大量注文出来るので、仕入れ値も大きく抑えられて、大正解だった。皆さんと同じで卸もやっているが受注が取りづらかったのを、ブランド化による商品の統一化と、カタログ作成で、一気に卸の売り上げものびて、人が全く足りない状況だ。オーナーは、試しにとの注文だったが、このまま、工房名とブランドのダブルネームでやってく予定だ。」
「職人達は、不満は無いのか?」
「基本的には、名前でなく、出来で評価されるから、好評だよ。それに工房名つけてるし、他の物を作りたい奴は、ノルマさえこなせば作らせてるから、そんなに規格品を作るストレスも溜んないよ。職人の中には、色々やりたがる奴は多いから、ノルマをこなす為に、手は早くなってるし、品質チェックはしっかりやっているから、仕上げまでキッチリ出来るようなっている。あと、工房の時代は、休みなんて決まって無いし、売れなきゃ給料もまともに出なかったから、今みたいに、休みもキッチリとれて、給料も働いた分だけ出るし、大半は喜んでるよ。合う合わないはあるからな。」
「そうか、辞めた奴も含めて、ルーベックさんのところは、他の職人系商会に経営のノウハウ教えてるけど、大丈夫かい?」
そうそう、職人系商会を助けろって、嬢ちゃんがバクって言ったから、ノウハウ教えてるけど、普通の職人には無理だよな、そんなことが得意なら職人になってないよ。それをわかってあえて教えろって言っている嬢ちゃんは何なんだよって感じだよ。商人出の人材を集めたうちみたいな実績を出すのはつらいだろうな。
「職人持ちつ持たれつで、ウチだけが稼いでもしょうがないから、経営ノウハウを教えたり、学校での受け入れもしてるよ。元々、職人が幸せになると事目的に立ち上げたからね。まあ、経営の話をしたら、面倒なのがわかってうちの商会に入りたがる奴が多いし、成功したらしたで、ギルドのうるさ方の風除けになるからいいんじゃないの。」
「そうだな。うるさ方、本当にうるさいからな。俺たちの苦労わかって欲しいよ。」
「「「だよな~。」」」
「ところで、ルーベックさん。今日はみんなを集めて、雑談でも無いだろし、どうしたのだ。」
そうだ、ここからが今日の本題、初めてみんなを集めた理由だ、きっちり決めてかないと、嬢ちゃんに何を言われるかだな。
「うん。オーナーからだ。ルーベック鍛冶商会、ロドリゲス薬商会、モンティ魔道具商会、ビクター家具商会の4商会で業務提携を行う。提携内容は3つ。一つ目は共同出資の共同研究所を立ち上げる。資金はオーナーから各商会に1億づつ4億預かっているから、受け取ってくれ。商品の共同開発、素材等の基礎研究が目的だ。
二つ目は、共同ブランドの設立。これは、研究所で共同開発したものを売る時に使うブランドを決めるものだ。名前は勝手に考えろだと。
三つ目は、15日会の設立。これは月は違うが、4商会が3年前に立ち上げた時立ち上げた日が偶々15日だったから、毎月15日頃集まって、朝食でも食べながら情報交換の会合をもとうというものだ。俺達は別室で、他に経営幹部達は大きな部屋でな。俺達も若く無い。退いた時にも助け合える素地を作って行くのと、お互いにいい意味でなんでも言い合える関係を気づいて行くのが目的だ。」
「わかった。それって、夜酒飲みながらはダメか?」
俺も飲みながらやりたいよ。みんなそう思うよなー。
「それは、聞いたが、別でやればいいじゃん。経費で落としていいから。と言ってた。その中で、どのギルドでも年に二度あるマイスター任命のタイミングで、4商会の全マイスターを全員集めて新マイスターを祝う大飲み会を経費でやったらと言ってた。関係ないマイスターも呼んでも良いしって言ってたよ。」
「ギルドのうるさ方に挨拶を頼めば、うるさ方の溜飲も下がるだろうし、単に業務提携の一環でやってるから、他のマイスター達を呼ぶのも問題ないしね。」
こうして決まった業務提携が、後に世界最大の企業連合体となるマイスターズに繋がっていく。
また、15日会は、商会主達の緩い考えと違い、幹部達の活躍の場となった。そこでは、様々な共同事業、共同出資商会等が、議論され、次々に決まり立ち上げていった。新たな事業、商会の幹部達も15日会に参加していきと、急速に拡大、15日会が企業拡大の原動力となっていった。ただ、4商会の商会主の別室会議だけは、世代交代があることはあれ、人数が増減することはなかったという。
新任マイスターを祝う会も、元々4商会プラスアルファ程度だったが、各ギルドがやるならみんなでと、すぐにギルド主催に変わった、4商会が所属していないギルドも参加してきて、終いには全職人ギルド共同開催となった。定期的に飲み騒ぐ中で、過去からのギルド間の軋轢等のも無くなり、情報交流等も盛んになり、最終的に職人ギルド連合が出来るキッカケとなった。
