攻略本片手に異世界へ 〜モブは、 神様の義祖母 〜

出汁の素

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少女編

第7話 ひと夏の冒険

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 その夜、私は、明日の準備を済ませた後、あの魔物の魔石を鑑定した。

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鑑定レベルMAX
名前 魔王の魔石
種類 魔石
属性 全属性
効果 魔力の蓄積(レベル1000)
   邪神封印
レア度 1000
備考
自然発生の魔王の魔石。
全属性の魔石で、邪神の封印にも使える。
神界に持込む事も可能。
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 は?魔王ってなんなの?伝説のやつ?6英雄が討伐したという伝説の魔王?私は不安に思い、魔石をポケットにしまい、次は攻略本で、魔王について調べてみた。

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名前 魔王
種類 魔物
説明
 魔物が進化した究極の形。元となる魔物により形、特性等は異なる。稀に邪神となり、大邪神に進化する。大邪神となった場合、世界を崩壊させる力を持つ。
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名前 邪神
種類 亜神
説明
 魔王が進化した形。生物と隔絶した力を持ち、寿命という概念はなくなる。進化には、莫大な数の神に祝福された力ある生物を殺める必要がある。
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名前 大邪神
種類 亜神
説明
 邪神が進化した形。世界を崩壊させていく力を持つ。世界と共に崩壊する以外で討伐した事例は、過去全宇宙で例がない。進化には、莫大な数の神に祝福された力ある生物を殺める必要がある。
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 やば、魔王って、伝説の大邪神に進化しちゃうやつじゃん。しかも、天然もの。天然物って何よ。自然に発生しちゃうの?とりあえず、神楽君に聞いてみようと、神楽神を置いて、全力で祈ってみた。

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 気付くと、私は神の世界にいて、神楽君が全力土下座していた。

「ごめんなさい。」
「どうしたの?」
「魔王の魔石って魔王を。」

 そう私は、ポッケに魔法の魔石を持っていた。

「魔王を倒したけど、何故魔王がいたの?。」
「話せば長くなるんですが、」
「寝る前で時間はたっぷりあるから。」

 神楽君が若干泣きそうなのは気のせいだろうか。

「話は、アルカディア帝国建国に遡ります。アルカディア帝国は、のちにアルカディア帝国皇帝となるアラビアータ1世と、4公爵家の初代、後に帝国神殿を築いた法王バリョモート1世の6人が、魔王を討伐した事から始まりました。」
「その時にも、魔王を討伐したんだよね?」
「その時にも、魔王を討伐しました。討伐であり、消滅させたわけではありません。」
「残ってたのね。」
「そうです。しかしながらちゃんと封印の儀式やってれば問題ない筈です。ですが、魔王が復活したという事は、封印が破られたんでしょう。」
「あれ、おかしいわね。あの魔王自然発生だったわよ。」
「自然発生?じゃ関係ないです。焦りました。やってしまったのかと・・・」

 と土下座を解く、神楽君に、

「で、討伐・封印ってどういうこと?教えてくれるかな?」
「あ、実は、過去の魔王は、消滅させられずに、力を削り、大迷宮に封印したんです。封印と言っても、どこかの迷宮に閉じ込めた訳でなく、帝都礎として、大迷宮で儀式を20年を空けず行えば、解けることの無い封印です。まぁ、解けたからと言って、すぐ出てこれる訳でなく、小さな穴が徐々に空いていく程度ですけど。まぁ、一つの迷宮なら100年放置してたら、通れちゃいますけどね。でも、魔王としての力は回復してる筈なので、放置すればするほど、迷宮の魔物の力が強くなって行きます。」
「で、儀式ってどんななの?」
「簡単です。例えば神都の大迷宮なら、三種のドラゴンを、迷宮を司る英雄の後継者が倒すこと。」

 神楽君はサラッと言うが、無理筋だ。今の人達でドラゴン三種なんて、1種ですら突破できなかったのに。

「ドラゴン三種って、普通無理よ。それで、各迷宮を司る英雄は?」

 神楽君は申し訳な態度で教えてくれた。

「神都の大迷宮は、バリョモート・カグラ、破邪の大迷宮は、アラビアータ・アルカディア、魔術の大迷宮は、ビーダー・ハイムサーディシュ、冒険の大迷宮は、ボリス・ルビンスキー、闘将の大迷宮は、バレンタイン・フランドル、野生の大迷宮は、ドリュー・リゾナンドです。はい。」
「あれ?大迷宮って4個ではないの?」

 そう世の中では、4大迷宮と言われている位スタンダードだ。

「いえ、6個ですよ。」
「どこにあるの?」
「帝都ですよ。入口は、帝都の四角ブロックと、帝都の中心である皇帝の宮殿奥、中央神殿の奥の6か所です。」
「それで、各迷宮の儀式と後継者は?」
「後継者は、魔王を倒した時装備していた武器の後継者となります。私がみているバリョモート・カグラの武器は神罰の杖と呼ばれるもので、今神聖王国の巫女が持っています。他は、神達に聞かないと。」
「巫女様って儀式は?」
「儀式?えー。えっ100年やってない。」
「だから、魔王が発生したんだ。」
「ごめんなさい。」
「神都の迷宮の儀式はどうにかするから。」
「本当?ありがとうございます。」
「では、明日、この時間に、他の神様達呼んでおいてね。よろしく。」

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翌日午後

「叔母ちゃん。そうそう。貸してよ。えー。わかった。ありがとう。じゃ取りに行くね。夏休みに。よろしく~。」

 研究室で、電話をしていると、お兄ちゃんが、

「電話して、夏休みどっかいくの?」
「あぁ、ちょっと神聖王国の巫女様のところに、神罰の杖を借りに。」

 ブーッ

 お兄ちゃんは、飲んでいたお茶を吹き出した
 
「巫女様って、」
「巫女様って言っても、お婆ちゃんのお姉ちゃんだよ。神聖王国にいた時は叔母ちゃんって呼んでたし。」
「は?」
「あっ、お兄ちゃん、忘れといてね。」
「あぁ、覚えておきたくないしな。後、神罰の杖って、伝説の?」
「そうだよ。色々調べたら、魔王の封印に必要らしいの?」
「封印?」
「多分もうすぐ解明出来るから、そしたら説明するね。」
「あぁ」

 私は、攻略本で、魔王の封印について詳しく書いてある資料を探し、帝国中央図書館で、資料を魔法で転写し、攻略本で翻訳した、古代神聖文字で書かれ、さらに鏡文字だったので、資料のカバーには解読不能というラベリングされていた。


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天地開闢の書
~バリョちゃんのこらしめ記~

 今日は、魔王を退治したので、今日のことを残そうと思う。そもそも、私はが魔王と闘わなきゃいけなくなったのは、神様よお告げを聞いたからだ。カグラ神でうざ~い。
 アルカディア公子達にもお告げがあったみたいだけど、アルカディア公子ってブサメンだよね。何で5人ともブサメンなの?嫌になる。それに引き換え、魔王様カッコよかったな。カグラ神様もイケメンだけど、私はマッチョイケメンが良いな。でも魔王だから退治したけど、退治してる時、あの5人を何度退治したかったことか、耐えたバリョちゃん頑張った。
 あの5人ったら、プライドがあるからと、事実を残すのは嫌だと言うから、バリョちゃんが、事実を残します。
 こっから事実ね。
 魔王を退治したんだけど、実は、消滅させた訳じゃないんだ。単に弱らせて封印しただけ。封印は、6大迷宮を使ってしてます。実は6大迷宮自体一つの迷宮で、全ての迷宮で、50階に到達すると、その人だけが入れる扉が現れて、エクストラステージに進めます。あの5人は、それぞれ最後まで行った迷宮は3つ位づつで、残りは50階層の階層主で死にかけて、迷宮入口に飛ばしちゃったから、扉を知ってるのは私だけ、こそっと入ったけど、強過ぎたので、すぐ帰ってきたの。本当怖いわよ。
 魔王の封印は、6つの大迷宮で儀式をする事で10年封印が延び、10年放置すると綻び始め、100年位放置すると、魔王が抜けられ様になると言うもの。まぁ、私の担当となった迷宮は、ドラゴン3種類を、神罰の杖を使って倒すということで、儀式が完了することになってるの。ドラゴン3種って、35階までに4種類いるから、楽勝だろうけど、雑魚っちい者を神罰の杖の後継者にしない様に願うわ。でも、魔王様マジカッコ良かったな~。
 後の儀式はこんな感じ。


 アルカディアは、こいつ本当根暗で、リスク取れない、安全第一とか言いながら、判断出来ない奴だった。決めないリスク、やらないリスクどうするんだって感じ。色々無理矢理やらせてたけど、戦闘は何故か基本的に力技での突撃系。聖剣エクスカリバーがあったから、何とかほぼ一撃で倒していったけど、無かったら死んでただろうな。私が打ったエクスカリバーさまさまだな、私凄い。私って天才。まぁ褒めてくれるの旦那しか居ないけど。そうそう、儀式は、エクスカリバーで、1000体の魔物を倒す事。スライムで良いけど面倒くさくて、作業員に作業させたら良いんじゃないかな?

