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マルガレータの矜持
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アンティラ家に対する捜査はアルヴィのおかげで進んではいた。
しかし肝心のアンティラ公爵はエドヴァルドに嵌められた、冤罪だと訴え続けた。マルガレータに至っては、一言も話さなかった。
カティが録音した音声、元ハハト子爵や実行犯の証言、アルヴィの協力により他の罪や諸々の証拠が挙がり、有罪は確定した。
アルヴィは調査に協力したため処罰は減じられたが、アンティラ公爵家は取りつぶされ、領地も財産も没収されて平民となった。
しかし、公爵家の嫡男として教育を受け、執務も行ってきたアルヴィを惜しんだ国王はアルヴィに救いの手を差し伸べた。
アンティラ家の裏家業の詳細を知る最後の者として、その知識、技能を王家の為に役立てるようにと、とある貴族の養子にさせ名前を変えさせた。生涯監視付きとはいえ誠心誠意王家に仕えるようにと沙汰が下された。
アルヴィはアンティラ家で修得したすべてを王家の為に、真っ当な施政の為にいかす事を誓った。
アンティラ公爵の企みは、下手をすると本当にカティの命は奪われ、エドヴァルドが失脚、挙句の果てにはアンティラ家が中枢を思いのままに動かし、王族が傀儡と成り下がる可能性まであった。
アンティラ公爵は極刑に決まった。マルガレータは父からの洗脳を否定しきれず、極刑は免れた。代わりに北の厳しい土地に送られ、労働が課せられることになった。
それを言い渡された時もマルガレータは微笑みを絶やさなかった。
罪人用の馬車に乗せられてマルガレータは北に向かう険しい道を進んでいた。
急に馬車が止まった。
「なんだお前ら?」
御者が目の前に飛び出てきた男たちを誰何する。
男たちは無言のまま剣を抜いた。御者は悲鳴を上げて逃げようとしたが男に切りかかられた。
「うっ!!」
剣を構えていた男の腕に小剣が刺さった。
木々の間から大勢の騎士が現れ、あっという間に馬車を襲った男たちを取り囲み拘束した。
「お前たちは何者だ?なぜ馬車を襲った?」
しかし男たちは何も言わない。
馬車の扉が開けられ、手かせをつけたマルガレータが引き出される。
「まあ、エドヴァルド様。このようなところまでお見送りに来てくださったのかしら?」
御者を助けたのはエドヴァルドと公爵邸の騎士だった。
「ええ。あなたの最後を見届けに。」
「危ない所を助けていただきありがとうございました。罪を償う前に襲われる所でしたわ。」
「ふ、その豪胆さは認めよう。この者どもは貴女の手のものだろう。」
「なんの事かしら。」
「アンティラ公爵よりも貴女の方が危険だから監視していた。ここで逃げられてまたカティに手を出されては困るので。」
「エドヴァルド様はどうしてしまわれたのかしら。あのような赤子一人を気にされ、すっかり変わってしまわれましたわ。」
「それが何か?貴女は哀れな人だ。令嬢として幸せを掴めただろうに。」
「・・・。アンティラ家に生まれ育ったことは後悔しておりませんわ。でも、これでやっと解放されるのですね。」
「貴女がその道を選ぶのなら。」
エドヴァルドは美しく宝飾された短剣を渡した。
「初めてエドヴァルド様と気持ちが通じ合いましたわ。感謝いたします。」
そう微笑み、マルガレータは自分の首に剣先を当てるとためらうことなく掻き切った。
狂気をはらむ危険人物であったが、彼女もアンティラ家の犠牲者だった。
マルガレータがこのまま悪あがきをするようならすぐに首をはねるつもりだった。しかし、その潔い引き際に、エドヴァルドは死者に鞭打つことなく丁寧に葬るよう指示した。
==================
書き溜めた話が少なくなってきました。
進捗状況によっては一日一回の更新になるかもしれません(/ω\)