因みに、共同研究所は、ジェシカが、思いつきを実現させる為に、作ろうとしたのがきっかけであり、自身も鍛治研究所と合わせてちゃっかり特別研究員の地位に就いていた。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------
その頃ジェシカは、
「4商会の業務提携で、4社の企業価値は鰻登り。今は現金持っていてもしょうがないから、ただでさえ高まっている企業価値を限界まで高めて、ウフフフフ。」
と薄気味悪い笑みを浮かべていた。
そんなこんなで、ジェシカが6歳になった冬のある日、あの事件が起きた。
私が、市場に出てから5ヶ月経ったある日、市場からの帰りに、お父さんにかねてから考えてたことを相談をした。
「お父さん。前に薬屋さんで私が言ったの覚えてる。」
「??」
忘れてる様だ。
「薬屋さんとか、魔道具屋さんとか、色んな職人さん達って、自分で作って、自分で商談して、自分で資金繰りをしてるじゃないですか。」
「商談とか、資金繰りとか難しい言葉知ってるな。」
「そんなことじゃなくて、ルーベック鍛冶商会みたく、経営販売と、作成を別にしてあげられないかな?」
「うーん。ルーベックさんのところは、ダイアンがやると言ったから協力したけど、ガンガルディ商会として、協力するメリットあるか?」
「うーん。逆にメリットがあれば、手伝ってあげられる?」
「そうだな。」
「たとえば、ポーションや魔道具の安定供給とか?仕入れ値を下げられるとか?商会で販売代理を請け負うとか。」
「それなら多少は手伝えるが、手伝う程度だな。」
「わかった。」
お父さんは、真剣に聞いてくれてないことはわかった。ルーベック鍛冶商会については、ダイアンお兄ちゃんが真剣にやったから手伝ったが、私では子供すぎるのだ。私は、次に、ルーベックさんに相談してみた。
「大師匠。ご相談が。」
「なんだ、嬢ちゃん。気持ち悪い。」
「カクカクシカジカで、手伝って欲しいのですが。」
ルーベックさんは、顔を強張らせ。
「カクカクシカジカってよくわからないが、いいだろう。でも、商会員どうするんだい。」
「ありがとうございます。それについては、リストを作ってきました。みんな人間関係や手柄を取られたりしたり等で有力商会を辞めて、今別の仕事をやってたりする人や、冒険者ですが、冒険者の才能が無い人達等です。多分協力してくれるし、商人の才能のあるいい人達です。ルーベック鍛冶商会の戦力増強と、新しい商会の人材として活用して下さい。」
私はあらかじめ、攻略本を元にピックアップした人の数百人のリストをルーベックさんに渡した。
「嬢ちゃん、これは。」
「グランデ様のご加護です。」
「おいおい。」
「あと、鍛冶師も含めて、声かけてをする職人のリストです。」
「どうやって調べたんだ。」
「ですから、グランデ様のご加護で、」
「はあ。」
「後、予算はこのくらいで。」
「もう、どうでもいいや。グランデ様のご意向に沿うなら。」
私は、手元にある10億円を渡した。これで、魔道具屋、薬屋、家具屋が作れる筈だ。今回は、ルーベックさんが声をかけ、各業界のマイスターに商会代表になってもらい、オーナーは、ルーベックさんを通じて資金拠出する仕組みにした。権利証などは、商業ギルドの貸金庫に入れ、配当等は、別の貸金庫に振り込んでもらう様にしている。
ルーベックさんは、私が攻略本で選んだ3人の職人を口説き、魔道具商会、薬商会、家具商会を立ち上げさせ、サポートした。
また、市場で各職人の店を閉め、大きな区画を借りて、販売することとなった。これにより、4階、5階の店舗の3割は1年の内に閉鎖し、行商人が売るスペースに変わった。この変化は、後に、市場の小革命と呼ばれた。
「お父さん。何か、知らない内に、職人の商会が出来ちゃったね。」
「そうだな。お父さんがやらなくても、職人さんが幸せになれたから良かったじゃないか。」
「悔しくないの。」
「悔しいか。お父さんは、商会主だから、使用人達を含め食わせていく義務はあるが、それ以上に儲けようとは思っていないんだ。ダメな商人かもしれないが、みんなが幸せになれればそれが一番だと思っている。ダメなお父さんでごめんな。」
そんな、お父さんをはじめ誇らしいと思った日だった。
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こじんまりとした円卓に4人の職人が座っていた。
「ルーベックさん。帝室御用達おめでとうございます。」
「ロドリゲスさん。あなたの薬商会から、宮廷薬師が生まれたそうじゃないですか?」