 ハイムサーディシュは、超絶デブ。迷宮を探検する時にケーキを食べたいからって、それ用の巨大容量の冷蔵機能を持ったマジックバックを作ったり、携帯用調理場を作ったり、ある意味天才だった。まぁ、大きな魔法のエネルギーを体重の消費でカバーすると言う特殊なスキルを持ってたからしょうがないけど、どーでも良いけど、彼のケーキは世界一の味だから、食べた方がいいよ。ってな事で、儀式だけど、大食漢のフォーク、もとい、冥王のトライデントを持って、100種類以上の魔物を倒すこと。あの迷宮本当に色んな魔物がいるので、レアもしっかり押さえていけば、楽にいけるかな?

 ルビンスキーは、とにかく理屈っぽくて面倒くさい癖に、実行力が無い。顔はのっぺら坊や系だったよな。無表情で、色々言うから、超キモいし、デリカシーが全く無いんだよな。自分は頭がいいと勘違いしている痛い奴だ。ハイムサーディシュの方が何倍も頭は良いが、ハイムサーディシュは、デザートで買収されなければ良いやつだから、何も言わない。儀式は、魔弦の弓で、魔物を1000匹以上射抜くこと。モンスターハウスで打ちまくれば楽勝だ。

 フランドルは、簡単に言えば脳筋。分かりやすく言えば脳筋。基本的に脳筋だ。全て筋肉で考えるので、まともな行動はしない。顔は、ゴリラそのものだ。ゴリラのくせに素早く先頭に役立つが。とにかく守りが弱い。剣術ってものが分かってないくせに圧倒的に剣が強い。脳筋天才。ただ、トリッキーな攻撃をする敵には瞬殺される。単なる馬鹿。儀式は、剛剣ギンガダムで、30階まで全ての階の階段前にいる、剣魔を斬り裂くこと。これが一番辛い。何故これだけ辛いかと言えば、フランドルが俺の子孫なら楽勝と言ったからだけど、大丈夫か?まぁ、子孫じゃなくても剛剣で倒せば良いんだけども。

 リゾナンドは、遊び人の、無頼漢風。カッコつけなんだけど、締まらない。金はあるから、色んな娘を泣かせてきた奴なんだよね。女の敵としてウオメンズネットワークの名誉天敵に認定された位だからね。顔は、普通。本当に普通。あえて言えば、顔がデカい。儀式は、幻惑のナイフで、階層主の部屋の敵100体を傷つけること。5階で済むから楽勝だね。

 まぁ、あの5人も、権力目当てに綺麗な女性が寄ってきているから、5代もすれば美男美女の家系になるんだろうな。うちの旦那は、真面目イケメンだから大丈夫かな?

 因みに、SSランク以上の武器に、レベル300以上の魔石を嵌め、それぞれの属性を付与すれば、代わりになるけど、SSランク、レベル300だと、3年程度で、普通に付与しても持たないから、本物を使う事をお奨めするわ。後、私が作った本物を壊すと、100倍で封印解除が進むから、注意が必要よ。頑張ってね。


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 こんな内容だった。

 想定より明らかに駄目な内容だった。多分封印作業なんてやってないだろうな。特にフランドル公のは、30階までの潜らないといけない。大迷宮が6つ釣って聞いたことない。後、武器だが、100年分のリセットが出来るのであれば、代替武器も用意しないと。

 と、訳した内容と、原文を魔導具で印刷し、データは、アイルお兄ちゃんと、お姉ちゃんに送った。アイルお兄ちゃんは、世に出す内容、皇帝陛下を含め報告内容の整理と、資料作り、お姉ちゃんは、よくわからないコネを使って、勝手に色々調べてくれる筈だ。あの人だけは本当にわからない。

そうこうしている内に夜になったので、神楽君に続きを聞いてみようと、神楽神達を置いて、全力で祈ってみた。

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 気付くと、神楽君達が全力土下座していた。

「この度は、大変申し訳ございませんでした。」

 アルカディア神様が謝ってきた。やっぱり色々放置したからだろう。

「ジェーン様にお怪我等あったら私、生きておれません。」

 私はズッコケた。そう、この女神はこんな神だ。あれは、私がまともな神像を作れる様になり、アルカディア様を初めて作って祀った時のことだ。

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 あれ?簡単に祈っただけなのに。

「そちが、カグラがぞっこんのジェシカか?」

「ぞっこんって、ぞっこんな娘のおばあちゃんですが?」
「おばあちゃん?妾には童にしか見えんが、」
「あぁ、私転生したから。」
「そうかえ、転生かえ。」
「別の世界での家族を転生ねえ、妾には分からんが、そちは今彼氏でもおるのかえ?」
「一応童ですが、いい恋愛したいです。」
「いい恋愛か、よし、今そちの周辺に相性の合うものがおるか探してしんぜよう。」
「あの、もしかして、アルカディア様って、恋話好き。」
「大好きじゃ。」
「面倒くさいことには。」
「せぬ。神に二言は無い。」
「神楽君は二言以上してましたが。」
「あいつは特別じゃ。ええい。家族関係から見てしんぜよう。」
「やめい。」
「おお、そちの両親が、兄さんはイケメンで、姉さんは、あ、あ、あ、ね、、、、」

 アルカディア様が壊れた。

「お姉様~。」
「どうされました、アルカディア様。」
「あのお方、そちの姉様は、お姉様~。」

 と、お姉ちゃんに一目惚れしてしまった。女神なのに。アルカディア様も超絶美形だが、お姉ちゃんの、異常に女性を引き寄せ過ぎる美しさには抗えないらしい。適度に出っこみしているパーフェクトボディだしね。

「ジェーンお姉ちゃん」
「我が使徒ジェーン。」
「使徒?」
「そう、我が使徒だ。」
「アルカディア皇家は?」
「あぁ、加護位与えとけば良かろう。」

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 それから、いつもお姉様ラブである。他の女神も同じ感じで、ファンクラブがあるらしく、最近は真剣に神にする技術的な可能性について議論しているらしい。

「まぁ、そんなことはともかく、」
「そんなことではございません。ジェーンお姉様のことで」
「だから、聞きにきているんだけど。」

 私は強い口調で、アルカディア様の言葉を封殺した。土下座している六柱の神達、カグラ以外は、
 戦女神大神アルカディアは、最も下級神を多く持つ上級神。超美形なお姉ちゃん。お姉ちゃんにぞっこんで、使徒にした神。基本的に戦闘狂いでビキニアーマーを着ている、スタイル抜群で、見た目華奢だが物凄く強い。
 力の魔法神ハイムサーディシュは、魔神大神ソロモンの下級神で、戦闘系三魔法神の一柱。技の魔法神メルキド、広域の魔法神バファムードと並ぶ三剣神の一柱。イメージメガネのお兄ちゃん。白衣を着て研究者風。そこは、ガウンを着て、魔導師風じゃと突っ込みたくなる感じの様相。
 弓神ルビンスキーは、アルカディアの下級神。見た目はエルフで、美形で細身。弓を担いで、細身の剣もさしている。
 力の剣神フランドルは、アルカディアの下級神で、技の剣神ムサシ、魔剣の剣神ランスロットと並ぶ三剣神の一柱。見た目筋肉姉さんって感じで、性格も大雑把。よくアルカディア様に怒られている。素直で真っ直ぐ。
 トリックスターリゾナンドは、カグラの下級神。見た目は背が低く、小人って感じの風態。童顔で可愛い男の子だか、時折目が鋭くなる。見た目を上手く使うが、言うことはしっかりしている。

 みんな伏目がちだ。

「儀式の道具を誰が持っているかと、どの位やってないか教えて下さい。」

「はっはい。聖剣エクスカリバーは、皇帝が持っていて、儀式は20年程前にやってます。継承行事としてやってるみたいです。」

 アルカディア様は、ニンマリしてみんなを見渡した。

「冥王のトライデントは、公太子ロマリア・ハイムサーディシュが持っています。儀式は、3代前から行われておらず、77年程経つまでます。ごめんなさい。」

 ハイムサーディシュ様はペコペコ謝っている。

「多分、ロマリア・ハイムサーディシュが換金目的で持ち出したんです。」
「金で買えるってこと?」
「お困りのようですから。」

 ハイムサーディシュ様は悲しそうな顔をしている。

「魔弦の弓は、冒険の大迷宮の30階にあります。95年前に、儀式を終わらせ、迷宮踏破を目指しそこまで降りて行った後、亡くなってそのままです。」
「30階の階層主を倒せば良いのね。」
「はい。」

 ルビンスキーは、辛そうな顔をしていた。

「すみません。放置してしまって。」
「大丈夫よ。単に30階に行って、弓を撃ちまくればいいので、」(ニコッ)

