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番外編 男爵親子 2
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<アイラ視点>
本当にヨハンから訴えられてしまったわ。
あんなにやさしかったのに婚約者にたぶらかされて変わってしまったのね。幼馴染の私をこんな目に合わせるなんて許せないわ。このままだと私は年の離れた後妻よりももっと条件の悪い所へ嫁がされてしまう。
許せない、あの二人をボロボロにしてやりたい。そう思っていろんなところでヨハンがひどいという話をしていると、ある人から声をかけられたの。
「なんて気の毒な・・・。結局君はその男に騙されていたんだよ。親切なふりをして君の心を弄んでいたんだね。君の縁談をつぶして、自分だけ幸せになるつもりだよ。」
「そ、そうなの!私は騙されてしまったの。」
そう言うと本当にそうだった気がしてきたわ。
ヨハンは私を都合のいい女扱いしていたのよ。私がわざわざ王都まで出向いているのに結局ドレスも買ってくれなかったわ。初めから遊んで捨てるつもりだったのだわ。
「こんな美しい君がそんな目に合うだなんて間違っているよ。僕ならそんなことは絶対しないのに。君だけを大切にするのに。」
「まあ!嬉しいですわ!」
私を見てくれる人もいたのね。ヨハンなんかに気を取られていた私が馬鹿だった。私にも幸せな道が残されていたのね!
「でも、君の汚名をはらさなくてはいけないな。家族が許してくれないと思うんだ。」
「でももう裁判で決まってしまいました・・・私は無実ですのに!」
「わかっているよ。だからこちらは真実を広めればいいんだ。」
そう言って私の無実を広める方法を教えてくれた素敵な男性との将来を夢見たの。これさえうまくいけば、暴力をふるうような男や酒癖の悪い男など訳ありの所に嫁がされなくてすむもの。
だから頑張って噂を広めたわ。ついでに憎たらしいあの女の噂も流してやった。思った以上に広まり、私の汚名がそそがれるかと思いきや・・・・
あっという間に私が噂の出所だと突き止められ、しかもその噂も根の葉もないことだと前回の裁判記録まで公開されてしまった。
私の評判は地の底まで落ち、その噂を広める協力をしたお父様ごと断罪されてしまった。前回以上の慰謝料を求められ、既に支払う財のないお父様は屋敷を担保に借金をした。しかし今回の件を公示されたせいで取引相手がいなくなり、経営がうまくいかなくなり屋敷を手放すことになった。そしてついに爵位を返上するところまで追い詰められたのだ。
私は、告白をしてくれた令息のもとに助けを求めたが彼は廃嫡されていた。その令息は王宮の法務部の人間で、能力の低さから大事な仕事を任してもらえず昇進も望めなかったのを逆恨みし、上官であるバランド子爵を貶めるチャンスだとアイラに近づいたのだった。
それを知った家人が、バランド家の報復を恐れ早々に廃嫡したという。痛くもない腹を探られるのを恐れたためだ。
アイラ親子はバランド家に心からの謝罪をし、行くところがなく屋敷の隅で良いのでおいて欲しいと懇願した。その厚顔無恥さが、またバランド子爵の逆鱗に触れた。
バランド子爵は親切な顔でアイラに縁談を用意した。元男爵の同居も快く認めてくれるという縁談に、アイラ親子はバランド子爵に頭を下げて感謝した。
アイラは親ともども大切にしてくれる伴侶に感謝したが、ある日使用人同士の会話を聞いて、彼が3回目の婚姻であることを知った。
その原因が暴力と聞き、アイラは真っ青になってバランド子爵のもとへ抗議に向かった。
「ああ、もちろん知っているよ。彼はうちの息子が弁護し、私が裁可したからね。」
「どうしてそんな人を!私を・・・まだ怒ってらっしゃるの?!私反省したわ!もう二度と人を貶めないと約束しましたのに!ひどいですわ!」
「もちろん信じていますよ。信じているからこそ君にふさわしい人を紹介をしたのです。」
「暴力を繰り返す男なんて、嫌がらせか罰ではないですか!」
「いや、彼は反省して二度としないと約束してくれたんだ。大丈夫だよ。」
「口先だけでなんとでも言えますわ!」
「ふむ。そうすると君の反省も約束も口先だけという事になるが・・・。」
「わ、私は違いますわ!信じてください!」
「もちろんだよ。だから彼の事も信じられるだろう?君と同じことを言ってるのだから。」
そう言われてアイラは家に戻るしかなかった。
それがバランド子爵の制裁なのだと今更わかっても、もうどうすることもできなかった。出て行くところなどないのだから。
アイラがバランド子爵のもとへ行ったと知った夫は、
「君は何か不満があるの?」
「い、いえ。」
「私に君を紹介してくれたバランド様の顔を立てて結婚をしてやったんだ。私の離婚の話を聞いたようだが、私に暴力をふるわせるほうが悪いと思わないかい?」
「え?」
苛立ったように夫は机を叩いた。
大きな音が響き、アイラはびくっと体を震わせた。
「私は恩あるバランド様に二度と暴力をふるわないと誓ったんだ。だから君が、私が暴力をふるわなくてもいいよう気を付けてくれ。」
驚いて声がでないアイラに
「わかったのか?!返事は?!」
再び机をたたく。
「は、はい。気を付けます!」
その日から、夫の顔色をうかがいびくびくする毎日が始まったのだった。
そして父の元男爵はそんな事とはつゆ知らず、義理の息子となった男を褒め快適な暮らしを享受し、執務を手伝っている。
その姿を見て、これ以上迷惑をかけられないと父に相談することもできなかった。
アイラはこれからの長い人生を、暴力をふるわないが物に当って威嚇する夫と暮らすことになり、生涯平穏とは無縁の人生を歩むこととなった。
本当にヨハンから訴えられてしまったわ。
あんなにやさしかったのに婚約者にたぶらかされて変わってしまったのね。幼馴染の私をこんな目に合わせるなんて許せないわ。このままだと私は年の離れた後妻よりももっと条件の悪い所へ嫁がされてしまう。
許せない、あの二人をボロボロにしてやりたい。そう思っていろんなところでヨハンがひどいという話をしていると、ある人から声をかけられたの。
「なんて気の毒な・・・。結局君はその男に騙されていたんだよ。親切なふりをして君の心を弄んでいたんだね。君の縁談をつぶして、自分だけ幸せになるつもりだよ。」
「そ、そうなの!私は騙されてしまったの。」
そう言うと本当にそうだった気がしてきたわ。
ヨハンは私を都合のいい女扱いしていたのよ。私がわざわざ王都まで出向いているのに結局ドレスも買ってくれなかったわ。初めから遊んで捨てるつもりだったのだわ。
「こんな美しい君がそんな目に合うだなんて間違っているよ。僕ならそんなことは絶対しないのに。君だけを大切にするのに。」
「まあ!嬉しいですわ!」
私を見てくれる人もいたのね。ヨハンなんかに気を取られていた私が馬鹿だった。私にも幸せな道が残されていたのね!