楽しみにしてくださっている方々、申し訳ありません。
頑張りますので引き続きよろしくお願いします(*´▽`*)
しかし肝心のアンティラ公爵はエドヴァルドに嵌められた、冤罪だと訴え続けた。マルガレータに至っては、一言も話さなかった。
カティが録音した音声、元ハハト子爵や実行犯の証言、アルヴィの協力により他の罪や諸々の証拠が挙がり、有罪は確定した。
アルヴィは調査に協力したため処罰は減じられたが、アンティラ公爵家は取りつぶされ、領地も財産も没収されて平民となった。
しかし、公爵家の嫡男として教育を受け、執務も行ってきたアルヴィを惜しんだ国王はアルヴィに救いの手を差し伸べた。
アンティラ家の裏家業の詳細を知る最後の者として、その知識、技能を王家の為に役立てるようにと、とある貴族の養子にさせ名前を変えさせた。生涯監視付きとはいえ誠心誠意王家に仕えるようにと沙汰が下された。
アルヴィはアンティラ家で修得したすべてを王家の為に、真っ当な施政の為にいかす事を誓った。
アンティラ公爵の企みは、下手をすると本当にカティの命は奪われ、エドヴァルドが失脚、挙句の果てにはアンティラ家が中枢を思いのままに動かし、王族が傀儡と成り下がる可能性まであった。
アンティラ公爵は極刑に決まった。マルガレータは父からの洗脳を否定しきれず、極刑は免れた。代わりに北の厳しい土地に送られ、労働が課せられることになった。
それを言い渡された時もマルガレータは微笑みを絶やさなかった。
罪人用の馬車に乗せられてマルガレータは北に向かう険しい道を進んでいた。
急に馬車が止まった。
「なんだお前ら?」
御者が目の前に飛び出てきた男たちを誰何する。
男たちは無言のまま剣を抜いた。御者は悲鳴を上げて逃げようとしたが男に切りかかられた。
「うっ!!」
剣を構えていた男の腕に小剣が刺さった。
木々の間から大勢の騎士が現れ、あっという間に馬車を襲った男たちを取り囲み拘束した。
「お前たちは何者だ?なぜ馬車を襲った?」
しかし男たちは何も言わない。
馬車の扉が開けられ、手かせをつけたマルガレータが引き出される。
「まあ、エドヴァルド様。このようなところまでお見送りに来てくださったのかしら?」
御者を助けたのはエドヴァルドと公爵邸の騎士だった。
「ええ。あなたの最後を見届けに。」
「危ない所を助けていただきありがとうございました。罪を償う前に襲われる所でしたわ。」
「ふ、その豪胆さは認めよう。この者どもは貴女の手のものだろう。」
「なんの事かしら。」
「アンティラ公爵よりも貴女の方が危険だから監視していた。ここで逃げられてまたカティに手を出されては困るので。」
「エドヴァルド様はどうしてしまわれたのかしら。あのような赤子一人を気にされ、すっかり変わってしまわれましたわ。」
「それが何か?貴女は哀れな人だ。令嬢として幸せを掴めただろうに。」
「・・・。アンティラ家に生まれ育ったことは後悔しておりませんわ。でも、これでやっと解放されるのですね。」
「貴女がその道を選ぶのなら。」
エドヴァルドは美しく宝飾された短剣を渡した。
「初めてエドヴァルド様と気持ちが通じ合いましたわ。感謝いたします。」
そう微笑み、マルガレータは自分の首に剣先を当てるとためらうことなく掻き切った。
狂気をはらむ危険人物であったが、彼女もアンティラ家の犠牲者だった。
マルガレータがこのまま悪あがきをするようならすぐに首をはねるつもりだった。しかし、その潔い引き際に、エドヴァルドは死者に鞭打つことなく丁寧に葬るよう指示した。
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楽しみにしてくださっている方々、申し訳ありません。
頑張りますので引き続きよろしくお願いします(*´▽`*)
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