 いや、変な奴が持ってるより楽勝でしょう。


「剛剣ギンガダムですが、公爵が持っており、儀式は5年前にやっている。」
「フランドル公流石脳筋系、やることはきちっとしてますね。」

 フランドル様はエヘンと言う顔だ。その隣で震えている。リゾナンド様が

「幻惑のナイフですが、今、海の底です。ごめんなさい。」
「ふへ?」

 皆んなの厳しい目が、リゾナンド様に集中した。

「海って?」
「極寒のエルハンザ王国のリバハイス海の海底に、




ごめんなさい。」

 エルハンザ王国は、ベルーフ王国より北に位置し、旧バリア諸島連合国の北に位置する列島国家。 武人と呼ばれる人達が支配し、王は武人の長達である統領達の長で国内では大統領と呼ばれている。多種族国家で種族間の長所をうまく生かして暮らしている。とにかく戦好きでしょっちゅう内戦をしているらしい。リバハイス海は、エルハンザ王国の中でも難所と知られる海域で、寒いし、潮の流れが早いし、深い海に所々岩が切り立っているという。帝国とは直接国交は無いが、シードラ王国は、仲良くやっている筈だ。

「何でそんな所に?」
「あ、三代前の公爵の息子が持ち出し、売却、転々としている中、輸送中に座礁、沈没して今に至ります。ごめんなさい。」
「そっそうなの。」

 シードラ王国で、船を出して貰って、調べれば良いか。

「で、後何年残ってるの?」
「前の儀式から、110年経ってます。ごめんなさい。」

 もう頭を下げっぱなしだ。

「神楽君。」
「はい、お婆様。」
「ナイフは、私の方で何とかするから、念の為、討伐用のシミュレーションをしておいて。」
「了解です。」
「じゃあ。また、皆様には、」

 と、話を終わらせようとした時、

「あの、怒らないのですか?」
「「は?」」


 リゾナンド様の言葉に、私も神楽君もハモった。

「怒って変わることなら幾らでも怒るけどねー。」
「そうです、お婆様。リゾナンド、これは失敗かどうかで言えば、そもそも神としてやらなければいけない仕事ではない。50歩100歩の中で、偶々海に沈んだだけだ。そんなことで怒るようなお婆様ではないし、解決策があるのであれば、そちらに力を注ぐのが本来あるべき物だと思う。」
「それよりも、より良い将来を得られる為に何が出来るかを一緒に考えましょう。」
「ありがとうございます。」

 そう言うと、私の体が輝き出した。

「バカ!」
「ごめんなさい。」
「もしかして。」

 そう、リゾナンド様は私を使徒にしてしまった。また強くなってしまった。人間でいられるかな?それにしても、魔王でこんななのに、邪神はどうやって倒したんだろう?いろんな疑問が湧いてきたが、今は、それどころではないので、世界を回る準備を始めた。


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 それから、資料作り、ネックレス作り等で、2週間はあっという間に経っていった。

「はーい。今日は、冒険の大迷宮に潜ります。その前に調査結果を説明します。馬車の中で。」

 私は、馬車の中で、調査結果を丁寧にわかりやすく説明した。そして、冒険の大迷宮に到着。またダッシュで、30階を攻略して、魔弦の弓をゲットした。お姉ちゃんに魔弦の弓を預けてきた。多分、良いように儀式をやっといてくれる筈だ。各家には、皆から説明してもらった。

 別途、ダイアンお兄ちゃんに、ロマリア・ハイムサーディシュに接触して冥王のトライデントを買ってもらった。10億ゴールドで速攻で譲ってくれたそうだ、後で揉めないようで、売買契約書を作成し、ロマリア・ハイムサーディシュが冥王のトライデントを譲渡する法的権限を有しており、その権限に基づき譲渡したこと明記しておいた。ハイムサーディシュ公爵家の印章も使って作成させた為、何かあってもお咎めを受けることは無いだろう。お姉ちゃんに冥王のトライデントを預けてきた。多分、良いように儀式をやっといてくれる筈だ。

 そして、休み直前の休日

「皆さん、来週から夏休みです。私は、神聖王国に行った後で、エルハンザ王国に行ってきます。遠いので、夏休み一杯かかると思います。各自勉強と、鍛錬は欠かさないで下さい。」
「「「「「はい。」」」」」
「よろしい。」

 そう言って、みんなで笑って夏前最後の迷宮にアタックした。夏前に各4迷宮共に40階層を突破している。想定よりも若干早いペースだ。そんなこんなで、終業式を迎えた。

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「ジェシカさん。」

 終業式の後、バルバロッサ様が声をかけてきた。最近、アーサー殿下といるといつも気さくに話しかけてきて、色々な話を聞かせて下さる、宮中の話、ご学友の話、リッチモンド皇弟殿下の話等だ、ご自身の話はご自慢話しかないのと、平民を悪く仰ること、自分勝手なお考え方が多いのは如何ともしがたい部分があり、気になるんですが、まぁ貴族中の貴族ですししようがないことですかね。

「なんですか?バルバロッサ様?」
「ジェシカさん。ジェシカさんは、夏休み何をやるご予定なのですか?受験に向けたお勉強を一緒にしませんか?」

 お勉強のお誘いですか?私受験しないし、逆に問題のポイント教えちゃいそうだしな・・。不味い不味い。どうせ旅で暇がないしな・・。

「ごめんなさい。神聖王国とか、ちょっと世界を回らないといけないので・・・。」
「王族の方とかですか?」
「ええ、巫女様とか、いくつかの王家の方とはお会いしますが・・・・。」
「そうですか、でしたらしょうがないですね・・・。」

 物分かりが良いのは、アルフレッド殿下とよく話されているので、お聞きになられているからだろう。普通、帝国の一大事だし理解していない筈はないだろうし・・・。

「では、来学期に。」
「ジェシカさんもそれまでご壮健で、それまでに、色々ちゃんとしておきますから。」

 リッチモンド殿下の周りでも色々作業頂けるのだろう、バルバロッサ様もリッチモンド殿下に認められているんですね。

「では頑張ってくださいね。」(ニコッ)

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 私は、休みに入って早々、神聖王国に行った。

「叔母様」
「何、ジェシカさん」
「これはどういうことでしょう?」

 私の前には、巫女見習いの服を着た女性達が20人程跪いていた。

 私がおののいていると、1人の二十歳位の女性が前にてできた。
「ジェシカ様。巫女の後継者におなり頂けないでしょうか。」
「巫女見習いの総意です。是非ともお願いします。」

 もう1人の30位の女性が言うと、口々に私に巫女の後継者にとの声が出た。

「うーん。無理。」
「そーよねー。」

 私が言うと、巫女様も同意した。

「何故でしょう。」

 先程の二十歳位の女性が真剣に聞いてきた。

「それは、神の思し召しじゃないからよ。ちょっと待っててね。」

 すると、私は、カグラ神像を取り出し拝んだ。

「神楽君。」
「お婆様。何でしょう。」
「何でしょうって見てたでしょう。」
「はい。皆さんをお連れして結構です。私が説明します。」
「よろしくね。」

 そう言って、戻ると、すぐに皆んなに声をかけた。

「皆さん。カグラ神様に祈りを捧げて下さい。騙されたつもりで、お願いします。巫女様も。じゃ、せーの。って言ったら拝んでね。」
「「「「「はい。」」」」」

 私は、一拍置いて、

「せーの。





って言ったらね。いい。」

 と、言うと、皆んなズッコケた。

「リラックス出来たかな。」

 皆んなの顔が軽く緩んだところで、

「せーの。」

 皆んなで祈ると、


「皆の者、目を開けよ。」

 神楽君が神様らしい。

「皆さん。カグラ神様です。」




 巫女様以外は、目が点だ。

「皆の者。カグラである。今日は、そうそう、ジェシカのことであったな。」

 そう言って、神楽君は、みんなを見回すと、ゆっくり語り出した。

「皆の者には悪いが、ジェシカが巫女になることはない。と言うか、巫女自体なんなのか?神が定めたものでなく、単なる人の仕組みである。今の巫女はそれに、魔神の復活を防ぐ為の儀式を担うものであるが、元来の巫女と言う地位そのものに意味はない。巫女で今まで真に神の声を聞いた者は、初代巫女と、四代目と、今の巫女だけだからな。今の巫女は、ゴシップ好きの神ヘンベロードと、いつも」

 ドカッ

 横から、艶かしい女神が神楽君の右をストレートで殴りつけた。

「お話がそれましてよ。お兄様。」

 扇で口元を隠し、しなしなしている女神が、愛の大神ヘンベロード様。キューピー様の上級神で、神楽君の妹神だ。

「痛いぞ、ヘンベロード。」
「あら、ごめんなさい。」

「でた、」

 と、今の一撃が、無かったように話を続けた。

「要するに、ジェシカには、魔神の封印システムの再構築をお願いしているので、巫女なんて仕事やってる暇がないんだ。」

「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」

 巫女見習いさん達の頭に?がクルクル回った。

「カグラ様要してないし。」
「お兄様、飛ばし過ぎ。」
「そう言う時は、カクカクシカジカを使いませんと、」

 私と、ヘンベロード様と、巫女様にツッコミを受けた神楽君だが、めげずに

「まあ、私がダメって言ったらダメ。」

「横暴でよわよ。私はやらなくていいなら良いけど。」
「お兄様、雑。」
「見習いの子達は納得しませんわよ。」

 神楽君は、それでも話を続けた。

「まあ、なんだ、巫女って言うシステム、より言えば、神殿て言うシステムは、神像が神達に人間の望み、考えを伝える為に重要で、人間を導いていく上で意味はある。が、しかし、その程度の存在でしかない。重要なのは、神像であり、導きであって、神殿でも、巫女でもない。今の神殿が権力を持ち、高級神官の多くが私利私欲の為に、有りもしない教えを勝手に作り、広めていく事は、悪でしか無い。それは邪神と繋がり、世界を破滅に導く行為でしか無いんだよ。だから、真の教えなんて、大した量は無いけど、それをベースに判断して行くことが求められる神官の長たる巫女にジェシカがなってもしょうがないんだ。真に世を思い、導いて行ける人間で無いと。」

