身を引いても円満解決しませんでした

れもんぴーる

文字の大きさ
15 / 34

溺愛が止まらない 2

しおりを挟む
 ステファンはドランの街でアルビンとエヴェリーナの後をつけていたあの日、同じく二人の後をつけていた女の目つきが気になり、調べることにした。しかし、翌日にはその女が姿を消したのだ。
その女の住処、働いていた飲み屋などを調べると胡散臭い商売をしていることが分かった。
そしてその二日後にその女の遺体が川から上がった。

 ステファンはロイドの力も借り、本格的に調査をはじめた。そんな女と親しいアルビンはどのような人物なのか。するとドイル商会として手広くやっている一方、もう一つの顔が見えてきた。母国に報告し、詳細な調査が行われることになった。

 本当は旅に出るエヴェリーナについていきたかったが、エヴェリーナに近づいている男の正体を暴くことが先決だ。すると密輸に麻薬販売にと犯罪に手を染めていたことが分かった。ドラン国にも報告し、証拠が固まりしだい捕らえる予定であったが、なかなか尻尾を掴ませず手間取っているうちに、エヴェリーナが戻ってきてああいう結果になったのだった。



王宮のステファンの部屋で、メイドが運んできてくれた紅茶をいただき、今までで一番おいしいと感動しながら過ごしていた。ステファンが戻ってくるのが遅く、旅の疲れもありいつの間にかソファーで熟睡してしまっていた。

 ふと目が覚めると、もう部屋の中は明るくなっていた。
いつの間にかふかふかのベッドの中にいた。
「ひゃあっ?」
きゅうに後ろから手が伸びてきて抱きしめられた。
「おはよう。昨日は遅くなってごめんね。報告が長引いてしまって」
「ステファン様!あ、あの…ここまで運んでくださいました?」
「うん、ソファーでよく眠っていたから。」

ぎゅうと抱きしめる力を強めながら後ろからくっついて髪や首筋の匂いをすんすん嗅いでくる。
「困ります!昨日は湯あみもしてないから・・・あ、汚いのにベッドですいません!!」
思い出して慌ててベッドから出ようとしたが、手を弛めてくれず叶わなかった。
くるっと向きを変えさせられ、気のすむまで口づけをされた。

あれから、タガが外れたようにスキンシップが激しい。
「殿下が会いたいと言ってるんだけど、大丈夫?」
「ええ?!王太子殿下ですか?どうして私なんかに?!」
「あの事件の当事者っていうのもあるけど、本当はただ面白がってるだけだよ。気が進まなければ断っておく」
「いや、それは不敬では・・・私のせいで殿下にもご迷惑をおかけしたので謝罪いたします。」
「それは僕が勝手にしたことだから謝ることはないよ。ただ、行方をくらませたことは貴族である以上責任は問われるかもしれない。だから僕が不貞を疑われるようなことをしたため、傷心した君が家出したということになってるから。」
「それではステファン様に非があるようになってしまいます。自分がしたことは自分で責任を取ります。」
「だって、僕が不貞した記憶が君を苦しめてるんだから僕が原因であることに変わらないよ。妻の名誉を守るのも夫の務めだ。」
「ステファン様・・・貴方は優しすぎます・・・もっと怒っていいのです、私をもっと責めてください。」
ステファンはエヴェリーナの涙をぬぐうと、再び口づけをした。

そんなステファンに前回と同じ、いやそれ以上に愛しい気持ちを抱いてしまった。
離れたくない、誰にも奪われたくないと強く思った。そうなるのが怖くて逃げたのに。
もしまた前回のように妹に取られたら・・・今度は殺される前に殺してしまうかもしれない。
自分の中に沸き起こった感情が怖かった。
しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]

風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが 王命により皇太子の元に嫁ぎ 無能と言われた夫を支えていた ある日突然 皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を 第2夫人迎えたのだった マルティナは初恋の人である 第2皇子であった彼を新皇帝にするべく 動き出したのだった マルティナは時間をかけながら じっくりと王家を牛耳り 自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け 理想の人生を作り上げていく

とある伯爵の憂鬱

如月圭
恋愛
マリアはスチュワート伯爵家の一人娘で、今年、十八才の王立高等学校三年生である。マリアの婚約者は、近衛騎士団の副団長のジル=コーナー伯爵で金髪碧眼の美丈夫で二十五才の大人だった。そんなジルは、国王の第二王女のアイリーン王女殿下に気に入られて、王女の護衛騎士の任務をしてた。そのせいで、婚約者のマリアにそのしわ寄せが来て……。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

婚約破棄の前日に

豆狸
恋愛
──お帰りください、側近の操り人形殿下。 私はもう、お人形遊びは卒業したのです。

愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。 それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。 一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。 いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。 変わってしまったのは、いつだろう。 分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。 ****************************************** こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏) 7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

幸せな人生を送りたいなんて贅沢は言いませんわ。ただゆっくりお昼寝くらいは自由にしたいわね

りりん
恋愛
皇帝陛下に婚約破棄された侯爵令嬢ユーリアは、その後形ばかりの側妃として召し上げられた。公務の出来ない皇妃の代わりに公務を行うだけの為に。 皇帝に愛される事もなく、話す事すらなく、寝る時間も削ってただ公務だけを熟す日々。 そしてユーリアは、たった一人執務室の中で儚くなった。 もし生まれ変われるなら、お昼寝くらいは自由に出来るものに生まれ変わりたい。そう願いながら

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

処理中です...