「オーナーの発案と出資で、薬師同士の知識を共有し、発展させる研究所と、育成の学校を作ってくれたことですよ。隣に大工房を作り、学生にバイト兼修行ができる様にして、孤児院出の子でも優秀なら学べる様になりましたからね。」
「鍛冶師、薬師、魔道具師、家具師そろぞれの学校に、研究所。これだけて、どの位のコストがかかったのか?ランニングは、収益で賄えてるが、まだ一切配当は出せてないぞ。効率的になって、商会通さないから、マージンもなくコストは劇的に下がり、価格は変わらなくても、品質や買いやすさが向上して売り上げも伸びているから、利益は相当出てるんだけど、殆ど、職人、使用人のボーナスや、投資に回しちゃって、オーナーは大丈夫か?」
オーナーか、ジェシカの事は話せないからな。流石に、偶に原料の仕入れで、粗悪品を神聖魔法で良品にして各商会に卸して、差額でぼろ儲けしているなんて、言えないよ。各学校のテキストや、参考書も一手に売ってるし。でも、毎日金金言う癖に、金払いは無茶苦茶良いし、分からん。
「オーナーか?商会立ち上げた時に、同時に学校と研究所の準備初めろってびっくりしたが、一年も掛けずに開校、会所。老齢で引退し後進に工房を譲ろうと考えてたマイスターや、仕事より研究好きの天才鬼才がこぞって入ってきて、商会参加の呼び水になったし、一年半で様々な成果が出てきた。それだけで相当満足されている。まぁ、金があってもあの人無駄遣い一切しないし、今の儲けは将来の投資に回してって言ってるからいいんじゃないか?そもそも商会自体儲けより、職人の為に作ってくれたものだから。まぁ、昨日お会いしたが、元気に走り回ってたし、何も考えてないんじゃないか。」
「走り回る?そんなにお忙しいのか?」
「うーん。忙しいと言えばな。」
「まあ、オーナーに関しては、引退を考えてる職人だけでなく、一子相伝とか、今まで技術が極秘とされ、技術が発展しない事や、昔ながらの経営スタイルに不満を持つ職人達を的確にリストアップしてきた事にびっくりした。その多くが才能溢れる者達で、商会に入りメキメキと成長している。どうやってそんな情報を」
「さあな。いくら聴いても、グランデ様のご加護があらんことをとしか言わないし、分からん。」
そう、私にもオーナーの事はわからんよ。あのお嬢ちゃんにどんな能力があるかそこが知れない。でも、俺は恩を返すだけだな。
「そういえば、メキメキで思い出したが、オーナーから頂いた神像だが、あれだけでひと財産だ。あんなランクの神像を大量に製造するなんて、どうやったら出来るのだ。あの神像を祭ってから、成長が滞っていたベテランも再び成長しはじめている。凄すぎないか?」
「そうだな、神像と言えば、前に商会を辞める者がいて、こっそり元いた工房の神像を持ち逃げしたんた。持ち逃げした神像を祭ったところ、神像が二つに割れ怒りの顔になった、この日その工房では事故が多発したらしい。翌日、その職人は神像を持って商会に謝りに来て、持ち逃げされた工房主は、お説教だけして、許してあげた。そうしたら、神像の顔が元に戻り、割れた神像が綺麗にくっついたとのことだ。それこそ、グランデ様のご加護だな。」
グランデ様にそこまでのご加護があるのか・・・。絶対なんかおかしいだろう。他の商会主達は、嬢ちゃんを見たことないからな、神格化してるんだろうな~。
「本当に神様は見ていらっしゃるのだな。ところで、ビクターさん、商会で立ち上げたブランドはどうだい?」
「いや、うちの業界は、皆さんと違って一部の有名工房と、そうでないの無名工房では、同じものでも価格が変わる業界だ。だから、工房毎の商品の振り分けとか、価格付けとか、売値交渉とかが大変だった。そこで、ブランドを作り、高級ブランド、中級ブランド、庶民派ブランドに分けて、品質、規格を揃えて作ったら、買う側も売る側もわかりやすいし、その分かりやすさが貴族の皆様にも受けて売り上げは上がるし、規格が揃ってるので大量注文も来るようになるし、素材も大量注文出来るので、仕入れ値も大きく抑えられて、大正解だった。皆さんと同じで卸もやっているが受注が取りづらかったのを、ブランド化による商品の統一化と、カタログ作成で、一気に卸の売り上げものびて、人が全く足りない状況だ。オーナーは、試しにとの注文だったが、このまま、工房名とブランドのダブルネームでやってく予定だ。」
「職人達は、不満は無いのか?」