「えっ、私って?」

 なんか、ディスられて、むくれる私に、

「ジェシカちゃんて、金儲け大好きっ子だからね。むくれた顔、伯母さん大好きよ。」

 と。私を巫女様が抱きしめてくれた。

「大伯母様、痛いですわよ。って神の世界でも痛みってあるんですね。」

 そんな私達を無視して、

「だからね、ジェシカでなく、他の人間を巫女にした方が良いんだ。ジェシカには、真の教えを確認して、みんなを導く基礎を作って貰うから。」
「は?金儲けしか考えてないと言う私に何を、」
「だからさ、学校を作って、テキストと、通信教育で、」
「私のメリットは?」
「巫女の後継者と言われず、後継者が育てば、その先生として、困った時に使える。」
「うーん。」

「ジェシカちゃん。貴方を神殿第一位の階位にするわ、私と同格だから、神殿は貴方に何も指図出来ないし、何でもできるの。例えば貴方が結婚したい時は、自分で認めれば出来るし、他の誰も結婚を認めることはできない。しかも、巫女以外誰でも結婚も離婚もさせられる。などなど、メリット一杯で、責任無し。どうだ。」

「良いかも。」

「では、私からは、撮影スタジオと、AI入り編集機材セットを送ろう。科学と魔導具を融合させたもので、物としては渡せないが、素材さえあれば作れる魔法だ。OSやプログラミングソフト、音楽作成編集ソフト、オフィスソフト等もつけておいた。AI入れてあるし、脳波アダプタ付きだから、すごい速度で作れるぞ。プロジェクターや、再生機材もつくる魔法もセットだ。どうだ。」

 巫女様と、神楽君がドヤ顔で迫る。

「アチキからは、媚薬と、「わかりました、やります。」」
「あら」

 ヘンベロード様は、何か、巫女見習いさん達に悪いことを言いそうだったので、とりあえず受けておいた。どうせ受けないといけなさそうだったし。

「カグラ様。AIは、可能な限り最新のでよろしくお願い申し上げます。」
「あっああ。」
「プログラミング作成機能付きだけど、勝手に悪さできないものを。」
「はい。」
「キーボードとか、アダプタとか、ディスプレイとかは、」
「好みは重々分かってます。」
「では、わかりました。」

 神楽君と、私の会話をボカンと見てたみんなは訳わからないんだろうと思いつつ、面倒くさいので無視することにした。

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 巫女後継者問題も解決し、巫女様から神罰の杖を預り、エルハンザ王国のリバハイス海に向かうことにした。

 エルハンザ王国に向かうには、先にシードラ王国に寄って、エルハンザ王国行きの船に乗せてもらうことになっている。シードラ王国には、案内役として、第二王子のハッパー王子が、艦隊を率いて来てくれる予定だ。

 シードラ王国には、リーゼンハルト王子の領土リーゼンベルトに作った海運商会の船で行く。シードラ王国と、リーゼンベルトの2つに海運商会を作り、それぞれに造船商会等を作っている。
 商会は、全額私の出資で、シードラ王国の商会への出資は王家のみ知っており、リーゼンベルトの商会への出資は、帝国政府には知られていない。船は最新型で、共に輸送商会でも使っているマジックバックの巨大版を大量に積んでいる。効率は輸送商会と同様20倍だが、元々の輸送力が違い、既に海運業を2社で寡占している。シードラ王国、リーゼンベルト領と契約しており、緊急時には、軍に貸し出すことで、兵器の常時搭載を認められている。兵器の性能は、レールガン級では無いものの、帝国最新鋭軍艦の数倍の射程と、破壊力を有し、小型の為少人数での運用と、長期間の高速運航、旋回力も兼ね備え、結界による防御力等も持っている。両商会とも30艦隊以上を運航しており、この艦隊の登場で海賊船団は崩壊し、海賊になるなら、商会船員になる様になっている。全船のコアは私が作っており、4段階で機能停止権限が与えられ、船長、艦隊提督、商会主、私となっている。商会主までは船長以上は知っているが、私がマスターキーを持っていることは、商会主も知らない。

「お嬢様、もうすぐシードラ王国です。」
「エリック、ありがとう。」

 私が今乗っている艦隊は、バラード海運第一艦隊の旗艦ジェシカ。船の名前に人の名前を付けるなと言う感じだが、登録されたら変えられない。恥ずかしい限りだ。この船は、テスト艦で、他の標準艦を作る為に改造しまくった船。搭載量は、標準艦の3倍の60倍、主砲はレールガン6門、40門ある大砲の射程と威力は、標準艦の2倍あり、スピードも4倍出る私が巫女様の薬の素材巡りも使った船だ。船員達も、出世して他の船の艦長や、艦隊提督になった半数を除けば、旅に付き合ってくれた仲間が揃っている。リーゼンベルトの士官も、私の護衛として10人程付き添ってくれている。

「うーん。もうすぐ、シードラ王国の入口か。」

 私が、伸びをしていると、

「正面、艦艇300、シードラ王国と、シーランド商会の連合艦隊です。主砲をこちらに向けています。」
「は?」

 その声を聞いて、正面を眺め私は目を疑った。商会の標準艦、シードラ王国の戦艦、巡洋艦、駆逐艦、レールガン艦等、多分シードラ王国、シーランド商会の八割以上の艦艇が並んでいる。勇壮かつ圧倒的に艦隊が目の前の水平線を埋めている。私が、ポケーっとしていると、艦艇の砲門が光った。私は、咄嗟に、

「デスウォール」

 最強結界と呼ばれる魔法を唱えた。レールガンをも一瞬で無力化し、無に帰す結界。物理的に、生物的に無に帰す為、死の壁デスウォールと呼ばれる、神話の中で一度だけ出たことがある結界魔法だ。

 砲弾が次々と結界に飲み込まれていく、結界に触れた瞬間消え去る為、何の反動も無く消えてくかんじだ。

「何なの・・・・。何故私を襲ったの?」

 シードラに恨まれることは・・・・無いわけでは無いけど、この政治状況を踏まえた中で襲われるいわれは無いはずだ。

「エリック、何故襲われたと思う?」

 エリックは、考えた上で、二つの回答をだした。

「かんがえられるのは二つあります。当然お嬢様を狙って襲ったわけでは無いでしょう。そんな、命を捨てる・・・・、いや、オホン。そんな非礼な真似をするとは思えません。一つは、海賊と違えた、これはそれ程可能性が高くありませんが、最近、我が商会を装った海賊が発見されました。戦力としても、何もかも劣っており、細かい悪さをしていたので壊滅させましたが、それと間違えた可能性。もう一つは、帝国軍と間違えた可能性。」

「帝国軍??私は帝国軍人だけど何か・・・。」
「約1週間前、フォーフガイム大佐率いる帝国第21船団がシードラを襲った事件がありました。これは、フォーフガイム大佐の暴走で、外征で功を得て出世したいとの願望からです。」
「そんな、・・・・一軍人が勝手に戦端を開いたら、軍法会議で極刑は免れないかと思うけど、」
「そうです。ですが、大義名分を得て緊急的外征で功績を挙げ、出世したものが居れば、それを模倣するかと・・・」
「誰よそんな面倒な功績を挙げたのは・・・。」
「お嬢様ですけど・・・。えっ・・・。」
「ですが、この場合であれば、先方は白旗をすぐあげる筈です。今ので、お嬢様が乗船されているのは丸わかりですし、」

 そう言われ、シードラ艦隊を見ると大きな白旗を掲げていた。

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 「姉御、申し訳ございませんでした。」

 そう言って、ジャンピング土下座を全員していた。

「ハイハイ、良いわよ。何の被害もなかったから・・・。それで、事情は聞いたわ、帝国軍が襲ってきたって。」
「そうです、6日前にバイモンド伯爵公子ドラムスを襲った報復と言われて、フォーフガイム大佐以下の船団が商会の船団を襲って来ました。3日かけ全船舶鹵獲して、全員捕らえております。国王が、リーゼンハルト領事館のハリス子爵と話しましたが、知らぬとの事で、調べて連絡すると言われたのが、昨日。追加攻撃に備えて国境を固めていたところ、強力そうな戦艦がきたので、砲撃を・・・。すみません。」