「でも、君の汚名をはらさなくてはいけないな。家族が許してくれないと思うんだ。」
「でももう裁判で決まってしまいました・・・私は無実ですのに!」
「わかっているよ。だからこちらは真実を広めればいいんだ。」
そう言って私の無実を広める方法を教えてくれた素敵な男性との将来を夢見たの。これさえうまくいけば、暴力をふるうような男や酒癖の悪い男など訳ありの所に嫁がされなくてすむもの。
だから頑張って噂を広めたわ。ついでに憎たらしいあの女の噂も流してやった。思った以上に広まり、私の汚名がそそがれるかと思いきや・・・・
あっという間に私が噂の出所だと突き止められ、しかもその噂も根の葉もないことだと前回の裁判記録まで公開されてしまった。
私の評判は地の底まで落ち、その噂を広める協力をしたお父様ごと断罪されてしまった。前回以上の慰謝料を求められ、既に支払う財のないお父様は屋敷を担保に借金をした。しかし今回の件を公示されたせいで取引相手がいなくなり、経営がうまくいかなくなり屋敷を手放すことになった。そしてついに爵位を返上するところまで追い詰められたのだ。
私は、告白をしてくれた令息のもとに助けを求めたが彼は廃嫡されていた。その令息は王宮の法務部の人間で、能力の低さから大事な仕事を任してもらえず昇進も望めなかったのを逆恨みし、上官であるバランド子爵を貶めるチャンスだとアイラに近づいたのだった。
それを知った家人が、バランド家の報復を恐れ早々に廃嫡したという。痛くもない腹を探られるのを恐れたためだ。
アイラ親子はバランド家に心からの謝罪をし、行くところがなく屋敷の隅で良いのでおいて欲しいと懇願した。その厚顔無恥さが、またバランド子爵の逆鱗に触れた。
バランド子爵は親切な顔でアイラに縁談を用意した。元男爵の同居も快く認めてくれるという縁談に、アイラ親子はバランド子爵に頭を下げて感謝した。
アイラは親ともども大切にしてくれる伴侶に感謝したが、ある日使用人同士の会話を聞いて、彼が3回目の婚姻であることを知った。
その原因が暴力と聞き、アイラは真っ青になってバランド子爵のもとへ抗議に向かった。
「ああ、もちろん知っているよ。彼はうちの息子が弁護し、私が裁可したからね。」
「どうしてそんな人を!私を・・・まだ怒ってらっしゃるの?!私反省したわ!もう二度と人を貶めないと約束しましたのに!ひどいですわ!」
「もちろん信じていますよ。信じているからこそ君にふさわしい人を紹介をしたのです。」
「暴力を繰り返す男なんて、嫌がらせか罰ではないですか!」
「いや、彼は反省して二度としないと約束してくれたんだ。大丈夫だよ。」
「口先だけでなんとでも言えますわ!」
「ふむ。そうすると君の反省も約束も口先だけという事になるが・・・。」
「わ、私は違いますわ!信じてください!」
「もちろんだよ。だから彼の事も信じられるだろう?君と同じことを言ってるのだから。」
そう言われてアイラは家に戻るしかなかった。
それがバランド子爵の制裁なのだと今更わかっても、もうどうすることもできなかった。出て行くところなどないのだから。
アイラがバランド子爵のもとへ行ったと知った夫は、
「君は何か不満があるの?」
「い、いえ。」
「私に君を紹介してくれたバランド様の顔を立てて結婚をしてやったんだ。私の離婚の話を聞いたようだが、私に暴力をふるわせるほうが悪いと思わないかい?」
「え?」
苛立ったように夫は机を叩いた。
大きな音が響き、アイラはびくっと体を震わせた。
「私は恩あるバランド様に二度と暴力をふるわないと誓ったんだ。だから君が、私が暴力をふるわなくてもいいよう気を付けてくれ。」
驚いて声がでないアイラに
「わかったのか?!返事は?!」
再び机をたたく。
「は、はい。気を付けます!」
その日から、夫の顔色をうかがいびくびくする毎日が始まったのだった。
そして父の元男爵はそんな事とはつゆ知らず、義理の息子となった男を褒め快適な暮らしを享受し、執務を手伝っている。
その姿を見て、これ以上迷惑をかけられないと父に相談することもできなかった。
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