「基本的には、名前でなく、出来で評価されるから、好評だよ。それに工房名つけてるし、他の物を作りたい奴は、ノルマさえこなせば作らせてるから、そんなに規格品を作るストレスも溜んないよ。職人の中には、色々やりたがる奴は多いから、ノルマをこなす為に、手は早くなってるし、品質チェックはしっかりやっているから、仕上げまでキッチリ出来るようなっている。あと、工房の時代は、休みなんて決まって無いし、売れなきゃ給料もまともに出なかったから、今みたいに、休みもキッチリとれて、給料も働いた分だけ出るし、大半は喜んでるよ。合う合わないはあるからな。」
「そうか、辞めた奴も含めて、ルーベックさんのところは、他の職人系商会に経営のノウハウ教えてるけど、大丈夫かい?」
そうそう、職人系商会を助けろって、嬢ちゃんがバクって言ったから、ノウハウ教えてるけど、普通の職人には無理だよな、そんなことが得意なら職人になってないよ。それをわかってあえて教えろって言っている嬢ちゃんは何なんだよって感じだよ。商人出の人材を集めたうちみたいな実績を出すのはつらいだろうな。
「職人持ちつ持たれつで、ウチだけが稼いでもしょうがないから、経営ノウハウを教えたり、学校での受け入れもしてるよ。元々、職人が幸せになると事目的に立ち上げたからね。まあ、経営の話をしたら、面倒なのがわかってうちの商会に入りたがる奴が多いし、成功したらしたで、ギルドのうるさ方の風除けになるからいいんじゃないの。」
「そうだな。うるさ方、本当にうるさいからな。俺たちの苦労わかって欲しいよ。」
「「「だよな~。」」」
「ところで、ルーベックさん。今日はみんなを集めて、雑談でも無いだろし、どうしたのだ。」
そうだ、ここからが今日の本題、初めてみんなを集めた理由だ、きっちり決めてかないと、嬢ちゃんに何を言われるかだな。
「うん。オーナーからだ。ルーベック鍛冶商会、ロドリゲス薬商会、モンティ魔道具商会、ビクター家具商会の4商会で業務提携を行う。提携内容は3つ。一つ目は共同出資の共同研究所を立ち上げる。資金はオーナーから各商会に1億づつ4億預かっているから、受け取ってくれ。商品の共同開発、素材等の基礎研究が目的だ。
二つ目は、共同ブランドの設立。これは、研究所で共同開発したものを売る時に使うブランドを決めるものだ。名前は勝手に考えろだと。
三つ目は、15日会の設立。これは月は違うが、4商会が3年前に立ち上げた時立ち上げた日が偶々15日だったから、毎月15日頃集まって、朝食でも食べながら情報交換の会合をもとうというものだ。俺達は別室で、他に経営幹部達は大きな部屋でな。俺達も若く無い。退いた時にも助け合える素地を作って行くのと、お互いにいい意味でなんでも言い合える関係を気づいて行くのが目的だ。」
「わかった。それって、夜酒飲みながらはダメか?」
俺も飲みながらやりたいよ。みんなそう思うよなー。
「それは、聞いたが、別でやればいいじゃん。経費で落としていいから。と言ってた。その中で、どのギルドでも年に二度あるマイスター任命のタイミングで、4商会の全マイスターを全員集めて新マイスターを祝う大飲み会を経費でやったらと言ってた。関係ないマイスターも呼んでも良いしって言ってたよ。」
「ギルドのうるさ方に挨拶を頼めば、うるさ方の溜飲も下がるだろうし、単に業務提携の一環でやってるから、他のマイスター達を呼ぶのも問題ないしね。」
こうして決まった業務提携が、後に世界最大の企業連合体となるマイスターズに繋がっていく。
また、15日会は、商会主達の緩い考えと違い、幹部達の活躍の場となった。そこでは、様々な共同事業、共同出資商会等が、議論され、次々に決まり立ち上げていった。新たな事業、商会の幹部達も15日会に参加していきと、急速に拡大、15日会が企業拡大の原動力となっていった。ただ、4商会の商会主の別室会議だけは、世代交代があることはあれ、人数が増減することはなかったという。
新任マイスターを祝う会も、元々4商会プラスアルファ程度だったが、各ギルドがやるならみんなでと、すぐにギルド主催に変わった、4商会が所属していないギルドも参加してきて、終いには全職人ギルド共同開催となった。定期的に飲み騒ぐ中で、過去からのギルド間の軋轢等のも無くなり、情報交流等も盛んになり、最終的に職人ギルド連合が出来るキッカケとなった。
因みに、共同研究所は、ジェシカが、思いつきを実現させる為に、作ろうとしたのがきっかけであり、自身も鍛治研究所と合わせてちゃっかり特別研究員の地位に就いていた。
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その頃ジェシカは、
「4商会の業務提携で、4社の企業価値は鰻登り。今は現金持っていてもしょうがないから、ただでさえ高まっている企業価値を限界まで高めて、ウフフフフ。」
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