 そうなの、帝国軍が迷惑かけたのか、とりあえず収集を図らないとね・・・。

「わかったわ、その、ドラムスと、フォーフガイム大佐の元に連れてってくれるかしら、あと、ハリス子爵も呼んでおいて下さる。」
「はっ。」

 そう言うと、国境警備の艦隊を置いて、大船団でシードラの王都の向かった。

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 私は、牢獄の檻を挟んで、ちょび髭太っちょ軍人、もといフォーフガイム大佐と相対した。

「貴殿がフォーフガイム大佐で間違いないか?所属と名前を確認したい。」
「娘、貴様は?」
「私は、ジェシカ帝国軍准将だ、待命中だが、一応リーゼンハルト殿下より、リーゼンベルト領軍及びリーゼンベルト艦隊の代行指揮権を与えられている。」
「貴様が、リーゼンハルト殿下の愛玩具か・・・。」
「愛玩具?」
「そうだ、リーゼンハルト殿下が連れていた、愛玩具としての功績で、殿下の功績を全て与えられたという。私を出せば、私のいや、ドラムス様の愛玩具として飼ってやるぞ・・・。」

 そう下卑た笑いをしていた。

「姉御、こいつを殺して良いですか・・・」
「私にやらせて下さい。」

 同席していた、シードラの将校達が殺気立ち、すぐにでも殺しそうな状況だ、

「まて、」

 私は、そう言って将校達を制止すると、フォーフガイムを睨みつけ

「フォーフガイム分かっているな、私は准将であり、リーゼンハルト殿下の臣下であると、リーゼンハルト殿下は、皇族であらせられるので、帝国軍直轄扱いだ。貴殿は、階級上位である帝国軍准将に対し侮辱し、リーゼンハルト殿下をも愚弄した。上位者への侮辱は罪であり、皇族への侮辱はより厳しい罪である。」

「ウヌヌ、だが小娘、侮辱罪なんぞ適用された例はここ数十年起きていない。そんなものを貴様が適用できるわけ無かろう。」
「馬鹿が、侮辱罪は慣例として本人へ直接聞こえない所で行っているので適用されていないだけで、貴殿は、直接本人を侮辱した。加えて、皇族の臣下に向かって主人を侮辱した。共に、過去の歴史を紐解けば適用される事例だ。抗弁はあるか。」

 私の強烈な声に、フォーフガイム大佐は、顔が引き攣り、大きな汗をかき出した。

「何も答えない様だな・・・。とりあえず話しを戻そうか、貴殿の所属をのべよ・・・。」

 フォーフガイム大佐は、小さい声になり

「帝国東方艦隊第21船団提督だ。」
「東方艦隊か・・・。」

 東方艦隊は王弟派つまり、バルバロッサ殿下の父上である王弟殿下を中心とする派閥が強い艦隊だ。基本武断的で、交戦的。周りの事情を無視して、自己利益を優先するものが多く、貴族出身の軍人が多いのも特徴だ。

「東方艦隊ということは、貴殿も貴族の生まれか?」

 何を勘違いしたか、フォーフガイム大佐は、沈んだ顔から、光明を見出した様に

「バイモンド伯爵家分家である、リグーラ騎士爵家の出身です。貴族家出身として、慈悲を賜れれば・・・。」
「貴族であれば、それなりのことを考えなければな、この面談の後にでも対応させよう。でだ、誰の指示で何でこの様なことを・・・。」
「いや・・・。」

 笑顔に変わってきているフォーフガイム大佐であったが、少し不味そうな顔をしだした。

「そうか、他国の者がいると厳しいか、みんな少し席を外してくれ。」
「ですが、」
「私なら大丈夫だ、知っているだろ・・・。」
「そうですな・・・。」

 シードラの将官達は、予定通りすごすごと出て行った。中には、軍服姿のシードラ駐在のリーゼンベルト領領事館担当武官が数人だけとなった。

「これでよかろう、彼らは、リーゼンベルト領の武官達だ。帝国軍機密として取り扱おう。」
「ありがとございます。本作戦は、バイモンド伯爵の要請で、東方艦隊司令長官リーフェンベルク中将のご命令で、東方艦隊司令部が中心になって行っている作戦で、私達は先発隊として出兵しております。帝国司令部に止められる前に完遂する必要がある為、明日には東方艦隊主力部隊が到着し、シードラを蹂躙する予定です。」
「は?」

 私は耳を疑った、シードラに攻め込むと、皇帝の下知無しに、・・・・・。ってことは多分、勝てば元々指示を出したことにし、負ければ、東方艦隊が勝手に侵攻したと整理する予定か・・・。えげつない・・・。

「私は待っていれば英雄として、将官に昇進だ・・。」
「馬鹿か?」
「は?」
「東方艦隊で勝てるわけなかろう。」
「何を、帝国四方艦隊の一つ、東方艦隊がたかが地方国家に敗れるとでも?3割は最新型が配備されているんだぞ。」

 こいつは、分かっていない・・・。

「帝国海軍の最新鋭軍艦は、リーゼンベルト領軍の最新鋭軍艦の二世代前の量産型で、シードラの軍艦は、リーゼンベルト領軍と同クラスの性能を持っている。つまり、帝国軍の最新鋭軍艦はシードラの二世代遅れているんだよ。シードラ商会はもう一世代先の性能があり、今回の戦には徴用されることが決定している。リーゼンベルトの軍を使えばまともに戦えるが、東方艦隊では徴用出来ない為、蹂躙されるだろう。」
「はっ?何を言う、帝国海軍の最新鋭軍艦が、そんな他国と」
「それが事実だよ。帝国の軍事予算の大半は貴族に流れている。帝国艦隊はそれが酷い、技術開発も進まないし、技官もプライドが高いだけで、民間や他国から学ばない。予算的には、シードラ艦隊のと、帝国艦隊では、一隻あたりの生産コストは3倍だ。民間に発注すれば、2割位で、同仕様の軍艦を生産できる。」
「そんなはずは…」
「シードラ艦隊の予算と見比べればわかるであろう。東方艦隊にそんな諜報能力は無いかと思うが。」
「何を言う、帝国軍屈指の諜報機関シュターゼンから情報を」
「シュターゼンか?シュターゼンの予算の半分、外国諜報予算の大半は、貴族に流れ、国内諜報にしか予算は使われていない。帝国が全て本気になったら世界征服しているだろうから、この位が世界平和には丁度いいだろうが。」
「うう、こんなのこんなの、帝国軍の矜持が。」
「いいだろう。戦って破れるがいい。」

 そう言って、私は牢獄を出て、ドラムスの所に行った。

「リバーリス帝国軍中尉です。ドラムス殿ですか?」

 ドラムスは、手足を縛られ、牢内に転がっていた。私は、貴族の相手は面倒なので、伯爵家の分家のリバーリス中尉にお願いした。

「そ、そうだ。イモンド伯爵公子ドラムスだ、すぐに出せ。」
「少々お待ち下さい。身元と、経緯の確認を」
「は?お前は東方艦隊の者では?」
「東方艦隊?何故東方艦隊がこの国に?私はたまたま、この国を訪れた際に、犯罪者が、帝国貴族を名乗っているので、確認して欲しいとのご要望を受けて参ったのですが。」
「東方艦隊は?」
「東方艦隊?が何故貴方助ける必要がある?そもそも、貴方が捕まっていると帝国に通告したのは、小官に対してのみ、東方艦隊に伝えてないし、貴方のご実家と仰るバイモンド伯爵家にもお伝えしていない。どう言うことか教えて頂けるか?」
「いや、」
「すまないが、帝国軍だけにして頂けないか?」

「「「「「はい。」」」」

 そう言うと、シードラの兵士達は出ていった。

「ドラムス殿。小官も、一応伯爵家の分家の出。帝国貴族の末席におりますので、帝国貴族の恥部を他国に明らかにする気はございません。外交上の貸しを作りたくないこともある。正直に話して頂ければ、帝国までお連れできるでしょう。帝国にさえ戻れば、帝国貴族の貴方なら・・・。」
「そうだな。・・・・私は特殊任務で、この国に来た。東方艦隊司令リーフェンベルク中将と、父とで、シードラと戦端を開き、シードラを帝国の支配下に置く作戦だ。」
「シードラを、それであなたは?」
「私は、不法逮捕をされその報復の為に、父が、東方艦隊に依頼し、出兵。」
「その件は、王弟殿下は?もしそうであれば、そちらから手を回し・・。」
「殿下には話を通してないはずです。」
「中将閣下と、伯爵閣下の独断と言うことですか?」
「そうだ、だが、このプロジェクトは皇帝陛下に称賛頂けるはずだ。戻れば英雄だ。・・・・だが、東方艦隊は遅れているのかのう、本来なら先遣隊がまずシードラを急襲し、私は助けられているはずだが。」
「あぁ、あの艦隊ですか?民間船を襲い、民間船に撃退されたと聞いてます。この後、その提督と名乗る者とも面会しますが、民間船に撃退されたとすると、帝国軍の顔に泥を塗りたくる行為なので、関わっていたもの達は、相応の罰を、公か裏かで受ける事になりますが、ドラムス殿は関わられていたということで良いのですか?」
「そ、そうか、私は知らぬ。それでいいか?」
「良いかどうか分かりませんが。で、貴方の罪状は強姦未遂ですね?」
「ただ、旅行中に、羽目を外してしまった。それだけだ。帝国のつもりで、」

