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番外編 男爵親子 1
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『フィネル家の令嬢エミリアは婚約者を嫌い、幼馴染と不貞をしたあげく外国へと逃げた。』
そう言う噂が王都に流れた。令嬢たちの集まるお茶会で、またはパーティーでと社交の場で静かに広まっていった。加えて、
『バランド家のヨハンは幼馴染の令嬢を弄び、令嬢は婚約を破棄された。法律家の家系のくせに女性関係のだらしないヨハンは二人の女性を不幸にした。』
そう言う悪質な根も葉もないうわさをアイラは流した。
カフェやお店など、とにかく不特定多数の人々に聞こえるように、涙を流しながら友人に訴える。事情を知っている者は無視をしているが、直接付き合いがないもの達の間や、仕事柄バランド家に良い感情を持っていない者達の間で面白おかしく広まっていった。
あわよくば、重要な地位にいるバランド家を堕としたい者達が話を大げさに悪意を持って広めた。
バランド家当主はその噂を部下から聞いた。
その部下はヨハンの人となりをよく知っていたために信じることはなく、噂の出所迄突き止めてくれていた。
「あいつらか。逆恨みだな。」
「ええ。裁判で負けた腹いせでしょう。ですから良識のあるものは信じてはおりませんが、その噂に乗じるものも出てきております。」
「そうか、助かった。今度は厳しい処分と、それを公表せねばなるまいな。」
裁判沙汰にはしたが、おとなしく慰謝料を払ったためわざわざ公表はせず温情を与えたのが仇になったようだ。
その噂はエミリアも非難していたが、その原因となったヨハンの不貞や女癖の悪さを咎めており、それを聞いたフィネル家が慰謝料の上乗せを通告してきた。
現在、フィネル家とはどちらからも婚約破棄を慰謝料を請求し合っており、裁判になる寸前であった。
しかしヨハンと娘、そして姉から止められ何とか裁判には至っていないという状況だ。裁判になればこちらが勝つ自信はあり、フィネル家もそれがわかっているからこそ裁判には持ち込んでいないのだ。
それなのにその噂に便乗し、ヨハンを有責として慰謝料を上乗せしてくるとは・・・
バランド子爵は、ヨハンがどれほどフィネル家に執着していようとも、絶対にフィネル家とは縁を切ると強く決心したのだった。
その道のプロであるバランド子爵は関係各所の協力を得て、すぐさまアイラ親子が流したという証拠をつかんだ。どの店で、いつ、だれがその話をしたのかを追い、どこからたどってもアイラに行きつくことが判明した。アイラの親の男爵ももっともらしく娘がヨハンに騙されたせいで破談になったと酒場でくだを巻いていたことも分かった。
そして今裁判の場でアイラ親子を糾弾している。
最初はしらばっくれていたがどんどん証人が現れ、証言していく。
「わざとじゃないわ!ちょっと・・・そうだったらよかったのにって言っただけよ。それを人の話を勝手に聞いてそんな噂を流した人が悪いんじゃない!私のせいじゃないわ!」
「そうか、あくまでも自分には責任がないというのだな。」
「もちろんです!」
「反省の色がないとみなし、情状酌量は認められない。」
そうしてアイラ親子には再度、多大な慰謝料が請求されたのだった。
そう言う噂が王都に流れた。令嬢たちの集まるお茶会で、またはパーティーでと社交の場で静かに広まっていった。加えて、
『バランド家のヨハンは幼馴染の令嬢を弄び、令嬢は婚約を破棄された。法律家の家系のくせに女性関係のだらしないヨハンは二人の女性を不幸にした。』
そう言う悪質な根も葉もないうわさをアイラは流した。
カフェやお店など、とにかく不特定多数の人々に聞こえるように、涙を流しながら友人に訴える。事情を知っている者は無視をしているが、直接付き合いがないもの達の間や、仕事柄バランド家に良い感情を持っていない者達の間で面白おかしく広まっていった。
あわよくば、重要な地位にいるバランド家を堕としたい者達が話を大げさに悪意を持って広めた。
バランド家当主はその噂を部下から聞いた。
その部下はヨハンの人となりをよく知っていたために信じることはなく、噂の出所迄突き止めてくれていた。
「あいつらか。逆恨みだな。」
「ええ。裁判で負けた腹いせでしょう。ですから良識のあるものは信じてはおりませんが、その噂に乗じるものも出てきております。」
「そうか、助かった。今度は厳しい処分と、それを公表せねばなるまいな。」
裁判沙汰にはしたが、おとなしく慰謝料を払ったためわざわざ公表はせず温情を与えたのが仇になったようだ。
その噂はエミリアも非難していたが、その原因となったヨハンの不貞や女癖の悪さを咎めており、それを聞いたフィネル家が慰謝料の上乗せを通告してきた。
現在、フィネル家とはどちらからも婚約破棄を慰謝料を請求し合っており、裁判になる寸前であった。
しかしヨハンと娘、そして姉から止められ何とか裁判には至っていないという状況だ。裁判になればこちらが勝つ自信はあり、フィネル家もそれがわかっているからこそ裁判には持ち込んでいないのだ。
それなのにその噂に便乗し、ヨハンを有責として慰謝料を上乗せしてくるとは・・・
バランド子爵は、ヨハンがどれほどフィネル家に執着していようとも、絶対にフィネル家とは縁を切ると強く決心したのだった。
その道のプロであるバランド子爵は関係各所の協力を得て、すぐさまアイラ親子が流したという証拠をつかんだ。どの店で、いつ、だれがその話をしたのかを追い、どこからたどってもアイラに行きつくことが判明した。アイラの親の男爵ももっともらしく娘がヨハンに騙されたせいで破談になったと酒場でくだを巻いていたことも分かった。
そして今裁判の場でアイラ親子を糾弾している。
最初はしらばっくれていたがどんどん証人が現れ、証言していく。
「わざとじゃないわ!ちょっと・・・そうだったらよかったのにって言っただけよ。それを人の話を勝手に聞いてそんな噂を流した人が悪いんじゃない!私のせいじゃないわ!」
「そうか、あくまでも自分には責任がないというのだな。」
「もちろんです!」
「反省の色がないとみなし、情状酌量は認められない。」
そうしてアイラ親子には再度、多大な慰謝料が請求されたのだった。
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