転生赤ちゃんカティは諜報活動しています そして鬼畜な父に溺愛されているようです

れもんぴーる

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公爵邸 お客様 1

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「え?イレーヌ様が?」
「はい。お祝いに来られるそうですよ。」
「久しぶりに緊張しちゃう。」
 国王がマナーのサポート役として派遣してくれていた高位貴族のご令嬢だ。
 きちんとした指導には年配の夫人が来てくれていたが、お手本として、また話し方のお相手として比較的若いイレーヌ・シモンがサポートにあたってくれていたのだ。
 エドヴァルドの帰還のお祝いとカティの様子が気になると会いに来てくれるという。
 この時ばかりは身だしなみとマナーをきっちりとしなければならない。楽しくないお茶会になりそうだが、イレーヌに会うのは嬉しい。
 エドヴァルドがいない間の辛い気持ちをよく聞いてくれ、慰めてくれていた。

「カティ様、お会いしたかったですわ!本当にようございました。」
「はい、ありがとうございます!」
 お天気が良く、庭にお茶会の用意がされている。
 久しぶりに背筋を伸ばし、指先まで神経を張り巡らせてカップを持つと指がつりそうだ。若干プルプルするのでいつもよりお茶が進まない。お菓子もほとんど口にせず、修行のようなお茶会。
「それでお父様はもうお元気に?」
「はい。もう全く以前と変わりありませんわ。後ほどイレーヌ様にご挨拶をすると申しておりました。」
「まあ、光栄ですわ。エドヴァルド様といえばこの国をお守り下さった英雄ですもの!なかなかお姿を拝見することが出来ないので皆残念がっておりますのよ。」
 十三年もたつと、近づくものをその視線で射殺す氷の宰相の噂も若い者は知らないのだろう。イレーヌは嬉しそうに話す。

 そうこうするうちにエドヴァルドが姿を現した。
「ユリ公爵家当主エドヴァルドです。カティが大変世話になった、お礼申し上げる。」
 イレーヌはさっと頬を染めると
「とんでもございませんわ!ユリ公爵様にお会いできて光栄です。この度は無事の御帰還おめでとうございます。」
「ええ。では、ゆっくり過ごされるといい。」
 さっと踵を返すエドヴァルドに
「あの!ご不在の間のカティ様のご様子をお伝えしたいですわ。ご一緒いたしませんか?」
 と声をかけた。
 客とはいえ、大変失礼な声掛けだった。しかもカティのマナーのサポートをしていた侯爵令嬢にしてはお粗末すぎる言動だ。
「いえ、結構。失礼する。」
 さっと歩き去る無表情のエドヴァルドに気に留めることなくイレーヌはその背中を見送った。
「カティ様!うわさでは聞いておりましたが、素敵なお父様ですね。」
「ええ。自慢の父ですわ。」
 イレーヌはしばらくエドヴァルドの事をほめちぎって帰っていった。

 カティはふ~っと力を抜き、姿勢を崩すとお茶を入れ替えてもらった。
「背中つりそ・・・」
 久しぶりのイレーヌ訪問は思ったより疲れた。
 しばらくすることのなかった公爵令嬢としての振る舞いに心身ともに疲れた。おまけにイレーヌがエドヴァルドの話しかしなくなったからだ。彼女はまた来ますと言い残して帰っていった。

 カティがホッと一息ついていると、エドヴァルドがやってきた。
 カティはちゃっかりエドヴァルドの膝に乗せてもらう。
「先ほどは姿勢も所作も綺麗だった、この十三年どれだけお前が頑張ってきたのかよく分かったよ。」
「えへへへ。」
 エドヴァルドがご褒美にとお菓子を口に運んでくれる。
 カティの心が安心で満たされる。その時、
「まあ、カティ様!はしたないですわ!公爵令嬢としてあるまじきことです!」
 とイレーヌの声がした。

「お父様とはいえ殿方の膝になどと・・・せっかくマナーを教えて差し上げましたのに。ユリ公爵様、申し訳ありません。わたくしのサポートが足らなかったのですわ、こうなれば今後もわたくしがご指導を・・・・」
「必要はない。で、何の用だ。先ほど帰られたはずだが。」
 エドヴァルドが低い声で問う。
「あ、あのカティ様にお伝えしたいことがありまして・・・。」
 カティにマナーの先生として招くよう頼むつもりだった。
「ではさっさと伝えていただこう。」
「いえ、カティ様だけに・・」
「ここで言えないような話ならば聞かせる必要はない。話はすんだ、お帰りいただけ。」
 レオが承知しましたとイレーヌを連れて行った。

「・・・ごめんなさい。」
 カティはしょんぼりして膝から降りようとした。
 エドヴァルドは抱きかかえなおすと
「謝る必要も降りる必要もない。」
「でも公爵令嬢らしくないって・・・はしたないって。とう様に恥をかかせてしまいました。」
 カティの心の傷を知りもしない令嬢がずかずかと心を踏みにじる。
 カティが世話になったからと顔を出したが、先ほども失礼な態度を取ったうえに今回の無礼。
 この礼はきっちりとさせてもらおう。
 ついでに紹介者である国王にもくぎを刺しておかねばならないだろう。

「私はお前がこうして頼って甘えてくれるのは嬉しい。恥というのならあの令嬢の方が無礼で恥さらしだろう。あのような者がマナーをサポートしていたとは。」
「その時はきちんとお相手してくれたの。マナーの先生が一緒だったからかもしれないけど嫌な感じはなかったよ。」
「もう付き合う必要はない。お前は今まで通りで良い。」
 そういうと、カティは安心したように頷いた。
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