 帝国貴族の大半は退廃し、選民意識が高く、モラルを持っていない。強姦未遂を羽目を外した位でするのは、駄目だろう。

「分かりました。シードラとは、こちらで話をつけます。明日には、帝都に向かう船に乗り、帝都の伯爵家邸宅で開放する流れになります。基本的に、シードラには永久入国禁止になりますがよろしいですか?」
「分かった。そうだ、」

 ドラムスは、ニャっと笑みを浮かべた。

「あの軍属の娘を、私に付けてくれないか?帝都まで、悪いようにはしないから、」

 その言葉に、皆んなの目が変わり、プチンと音が聞こえた様だった。

「あのなあ、ドラムスどの。貴殿の身分は確認されていない。帝国の恥をシードラで広めない為にこっちはやってるのだ。そんな、馬鹿なことを言い出すと、シードラで死刑にするぞ。」
「リバーリス、構わん。東方艦隊を潰せ。不正の資料も集めさせて、バイモンド伯爵家も併せて潰しておけ。このゴミは、身分不詳で、不明を恥じて自害されたと、帝都には伝えておく。」
「あっ、ハリス子爵。」

 後ろから、トコトコ出てきた見るからに武闘派のヒゲ親父が全てぶち壊す様に言ってのけた。

「ドラムスだったな。俺は、バッファロー・ハリス。帝国子爵で、シードラ駐在リーゼンベルト領領事だ。リバーリスは、リーゼンベルト領軍所属の騎士見習いだ。お前が、軍属と言ったのは、リーゼンベルト領軍司令官代理殿だ、上官、加えて帝国准将に対し、軍属扱いしたら、帝国軍人はどう思うかわかるよな。」
「は?帝国准将?司令官代理?私は次期伯爵だ。単なる貴族でもない軍人に、平民になんぞ、何をしても構わんだろう。」
「閣下そうらしいですが、」

 選民主義者らしい対応にびっくりしたが、

「そうですか。因みに私ってリーディング殿下の軍務補佐官ですけど・・・。」
「軍務補佐官・・・。」
「軍務補佐官を軍属扱いって、完全に皇室に喧嘩を売っているってことでしょうね。」(ニコッ)

 ドラムスは、あうあうしてしまっている。

「でも、揉めるのは不味いので、これでどうでしょう。ドラムス殿は、自分かシードラの法を知らずに法を犯して逮捕された。ドラムス殿はシードラ法での罪を認めた上で、リーゼンベルト領事館が、シードラ王国と協議し、国外追放と、罰金で合意。罰金は、リーゼンベルト領事館が立て替える。今回の対応に対し、ドラムス殿は、事実関係に、嘘偽り無く、今回の対応に対し、リーゼンベルト領事館と、シードラ王国に、感謝している。と書面でリーゼンベルト領事館と、シードラ王国に提出して下さい。そうすれば、問題にならない様に取り計いましょう。」(ニコッ)
「分かりました。」

 そう言うと、ドラムスは、書類を直筆で認め、署名した。

「確かに、確認しました。ドラムス殿は、国外追放になりますので、今からリーバリスが帝都までお連れします。リーゼンベルト領の船を用意しておりますので、それで一度リーゼンベルト領都に行き、その後、定期船と定期馬車で、帝都まで行くこととなります。贅沢旅ではございませんがご理解ください。」
「わかりました。」

 気力を失っているドラムスを冷めた目で見つつ、私は、はっきりした声で指示出した。
「リバーリスさん。ドラムス殿を領事館にお連れして下さい。」
「はっ。」

 私は、部下達を連れて牢屋を後に、シードラ王宮の謁見の間に向かった。

「ジェシカ殿、お久しぶりじゃのう。」
「シードラ国王陛下。お久しぶりでございます。」
「父上、師匠にその口のききかた、シードらしいです王国が潰されますぞ。ねえ師匠。」
「ねえ師匠って、アリーザン王子。今は外国の場です。ちゃんと今まで勉強されてなかったのですか?私が真面目にシードラ王国潰そうと思えば、シードラ王国が拡大する前に潰してますよ。」
「アリーザン。そうだぞ、わしもこんな言い方してるが、膝が震えて、脇汗がドバドバ出てるからのう。」

 そう言われて、国王の顔を見ると、青みが掛かり、微妙に震えている。
「国王陛下、まずは問題を片付けましょうか?」
「そうじゃな。アリーザン。」
「はっ、今回の帝国貴族の犯罪に対しては、国内刑では罰金及び、懲役刑となるが、罰金及び永久入国禁止でどうでしょう。」
「結構です。罰金の金額は、事務レベルでの調整でよろしいか?」
「はい。」

 まず、一つ目が片付いた。元々、事務レベルで握っていた話だ、問題は次だ。

「次に帝国東方艦隊第21船団についてだが、正式な軍事行為としては弱すぎるとして、海賊行為として処理すれば良いか?」
「すまない。」
「で、軍人達は、」
「確か、」

 私は、シードラ法を思い出した、昔リーゼンベルト殿下に着いて、駐在していた時と変わらなければ、

「確か、海賊は、殺人を犯してない限り、犯罪奴隷となる筈。全て買取ましょう。」
「結構な額になる筈ですが、大丈夫ですか?」
「昔、私が皆さんにプレゼントしたクラスの武器で何本位ですか?」
「1隻で2本で如何でしょう。」
「ではそれで、今回は6隻でしたか?」
「そうですね。12本となります。」
「では、」

 そう言うと、私はマジックバックから魔剣を取り出した。謁見の間の人々は、目が点になっている。
アリーザン王子に手渡すと、

「アリーザン、ワシに早く見せい。」
「はっ。」

 アリーザン王子は、すぐに国王に剣を持っていくと、国王は、子供の様に剣に見惚れていた。

「ワシは、自分のが欲しかったんじゃ。皆んな貰ってズルイと思っていた。流石に、この歳ではついて行けなかったからな。他にも同世代の者達が欲しがってたから、皆んなに分けてやろう。」
「それは良かったです。で、国王陛下。」

 私が笑顔から真剣な顔に戻すと、国王も笑顔を捨てて、真剣にこちらをみた。
「帝国の教育システムを導入されませんか?」
「帝国の教育システム?」
「父上、あの最近一新させたと言う教育システムです。」
「あぁ、教育レベルが一気に上がったと聞くが、輸出していいのか?」

 国王は、私を疑った目で見た。

「多分大丈夫です。私が作ったので、」
「えっ、ジェシカ様が。」
「来年度に更新する予定なので、そのシステムを含めて、我が商会から、販売させて頂きます。」
「勝手に我が国に売って大丈夫なのか?仕組み、ノウハウだけでも莫大な価値が、」
「大丈夫です。ですが、対価として、頂きたいものが。」
「何ですか?師匠。」
「多分、東方艦隊の馬鹿達が、今頃国境あたりで、貴国に喧嘩を売って、ボコられてる筈ですので、捕虜を無償で」
「「「「「「は?」」」」」」

 謁見の間が固まった。

「多分、私を襲った弟子達が、警戒してたので、貴国の損害は限定的かと。」
「帝国として、海賊行為と扱って良いのですか?」
「帝国として、ボロ負けなんて耐えられないでしょう。」
「それなら、」

 国王は、一拍間を置いて、

「我が国が恐れるのは、ジェシカ殿だけです。ジェシカ殿が妥協を示して頂いているのであれば、私は何も言えないでしょう。被害状況によりますが、それでいいでしょう。」
「陛下のご決断に感謝します。」

 と、話していると、バタバタと、1人の騎士が駆け込んできた。

「陛下、恐れながら申し上げてます。」
「なんじゃ。」
「ハッパー王子から急電。帝国東方艦隊120隻が急襲、我が軍が迎撃し、帝国東方艦隊を殲滅。捕虜13271人、鹵獲72隻。我が軍被害、小破3隻、死者0人、軽症者35人。以上。」

 国王は、報告を聞き満足した表情で、

「ハッパーに伝えよ。大義。帝国との和睦は済んだ。彼奴等は海賊だ。奴隷としてリーゼンベルト領に売り渡した。リーゼンベルト領に連れて行けと。」
「畏まりました。」
「陛下、では私は帝都と、リーゼンベルト領に連絡を入れてきます。」
「ところで、ジェシカ殿は何しに、シードラまで、」
「あっ忘れてた。」

 ここに来た目的を忘れていた。

「シードラ王国は、エルハンザ王国と交流があるとお聞きしております。帝国とは交流がない為、シーランド商会の船でエルハンザに行く為に寄ったんです。」
「シーランド商会か、ジェシカ殿なら問題ないだろうが、かの国は武力が名刺代わりでそこら中で内戦を行っている。護衛に強力な猛者を連れていく事をお勧めする。ジェシカ殿に勝てる者はいないと思うがな。」
「はい、シーランド商会の1個武装船団に、私の船をつけていく予定です。」
「そうか・・・。今日中に紹介状を書いて領事館にお渡ししよう。」
「ありがとうございます。ではこのへんで」
「そうじゃな・・・。」

