所詮私は他人でしたね でも対価をくれるなら家族の役割を演じてあげます

れもんぴーる

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出会い

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 セシルは街で新しい人生を始めた。

 屋敷にいる二年間の間に、料理をしっかり料理人から教えてもらっておいたおかげでルルの店で即戦力となった。
 セシルという若い看板娘が来てから、店の客もやや増加傾向となりセシルの生活が順調に回っていた時、少し先の所で火事が発生した。

 火がおさまった後には、手伝いに人手がいる。
 騎士や兵が検分や片づけをしている中、セシルは片づけを手伝ったり、自腹をきって被災したもの達に食事をふるまったり、と走り回った。
 そんな姿を見ていた者達や火事で知り合った騎士や兵たちも食堂に通うようになり、さらに食堂が繁盛していった。


 そんな時、店にサミュエルが顔を出した。
「近くで火事があったと聞いたんだが・・・大丈夫だったか?」
「ありがとうございます。大丈夫でしたよ。」
 サミュエルはこれまでも何度か店の近くまで来ていたが、セシルが嫌がるかもしれないと気を使って入れなかった。無事を確かめる口実にようやく訪ねることが出来たのだ。
「何か食べさせてもらえるだろうか。」
「もちろんです、ありがとうございます。」
 セシルは笑顔で注文を取った。


 サミュエルが忙しそうに働くセシルを悲しげな目で追いながら食事をしていると、騎士のマルクが同じテーブルに座った。
「サミュエルじゃないか。どうした?こんなところで。」
「マルク、お前こそ。」
「俺はこの先であった火事の後始末や聞き込みでよく来るんだ。」
「そうか、お疲れ様。僕は・・・まあこっちに用があってね。」
「マルク様、いらっしゃいませ。」
 セシルが注文を取りに来る。注文を取って戻っていくセシルの後ろ姿を見送って
「あの子シルちゃんっていうんだ。火事の時にいろいろ手伝ってくれたいい子なんだ。」
 マルクは嬉しそうにセシルのいい所をあげていく。
 サミュエルはそんな事は知っていると言いたいが言えなかった。セシルは兄弟だということも、貴族だということも知られたくないだろうから。

「今度彼女をデートに誘おうと思ってるんだ。」
「え?」
「最初のデートで交際申し込もうと思ってる。」
「は?その・・・彼女は平民かもしれないだろ?」
「俺なんて三男だしこうして騎士という職にもついている。相手が貴族である必要はないしね。」
「そ、そうか。彼女もお前の事を?」
「さあ、嫌われてはいないと思うけどね。婚約者はいないと言っていたし、天涯孤独の身だとも言っていたから頼れる相手は必要だろ。」
「・・・天涯孤独だって?」
 サミュエルはわかっていても、酷く落ち込んだ。

「ああ、そう言ってた。だから火事で焼け出された子供たちを親身になって世話してたんだろうなあ。俺、もう彼女から目を離せなくて。」
「・・・彼女を幸せにする自信があるのか?遊びなら絶対に許さない。」
 サミュエルの顔が少し険しくなる。
「なんだ?まさかお前までシルちゃんに一目ぼれとか言わないだろうな。」
「そうじゃない。そうじゃないが・・・妹みたいに思えたから。」
「・・・ああ、お前のところ大変だったもんな。本当の妹ではなくて残念だったな。お前、あれだけアナベルを可愛がっていたのに・・・」
 サミュエルは何度かアナベルをマルクにあわせたことがあったのだ。
 貴族社会に入ったばかりで知り合いのいないアナベルの為に、サミュエルは自分の友人にも紹介していたのだ。今となっては余計な事だったが。

「・・・ああ。だから彼女を大事にしてあげて欲しい。」
「もちろんだ。彼女がOKくれたらだけどな。」
 そう言ってマルクは笑った。



 そして、マルクの告白にセシルは真っ赤な顔をして頷いた。
 マルクはあの火事の時も一生懸命活動していて、セシルは好感を抱いていた。
 店に通ってくれるようになってからはその優しさも知った。
 家族の愛を信じきれず、でも奥底で愛を求めていたセシルはマルクの告白が嬉しかった。

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