 私が、謁見の間をでると・・・「ウワッフォー。やったー、魔剣じゃー。」「皇帝陛下ありがとうございます。」「そうじゃろー。」と、老臣達と剣を貰って喜ぶ声が聞こえてきた。

「あの爺さんたち。」

 私は笑みを零しながら、領事館に向かった。領事館では、部下達が準備を進めている。私が、戻ると部下達が集まってきた。

「東方艦隊は壊滅した。捕虜は全て買い取り、リーゼンベルト領に護送予定だ。明日出港については変更なし、準備をそのまま頼む。」

 私は、執務室に入り、リーゼンベルト領に連絡を取った後、報告書の準備に入った。神楽君に貰った編集機材セットを出した。いわゆるパソコン部分だけだ。パソコンを立ち上げ、脳波アダプタを付けた、カチューシャみたいなもので、小型だが、私の脳に直接信号を送り、やりとりする。慣れるのに相当時間がかかるが、前世では開発から携わってきたから、普通に使える。マウスやキーボード、ディスプレイでの入出力の約千倍のスピードでやりとりが出来る。これに。攻略本のパッドもリンクさせると、AIが私の狙った内容を私ぽく整理し、文章に落としてくれる。これを手書き風プリンタで印刷すれば、あら不思議、報告書がすぐ出来る。私は久しぶりのパソコン作業が楽しくて、攻略本から、東方艦隊幹部の悪事や、今回の敗れた原因分析、再編案等まで作り、果ては内部用と外部用に分けて30分で書き上げた。パソコンを片付けると、

トントン

 と、ドアを叩く者がいた。

「パッドル少佐です。」
「どうぞ、空いてます。」
「はっ。」

 そうやって入ってきたのは、25才の青年将校、痩せ型の黒髪、子爵家の分家の商会の息子として生まれて、学生時代に商会が盗賊に襲われて潰れ、天涯孤独になったので、子爵家と学校の推薦があり、帝国騎士団に入ったと言う男だ。実質貴族の後押しなく、実績だけで25才で少佐にまで上り詰めた天才。出世を疎まれ、シードラ王国リーゼンベルト領事館付き武官として派遣されたと聞いている。攻略本を調べても事実みたいなので、事実なんだろう。私を、妹の様に扱う良い人だ。

「ジェシカ様、お疲れ様のなかすみません。報告書でどこまで書くか相談に参りました。」
「そうか。」

 そうやって見せて貰ったのは、簡単な二枚紙の報告書の概要。私が外部用に作ったのと、殆ど変わらないストーリーだが、私のより洗練されている。しかも細かい事実を知らない中で、推測だけで、ここまでやっている。化け物だ。素直に思う。私は、外部用の報告書をパッドル少佐に渡した。

「一応作りました。細かい事実は、別途、リーディング殿下経由で、リッチモンド殿下にお渡しするつもりです。」
「拝見します。」

 パッドル少佐は、凄い速度で読んでいく。3分程で読み上げ、

「完璧です。私にこのスピードで、ここまでの完成度のものは出来ません。お見それしました。」
「ストーリーは、少佐のものには勝てません。貴方のストーリーに修正して下さい。どのくらい掛かります?」
「朝までには。」
「書き上げたら、起こして下さい。確認してから、出立します。」
「はっ。あと、」

 パッドル少佐が、私を見つめ直した。

「何ですか?」
「ジェシカ様は、一応、帝国の重鎮です。若いからと言って、無理し過ぎないで下さい。」
「分かりました。」

 そう言うと、私の報告書を持って出て行った。私は、実家に電話した。

「はい。ガルガンディ商会です。」

 出たのは使用人のローランディアさんだ。

「もしもし、ローランディアさんですか?ジェシカです。おねーちゃんいますか?」
「ジェーン様ですか?  ジェーンさま~」

 ローランディアさんが叫ぶとドカドカ音が聞こえて、受話器の空いてが変わった。

「はい、ジェーンです。」
「おねーちゃん。」
「ジェシカ。どうした?」
「あのね、カクカクシカジカで、書類を私の部屋にある印刷機に送るから、袋に入れて、リーディング殿下に渡して頂けますか?」
「へ?リーディング殿下に?わかったけど、中身はみちゃダメなやつね。」

 少し真剣でドスの効いた声で聞いてきてくれたので、

「ごめんなさい。明日朝に3種類送るから、よろしく。」
「はいよ。」
「お土産買ってくから。」
「楽しみにしてるね。旦那とともに。」
「義兄様のも買ってきます。」

 そう言って、受話器を切った。そう、私の部屋にはリモートプリンタが置いてあって、電話回線を使ってデータを送って印刷ができる。言わばファックスみたいなのか出来るのである。

 私は、内部用報告書5部と、リーディング殿下のお手紙を送って、朝起きてから、パッドル少佐の報告書を確認してから、外部用の報告書を5部送って、エルハンザ王国への船に乗った。

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「お嬢、見えてきましたぜ、あそこの岬を越えて、曲がっていけば、エルハンザのリバハイス海です。」

 私の船旅は、まさに順調にきた。風の魔法を使い、追い風を起こし、エルハンザ王国まで2週間かかる航路を2日で着いた。エルハンザ王国の領海に入ってからは、速度を緩めたが、リバハイス海まで2日間、その間も平穏無事に進んだ。ゆっくり探索をらやるぞ、と思っていた矢先

「あー。岬の先に多数の船が。」

 岬を抜けると、無数の船団同士が睨み合っている状況だった。スピードに乗っていた我が船団は、その真ん中に向けて、ススーっと船が進んでいった。

「通り抜けます?」
「いや、」

 攻略本で見ると、まさにこの下にナイフが沈んでいた。はー。

「この下に潜るから、船団を止めておいて。」
「「「「はっ」」」」

 船員達は素早く、停留する為の作業にかかった。船が止まると、左右で睨み合っている船団から船が一席ずつ近づいてきた。私が潜水用の軽く濡れても大丈夫な服に着替えて出てくると、双方の使者らしきおじさん達が船に乗船してきた。

「この船団の代表者をだせや。」

 怒鳴り散らしているのは、赤い鎧を来た、髭もじゃマッチョだった。

「わたくしですが。」
「あーん。女か、女風情が代表者、舐め腐っているのか。」

 と、私に怒鳴り返している。田舎のお山の大将完璧半端ない感じだった。そうすると、反対から、青い鎧を着た細マッチョを先頭とした、青鎧集団が乗ってきた。

「オホホホ。小笠原のとこの寿治郎じゃないの。この船団のあんた達の?」
「ガハハハ、近衛大麿か。お主のトコじゃないのか?」
「知らないわよ。ここの代表者は誰よ。」
「あの、餓鬼だとよ。しかも、女が代表なんて、世も末だよ。女何て、家で子供を作って、言われた通りにしてれば良いんだよ。」
「そうですね。女なんて、飾っておくか、家事をやらせておくもので、表に出るなんて優雅じゃないわね。」
「話し合うじゃぬえか。」
「そうですわね。」

 そう言いつつ2人は笑っていた。凄くムカついたけど、とりあえず退散してもらう様に話しかけてみた。

「お二人とも話が合うので有れば、睨み合いはやめて、降りて行って頂けます。仕事があるので。」

 そう言うと、髭マッチョが、怒鳴りながら殴りかかってきた。

「うるせい。おなごが、しゃべるな。」

 はっきり言って遅い。と思いつつ。ことを荒立てるのもなんなんで、避けると、

「避けるな。」

 と叫びつつ、どんどん殴ってくる。うちの船員達は、髭マッチョは、私の相手にならないと分かっているので、笑いながら仕事を続けていた。アイツら

「オーホホホホ。おなごにかわされるなんて、小笠原も落ちましたね。おりゃ~」

 そう言って、火系の魔法を次々と打ってくる。船に引火するとまずいので、とりあえず、サクッと打ち消していく。

「なんじゃ、近衛も口だけじゃのう。」

 2人がムキになって攻撃してくるので、面倒くさくなってきた。

「これは、正式な攻撃ととって良いのですか?」

 そう言うと、船員達は目を覆った。私変なことを?

「舐めんなてめえ、襲撃とも、戦線布告とも取りやがれ、こっちは内戦中なんだよ、頭お花畑かゴラァ」
「ふざけるのも、やめてくだされ。皆のもの。あの女を八つ裂きにするでおじゃる。」
「全員やっちまえ。」

 そう言って、全員で攻撃してくるが、船員達は、作業を続けている。アイツら

「わかりました。小官は帝国准将ジェシカ。エルハンザ王国の帝国への宣戦布告を受諾しました。」

帝国の名を聞いて、全員が止まった。私は、全員に拘束の魔法をかけた、一瞬で制圧。左右全艦隊の将兵全員も合わせて拘束した。やっと船員達が寄ってきて、拘束し鎧武者達をそれぞれの端に集めた。

「どうしやしょうか?」

 ヤクザ顔の良いやつなので、リーゼンベルト領に飛ばされたと言われるブリタニカ中尉が、代表して聞いてきた。

「全くもう、私が1番階級が上だからって、面倒くさい。とりあえず、両軍の代表者を連れてきて、その間に、私は仕事をするから。」
「「「「「「「へい。」」」」」」」

 そう言うと、船員達は、それぞれ仕事についていった。私は、攻略本を急な潮の流れで今の幻惑のナイフの位置を確認した。船が若干流れたが許容範囲内だ。

「リデリオン」

 私が呟くと、ドドドドと轟音と共に、目の前に半径30メートル位の筒状穴が出来ていった。それをみた、鎧武者達は目が点になり、船員達は、海流の変化に対応して流されない様に次々と両陣営の船を繋いでいった。

「みーつけた。」

 私は、海底で岩に刺さった幻惑のナイフを見つけた。とりあえず、水深が40メートル位だったので、ジャンプして飛び降り、ナイフを拾って、ジャンプで戻ってきた。それを見ていた鎧武者達は、化け物を見る目で私を見た。

「ちょっと汚れたから着替えてくるね。」

 居づらかったので、そう言って、私は船室に戻った。私の船室は、空間魔法で、小ぶりな一戸建て位の大きさになっている。とりあえず、シャワーを浴びて、冬用の軍服に着替えて、お茶を飲んでいると、

トントントン

「はーい。」
「ブリタニカです。両陣営の棟梁、幹部を引っ立てました。」
「わかった。行くわ。」

 デッキには、赤青総勢20人程度鎧武者達が、拘束されて、並んでいた。その前に、椅子が一つ置いてあった。私は、そこに座った。ゆっくりと。

「私は帝国軍ジェシカ准将です。まずは申し開きを聞きましょうか?」

 赤鎧の棟梁らしい、髭デブが口を開いた。

「ワシは、小笠原家当主左大将時能である。何故いきなり、我らを捕らえた?騙し打ちは武人として恥ずかしくてないのか?」

 続いて、青鎧の棟梁らしい、細い禿げが続けた。

「そうじゃ、麿は、近衛家当主左大臣近衛近麿じゃ、優雅でないのう。」

 づついて鎧武者達がぐちぐち言ってくる。

「はぁ、貴方方の見解はわかりました。であれば、いきなり、私に殴りかかってきたじゅうじろうさんと、魔法を放ってきたおおまろさんについては、どう説明されるのですか?シードラと帝国の国旗を掲げた外国船に乗り込み、代表者である私を、罵倒した上で、いきなり攻撃し、更に私に避けられ、防がれたからと、集団で私1人を攻撃し、話し合いにも応じず、ハッキリ宣戦布告と叫び、攻撃を続けた。このことをどう説明されるんですか?」(ニコッ×5)

「あっ、いや、寿治郎。」
「親方様、あの、いや、」
「ハッキリせい。」

 髭マッチョが、動転して返せないでいると、

「大麿事実か?」
「申し訳ございません。宣戦布告は寿治郎で、先に手を出したのは寿治郎ですが。」
「大馬鹿者が。」
「女がこんなに強いなんて、ありえないですよ。」

 大麿の言葉に、寿治郎が

「そうだ、あり得ない。ちゃんと戦えば。」
「そうだ、今は捕まっているが、我らがおなご風情に。」

 と、また、男尊女卑甚だしい言葉が飛び交い始めた。

「わかったわ。全員相手してあげるから、きなさい。」

 そう言うこと、私は、全員の拘束を解いた。鎧武者達がゆっくり立ち上がるときに

「誰か1人でも攻撃始めたら、帝国への宣戦布告とします。オーケー?拘束魔法は使わないから。」

 鎧武者達は、ニヤッと笑うと、一斉に斬りかかった。

「殺せば、宣戦布告の証拠なんぞ残らんよ。」

 まず、斬りかかって来たのは、左大将小笠原時能。私は、刀を白羽どりで抑えて、回し蹴りで後頭部を蹴り抜き意識を奪った。

「次、」

 そう言って、次々と、鎧武者達を倒して行く中、大麿が動こうとすると、

「動くでごしゃらぬ。この方には、我らが全力でも勝てぬ。近衛家として、一切争ってはならぬ。」

 大麿は、震えながら

「はっ。」

 と、座り直してた。そのうちに、

「おーわり。」

 そう言って、私は、赤鎧武者達を全て倒した。

「近衛近麿殿は良いのですか?」

 私の問いかけにも、凛とした顔で

「当近衛家は、代々魔導師の家柄、貴殿が人間離れした強さをお待ちなのはよう分かりまする。仮に貴殿がおりゃんでも、船員の方々も半端な強さじゃおはりません。戦うだけ無益でおじゃる。それも分かりゃん大麿や、小笠原はあほうじゃ。大変すまなかったのぅ。」

 と深々と頭を下げた。

「小笠原の馬鹿たちはせんないが、我が国は帝国に戦争の意思は無い。申し訳ないが、小笠原たちと、この大麿、そして、わしゃの首でゆるしたもれ。」
「御館様、・・・・・。」

 大麿は、覚悟を決めた顔を、近麿に見せていた。周りの青鎧武者達も、死の覚悟を決めた顔をしていた。

「わかったわ。近麿殿、貴方は、貴国に必要な人の様ね。私は、帝国軍人ですが、侵略の為に来たわけではございませんから、貴国の占領や、殲滅は望んでいません。しかしながら、帝国の顔を潰される訳にもいかない立場におります。貴国として、どの様な落とし所にするか、ご検討頂ければ、それで決めるわ。よろしいですこと?」
「ありがたいでおじゃる。麿も、痛いのは嫌いでおじゃるから、痛くないなら内裏で、大統領と話してお応えするでおじゃる。」

 そう、悪ガキの様な顔をした。

 2日後、内裏からの勅使として近麿が、私が逗留するシードラ王国大使館にやってきた。

「お待たせしたでおじゃる。」
「近麿殿、お待ちしておりました。」
「早速ですが、大統領との調整結果をご説明するでおじゃる。」

 そう言って、説明始めた。簡単に言えばこんな内容だった。
・赤武者、小笠原家は、取り潰し。
・旧小笠原領は、帝国に割譲。
・エルハンザ王国の国王及び大統領は、退位。王太子を国王に、近麿を大統領に。
・エルハンザ王国の王家及び統領7家の子息を1人ずつ、帝国に人質として留学させる。
・帝都に、エルハンザ王国大使館を建設。

「分かりました。少々お待ちください。」

 そう言って、私は、電話を掛けた。

「ジェシカです。」
「ジェシカ様。少々お待ちください。」

 少し待つと、受話器の相手が変わった。

「ジェシカ准将か、」
「殿下。ありがとうございます。。」
「で、条件はかくかくしかじかで」
「分かった。領土はリーディングにくれてやろう。人質は不要だ。不戦・貿易条約で良いか?」
「はい。一つよろしいでしょうか?」
「留学させるのは、人質としてでなく、各国から若手の幹部候補を学院に留学させて、帝国は、各国とのパイプを確保し、平和的解決手段の確保を。」
「それと、実質支配の強化か・・・。よかろう。お前主任教授だったな・・・。留学生を受け入れる部署を立ち上げ、そこの主任教授として仕切れ。予算案は一月以内に準備しろ。」
「は。」

 この一言で、各国からの留学制度を、来年度から立ち上げる事が決まった・・・。無暗に忙しくなる。

「あと、ジェシカ准将の昇格が決まった。少将への昇格だ。東方艦隊の件で、リッチモンド叔父が決められた。それと、今回までの功績で、上級執政官の地位を授与する。これで、次官級まで大臣の一存でも昇格できる。俺の配下になって、外務次官をやらんか?」
「殿下・・・。私は、とっとと軍からも離れて、恋をして、青春を過ごしたいので・・・・。」
「わははは、お前はそういう奴だな。俺の誘いを断るのは、お前位だ。良いだろう。地位だけは取っておけ、無理を通すのは楽になる。まぁいい。好きにしろ。歳食って働きたくなったら、待っているからな。」
「はっ。」
「では。」

 そう言うと、私は電話を置いた。そのまま、近麿殿のいる応接室に戻った。

「帝国から了解を取りました。頂いた条件に変更をお願いします。」
「何を・・・・」

 近麿殿は泣きそうな顔をしている。

「安心して下さい。帝国として、人質は不要。留学制度は作りますので、来年度から何名か留学させてください。詳細は後日で詰めましょう。通信用の装置を、この大使館に設置しますので、」
「はい、わかりました。」
「では。」

 すこし、間を開けて、近麿殿は私に不思議そうな顔で聞いてきた。

「帝国は、判断が早いですし、決めることが大きいですね。」
「そうですね。ルイ皇太子殿下に直接確認しましたから・・・。」
「へっ、皇太子殿下・・・・。」
「そうです。では、条約文章は明日までにお持ちしますので。」
「はっ。」

 私は、翌日条約を結び、帰国した。帰国後、ナイフをおねーちゃんに渡して、学院で留学制度の制度設計と各国との交渉に没頭し、夏休みは終わった。
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